ガーナ共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

国名・首都

ガーナ共和国。首都はアクラ。

英語を公用語とする。

人口は約 3,200 万人(2024年)。

独立以来、西アフリカ地域の要衝とされる。

通貨・為替

通貨はガーナセディ(GHS)。1 USD = 12 GHS(2025/05 月平均)。

経済政策や輸出入の動向により為替相場が変動しやすい。

経済指標

GDP は約 770 億米ドル(2024 年)。

主要産業は金・原油・カカオなどの資源関連とサービス業。

インフレ率は高めに推移しているが、近年は金融政策強化による抑制が図られている。

日本との関係

1960 年に外交関係を樹立。日本企業の進出は製造業・商社・建設・サービスなど多岐にわたる。政府間の経済協力や人材育成支援も積極的に行われている。

2. 法人設立制度

法人形態

主な形態は有限責任会社 (Limited Liability Company) と支店 (Branch) が挙げられる。

有限責任会社は株主の責任範囲が出資額に限定されるため、最も一般的な形態である。

外資規制

外資規制は特定の戦略業種(石油・ガス・鉱業など)を除き厳しくない。

ガーナ投資促進センターへの登録が必要な場合があるが、外資比率の上限は基本的になく、出資比率 100% の設立も認められる。

資本金要件

外資企業の場合、完全外資では最低 50 万米ドル相当、ガーナ人パートナーとの合弁では最低 20 万米ドル相当の払込資本金が求められる(2025/05 時点)。業種により要件が異なる場合がある。

登記手続き

登記は会社登記局で行う。会社名の予約、定款作成、法定書類の提出、納付金支払い、納税者番号 (TIN) 登録などの手続きが必要。完了までの所要期間は 2〜4 週間程度とされる。

2. 法人設立制度

法人形態

ガーナの会社形態は主に有限責任会社 (Limited Liability Company) と支店 (Branch) がある。

有限責任会社は株主の責任範囲が出資額に限定されるため、最も一般的である。有限責任会社には下記の特徴がある。

  • 株主数は 1 名以上で設立可能。複数株主の場合、株主合意書(Shareholders Agreement)の締結が推奨される。
  • 取締役は通常 2 名以上とし、うち少なくとも 1 名はガーナ国内で常住することが望ましい。
  • 社名の末尾に “Limited” の表記を付す必要がある。

支店の場合、本社が外国にある法人がガーナ国内で事業活動を行うために登録する形態であり、独自の法人格を持たない。本社がすべての債務責任を負う点が有限責任会社と異なる。

外資規制

ガーナでは外資規制が比較的緩やかであり、特定の戦略業種(石油・ガス・鉱業など)を除き、外資の参入に大きな制限はない。ガーナ投資促進センター (GIPC) への登録が要求される場合があり、登録後は投資許可証が交付される。主な外資規制のポイントは以下のとおり。

  • 石油・ガスや採掘関連など一部業種については事前許可またはライセンス取得が必要。
  • 一定の業種でガーナ人パートナーとの共同出資を推奨する指針がある。
  • 設立形態は完全外資でも認められ、経営権の制限は原則ない。
  • GIPC 登録を行わないと法人化手続きが完了しないため、事業計画や投資額に応じた手続きを事前に確認することが重要である。

資本金要件

外資企業の場合、以下の最低払込資本金要件が定められている。

  • 完全外資 (100% 外資):最低 50 万米ドル相当
  • ガーナ人パートナーとの合弁:最低 20 万米ドル相当

外国人による貿易業(輸入販売など)の場合は最低 100 万米ドル相当が求められるケースもある。業種により要件が変更されることがある。払込資本金は通常、ガーナ国内の銀行口座へ送金するかたちで実行される。

登記手続き

法人設立の主な登記手続きは以下のステップに沿って進める。

  • 会社名の事前予約:重複がないか会社登記局で確認し、名称を保護する。
  • 定款および細則 (Regulations) の作成:会社の目的、株主や取締役の権限、資本金などを記載。
  • 会社登記局への提出:必要書類(定款、細則、取締役・株主情報など)を提出し、登録料を納付。
  • 納税者番号 (TIN) の取得:法人および取締役がガーナ税務当局で登録を行う。
  • GIPC 登録(外資の場合):所定の書類と投資額証明を添えて申請し、投資許可証を得る。

登記完了までの所要期間は概ね 2〜4 週間程度であるが、提出書類に不備がある場合はさらに時間を要する。登記が完了したら法人印の作成、銀行口座の開設などを行い事業活動を開始する。

3. 税制度

法人税

一般的な法人税率は 25%(2024 年)である。農業、製造業、観光業など一部の優遇措置対象業種には減免が適用されることがある。

法人税は課税所得に基づき算出され、課税年度中に四半期ごとに予定納税を行う。年度末に決算申告と精算を行い、過不足分を調整する。

法人税計算の際は、ガーナ税務当局の定める損金不算入項目や減価償却の区分率を順守する必要がある。新規投資に対しては初年度のみ追加減価償却率が適用される場合がある。

付加価値税(VAT)

標準税率は 12.5%(2024 年)であり、これに国民医療保険税 (NHIL) や教育基金税 (GETFund Levy) が上乗せされ、実効税率は 17.5% 前後となる。

医薬品や農産物の一部など非課税・免税対象となる品目も存在し、これらについては売上時に VAT を課さない。また、輸出取引はゼロ税率が適用される。

課税対象となる財・サービスの取引時に課税し、事業者は売上 VAT を徴収する一方で、仕入 VAT を控除して納付額を計算する。

事業者は月次または四半期で VAT 申告を行い、期限内に納付する必要がある。

個人所得税

個人所得税は累進課税方式を採用し、最高税率は 30%(2024 年)となる。

給与所得には源泉徴収義務があり、雇用主が毎月給与から所定の税額を控除してガーナ税務当局に納付する。

年間所得が一定額以下の場合は低率または非課税帯に分類される。

ボーナスや手当も課税対象となるが、一部の福利厚生は非課税となる。

非居住者の給与所得には別途の税率や源泉徴収規定が適用される場合がある。

その他の税金

  • 印紙税:契約書や不動産取引文書などに課される。契約金額に応じた定率または定額の納税が必要。
  • 不動産関連税:土地・建物の所有や譲渡に際して課税される。地方自治体に対して年次の不動産税が発生する。
  • 源泉徴収税:非居住者への配当・利子・ロイヤルティ支払い時には 8〜15% 程度の源泉徴収が課される。条約の有無により優遇税率が適用される場合がある。

4. 会計・監査制度

会計基準

ガーナでは上場企業や大規模企業には国際財務報告基準(IFRS)が適用される。中小企業や小規模事業者には IFRS for SMEs が認められる。会計処理は真実性・正確性の確保が求められ、減価償却や在庫評価については IFRS に準拠することが一般的である。

監査要件

ガーナの会社法では、全ての有限責任会社は外部監査人の任命と年次監査を義務付けている。監査人はガーナで認定された公認会計士または監査法人でなければならない。

監査報告書は株主総会に提出し、承認を得ることが求められる。

登録要件

監査業務を実施する監査法人や公認会計士は、ガーナ会計士協会など所定の専門機関に登録される必要がある。

登録は定期更新制であり、法定の継続教育要件を満たす必要がある。

財務諸表の提出

各会計年度終了後、法定期限内(通常 6 か月以内)に監査済の財務諸表を会社登記局へ提出する義務がある。財務諸表はバランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書および株主資本等変動計算書など IFRS で定められる主要書類を含む。未提出や虚偽の提出があった場合は罰則が科される。

5. 労務制度

雇用契約

雇用契約は書面で締結することが原則とされ、就業条件(給与、労働時間、福利厚生、契約期間など)を明確に記載する。試用期間は一般的に 3〜6 か月程度で、その間の解雇規定は契約で取り決める。

最低賃金

日額 15 GHS(2024 年時点)が法定最低賃金であり、雇用者はこれを下回る賃金を支払うことは認められない。実際には業種や地域によって相場がやや異なり、労使協議や労働組合との合意により若干の上乗せが行われる場合もある。違反には罰則が定められている。

労働時間

週 40〜48 時間程度が標準労働時間である。超過勤務を行う場合、法定の割増賃金を支払う義務がある。祝日や休日出勤に対しても割増賃金の対象となる。勤務形態にはフレックスタイム制や交代制なども認められるが、就業規則上の明示が必要である。

解雇・退職

解雇には正当な理由と手続きが要求され、能力不足や重大な規律違反などが主な正当事由となる。解雇予告期間は労働者の勤続年数に応じて設定され、退職金の規定がある場合は労働法に基づいて支払う。リストラや業績悪化による解雇(Redundancy)の場合は、追加の補償も定められている。

労働争議・労使関係

多くの業種で労働組合が結成されており、団体交渉のほか、必要に応じてストライキ権が行使される。企業側は労働委員会による調停手続きや集団交渉に応じる義務がある。労使紛争が発生した場合、労働委員会や裁判所を通じて解決を図る体制が整備されている。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

ガーナ自由区域局 (GFZA) が運営する輸出特区制度があり、指定エリア内に製造拠点を置く企業は法人税減免や関税免除などの優遇措置を享受できる。適用を受けるには以下の要件を満たす必要がある。

  • 生産品の一定割合を輸出に回すこと
  • 指定の最低投資額を満たすこと
  • ガーナ自由区域局への登録およびライセンス取得

優遇を受けられる期間や税率は事業分野や投資額により異なるが、最大 10 年程度の法人税免除措置が認められるケースもある。

投資促進機関

ガーナ投資促進センター (GIPC) が外国投資受け入れを一元的に担当し、設立支援や行政手続きの簡素化に取り組んでいる。投資登録を行うことで、税制上の優遇措置や現地ビジネスネットワークの紹介などの支援を受けられる。登録申請時には事業計画や投資額、資本金証明書などを提出し、審査を経て認可が下りる。

ビザ・労働許可

外国人がガーナで長期的に就労する場合、就労ビザと労働許可証が必要になる。雇用主が内務省や移民局に対して書類を提出し、許可を取得する。手続きの主な流れは以下のとおり。

  • 雇用主が移民局に対して申請書類(事業ライセンス、雇用契約書、事業計画など)を提出。
  • 就労期間に応じた労働許可証の発行(通常 1 年単位で更新)。
  • 家族滞在ビザの申請(配偶者や子女など同伴家族がいる場合)。

許可証の取得後も、在留届や居住許可の更新手続きが適宜必要となる。

外貨規制

ガーナでは大幅な外貨規制は敷かれていないが、海外送金や資金移動を行う場合は、銀行を通じた正式な手続きが必要である。中央銀行 (Bank of Ghana) の監督下で、事業収益や配当金の本国送金は原則として認められる。送金時に必要な主な書類は以下のとおり。

  • 納税証明書(法人税や VAT の支払い状況を示す書類)
  • 取引根拠書類(配当であれば株主総会議事録等、利子であれば貸付契約等)

ガーナセディ(GHS)の為替相場は変動しやすいため、送金タイミングの検討が重要となる。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

口座開設には会社登記証明や納税者番号 (TIN)、代表者の身分証明書などが必要。

金融機関によっては本店所在地への訪問を求める場合がある。

現地借入・金利水準

ガーナの政策金利は比較的高い水準にあり、民間向け融資金利も年率 20〜25% 程度(2025/05 時点)に達する。

送金・為替サービス

民間銀行や送金会社を通じて海外送金が可能。為替は変動幅が大きい場合があるため、定期的なレートチェックが望ましい。海外からの送金受領にも同様の書類提出が求められる。

フィンテック動向

携帯電話を用いた送金サービスやモバイルマネーの普及が進む。

小口決済に強みがあり、インターネット接続が限定的な地域でも電子決済の利用が拡大している。

8. 文化・商習慣・その他リスク

汚職・賄賂リスク

公的機関における汚職は完全には解消されていない。透明性の確保と適切なコンプライアンス体制の整備が重要となる。

治安・政情リスク

西アフリカの中では比較的安定した政治状況と評価されるが、都市部ではスリや詐欺などの犯罪被害が報告されている。選挙前後には政治的デモが活発化する場合がある。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

競争優位性・課題

ガーナは西アフリカ市場へのゲートウェイとしての利点があるが、インフラや電力供給が十分でない地域も多い。輸送コストや通関手続きの煩雑さが課題となり得る。

手続き難易度

法人設立や労働許可取得の手続きは一定の時間を要するが、他国と比較すると比較的整備されている。汚職防止のため、正規手続きの遵守が不可欠である。

ジンバブエ共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

国名・首都

ジンバブエ共和国(Republic of Zimbabwe)。

首都はハラレである。

通貨・為替

法定通貨はジンバブエ・ドル(ZWL)だが、過去のハイパーインフレにより米ドルなど複数通貨が流通し、事実上経済の8割以上が米ドル建てで運用されている。2024年4月には金担保の新通貨「ジンバブエ・ゴールド(ZiG)」が導入された。

為替レートは不安定であり、2024年12月平均で1 ZWL=約0.48円程度で推移した。

経済指標(2024年)

2023年の国民総所得(GNI)は約290億米ドル、一人当たりGNIは1,740米ドルである。

同年の実質GDP成長率は5.0%。インフレ率は近年極めて高く、2022年には104.7%に達した。

失業率は公式統計で8.8%(2023年)だが、実質的な失業・非正規率はそれ以上とみられる。

主要産業は農業(たばこ・綿花等)、鉱業(プラチナ・金など)および観光業である。

日本との関係

2000年代以降の政治・経済混乱で日本の政府開発援助(ODA)は一時停止していたが、近年一部再開された。貿易面では日本から中古車を含む自動車が多数輸出され、ジンバブエ国内で広く利用されている。

本政府はTICAD(アフリカ開発会議)等を通じ同国との経済関係強化に努めているが、日系企業の進出事例は限定的である。

2. 法人設立制度

法人形態

主な法人形態は私会社(Private Limited Company, 通常の有限責任会社)と私的事業法人(Private Business Corporation, PBC)である。

私会社は株主50名までで設立でき、取締役が最低2名必要となる。

私的事業法人は中小事業向けの制度で、1名から最大20名のメンバーで構成される法人形態であり、取締役ではなくメンバーによって運営される。私的事業法人のメンバーに国籍要件はなく、外国人のみでも構成可能である。

外国企業が現地支店(支店登記)として登記することも可能である。

外資規制

外資規制は2010年代に存在した「インディジェナイゼーション(先住民資本強制)」政策によって一時厳格であったが、2020年の法改正で全セクターにおける現地資本51%要件が撤廃された。現在は鉱業を含め外国企業が100%出資で事業を行うことが法的に可能であり、一般に特定業種での外資参入禁止や出資比率規制は確認されていない。ただし、運輸(大型貨物輸送)分野など一部で外国企業参入を制限する政策が打ち出される動きも報じられており、最新動向の確認が必要である(確認できないため詳細は記述を省略)。

政府は「Openness for Business」を掲げ、外資誘致を推進している。

資本金要件

ジンバブエでは会社設立時の最低資本金要件は法令上定められていない。実務上は定款に発行可能株式資本を記載し、少額(例:1ドル相当)から設立可能である。なお、登録資本額に応じて登録手数料が段階的に課される制度があり、高額の資本金を設定する場合はその分の登録料負担が生じる。

登記手続き

法人設立は企業登録局(Registrar of Companies)への登録によって行う。一般的な手続きは以下の通り

  • オンラインで商号の予約申請(候補名を5つまで提出)。
  • 定款類(私会社の場合は定款・会社登記フォーム、PBCの場合は定款に相当する書類)の作成。
  • 取締役・株主情報、会社所在地、事業目的など必要情報を準備し登録申請。
  • 所定の登録料の支払い(例:外国会社の支店登録は一律1,100米ドル)。
  • 登記官による審査・認可を経て会社設立証明書(Certificate of Incorporation)が交付される。

全手続きには通常数週間を要する。登記完了後は税務当局(ZIMRA)への納税者登録や事業許可の取得(業種による)も必要となる。

3. 税制度

法人税

法人所得に対する基本税率は25%である。さらに計算された法人税額に対して3%のエイズ税(AIDS Levy)が加算される。結果として実効税率は約25.75%となる。

特定分野には優遇税制があり、例えば特定の鉱業権者は15%、輸出加工企業は輸出比率に応じ15~20%の軽減税率が適用される。また、政府認定の投資案件では操業開始から最初の5年間法人税免税(0%)とする措置も存在する。

税務当局はジンバブエ歳入庁(ZIMRA)であり、決算期ごとの申告納税が義務付けられる。

付加価値税(VAT)

標準VAT税率は15%である。2023年1月の財政法改正により従来の14.5%から15%へ引き上げられた。

原則全ての財貨・サービスの国内供給に課税されるが、基礎食料品等の特定品目は非課税またはゼロ税率の対象となる。

VATは売上に対する付加価値部分に課税される仕入税額控除方式である。

ジンバブエ歳入庁(ZIMRA)の公表資料によると、過去12か月または今後12か月以内の課税売上高が合計6万米ドルを超える場合に、事業者はVATの登録義務が生じる。ZIMRAの指針上、要件を満たす事業者は速やかに登録申請を行い、登録完了後は所定のVATインボイスの発行や定期申告・納付を行わなければならない。

個人所得税

個人所得税は累進課税であり、課税所得に応じ段階的に税率が上昇する。最高税率は約40%で、加えて課税額に対し3%のエイズ税が課される。

給与所得に対する源泉徴収(PAYE)が主要な徴税手段となっており、税率や控除額は毎年の財政法で更新される。

なお、外貨建て収入(米ドル建て給与等)については物価変動を考慮し独自の課税表が適用されている。

その他の税金

その他主要な税目としては源泉徴収税や資本利得税、印紙税、関税・物品税等がある。

配当に対する源泉税は20%(非居住者配当)、利子や使用料等にも15~20%程度の源泉課税が定められている(租税条約により軽減される)。

資本利得税は資産譲渡益に対し5~20%程度の税率が課され、土地や株式の譲渡に適用される(保有期間等で変動)。

このほか、デジタル取引に対する税(Electronic Transactions Levy)及び2%の中間取引税(IMTT)がある。

4. 会計・監査制度

会計基準

全ての会社は国際会計基準(国際財務報告基準IFRS)を適用して財務諸表を作成することが法令で義務付けられている。1996年施行の公認会計士・監査人法に基づき、会計基準の設定は会計監査委員会(PAAB)が所管し、IFRSがそのまま国内基準として採用されている。

中小企業向けにはIFRS for SMEsの適用も認められている。

会計期間は通常暦年ベース(1月~12月)だが、会社定款で任意に定めることも可能である。

税務申告上は現地通貨建てでの帳簿記載が求められるが、ハイパーインフレ環境下では実務上外貨建て帳簿との換算調整が課題となっている。

監査要件

公開会社(上場企業)や公的利害関係者(PIE)に該当する企業は年度ごとに外部監査を受けることが義務づけられている。一方、非公開の私企業については、親会社が公開会社でない限り法定監査義務は免除されている。

監査基準は国際監査基準(ISA)が法的に採用されており、PAAB登録の公認監査人がISAに準拠して監査を実施する。

監査報告書および財務諸表は株主総会で承認された後、必要に応じ規制当局(証券委員会や中央銀行など)に提出される。

登録要件

ジンバブエで職業会計士・監査人として業務を行うには、PAAB(公認会計士・監査人委員会)への登録が必要である。PAABは会計士資格の付与・監督機関であり、全ての公認会計士(財務会計士、税務会計士、監査人等)を登録・規制している。また会計事務所自体もPAABまたは管轄官庁への開業登録が必要となる。

会社側には、一定規模以上の企業は財務担当責任者に有資格会計士を任命することが推奨されているが法定ではない。

財務諸表の提出

会社法(Companies and Other Business Entities Act)により、全ての会社は毎事業年度終了後に財務諸表(貸借対照表・損益計算書)および取締役報告書を作成し、株主総会で承認の上、所定の期間内に会社登録局へ提出する義務がある。

また年次の会社年次報告(Annual Return)も提出しなければならず、これには株主・役員情報とともに財務情報の届出が含まれる。未提出や期限遅延には罰金等の制裁が科される。

5. 労務制度

雇用契約

労働契約は原則書面によることが推奨され、常用従業員については労働法(労働法Chapter 28:01)により雇用条件を書面提示する義務が定められている。契約書には職務内容、賃金計算方法と支払間隔、労働時間、休暇、解雇手続き等を明記する必要がある。

雇用形態には期間の定めのない常用雇用のほか、有期契約、パートタイム契約、時間契約が認められている。試用期間(プロベーション)は慣行的に3か月程度設けられる。

最低賃金

全国一律の法定最低賃金は存在しない。労働大臣は業種ごとに最低賃金を定める権限を有し、実際には産業別団体交渉(National Employment Council; NEC)で合意された賃金テーブルが各業界の最低賃金水準となっている。例えば製造業や商業など主要セクターではNEC協約で職級別の最低給与額が定められており、これが法的拘束力を持つ。

未組織セクターについては政府の告示で最低賃金が指定されることもある(農業や家事労働等を除く一般労働者向けの最低賃金通知が過去に発出された事例があるが、最新状況は確認できないため詳細省略)。

なお年末賞与(ボーナス)の支給は法律上義務ではないが、一部の団体協約で13ヶ月目給与として定められることがある。

労働時間

通常の法定労働時間は労働法上明確な数値規定がなく、各産業別の団体協約や個別契約によって定められる。一般的には1日8時間・週40~45時間が標準的だが、シフト勤務者では1日12時間まで認める業種もある。

少なくとも週に連続24時間の休息日(週休)が全ての労働者に保証されており、これは法定で明文化されている。時間外労働(残業)は業種毎の協約で割増賃金率等が定められており、割増率は通常1.5倍~2倍程度である。管理職層は時間外手当の対象外とされることが多い。

解雇・退職

労働者の解雇には正当な理由(Just cause)が必要で、不当解雇は禁止されている。懲戒解雇の場合は事前に懲戒手続き(聞き取りや審問)の実施が求められ、労働者には弁明の機会が与えられる。経済的理由による整理解雇(レイオフ/リストラ)は「Retrenchment」と呼ばれ、事前に従業員代表への通知と労働省への申請が必要である。

2023年の労働法改正により、レイオフ時の退職パッケージ(法定最小解雇補償)が強化され、最低基準として勤続年数に応じた手当支給が義務化された。具体的には、法定最低補償として勤続1年当たり少なくとも給与数週間分(詳細額は法令参照)が支払われる。

定年については法定年齢の定めはない(公的年金の給付開始年齢は60歳)。

労働争議・労使関係

労働争議が発生した場合、当事者間協議→労働省認定の調停員(コンシリエーター)による調停→労働裁判所による裁定という多段階の紛争処理手続きが用意されている。ストライキは憲法上の権利として認められるが、合法スト実施には事前の通知期間遵守や争議手続きの完了が必要である。実際には高インフレ下の賃金目減りに対するストライキや抗議行動が頻発しており、教員組合や医療労組によるストが報じられている。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

政府は特別経済区(SEZ)制度を設け、指定区域やプロジェクトに対して各種の投資優遇措置を付与している。

SEZ認定企業には法人税免除(操業初5年間0%、以降15%)、配当の源泉税免除、輸出税・資本取引税の免除など大幅な税制優遇が与えられる。また輸入関税・付加価値税の免除(資本財の無税輸入)も適用される。

外資企業は案件単位でSEZライセンスを申請可能であり、要件として一定額以上の投資や雇用創出計画などが審査される(具体基準はZIDAの公表資料参照)。現在、首都ハラレ周辺や港湾都市ブルワヨ等に複数のSEZ指定区域が存在する。

加えて一般投資向けの奨励策として、新規投資の初期資本設備に対する減価償却特例(100%即時償却)や輸出収益に対する課税軽減などが提供されている。

投資促進機関

2020年に設立されたジンバブエ投資開発庁(ZIDA)が、対内投資促進のワンストップ機関として機能している。ZIDAは投資ライセンスの発給、SEZ指定管理、各種許認可の取得支援を一括して担い、海外投資家の窓口となっている。

ZIDA法では投資の保護(収用しない保証)や内外無差別待遇の原則が定められており、外資企業の権益保護を法的に裏付けている。また、経済省や商工会議所とも連携し、投資案件毎の課題解決や政府側折衝を代行する。

ビザ・労働許可

外国人がジンバブエで長期駐在・就労するには適切な居住許可(Residence Permit)および就労許可(Work Permit)が必要である。

投資家本人は「投資家居住許可(Class A)」の対象となり、通常10万米ドル以上の投資実績とZIDA発行の投資ライセンスを条件に付与される。

現地法人に雇用される駐在員・専門家は「就労許可(Class B)」を申請し、必要技能の現地不足を証明する書類や契約書等の提出が求められる。

許可の有効期間は1~3年程度で更新可能である。申請手続きは内務省入国管理局が所管し、ZIDAや現地弁護士が取得手続きを支援することもできる。

外貨規制

企業が国内で外貨収入を得た場合、その25%は中央銀行(RBZ)の定める公式レートで強制売却(現地通貨転換)しなければならない。また、国内で販売した商品・サービスの外貨収入については15%を同様に当局へ売却する義務がある。残余の外貨については企業の外貨口座に留保可能で、輸入代金決済や配当送金に充当できる。

配当や利益送金は100%送金自体は許可されているが、実務上は上記の強制転換による目減りや送金許可の遅延リスクがある。

為替レートは公式レートと並行市場レートの乖離が見られ、外貨の現地調達には困難が伴う。もっとも近年は外貨規制が緩和傾向にあり、以前は輸出収入の40%強制転換だったものが25%に緩和されるなど、投資資金の本国送還リスク軽減が進められている。

なお、銀行に外貨建て口座(FCA)を開設し、外貨を保有・利用すること自体は企業・個人とも認められている。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

現地で法人銀行口座を開設するには、会社設立証明書、定款、取締役会決議書、株主・役員身分証明、税番号などの書類を銀行に提出する必要がある。主要商業銀行(スタンダードバンク、スタンビック銀行、エコバンク等)は外資企業の口座開設に対応しており、通常は数日~数週間で開設可能である。

口座は現地通貨建てと外貨建て(FCA)の双方を開設でき、日常決済用には米ドル建てFCA口座が広く利用されている。

なお、外貨建て口座からの現金引出し額については中央銀行規制で上限や事前通知が求められる場合がある。またマネーロンダリング防止の観点から、UBO(最終実質支配者)情報の開示や最低預入金要件を課す銀行もある。

現地借入・金利水準

ジンバブエ国内の商業銀行からの借入は、インフレ率が高騰しているため金利水準も非常に高い。中央銀行政策金利は一時年200%に達し、市中貸出金利も年100%以上となった例がある(2023年時点)と報じられている。その結果、銀行融資は原則短期(180日以内)が中心で、長期融資(2年以上)はほとんど行われていない。

多くの企業は運転資金を自己資金や親会社からの社内ローンに依存している。外貨建てでの現地融資は限られるが、一部銀行では米ドル預金を原資とした融資商品も提供している。もっとも外貨融資の金利も年10~15%前後と周辺国に比べ高い水準である。

国際金融公社(IFC)など国際機関の融資枠も政治リスクから限定的である。

今後インフレ鎮静化により金利が低下すれば現地資金調達環境も改善が期待されるが、2024年時点では現地通貨建て借入は事実上困難である。

送金・為替サービス

海外送金は各銀行の国際決済ネットワーク(SWIFT)を通じて行う。配当送金やロイヤリティ送金にはRBZの事前承認が要るケースがあるが、外資規制緩和後は形式的な通知で済むことも多い。外貨不足が深刻だった時期には銀行が送金申請を受けても実行まで数週間待たされることもあった。現在は主要輸入用途の送金は比較的円滑に処理されているが、高額の資本送金は慎重な審査が行われる。

為替サービスについて、RBZが定期的にオークション方式で外貨売買を行い公式レートを形成しているが、市場実勢と乖離がある場合がある。企業は民間両替商(公式認可ディーラー)を通じてZWLとUSD等を交換できるが、取引額に上限がある。

なお、Western UnionやMoneyGramといった送金業者も国内に展開しており、小口送金にはそれらが利用される。

フィンテック動向

ジンバブエでは携帯電話を利用したモバイルマネーが非常に普及している。代表的なサービスは大手通信会社エコネット社の「EcoCash」で、ピーク時には国内決済の9割近くを占めたとも言われる(政府統計)。しかし政府は過去にインフレ対策としてEcoCashによる現金引出を停止する措置を取るなど、フィンテック分野にも規制介入が行われた。現在はQRコード決済やデビットカード決済が都市部で広く利用され、現金不足を補っている。

中央銀行は2022年に金貨(ゴールドコイン)を導入し、更に2023年にはデジタル通貨(ZiG)を発行するなど、独自のデジタル金融政策にも乗り出した。これらはインフレヘッジ策として導入されたが、市民の現地通貨不信を払拭するには至っていない。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

経済環境の不安定さから、契約条件(特に支払通貨や価格)が政府政策で変更を余儀なくされるリスクがある。またインフレによる商取引の混乱で、契約当事者が一方的な履行猶予や条件変更を求めるケースもみられる。

一般的にビジネス上の時間感覚は柔軟で、日本のような厳密な納期遵守意識は相対的に低い傾向がある。

汚職・賄賂リスク

汚職のリスクは高い。2024年の腐敗認識指数(CPI)では100点中21点と低得点で、世界180か国中158位と評価されている。官公庁での許認可取得や警察検問で賄賂が要求される事例も報告されている。政治上層部の汚職も慢性化しており、資源利権や公共調達を巡る不透明な取引が指摘されている。

治安・政情リスク

治安はアフリカ地域の中では比較的穏やかな方だが、経済困窮により窃盗や強盗事件は増加傾向にある。都市部では夜間の単独行動を避け、警備付きの移動を利用することが望ましい。

政治的には与党ZANU-PFによる長期政権が続き、選挙時に野党支持者との衝突や抗議デモが発生することがある。直近の2023年選挙後も野党から不正の指摘があり、一部で騒乱が起きた。政情不安が高まる局面では、当局が通信規制や夜間外出禁止令を発令する場合もあり、企業活動に影響を及ぼす可能性がある。

加えて経済政策の突然の変更(通貨制度や価格統制等)は常にリスクとして存在する。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

南アフリカ経由の間接的な進出形態が若干みられるが、本格的な製造拠点新設などの大型投資事例は見当たらない。日系商社もかつて鉱物資源開発の検討を行った例があるが、政治リスクから実現に至っていない。

競争優位性・課題

ジンバブエ市場での日系企業の競争優位性としては、高品質な製品やサービスへの信頼が挙げられる。例えば日本車は信頼性により中古市場でも高値を維持している。

一方、課題は通貨・経済の不安定性と複雑な規制環境である。頻繁な政策変更に対応できる俊敏性が求められ、加えて為替制限や価格統制により利益を海外送金できないリスクもある。

また欧米の対ジンバブエ制裁継続に伴い、国際金融決済や保険引受で制約を受ける場合がある。

現地の人的資源は識字率が約90%と高く高度技能者も多いため、うまく活用すれば人件費メリットと相まって競争力となる。ただし優秀な人材は国外流出もしやすく、人材定着策も課題となりうる。

手続き難易度

会社設立には9つの手続き・約27日間を要するとされる。加えて投資許可、税登録、労働許可、各種営業ライセンス取得など、多岐にわたる要件を満たす必要がある。ZIDAがワンストップサービスを提供しているものの、実務的には各官庁との調整が必要で申請フォローアップに神経を使う。

契約執行や債権回収に司法の支援を仰ぐ場合も、裁判所の手続き遅延がリスクとなる(訴訟は数年単位で長期化しやすい)。

総じて進出の事務負担は大きく、「ビジネスのしやすさ」ランキングでも同地域平均を下回っている(世界銀行Doing Business指標では下位に位置していた)。

南アフリカ共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

首都

  • 行政首都:プレトリア
  • 立法首都:ケープタウン
  • 司法首都:ブルームフォンテーン

人口

約6,200万人(2022年国勢調査)

公用語

公用語は英語を含む11言語。

通貨

南アフリカ・ランド(ZAR)

為替レートは1 USD=約18.5 ZAR(2025/05 月平均)

主要経済指標

GDPは約3,807億ドル(2023年)とサブサハラ・アフリカで第2位の規模を誇る。2023年の実質GDP成長率は0.6%と低迷し、インフレ率は6.0%(2023年平均)、失業率は約32%(2023年)と経済課題が大きい。

一方、輸出額は1,247億ドル、輸入額は1,234億ドル(共に2023年)で、主要輸出品は白金族金属・金・鉄鉱石・石炭・自動車など。

日本との関係では、南アフリカは日本企業のアフリカ最大の進出先であり、2023年時点で日系企業拠点数はアフリカ最多。日本は南アフリカの主要貿易相手国の一つで(南アの対日輸出品目は自動車等、対日輸入品目は白金族金属等)、経済協力や投資も活発である。

2. 法人設立制度

法人形態

南アフリカで事業を行うには、現地法人の設立または支店(外部会社)の登記が必要である。

現地法人の形態は主に公開会社(Ltd)と非公開会社(Pty Ltd)があり、一般的に日系企業は非公開会社形態を選択する。非公開会社は取締役1名から設立可能で株式譲渡に制限がある。公開会社は取締役3名以上が必要で株式を公開募集でき、証券取引所への上場も想定される。

外国企業が南アフリカで継続的事業を行う場合、現地法人化せずに支店(External Company)として登記する選択肢もある。

外資規制:

外資に対する包括的な持株規制はなく、南アフリカでは原則100%外資出資の法人設立が認められる。もっとも、産出資源への戦略や国益に絡む特定分野(例:鉱業権や農地保有など)では外国資本比率の制限や許認可条件が存在する場合がある。

また、黒人経済権限強化(B-BBEE)政策により、実質的な外資規制ではないものの、企業に黒人株主や従業員の登用を促す枠組みがあり、公共調達や特定産業ではB-BBEEで高評価の企業が優遇される。

資本金要件:

会社設立時の最低資本金の規制はなく、1ランドからでも法人を設立できる。出資金についても規制上の下限は定められていないが、事業規模に見合った適切な資本構成とすることが求められる。

なお、公開会社として株式上場する場合は取引所規則に基づく一定の資本要件や株主数要件を満たす必要がある。

登記手続き:

法人の設立登記は企業知的財産委員会(CIPC)で行う。まず会社名の予約申請を行い、定款(Memorandum of Incorporation)など所定書類を提出する。オンライン申請も可能で、登記完了までの所要期間は数日~数週間程度である。

登記完了後は南アフリカ歳入庁(SARS)への税務登録(法人税・VAT・給与税/PAYE等)や労働省へのUIF(失業保険基金)登録を行い、事業開始に必要な諸手続きを完了させる必要がある。また、事業分野によっては追加の営業許可や業種別ライセンスの取得が求められる。

3. 税制度

南アフリカの税務は南アフリカ歳入庁(SARS)が管轄し、主要な税目として法人所得税、付加価値税(VAT)、個人所得税などがある。以下に企業活動に関連する主な税制度を示す。

法人所得税(Corporate Income Tax):

税率は基本27%で、南アフリカ源泉の課税所得に対して課される(2023年3月以降開始事業年度より28%から27%へ引下げ)。内国・外国資本を問わず現地で事業を行う法人は原則として全所得にこの税率が適用される。

ただし、中小企業向けに税率軽減措置があり、年間売上高が2,000万ランド以下の小規模法人は課税所得に応じて0~27%の累進税率、それよりさらに小規模な零細企業(売上100万ランド以下)は一定額まで免税や低率課税(最大3%)が適用される特例がある。

なお、外国企業の南ア支店(外国会社)が本国へ利益送金する場合、追加の支店税はなく通常の法人税のみである。

源泉税(Withholding Tax):

南アフリカから非居住者へ支払われる所得には源泉徴収課税が行われる。配当金には20%の源泉税(Dividend Tax)が課され、利子およびロイヤルティには各15%の源泉税が課せられる。

南アフリカと日本の間には租税条約が締結されており、例えば日本の親会社が25%以上出資する子会社からの配当に対する源泉税は5%に軽減されるなど、一定の軽減措置が適用可能。

なお、サービス料等には基本的に源泉税はないが、建設工事など一部取引に対して例外的に課税が行われる場合がある。

付加価値税(VAT):

日本の消費税に相当する間接税で、標準税率は15%(2018年に14%より引上げ)。国内で供給されるほとんどの財貨・サービスに課税され、輸出取引や一部基本食品にはゼロ税率(0%)、金融・教育・住宅賃貸等特定分野は非課税となっている。

年間売上高が100万ZAR(ランド)超の事業者はVAT登録が法定義務となり、課税事業者(ベンダー)として定期的にVAT申告・納付を行う(月次または2ヶ月毎が一般的)。売上高5万ZAR超から任意登録も可能で、仕入VAT控除を受けるため小規模事業者でも任意登録を選択することがある。

個人所得税(Personal Income Tax):

個人の所得に対して累進課税が適用され、2023年度現在の税率は18%~45%である(最高税率45%は年間課税所得1,817,000 ZAR超部分に適用)。給与所得者の場合、雇用者が毎月PAYE(Pay-As-You-Earn)として源泉徴収し納税する仕組みになっている。

南アフリカ居住者は世界所得が課税対象となるが、一定の海外所得は非課税枠が設けられている。一方、非居住者は南アフリカ国内源泉の所得のみ課税対象となる。

給与所得に対しては雇用主・労働者双方から給与の1%ずつ失業保険拠出金(UIF)が徴収されるほか、雇用主は従業員訓練税(SDL)として給与総額の1%を別途納付する。社会保険料はそれらに限定的で、日本のような厚生年金保険は存在しない。

その他の税金:

上記のほか、南アフリカには資本的所得に対する課税としてキャピタルゲイン税(資本利得税)がある(法人の場合、資産譲渡益の80%を法人所得に加算し実質約21.6%の税率に相当)。

不動産を取得した際には物件価額に応じた移転税(Transfer Duty)が課され、一定額以下の住宅用不動産取引を除き累進税率(最大13%)が適用される。

また、鉱業権や天然資源の採掘にはロイヤルティ(Mining Royalty)が課される。

二酸化炭素排出量に応じたカーボン税も導入されており(2019年施行)、環境対策として排出企業に追加負担が生じる場合がある。

税制は頻繁に改正が行われるため、最新の税率や優遇措置については毎年度の予算発表を確認する必要がある。

4. 会計・監査制度

南アフリカの企業会計は国際水準に準拠しており、財務報告や監査に関する制度も整備されている。企業は適用区分に応じて国際会計基準を採用し、一定規模以上の場合は外部監査が義務付けられる。

会計基準:

南アフリカでは上場企業および大多数の非上場企業に国際財務報告基準(IFRS)が適用されている。

非公開会社など中小規模の企業については、IFRSを簡素化した「IFRS for SMEs(中小企業向け会計基準)」の適用が認められており、企業規模や利害関係者の状況に応じた会計処理が行われる。

いずれの場合も会計帳簿の調整・保存義務があり、年度ごとに財務諸表を作成することが法律で求められる。決算期は各社任意に設定可能だが、多くは12月末や3月末を年度末に採用している。

監査要件:

会社法により、全ての公開会社と一定規模以上の非公開会社には財務諸表の外部監査が義務付けられる。

監査要否はPublic Interest Score(PIS)と呼ばれる指標で判定され、PISは従業員数・売上高・負債・株主構成から算出される点数である。一般に、PISが350点を超える企業は強制監査の対象となり、PISが100~350点の場合も、財務諸表を社内で作成している場合には法定監査が必要となる。それ以外の中小企業でも、定款(MOI)や契約上の要請、自主的な選択により監査を受けるケースがある。

法定監査の対象とならない企業は、独立審査(Independent Review)と呼ばれる外部者による財務諸表レビューを受ける義務がある。ただし、株主=役員の同族会社でかつ年次財務諸表を社外の会計士に委託して作成している場合などは、監査・独立審査とも法定義務から除外される緩和措置も存在する。

なお、南アフリカにおける外国会社(支店)は原則として現地法上の監査・独立審査義務の対象外である。

登録要件:

監査業務を実施できるのは南アフリカ公認会計士(Chartered Accountant (SA))であり、かつ監査人登録機関(IRBA)に登録した監査人のみである。監査報告書には登録監査人の署名が必要となる。

独立審査を行うレビュー担当者も公認会計士など有資格者であることが求められる。

会計士・監査人の職業倫理は厳格に定められており、不正防止の内部統制やコンプライアンス体制の整備も企業の責務となっている。

財務諸表の提出:

全ての企業は会計年度末後、遅滞なく株主総会(年次総会)で財務諸表の承認を行い、所管官庁の要求に応じて提出できるようにしておく必要がある。特に公開会社や一定規模以上の企業は、CIPC(会社委員会)への年次報告として財務諸表を提出する義務がある。

上場企業は証券取引所規則により監査済み決算の適時開示も求められる。

これらに違反した場合、罰金や登記抹消等の制裁を受ける可能性があるため、適正かつタイムリーな財務報告が重要である。

5. 労務制度

南アフリカの労働法制は労働基準や雇用平等、労使関係に関する包括的な枠組みを提供しており、企業はこれらを遵守して人事労務管理を行う必要がある。主な事項として雇用契約、賃金、労働時間、解雇手続、労使関係などが法律で定められている。

雇用契約:

基本的就業条件は労働基準法(Basic Conditions of Employment Act)で規定されており、契約書には職務内容、給与、勤務時間、休暇、解雇通知期間などを明記する。契約形態は期間の定めのない常用雇用が原則で、有期契約はプロジェクトや代替要員など合理的理由がある場合に限られる。試用期間は3~6か月程度設けられることが多い。就業規則やハンドブックを整備し、企業内の勤怠・懲戒手続きを明文化しておくことも望ましい。

最低賃金:

南アフリカには全国一律の法定最低賃金が設定されている。2024年3月の改定後、最低賃金は時間額27.58 ZAR(ランド)となっており、フルタイム(週45時間)換算で月額約4,800ランド程度に相当する。農業や家事労働者等一部職種には別途最低賃金が規定されているが、一般企業で雇用する労働者には原則この全国最低賃金以上の賃金支払いが義務付けられる。

最低賃金は毎年見直されており、インフレ率等を考慮して政府が改定を行う。違反した企業には罰則が科される。

労働時間:

通常の法定労働時間は週45時間(1日あたり9時間〈週5日勤務の場合〉または8時間〈週6日勤務の場合〉)である。これを超える勤務は時間外労働(残業)となり、労使合意により週10時間を上限に認められる。時間外労働に対しては通常賃金の1.5倍以上の割増賃金を支払う義務がある(休日勤務は1.5倍、法定休日勤務は2倍の割増率が一般的)。

有給休暇は最低でも年15営業日(3週間)の取得が法律で保障されており、勤続12か月ごとに発生する。また病気休暇は3年間で30労働日分の権利が与えられ、出産休暇(4か月間の無給産休)や家族責任休暇(年間3~5日)も定められている。

これらの最低基準を下回る就業条件は無効となる。

解雇・退職:

労働関係法(Labour Relations Act)により、従業員の解雇には公正な理由(業務上の不適格・規律違反、能力不足、経営上の都合など)と公正な手続きが求められる。不当解雇と判断された場合、従業員は調停仲裁機関(CCMA)や労働裁判所に提訴し、復職命令や補償金支払いが命じられる可能性がある。解雇時の通知期間は勤務年数に応じて1~4週間以上必要である(試用期間中を除く)。

経営悪化等による整理解雇(経済的理由の解雇)の場合、30日前通知に加え、勤続1年当たり最低1週間分の法定退職手当(Severance Pay)を支払う義務がある。

定年年齢に関する法律上の規定はない。

労働争議・労使関係:

南アフリカの労働組合組織率は比較的高く、特に鉱業、製造業、公共交通などでは強力な全国単一労組が存在する。労使紛争が生じた場合、まずCCMA(労働争議調停・仲裁委員会)での調停を経て、解決しない場合に合法的なストライキまたはロックアウトに発展することがある。

ストライキは手続遵守の下で認められた権利であり、毎年労働者による大規模なストが発生している(賃上げ争議が中心)。企業は団体交渉協定に基づき年1回程度の賃金改定交渉を行うケースが多く、労使関係の安定には労組との建設的な対話が重要である。

また、雇用平等法(Employment Equity Act)により、従業員50名超の企業等には黒人や女性など被差別層の積極登用を図る雇用平等計画の策定・報告義務が課されている。これはB-BBEE政策の一環でもあり、人種・性別の多様性確保が企業の社会的責務と位置付けられている。違反時には罰金等もあり、人事制度上も留意が必要である。

6. 外国人進出企業向け制度

南アフリカ政府は海外からの投資を促進するため、企業進出を支援する各種制度や優遇策を用意している。特別経済区でのインセンティブや投資促進機関のサポート、外国人の就労ビザ制度、外為規制の枠組みが主なポイントである。

特別経済区と投資優遇:

政府は国内数箇所を特別経済区(SEZ: Special Economic Zone)に指定し、新規投資に対して税制優遇やインフラ提供などのインセンティブを与えている。例えば、一部SEZでは法人税率の優遇(15%への引下げ)や設備投資減税、関税の免除措置などが適用される。

また、製造業や農業、観光業など特定産業向けにも、補助金や融資制度、減税措置といった支援策が講じられている。

これらの制度を活用することで、外国企業は初期投資コストの低減や操業環境の改善が期待できる。ただし、優遇措置の適用には事前認可や実績報告など所定の要件を満たす必要がある。

投資促進機関:

南アフリカ政府は「南アフリカ投資促進機構(InvestSA)」を設置し、外国企業の現地進出をワンストップで支援している。InvestSAでは投資案件の相談対応、必要許認可取得手続の調整、関係当局との調整や現地ビジネスパートナー紹介などのサービスを提供している。

また、各州にも投資開発公社(例えばハウテン州のGEDAや西ケープ州のWesgro等)があり、地域ごとの投資情報提供や誘致活動を行っている。これら公的機関を通じて、進出企業は行政手続の円滑化や各種情報提供などの支援を受けることが可能である。

ビザ・労働許可:

一般就労ビザ(General Work Visa)

2024年10月の改正によって、一般就労ビザには新たにポイント制が導入された。下記のような項目を数値化し、一定の合計ポイントを満たす必要がある。

  • 学歴・専門資格
  • 実務経験年数
  • 年収(給与水準)
  • 南アフリカ人従業員への技能移転計画の有無
  • 雇用契約期間

高い給与水準や特定分野の先端スキルを有する応募者にはポイントが加算されるため、条件を満たせば比較的短期間で承認が得られる可能性もある。一般就労ビザの滞在可能期間は原則5年である。

高度技能ビザ(Critical Skills Work Visa)

南アフリカ政府の定める欠乏技能リスト(Critical Skills List)に合致する職種で、必要学歴・実務経験を有する外国人が対象となる。2024年10月改正でリスト内容が見直され、一部のIT・医療・エンジニアリング分野が追加された。改正後は、雇用先未定での申請は不可とされ、南アフリカ国内企業との雇用契約が申請時点で必須となる。ビザの有効期間は最大5年で、更新も可能である。

社内転勤ビザ(Intra-company Transfer Visa)

海外本社から南アフリカ法人へ出向・転勤する駐在員向けのビザである。2024年10月改正で、最長滞在期間が4年から5年に延長された。延長を申請する場合、当初の転勤期間中に現地スタッフへの技能移転を適切に実施した実績を証明する必要がある。グループ会社間の異動であれば比較的取得しやすいが、雇用契約企業が明確に親子関係にあることが前提条件となる。

リモートワークビザ(Remote Work Visa)

同改正で新設されたビザ区分で、南アフリカ国内に居住しつつ、海外の雇用主やクライアント向けにリモート就労する外国人が対象である。滞在可能期間は1年が基本だが、一定要件を満たせば最長2年まで延長可能となる。ただし、このビザでは南アフリカ国内企業との雇用契約や対価受領は認められない。申請には、海外との就業契約や十分な収入証明、居住先情報などを提出する。

その他の留意点

いずれのビザも南アフリカ大使館・領事館での事前申請が必要で、審査には数か月を要する場合がある。短期の商用訪問(90日以内)に関しては、日本を含む一部国の国民がビザ免除の対象となるが、会議や商談などに限定され、現地企業での就労は認められない。
改正内容は今後も追加的に見直しが行われる可能性があるため、最新の要件やポイント制の基準を常に確認し、十分な準備期間を確保して申請する必要がある。

外貨規制:

南アフリカ準備銀行(中央銀行, SARB)はAuthorized Dealerと呼ばれる市中銀行を通じて資金の流出入を統制しており、外国企業が利益送金や資本撤収を行う際には所定の報告・承認手続きが必要となる。

具体的には、現地法人が本国親会社へ配当金やロイヤルティ送金を行う場合、SARB指定の銀行にて利益計上や納税が適切に行われたことの証明を提出し、送金承認(Tax Clearance)を取得する必要がある。

また、親会社から現地法人への増資や社内貸付についても事前にSARBへの届け出を行い、後日の資本送還時に備えておくことが求められる。

外為規制下ではランド建て通貨の持ち出し制限などもあるが、近年は段階的な規制緩和が進められており、合法的な投資収益の本国送金は概ね保証されている。

もっとも、通貨危機時等には規制強化のリスクも考慮し、資金計画には余裕を持たせることが望ましい。

7. 金融・資金調達制度

南アフリカの金融システムはアフリカで最も発達しており、銀行取引や資金調達の環境は比較的整っている。もっとも、金利水準は日本に比べ高く、為替変動リスクも大きいため、資金計画において留意が必要である。

以下、金融実務上の主要ポイントを解説する。

銀行口座開設:

現地で法人活動を行うには南ア国内の銀行で口座を開設する必要がある。南アフリカの主要銀行(スタンダード銀行、ファーストランド銀行、ABSA銀行、ネッドバンク等)は世界的に信用力が高く、都市部に支店網を持つ。小切手文化は縮小傾向にあり、振込(EFT)やモバイル決済が主流である。

口座開設時には会社登記証明書(MoIやCIPC発行の証書)、役員・口座署名者の身分証明(パスポート)および居住住所証明、税番号(SARS発行の納税者番号)などの提出が求められる。これはFICA(金融情報センター法)に基づく厳格な顧客確認手続き(KYC)であり、マネーロンダリング防止の観点から必須である。口座開設プロセス自体は数日~数週間で完了し、インターネットバンキングや各種決済サービスの利用が可能となる。

現地借入・金利:

南アフリカの金融市場は発達しており、海外企業でも与信条件を満たせば現地金融機関からの借入が可能である。もっとも政策金利(レポレート)は直近で7.50%(2025/05時点)と高く、市中銀行の最優遇貸出金利(プライムレート)は約11%前後と金利負担は大きい。企業向け融資では不動産・在庫など資産担保や親会社保証が求められる場合が多い。

設備投資案件では開発金融機関(産業開発公社IDCなど)や政府系の低利融資制度を利用できる可能性もある。近年は金利高騰を背景に社債発行や本国からの社内融資で賄う企業もみられるが、本国からの貸付金は外貨規制上SARB承認を要し、利子支払いにも15%の源泉税が課される点に留意が必要である。

送金・為替:

南アフリカ・ランド(ZAR)は変動相場制で取引されており、対主要通貨で変動が大きい。

2010年代以降、ランドは資源価格や国際金融情勢の影響を受けやすく、対米ドル相場は10年で約2倍に下落するなど乱高下を経験している。為替リスク管理のため、現地銀行はフォワード為替やデリバティブ商品によるヘッジ手段を提供しており、輸出入取引の決済時期に合わせてレートを固定する企業も多い。

国外への送金は前述のとおり中央銀行管理下で可能であり、適切な手続を踏めば配当・ライセンス料・債務返済等を本国送金できる。資金移動にはSWIFTを利用した国際送金が一般的で、送金所要日は日本宛で2~5営業日程度である。外貨規制により一度に持ち出せる額など制約はあるものの、事業運転上通常必要となる範囲で大きな障害はない。

為替手数料や送金コストは日本より割高な場合が多く、契約通貨や支払条件の設定にも工夫が求められる。

フィンテックの活用:

南アフリカでは銀行サービスの電子化が進んでおり、法人・個人ともにインターネットバンキングやモバイル送金が広く普及している。

主要銀行のスマートフォンアプリで口座残高確認から振込、支払まで完結可能で、企業も給与振込や仕入支払をオンラインで効率的に行っている。

近年はフィンテック企業の台頭も著しく、電子ウォレットやQRコード決済(例:SnapScanなど)、ECプラットフォーム向け決済代行サービスなど新しい金融サービスが登場している。

暗号資産やブロックチェーンを用いた送金も試験的に行われ始めている。

金融当局も革新的サービスに理解を示し、規制サンドボックスを通じてフィンテック育成を図っている。

総じて南アフリカの金融制度は信頼性が高く、最新テクノロジーも取り入れながら進化している。

8. 文化・商習慣・その他リスク

南アフリカでビジネスを行うにあたっては、現地独特の商習慣や潜在的リスクへの理解が欠かせない。契約交渉のスタイルや倫理観、治安情勢など、日本とは異なる側面を事前に把握し適切に対応することが重要である。

契約文化:

南アフリカのビジネスは基本的に英米法の流れを汲む商習慣にあり、契約の成立・履行には書面(契約書)の取り交わしと当事者間の合意内容の明確化が重視される。口約束や暗黙の了解に依存することは少なく、契約書には取引条件・納期・支払条件・責任分担・紛争解決条項(調停や仲裁の合意事項)まで詳細に規定されるのが一般的である。

汚職リスク:

国有企業を巡るいわゆる「国家の私物化(State Capture)」問題など腐敗スキャンダルが過去に大きく報じられ、企業が官公庁と取引する際には不透明な要求に直面する可能性が指摘されている。国際NGOの透明性国際による腐敗認識指数(CPI)では南アフリカは41(100点満点中、2023年)となっており、主要先進国と比べスコアは低い。

治安・政情:

南アフリカは政権交代も安定した民主主義国家である一方、治安面では凶悪犯罪の多発する国でもある。特にヨハネスブルクやプレトリア等の都市部では強盗、車の窃盗、侵入盗、誘拐といった犯罪が日常的に発生し、邦人を含む外国人も被害に遭うケースが報告されている。企業としてはオフィスや工場にセキュリティシステムや警備員を配置し、従業員の通勤にも安全対策を講じる必要がある。夜間の徒歩や治安の悪い地域への立ち入りは避け、自動車移動時もドアロックや停車時の警戒を怠らないことが肝要である。

政治情勢については、長年与党ANC(アフリカ民族会議)による政権運営が続き大規模な政治混乱は起きていないものの、近年は経済低迷や汚職問題から政権への批判が高まっている。2024年の総選挙ではANCの得票率が過半数割れし、今後の連立政権誕生や政策の不透明感が指摘される。

加えて、国家電力会社Eskomの経営難に起因する電力不足は深刻で、2018年頃より全国規模で計画停電(ロードシェディング)が常態化している。電力制約は工場稼働や店舗営業に直接影響し、治安悪化や追加コスト(自家発電機やUPS設置等)を招く大きなリスクとなっている。

パートナー選定上の留意点:

日系企業が現地企業や代理店と提携する際には、慎重な相手先選定と契約上の担保が重要となる。進出初期には現地事情に通じたローカルパートナーの協力が有益だが、相手先の信用度や実績、人脈に過度に依存しすぎないよう注意すべきである。提携前にデューデリジェンス(財務内容や評判の調査)を実施し、契約書で権利義務や知的財産の扱い、損害賠償条項などを明確化することで、後のトラブルを防止できる。

また、B-BBEE政策の下では黒人株主持分や現地経営参画が企業評価に影響するため、官民問わずビジネスを円滑に進める上で信頼できる黒人パートナーとの提携は大きなメリットとなり得る。

ローカル企業の中には政界との太いコネを売りにするケースもあるが、腐敗リスクを伴う提案には毅然と対応する必要がある。

9. 実務ポイント・進出のしやすさ

日系企業の進出事例:

南アフリカにはトヨタ自動車や日産自動車をはじめ、日本の製造業・商社・金融機関など多種多様な企業が進出している。トヨタはダーバン近郊の工場で乗用車を生産し、現地市場だけでなく欧州や日本向けにも輸出する成功事例として知られる。また建設機械のコマツは現地法人を設け鉱山向け重機販売・サービスで大きなシェアを有している。商社各社も資源・インフラプロジェクトに参画し、みずほ銀行や三菱UFJ銀行などメガバンクもヨハネスブルクに拠点を置く。

2023年時点で日系企業拠点数はアフリカ最多であり、業種も製造業から卸売・物流、サービスまで幅広い。現地法人の業績も概ね好調で、JETROの調査によれば在南ア日系企業の実に8割以上が2024年の業績見通しを「黒字」と回答している。このように多数の先行企業が培った知見やネットワークがあるため、新規進出企業にとって心強い土壌が整っているといえる。

南ア市場の魅力と課題:

南アフリカは豊富な鉱物資源と工業基盤、購買力のある中間層人口を抱え、アフリカでは突出した経済規模を持つ。有力企業の本社が集積するヨハネスブルクは“アフリカの経済首都”とも称され、南部アフリカ開発共同体(SADC)加盟国へのゲートウェイとしての地位を占める。

インフラ面では港湾・空港や幹線道路、通信網が比較的整い、サプライチェーンの構築もしやすい。また、ビジネス上の使用言語が英語であり法制度も整然としていることから、外国企業にとって事業展開しやすい市場環境が整っている。

一方で課題も存在し、近年は経済成長の鈍化や慢性的な電力不足、高失業率に伴う治安不安などが投資マインドの阻害要因となっている。

また、国内市場規模(GDP約3,800億ドル)は先進国に比べれば限定的であり、高級耐久消費財など一部を除き購買力は中所得国水準に留まる。

アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)発効により域内市場の一体化が進む中、南アだけでなく周辺国も含めた広域展開戦略が求められる局面でもある。

総じて、南アフリカは 「アフリカ市場参入の足掛かり」 としての優位性を持ちながら、内在する経済・社会課題への対処も必要な市場といえる。

進出手続の難易度:

南アフリカのビジネス環境は法制度が整っており行政サービスも比較的充実しているため、途上国の中では進出手続は平易な部類に属する。会社設立登記はオンラインで完結可能、税務登録も電子申請が整備されている。ただし官公庁によっては処理に時間を要するケースもあり、例えば労働ビザの取得には数ヶ月単位の時間を見込む必要がある。

南ア政府はInvestSAによるワンストップショップを設けて手続簡素化を図っているので、進出準備段階から同機関に相談することで各種申請を効率化できる。またJETROや現地商工会議所などの支援機関からも手続情報を得られる。

全般として、進出のしやすさはアフリカ諸国の中でトップクラスではあるものの、日本や先進国に比べれば官僚手続は煩雑で、意思決定のスピード感も緩やかである。従って、余裕を持ったスケジュール計画と専門家のサポート活用が円滑な立ち上げのポイントとなる。

ナイジェリア連邦共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

国名・首都

ナイジェリアの正式名称はナイジェリア連邦共和国である。

首都はアブジャであり、国土面積は約 92 万平方キロメートルである(2024 年時点推計)。

通貨・為替

通貨はナイラ(NGN)である。

為替レートは 1 USD=460 NGN(2025/05 月平均)で推移している。

ナイジェリア中央銀行は公式レートを維持する方針を掲げるが、実勢と差が生じる場合がある。

経済指標

人口は約 2 億 2,500 万人(2024 年時点推計)でアフリカ最大規模である。

名目 GDP は約 4,800 億米ドル(2024 年推計)とされ、アフリカ最大の経済規模を持つ。

経済は原油輸出に依存する一方、農業やサービス業の比重が拡大し、多様化が進んでいる。

日本との関係

自動車や電子機器を中心とする輸入が多く、日本からは主に工業製品・機械類などが輸出される。日本企業の進出は製造業のみならず、商社やサービス業にも拡大傾向にある。

政治的にはアフリカにおける主要国として二国間協力が継続され、インフラ整備をはじめとした開発協力が行われている。

2. 法人設立制度

法人形態

一般的な形態として有限責任会社(Private Limited Company)と公開会社(Public Limited Company)がある。ナイジェリアでは外国資本が全額出資する法人の設立も認められている。支店や駐在事務所の形態をとる場合は、商業活動や納税義務の範囲が限定されるため、進出目的に応じた検討が必要である。

外資規制

原則として外資規制は緩やかであり、ほとんどの業種で 100% 外資が認められる。しかし石油・ガス、一部鉱業や通信など戦略セクターでは特定のライセンスが必要となり、技術移転や現地人材育成を義務付けられる場合がある。

また投資総額が大きい場合は、ナイジェリア投資促進委員会への届け出が推奨される。

資本金要件

有限責任会社の法定最低資本金は比較的低額であるが、事業分野によっては当局が追加の最低資本金額を設定しているケースがある。公開会社はより高額の資本金要件を課される。

また、外国人株主が資本金を送金する際には、送金証明書の取得や外貨規制への対応が求められる。

登記手続き

法人登記はナイジェリア企業局(Corporate Affairs Commission)を通じて行う。

大まかな流れは以下のとおりである。

  • 会社名の事前予約
  • 定款(Memorandum and Articles of Association)や取締役情報の提出
  • 登録手数料の支払い
  • 登録証明書(Certificate of Incorporation)の発行

登記完了後は、連邦内国歳入庁(Federal Inland Revenue Service)で納税者番号(Tax Identification Number)を取得する。銀行口座開設や各種ライセンス取得の際にも TIN が必要となる。

設立までに要する期間は書類準備が整っていれば 2〜4 週間程度だが、提出書類の不備などにより延長する場合がある。

3. 税制度

法人税

ナイジェリアの法人税(Company Income Tax)は標準税率が 30% である。石油・ガス関連企業については石油利益税(Petroleum Profits Tax)が課され、税率が高く設定されている。

年度決算後 6 か月以内に確定申告を行い納付する必要がある。中間納付制度があり、通年での分割納付が求められる場合もある。

売上規模の小さい法人には一部軽減税率が適用される制度も存在する。

付加価値税(VAT)

付加価値税の標準税率は 7.5% である。

国内取引全般に広く課税され、サービス提供も課税対象となる。一定の食料品や医薬品などは非課税扱いまたは軽減措置が認められる。

課税事業者は毎月の申告・納付が義務付けられており、申告内容の正確性が監査で確認される場合がある。

個人所得税

個人所得税は累進課税で最高税率は 24% 前後である。

外国人駐在員もナイジェリア国内源泉所得については課税対象となる。

一般的に給与支給時に源泉徴収が行われ、雇用主が取りまとめて納付する(Pay-As-You-Earn 制度)。滞在日数や雇用契約の内容によっては、納税義務が発生しない場合もあるため、駐在開始時に確認が必要である。

その他の税金

関税や印紙税、資本利得税(Capital Gains Tax)などの間接税がある。

州政府や地方自治体レベルでも商業活動税や看板広告税などが課される場合があり、地域によって税率やルールが異なる。

税務当局による監査や調査が定期的に行われるため、記帳と申告を厳密に行い、根拠資料を保管しておくことが重要である。

4. 会計・監査制度

会計基準

ナイジェリアでは国際財務報告基準(IFRS)の導入が進み、公開会社や大企業に対しては完全適用が義務付けられている。

中小企業については IFRS for SMEs を適用可能とする制度が整備されているが、外資系企業の多くは国際的な整合性を重視してフル IFRS を採用している。

監査要件

すべての有限責任会社は公認会計士(Chartered Accountant)の監査を受けなければならない。監査法人はナイジェリア会計士協会(Institute of Chartered Accountants of Nigeria)やナイジェリア国家会計士協会(Association of National Accountants of Nigeria)に登録されたメンバーが運営する事務所でなければならない。

上場企業や大企業は、金融報告評議会(Financial Reporting Council of Nigeria)のガイドラインに従い、より詳細な監査報告書を求められる。また、内部統制やリスク管理体制が整備されているかも評価の対象となる。

登録要件

監査法人や会計事務所の選任は株主総会の決議事項である。初回監査時には監査人の選任を正式に決議し、その後継続的に任命する場合も毎年再任手続きが必要となる。交代の際には適切な引継ぎや通知が義務付けられており、監査の中立性・独立性を確保する仕組みが整えられている。

財務諸表の提出

法人は事業年度終了後一定期間内(一般的には 6 か月程度)に財務諸表を作成し、企業局(Corporate Affairs Commission)へ提出する。提出書類には監査報告書や取締役報告書、株主総会議事録などが含まれる。公的申告に際しては英語での作成が求められる。

また、納税の観点では連邦内国歳入庁(FIRS)への法人税申告が必要であり、監査後の財務諸表が申告計算の基礎となる。監査で修正が生じた場合は、財務諸表と税務申告の整合性を確保しなければならない。

企業規模や業種、上場の有無により詳細な開示が追加で求められる場合がある。

5. 労務制度

雇用契約

書面による雇用契約を締結することが原則である。契約には職務内容、就業場所、報酬、労働時間、試用期間などを明記する。試用期間は通常 3〜6 か月程度で設定される場合が多い。外国人駐在員を雇用する場合は、就労許可条件に合致した契約内容とする必要がある。

最低賃金

2024 年時点の全国最低賃金は月額 30,000 NGN である。高いインフレ率や地域差を踏まえ、都市部や特定の業種では上乗せ交渉が一般的である。また、大手企業や外資企業では最低賃金を大きく上回る設定とする傾向がある。

労働時間

一般的な週労働時間は 40〜48 時間である。時間外労働に対しては割増賃金を支払うことが義務付けられている。労働法上、過度な残業を強要することは禁じられており、安全衛生面での配慮も求められる。

解雇・退職

解雇するには正当な理由を示すことが必要であり、事前通知(通常 1〜3 か月)や解雇手当の支払いが義務付けられる場合がある。労働組合が強い業種では、団体交渉や組合規約による解雇手続きが厳格化される。定年退職年齢は公的セクターを中心に 60 歳前後とされるが、民間企業は契約により自由に設定可能である。

労働争議・労使関係

労使間に紛争が生じた場合、労働省や調停機関が介入し、話し合いによる解決を促す。

ストライキは合法とされるが、公共の安全や公共サービスに重大な影響を与える分野(公共交通、電力など)では制限がある。

労働組合は産業別や企業別に組織されており、賃金・労働条件の集団交渉を行う。

社会保険制度

公的年金制度(Contributory Pension Scheme)は、企業・従業員双方が一定割合(企業が 10%、従業員が 8% など)を拠出する仕組みとなっている。

企業規模や業種により、健康保険や労災保険への加入が義務付けられる場合がある。

企業は、法令で定められた期間内に適切な届出と拠出を行わなければならない。

休暇制度

有給休暇は労働法で最低日数が定められており、1 年間の継続勤務につき 6 日以上が原則とされる。ただし外資系企業や大手企業では自社規定を定め、より長い休暇を付与するケースが多い。

産休・育児休暇についても労働法に規定があり、女性労働者には一定期間の有給産休が認められる。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

一部の自由貿易区(Free Trade Zone)では、法人税や関税の減免措置、輸出入手続きの簡素化などが適用される。また、加工貿易を促進するためのインフラ(工業団地、電力供給など)も整備されている。

投資促進機関

ナイジェリア投資促進委員会(NIPC)は、外国投資家に対して投資情報の提供、各種許認可の手続き支援を行う。投資規模や業種に応じて、税制上の特典やインセンティブを受けられる場合がある。主要官庁との連携窓口としても機能し、事業拡大に際する追加登録やライセンス取得のサポートを提供する。

ビザ・労働許可

外国人がナイジェリアで就労するには、事前に企業が移民局へ労働許可の申請を行う必要がある。経営幹部や専門職が対象となる「Subject to Regularization (STR) ビザ」や、短期プロジェクト向けの「Temporary Work Permit (TWP)」など、滞在目的に応じてビザ種別が異なる。許可期間満了前に更新手続きを行わなければならない。

外貨規制

中央銀行が為替管理を行っており、正規の手続きを踏めば配当送金や投資元本の回収は原則自由である。

外国人投資家は資本輸入証明書(Certificate of Capital Importation)の取得を通じて、事業で得た利益や資金を本国へ送金できる。ただし、為替不足や規制強化による送金遅延が発生する場合があるため、十分な外貨準備と計画的なキャッシュマネジメントが重要である。

その他投資優遇策

投資促進委員会や産業貿易投資省が指定する重点産業(農業、ICT、製造業など)に対しては、一定期間の法人税免除(Pioneer Status)などの特典が与えられる制度がある。

適用を受けるためには詳細な事業計画書の提出や現地雇用の創出が必須であり、承認プロセスには時間を要する。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

法人設立後に商業銀行で口座を開設する場合、登記証明書、定款、納税者番号(TIN)、取締役の身分証明書などの書類が必要である。銀行によっては現地取締役の面談が必須となる。審査期間は通常数週間だが、提出資料に不備がある場合はさらに時間を要する。

現地借入・金利水準

ナイジェリアの金融機関は貸出金利が比較的高く、年率 10〜20% 程度が一般的である。信用リスクや担保状況に応じて金利は変動し、借入の際には土地・建物など不動産担保や社債発行による補完が求められる場合がある。

送金・為替サービス

大手銀行では外国送金や為替予約サービスを提供しており、事前に資金繰り計画を立てることで為替変動リスクを軽減できる。ただし、外貨不足の影響で送金が遅延するリスクがあり、企業は複数の金融機関を利用しながら流動性を確保する必要がある。

フィンテック動向

モバイル決済やオンライン融資サービスが都市部を中心に急速に普及しており、国内外の投資家がこの分野に注目している。電子ウォレットや QR コード決済などのサービスを提供するスタートアップ企業が増加し、銀行を介さない資金決済手段が拡大している。

資金調達の多様化

ナイジェリア証券取引所(NGX)への上場や社債発行など、公的マーケットを利用した調達手段が存在する。特に大規模プロジェクトやインフラ事業では、国際機関や開発銀行からの融資や保証枠を活用する例がある。

中小企業向けにはマイクロファイナンス銀行などが少額資金を提供しており、起業支援策として活用されている。

8. 文化・商習慣・その他リスク

汚職・賄賂リスク

汚職は依然として深刻な課題であり、一部の公的機関や業務過程で賄賂要求が生じるリスクがある。現地法令と企業コンプライアンス規定を順守し、違法行為を避けるための対策が必要である。

治安・政情リスク

地域によって治安状況が異なる。特に北東部では過激派によるテロ活動が懸念される。政情は比較的安定しているが、定期的に発生する民族や宗教対立に注意が必要である。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

競争優位性・課題

豊富な人口を背景に消費市場は拡大しつつあるが、インフラ整備の遅れや電力事情の不安定さが課題となる。ICT や農業関連技術など日本企業の強みを活かせる分野も多い。

手続き難易度

企業登録や税務手続きは電子化が進展しているが、実務上は提出書類や監査要件が多く、担当官との交渉に時間を要する場合がある。

コートジボワール共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

国名・首都

コートジボワール共和国

首都はヤムスクロである。主要な経済・商業都市はアビジャンである。

通貨・為替

通貨は西アフリカ CFA フラン(XOF)を採用している。

1 USD = 約 600 XOF(2025/05 月平均)。ユーロとの固定相場制度がとられている。

経済指標

  • 人口:約 2,800 万人(2024 年)。
  • 名目 GDP:約 750 億 USD(2024 年推定)。
  • 主な産業は農業(カカオ、コーヒー)と石油製品、サービス業などである。
  • 政府はインフラ開発と産業多角化を推進している。

日本との関係

日本との外交関係は良好である。日本企業によるインフラ整備や農産物取引など、経済・技術協力が行われている。特にカカオ豆、コーヒーなどの農産物輸入が多い一方、自動車や機械類の輸出も徐々に増加している。

2. 法人設立制度

法人形態

代表的な法人形態としては、株式会社(SA)と有限会社(SARL)がある。さらに、支店(Branch)や駐在員事務所(Liaison Office)の設立も可能である。

  • SA(Société Anonyme):大規模事業に適している。株式譲渡の自由度が高い。取締役会の設置義務があり、取締役の人数や監査役の設置が求められる場合がある。
  • SARL(Société à Responsabilité Limitée):中小規模事業に多い。株式(持分)の譲渡には既存株主の同意が必要となる。取締役会の設置義務はない。
  • Branch(支店):本社がコートジボワール国内で行う事業活動を管理するための拠点であり、現地法人としての独立した法人格を有しない。契約行為や納税義務は本社名義で負うことが多い。
  • Liaison Office(駐在員事務所):情報収集・市場調査など限定的な活動のみを行う事務所であり、直接の商取引を行わないことが原則である。

外資規制

特定の戦略セクター(鉱業、電力、通信など)では免許や許可が必要であるが、原則として外資企業の 100% 出資も認められている。外国資本に対し最低出資比率や現地パートナーの強制参加を求める制度は大幅に緩和されている。ただし、公共インフラや公益事業などでは政府機関との協議が必要となる。

資本金要件

  • SA(株式会社):最低資本金は 1,000 万 XOF。現金出資や現物出資が認められる。設立時には資本金の一定割合を金融機関の専用口座に払い込む。
  • SARL(有限会社):最低資本金は 100 万 XOF。設立登記前に最低 50% 程度を払込むことが一般的である。追加出資や増資手続きは公証人を通じて行う。

登記手続き

  1. 社名の予約:商業登記所へ申請し、重複のない商号を確認する。
  2. 定款の作成・認証:公証人が起案または確認し、資本構成や事業目的を明記した定款を認証する。
  3. 銀行口座開設・資本金払込:定款認証後、仮口座に資本金を払込み、払込証明書を取得する。
  4. 商業登記所への登録:登記申請書に定款、公証証書、払込証明書などを添えて提出する。
  5. 税務登録:納税者番号(NIF)の取得や付加価値税(VAT)番号の登録が必要となる。
  6. 社会保障機関への登録:従業員を雇用する場合は社会保険機関(CNPS)などへの登録を行う。

手続き完了までの目安期間は 2〜3 週間程度であるが、書類不備や認証手続きに時間を要する場合はさらに長期化する。商業登記所や公証人費用、印紙代、登録手数料など初期費用が数十万 XOF〜数百万 XOF 規模で発生する。


3. 税制度

法人税

法人税率は 25%(2024 年時点)である。

課税所得は、フランス語圏西アフリカ会計基準(OHADA 会計基準)に基づく企業利益をベースに加減算調整して算出する。

決算期末から 4 か月以内に法人税確定申告を行い、納税をする。

事業開始から一定期間の繰越欠損(数年間)が認められる。

付加価値税(VAT)

標準税率は 18% である。食料品や医薬品などの必需品には軽減税率や非課税が適用される場合がある。

事業者は毎月または四半期ごとに VAT の申告および納税を行う。

仕入 VAT は売上 VAT と相殺が可能であり、過剰払い分は繰り越しや還付の対象となる。

個人所得税

個人所得税は 2% から最高 36% までの累進課税となる。

雇用主は給与支払時に源泉徴収を行う義務がある。源泉徴収した税額は毎月または四半期ごとに税務当局へ納付する。

外国人駐在員の場合は、年間滞在日数や常勤拠点の有無で居住者・非居住者区分が判定され、課税対象所得が変動する。

その他の税金

  • 源泉徴収税:配当や利子、ロイヤルティなどに対して 10〜15% 程度の税率が適用される。二重課税防止のため一部国との租税条約が存在する。
  • 固定資産税:土地や建物に対して課せられる。所在地や用途により税率や免税措置が異なる。
  • 業種別特別税:鉱業ロイヤルティや石油関連の生産分与方式など、セクターに応じた課税制度が整備されている。
  • 地方税:事業所所在地に応じたコミュニティ税やライセンス料が課せられることがある。

4. 会計・監査制度

会計基準

コートジボワールを含む OHADA 加盟国では、OHADA 会計法に基づく統一会計基準(SYSCOHADA)が適用される。フランス会計基準に近い特徴を有するが、加盟国共通で適用するため、国内各省庁の追加規則にも留意する必要がある。大規模多国籍企業や特別な状況下では IFRS を併用する事例もあるが、法的には OHADA 基準が優先される。

監査要件

大規模企業や金融機関、上場企業などは法定監査の義務がある。一般には、一定の売上高・資本金・従業員数を超える会社は外部監査人を選任し、毎年度の監査報告書を作成しなければならない。外資企業についても、該当基準を満たす場合は必ず監査を実施する。

登録要件

監査を行うためには、公認会計士(Expert-Comptable)や監査法人(Cabinet d’Audit)がコートジボワール公認会計士協会(Ordre des Experts-Comptables)の登録を受けている必要がある。海外の監査法人が業務を行う場合は、現地有資格者との共同監査またはパートナーシップを締結することが一般的である。

財務諸表の提出

決算終了後に作成された財務諸表(貸借対照表、損益計算書、附属明細など)は、所定の期間内(通常 4〜6 か月以内)に商業登記所へ提出する。監査対象企業は監査報告書も同時に添付する。財務諸表は税務申告でも基礎資料となるため、正確かつ期限内の提出が求められる。

5. 労務制度

雇用契約

労働法に基づき、書面による契約締結が原則である。期間の定めのない雇用契約が一般的だが、特定の業務期間に応じた有期契約も認められる。

最低賃金

政府が定める全国一律の最低賃金制度がある。2024 年時点では月額約 60,000 XOF 前後とされている。

労働時間

週 40 時間を超える場合は時間外労働として割増賃金が必要となる。

休日は週 1 日以上を付与する義務がある。

解雇・退職

正当な理由なく解雇することは認められない。経済的理由や重大な過失がある場合には手続きに従い解雇が認められる。

退職金制度は勤続年数に応じて法定で定められている。

労働争議・労使関係

労働組合の影響力が高く、集団交渉による賃金決定が行われる場合がある。

労働争議が生じた場合は、労使関係当局が仲介に入る制度が整備されている。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

輸出志向型産業を対象とした特別経済区(ゾーン・フラン)が一部地域に設置されている。

所得税免除や関税優遇などのインセンティブが付与される。

投資促進機関

投資促進センターが設立されており、外国投資家に対して登記手続きのガイドや許認可の取得支援を行っている。

投資優遇措置の認定申請なども取り扱う。

ビザ・労働許可

一般的に 90 日を超える長期滞在には就労ビザと労働許可が必要となる。

雇用主によるスポンサーシップを前提とし、担当省庁への申請手続きが必須である。

外貨規制

西アフリカ中央銀行(BCEAO)の監督下で一定の外貨規制が存在する。

輸出入取引や大口送金を行う際、中央銀行や金融機関への報告義務が生じる。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

法人設立後、商業登記書類や税務登録証などを提示して現地銀行で口座を開設する。口座開設には代表者の身分証明書、定款、法人代表印なども必要となる。

現地借入・金利水準

商業銀行を通じた短期・中長期借入が利用可能である。金利はインフレ率や中央銀行政策金利の影響を受け、年 8〜12% 程度(2025/05 時点)が一般的水準である。

送金・為替サービス

XOF はユーロに連動しているため、欧州向け送金は為替コストが比較的安定している。USD 決済の場合は市中銀行の相場に基づき、手数料が上乗せされる。

フィンテック動向

モバイルマネーやオンライン決済システムが近年急速に拡大している。小売業やサービス業におけるキャッシュレス化の動きが進んでいる。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

契約を重視する一方で、合意内容の履行に対して時間がかかることがある。

支払いスケジュールなどは細かく確認し、書面化を徹底する必要がある。

汚職・賄賂リスク

公的手続きでの遅延や不透明な要求が問題視されている。

ガバナンス改革が進んではいるが、行政手続きの簡素化や情報公開の改善は道半ばである。

治安・政情リスク

近年は政情は比較的安定しているが、一部地域で治安リスクが残る。

政治情勢の変動に伴いデモや抗議運動が発生する場合があるため、最新情報の収集が必要である。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

競争優位性・課題

日本企業の技術力や品質管理は評価されている。一方で物流インフラや電力安定供給に課題が残る。現地調達や人材育成に取り組む企業ほど長期的競争力を確保しやすい。

手続き難易度

法人設立や税務登録などの主要手続きは簡素化されてきており、比較的短期間で完了できる。ただし労働許可や輸入許認可などの行政手続きは煩雑なケースがある。

専門家ネットワーク

公認会計士や弁護士などの専門家ネットワークを活用することで、制度変更や書類作成のサポートを受けられる。日本語対応可能なコンサルタントはまだ限られている。

コンゴ民主共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

国名・首都

正式名称はコンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo)。首都はキンシャサ。アフリカ中部に位置し、面積約234.5万平方キロメートルを有する。人口は約9,901万人(2022年世銀)。

通貨・為替

現地通貨はコンゴ・フラン(Franc Congolais, 通貨記号FC)。為替レートは 1 USD = 2,900 コンゴ・フラン(2025年5月平均)。インフレ率が高めで、自国通貨の信用度が低いため国内経済は一部ドル化している。

経済指標

GDPは約660億米ドル(2022年、世界銀行)、一人当たりGNIは約653ドル(2022年)。近年は鉱業セクターの好調により実質GDP成長率8.9%(2022年)を記録。インフレ率は19.1%(2023年、IMF)と高く、中央銀行が金融引締めを継続。主要産業は鉱業(銅・コバルト・ダイヤモンド・金など)で、鉱物資源がGDPの約4分の1、輸出額の約9割を占める(2024年時点)。農林水産業も潜在力は高いがインフラ不足などで発展途上。

日本との関係

1960年の独立時に日本が国家承認し外交関係樹立。対日貿易は日本への鉱産品輸出が中心で、貿易額は対日輸出231.51億円・対日輸入50.88億円(2023年、日本財務省)。日本からは自動車・機械類の輸出が多い。進出日系企業は5社(2024年4月現在)と少数で、在留邦人も73人(2023年10月現在)に留まる。日本は政府開発援助(ODA)を通じインフラや人道分野で支援しており、近年経済産業大臣の訪問(2023年8月)など両国関係強化の動きがみられる。

2. 法人設立制度

法人形態

コンゴ民主共和国は2012年にOHADA(アフリカ統一商事法機構)に加盟しており、同機構の統一会社法が適用される。

主な法人形態は次のとおりである:

  • 無限責任社員のみの合名会社(SNC)
  • 無限責任社員と有限責任社員からなる合資会社(SCS)
  • 小規模・非公開会社向けの有限会社(SARL)
  • 大規模・公開会社向けの株式会社(SA)
  • 柔軟な会社形態である簡易株式会社(SAS)

このほか外国企業は現地で支店(現地法人化しない営業拠点)や駐在員事務所を設置することも可能。

外資規制

原則として外資による企業所有に一般的な出資比率規制はない。外国企業も内国企業と同様に事業を営める。

ただし、外資の参入が法律で禁止されている分野がある。2002年の投資法(法律第004/2002号)により、「小規模商業(零細な小売業)」「武器の製造」「軍事関連産業」の3分野は外国資本の参入禁止と規定されている。

それ以外の分野では外国企業にも内国民待遇が与えられており、公共調達への参加も制限なく認められる。

資本金要件

OHADA統一会社法に基づき、株式会社(SA)には最低資本金1,000万CFAフランの要件がある(OHADA規定による。コンゴ・フラン換算で約5億CDF前後)。株式の額面金額は1万CFAフラン以上と定められる。

一方、有限会社(SARL)および簡易株式会社(SAS)には最低資本金の定めがなく、少額資本で設立可能である。

出資は設立時に全額払込が必要。なお、新規会社設立時には資本金額の1%を会社設立税として国に納付する(ただしSARLやSASは免除)。

登記手続き

企業設立時には商業・会社登記の申請、税務局での納税者登録、社会保障機関への加入申請など一連の手続きが必要となる。

投資促進庁ANAPIに「企業設立ワンストップ窓口(Guichet Unique)」が設置されており、ここで必要書類の提出と手数料支払いをまとめて行うことで手続きを簡素化できる。法律上は4つの手続と7営業日ほどで設立完了可能とされる(2020年世界銀行調査)が、実務では追加照会や当局対応の遅れにより数週間を要する場合もある。

定款の作成(公証人認証)後、商業登記証明の取得をもって法人が成立し、その後税務ID(NIF)や社会保険IDを取得して事業開始となる。

3. 税制度

法人税

コンゴ民主共和国の法人所得に対する課税は利益・利潤税(Impôt sur les Bénéfices et Profits, 略称IBP)と呼ばれる。

標準税率は30%(2019年度財政法に基づく)である。ただし最低税額制度があり、算出された税額が「申告売上高の1%」に満たない場合でも1%相当額を納付しなければならない(赤字の場合も最低税が適用される)。

課税所得は収入から必要経費を控除して算定されるが、費用計上には厳格な要件があり関連当事者取引や海外支払いは一定条件下でのみ損金算入が認められる。

納税は暦年単位で行われ、通常は年度末に申告・精算する(四半期ごとの予定納税制度あり)。

付加価値税(VAT)

2012年より付加価値税(TVA)が導入されており、物品・サービスの国内取引および輸入が課税対象となる。

標準税率は16%で、食料品など一部に軽減税率やゼロ税率品目がある。

課税事業者には事前登録が義務付けられており、年間売上高が一定額(法令で規定)を下回る小規模事業者はVAT免除事業者となる。

申告・納付は月次で行い、期限までの申告漏れには150万CDFの罰金、無申告にはさらに重い罰則が科される。

輸入時には輸入VAT(16%)が関税とは別に徴収される。

個人所得税

給与所得に対しては職業報酬税(IPR)が課される。累進課税方式であり、所得区分ごとの税率は3%から最大40%まで段階的に上昇する。ただし税額には「所得の30%」という上限が設定されており、高額所得者でも実効税率が30%を超えない仕組みとなっている。例えば月収が43,200,000CDFを超える部分に40%の税率が適用されるが、総税額は月収の30%に制限される。

標準的な給与所得者の場合、源泉徴収により雇用者が毎月納税する。扶養家族控除など若干の控除制度はあるが額は限定的である。また、駐在員など外国人労働者の給与については後述の特別税が追加で適用される。

その他の税金

上記以外に源泉徴収される所得税・間接税が複数存在する。

配当金や利子には動産所得税(IM)が課され、標準税率は20%(鉱業会社の配当は10%)である。

非居住者(海外法人・個人)に支払うサービス料には14%の源泉税が課される。さらに、外国人駐在員の報酬には駐在員報酬特別税(IERE)として25%が追加課税される(この特別税は社会保障負担金算定基礎と同一の額に課され、法人税の損金に算入不可)。

そのほか主な税種として、不動産に対する不動産税(年間1%前後)、輸出に係る税、車両税などがある。付加価値税や関税以外にも物品税・消費税が特定品目(燃料やアルコール等)に課される場合がある。

4. 会計・監査制度

会計基準

コンゴ民主共和国では、OHADAの統一会計制度(SYSCOHADA)が適用される。一般企業はOHADA会計基準に従い記帳・財務報告を行う。

一方、上場企業や市場で資金調達を行う会社については国際会計基準(IFRS)の適用が義務付けられている。

非上場企業でも任意にIFRSを採用することは許容されているが、通常はOHADA基準にもとづく財務諸表作成となる。

会計年度は暦年(1〜12月)であり、年度末に貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書および注記を作成することが求められる。

監査要件

すべての株式会社(SA)および大規模企業には財務諸表の外部監査が義務付けられる。

株式会社では定款で監査役会(監査法人)を設置し、年度ごとに監査報告を書面提出する必要がある。

有限会社(SARL)や簡易株式会社(SAS)については中小規模であれば法定監査義務はないが、一定規模以上の場合には監査人(コミッサール・オ・コンプト)の選任が義務となる。

その基準はOHADA規定で定められており、年間売上高が2億5千万CFAフラン超、総資産1億2千5百万CFAフラン超、従業員50人超の3条件のうち2つ以上を満たす有限会社・SASは監査義務企業とみなされる。義務が生じる場合、資格を持つ公認会計士から監査報告を受けなければならない。

登録要件

会計・監査の専門家については国家による資格制度が整備されている。財務諸表の監査を行うにはコンゴ民主共和国の公認会計士資格(Expert-comptable)を保持し、所定の名簿に登録している必要がある。

監査人は独立性要件を満たし、職業団体に所属することが求められる。「永続会計評議会(CPCC)」という機関が会計基準や専門家資格の監督を行っており、この下で会計士資格の認定・登録が行われている。

財務諸表の提出

全ての企業は事業年度終了後に年間の財務諸表を作成し、税務申告とあわせて提出する義務がある。通常、暦年の翌年4月30日までに法人税の確定申告書とともに財務諸表を税務当局へ提出する(期限超過の場合、初回違反で20%、再犯で40%の加算税・罰金)。

また企業は株主総会等で財務諸表の承認を行い、一定規模以上の会社はその要約を官報等で開示する義務もある(OHADA会社法の規定による)。提出された財務諸表は税務当局および統計当局で管理され、監査済みであることが求められる。

5. 労務制度

雇用契約

労働契約の形態は大きく分けて有期契約と無期契約がある。さらに日ごとに更新される日雇い労働(短期臨時契約)も認められる。

有期雇用契約の期間は最長2年間であり、一度のみ契約更新が可能(季節労働や特定プロジェクトの場合等を除く)。2回目の更新や2年を超える継続雇用となった場合、その労働者との契約は期間の定めのない無期契約とみなされる。

無期契約は企業の常設ポストに従事させる際に結ぶもので、試用期間を設けることができる。試用期間は現場作業労働者で最長1カ月、それ以外の被用者で最長6カ月と労働法に規定されている。

最低賃金

法定最低賃金(SMIG)は全国一律に定められている。

2018年5月22日政令第18/017号により改定され、2019年1月以降の最低賃金は日額7,075~70,750 CDFとなっている(未熟練労働者から管理職までの職能等級に応じた幅)。これは1日8時間労働を前提とした額であり、月給換算ではおおよそ約212,250~2,122,500 CDFとなる。

賃金の支払いは日払い・週払い・月払いのいずれも認められ、支払期日から6日以内に行う必要がある。

労働時間

週労働時間は45時間と法定で定められている(労働法119条)。通常は1日9時間労働×週5日で45時間となる。

労働法121条により、労働者は7日間につき連続48時間(2日間)の休日を取得する権利があり、週休2日制が基本である。

所定労働時間を超える労働は時間外労働となり、本来は割増賃金の支払いが必要だが、新労働法下では詳細な超過勤務手当率が未設定である。そのため暫定的に旧労働法(2002年以前の規定)や企業内規則に基づき、時間外手当の支給が行われている。

一般的な慣行では、平日の残業は基礎賃金の+30%、休日出勤は+100%といった割増率が適用されるケースが多い。

解雇・退職

従業員を解雇(雇用契約解除)する場合、正当な理由(就業規則違反や経済上の必要等)が求められ、重大な背信行為(重大な非行)による解雇を除き予告期間の通知が必要である。

予告期間は労働者の職種カテゴリーと勤続年数に応じて定められている。具体的には、一般労働者(カテゴリーI~V)は14営業日+勤続1年ごとに7営業日、職長クラスは1カ月+勤続1年ごとに9営業日、管理職は3カ月+勤続1年ごとに16営業日の予告期間を要する(2005年10月26日省令で規定)。従業員から自主退職する場合の予告期間はこれらの半分で足りる。

使用者(会社)の都合で予告なしに即時解雇する場合、使用者は労働者に対し本来の予告期間に相当する賃金の補償金を支払う義務がある。また、有期契約を不当に期限前解除した場合は契約残存期間の給与相当額、無期契約を不当解雇した場合は裁判所が算定する損害賠償額の支払い義務が生じる。

労働争議・労使関係

労働者は憲法上、団結権・団体交渉権・ストライキ権が保障されている。複数の労働組合(産業別・職能別)が存在し、主要な組合としてコンゴ労働組合同盟などが活動している。

雇用者側もコンゴ企業連盟(FEC)等の団体を組織し、2005年には全国労使代表による包括的な労働協約が締結された。この全国協約により賃金や手当の最低基準、労働条件に関する共通ルールが定められており、各企業・産業の個別協約と併せて労使関係の枠組みとなっている。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

コンゴ民主共和国政府は外国投資誘致のため特別経済区(ZES)を設置している。2014年法律第14/022号により制度化され、首都圏マルク(キンシャサ郊外)など全国で3箇所が指定されている(開発段階のパイロットZESを含む)。

特別経済区に進出する企業には各種の税制優遇が与えられ、例えば一定期間の法人税免除、輸入関税の減免、手続きの迅速化などが適用される。

また、一般の投資プロジェクト向けにも投資法(2002年法)に基づく優遇制度がある。投資促進庁から投資認可(Agrément)を取得した案件については、投資先の地域区分に応じて法人所得税が3〜5年間免除される。さらにプロジェクト用機械設備の輸入関税が免除(スペア部品も設備価値の10%相当額まで免税)され、プロジェクト用地に係る不動産税も免除となる。地域区分はA(首都圏など)・B(主要都市圏)・C(地方)の3区に分かれ、経済的に開発が遅れた地域ほど長い優遇期間(最大5年)が認められる。

これらの優遇措置は投資法に定められた範囲であり、企業は認可条件(現地雇用創出や投資額要件など)を維持する限り恩恵を受けられる。

投資促進機関

ANAPI(投資促進庁)が外国投資のワンストップ窓口として機能している。ANAPIは投資案件の審査・認可権限を持ち、先述の税制優遇(法人税免除や関税免除)の付与手続きを担当する。また、企業設立の単一窓口を運営しており、会社登記や各種許可取得を一元的にサポートする。

ANAPIは投資家への情報提供、官僚手続の簡素化提言、事業環境の改善提唱など幅広い役割を担う政府機関であり、大統領直轄のビジネス改革チームと協働して投資環境整備を推進している。

ビザ・労働許可

外国人駐在員・労働者がコンゴ民主共和国で就労するには労働許可証(permis de travail)と労働ビザの両方が必要となる。

まず雇用主を通じて労働省管轄の機関から労働許可を取得し、その後、移民局(DGM)にて在留資格に対応した「企業ビザ(労働滞在ビザ)」を申請する流れとなる。

このビザは2年間有効で、労働許可の更新に合わせて延長可能である。

労働許可は職種ごとに定められた条件(学歴・実務経験等)を満たすことが要件で、取得には雇用契約書、学位証明、健康診断書などの提出が必要。

また短期出張者向けには短期ビザがあり、7日〜3カ月の範囲で発給される。入国に際して黄熱病予防接種証明の提示義務がある点にも留意が必要。

外貨規制

コンゴ民主共和国では外為管理が一部存在するが、概ね比較的自由化されている。

外貨の保有は自由であり、居住者(企業・個人)が国内銀行に外貨建て口座を開設することも中央銀行の許可なく認められている。

外国為替の持ち出し・持ち込みについては、現金等携行の場合1人あたり1万米ドル相当額まで無申告で持ち出し・持ち込み可能。それを超える場合は税関への申告が必要であり、超過分は銀行送金で行うこととされる。

国内における支払いはコンゴ・フラン建てが原則だが、契約当事者間の合意により外貨建てによる価格表示・決済も合法的に行うことができ、実際に米ドル現金や外貨口座での決済も広く用いられている。

留意すべき規制として、対外送金・海外からの送金には一律0.2%の為替手数料が課される点がある。この手数料は中央銀行(BCC)に納付される法定のもので、大口資金移動時にはコスト要因となる。

また、輸出代金については適正な為替経路を通じて受領する義務があり、不正な資金流出入防止のためAML/CFT法制による監視も行われている。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

現地法人または駐在事務所は、ビジネス開始にあたり銀行口座を開設する必要がある。口座開設には登記証明書、納税者番号証明(NIF)、代表者身分証などの書類提出が求められる。

主要都市には大手民間銀行が営業しており、主な銀行としてRAWBANK、トラストマーチャントバンク(TMB)、エクイティBCDC(旧コンゴ商業銀行BCDCとケニア系Equityの統合銀行)などが挙げられる。外国資本の銀行もスタンダードバンク系などが進出している。

口座開設手続き所要期間は銀行によるが、必要書類が整っていれば数日〜2週間程度で完了する。近年、金融当局は口座開設簡素化に取り組んでおり、中小企業向けには要件緩和も進められている。

現地借入・金利水準

コンゴの金融市場は未発達であり、企業が現地銀行から資金調達する際には高金利と貸付条件の厳しさに直面する。インフレ率が二桁台と高いため、中央銀行政策金利は25%(2023年8月の引き上げ以降)という非常に高い水準に設定されている。民間銀行の商業貸出金利もこれに連動して年利20〜30%前後と推計され、長期資金の借入コストは非常に大きい。

銀行は慎重な融資姿勢をとっており、担保や保証の提供が求められるほか、企業の信用履歴が十分でない場合は融資自体が困難となる。結果として、中小企業は銀行融資よりも親会社からの社内融資やマイクロファイナンス、国際機関の投融資スキームに頼るケースが多い。

政府は将来的に国内資本市場の整備(債券市場創設など)を目指しているが、現時点では企業にとってローカルでの資金調達コストは非常に高いハードルとなっている。

送金・為替サービス

国際送金については、銀行送金(SWIFT)が主流である。

主要都市の銀行は外為取引部署を有し、海外への送金や輸入信用状(L/C)の発行に対応している。前述の通り、海外送金・受取には0.2%の為替手数料が課されるため、大口送金ではコスト計算に留意が必要。

為替サービス面では、企業は銀行経由で現地通貨と米ドル等の交換を行う。コンゴ・フランは市場で流動性が低く、大口の現地通貨調達には中央銀行のオークションを利用することもある。

少額の送金や決済については、モバイルマネー(携帯電話を用いた送金サービス)が急速に普及している。通信大手のVodacom社「M-Pesa」やOrange社「Orange Money」などが国内送金・決済プラットフォームを提供し、銀行口座を持たない人々の間でも電子ウォレットで資金のやり取りが可能となっている。都市部では公共料金支払いや小売代金決済にモバイルマネーを利用する事例が一般化しており、企業も小口支払いでこれらサービスを活用する動きがある。

フィンテック動向

コンゴ民主共和国は金融包摂が課題であり、成人の銀行口座保有率が一桁台と低水準に留まっている(2017年世界銀行Findexでは約26%が何らかの口座を保有、銀行口座に限れば4%程度との推計)。

しかしモバイルマネーの利用は爆発的に拡大しており、携帯電話による送金・決済アカウント数は2020年から2023年にかけて約3倍(+229%)増加し延べ2,167万件に達した(2023年第3四半期、通信規制当局統計)。これは人口の約2割強に相当し、地方農村部まで含めた送金ネットワークが広がっていることを示す。

政府もこの流れを重視し、中央銀行を通じてフィンテック企業へのライセンス付与や電子決済の法整備を進めている。例えば2020年には電子マネー発行者の規制を強化し、利用者保護と信頼性向上を図った。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

法制度上は契約の拘束力が認められているものの、実務面での契約遵守・履行には課題が残る。商事紛争を裁く商業裁判所は存在するが手続きに時間がかかり、判決執行にも官僚的遅延が生じやすい。世界銀行のビジネス環境指標(Doing Business 2020)によれば、コンゴ民主共和国の契約執行の容易さは183位/190カ国と極めて低く、契約を法的に強制するには相当のコストと時間を要する。

汚職・賄賂リスク

コンゴ民主共和国は汚職リスクが極めて高い国の一つである。透明性国際の腐敗認識指数(CPI)では2023年にスコア20/100・順位162位/180カ国と、世界でも最下層レベルに位置する。官民セクター双方で汚職慣行が深く根付いており、企業は行政手続きや税務調査、契約履行の局面で賄賂要求や不透明な取り扱いに直面しがちである。特に鉱山権益や大型契約を巡っては高官レベルの汚職疑惑もしばしば報じられている。

治安・政情リスク

広大な国土の中で地域により治安情勢が大きく異なる。

東部国境地帯(北キヴ州やイトゥリ州など)では今なお武装勢力による紛争や治安不安が続いており、誘拐や襲撃事件のリスクが高い。

一方、首都キンシャサや南東部ルブンバシなど主要都市では内戦の影響は及んでいないものの、政治的な不安定要因に注意が必要である。

2019年に政権交代(ツシュisekedi大統領就任)が平和裡に実現したが、その後も与野党の対立は根強く、2023年12月に実施された大統領・議会選挙では現職ツシュisekedi氏が再選を果たしたものの野党側は不正を主張し緊張が残る。選挙前後には一部地域でデモや騒乱が発生しており、政情変動期にはビジネスへの影響も懸念される。

また都市部の犯罪率も高く、強盗・窃盗事件が多発する傾向にある。夜間の外出や移動には警備員の同行や複数名での行動を心がけ、防犯対策を徹底する必要がある。

医療インフラや公衆衛生も脆弱であり、エボラ出血熱のような感染症流行やパンデミック時の対応力にも不安が残る。

総じて、治安・政情リスクは事業継続上の大きな不確定要素であり、最新情報の収集と危機管理計画の整備が欠かせない。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

競争優位性・課題

DRC市場の魅力・競争優位性としてまず挙げられるのは、その豊富な天然資源である。銅、コバルトを筆頭に世界有数の埋蔵量を誇り、電池・ハイテク分野の需要が高まる中で戦略的価値が高い。

また、人口約1億人というサブサハラアフリカ第4位の人口規模は将来的な巨大消費市場として潜在性を持つ。

地理的には9か国と国境を接し、アフリカ中部の物流ハブとなる可能性も秘めている。

一方、ビジネス環境上の課題は非常に大きい。

インフラ未整備は深刻で、電力供給不足や道路・鉄道網の欠如が製造業発展を阻んでいる。例えば主要都市でも停電が日常茶飯事で自家発電が不可欠な状況である。法制度の不透明さや行政の非効率も企業にとって障壁であり、規制の解釈が担当官によって異なる、不測の許認可遅延が起こる、といったリスクが常に存在する。

加えて先述の治安リスクや汚職風土は外国企業にとって大きな不安要素である。世界銀行のDoing Businessランキング(2020年)では総合183位/190か国とビジネスのしにくさが際立っており、「世界で最も事業運営が難しい国の一つ」との評価もある。

競争上は、欧米・中国企業が鉱山やインフラで長年のプレゼンスを持つ中、日本企業は後発参入ゆえ現地ネットワークや情報面で劣勢になりやすいという課題もある。しかし逆に言えば、他社が敬遠する難市場ゆえに参入余地やニッチ分野が残されている可能性もあり、政府開発援助や国際機関と連携した進出戦略により優位性を見出す余地もある。

手続き難易度

コンゴ民主共和国への新規進出に際しては、各種手続きの煩雑さと時間のかかるプロセスを覚悟する必要がある。会社設立手続き自体は前述のとおりワンストップ化が図られ簡素化されつつあるが、実際には各役所での書類審査や担当者の判断に時間を要し、想定以上に開業まで期間を要する例が多い。

特にライセンスや許認可取得(例:輸出入業の登録、製造業の環境許可など)には所管官庁間の調整不足や申請要件不明確さから度重なる補正・追加要求が発生しやすい。許認可取得に非公式な便宜供与を求められる場合もあり、これを拒否すると更に処理が遅延する、といった悪循環も報告される。

専門家ネットワーク

法律・会計分野では、キンシャサやルブンバシに国際系法律事務所や会計事務所の拠点が存在し、現地法務・税務について専門的支援を提供している(多くはフランスやベルギー系の事務所)。

ザンビア共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

ザンビア共和国(Republic of Zambia)。

首都ルサカ(Lusaka)は標高約1,272m、人口約308万人(2022年国勢調査)で国内最大の都市である。

全国人口は約2,057万人(2023年)で、主要都市は首都ルサカのほか、鉱業都市キトウェ(Kitwe)やンドラ(Ndola)などがある。

公用語は英語。現地主要言語としてベンバ語、ニャンジャ語、トンガ語など73の部族語が使われる。

国民の約8割がキリスト教徒である。

通貨はザンビア・クワチャ(Zambian Kwacha, 通貨記号ZMW)。1ZMW=約5.1円、1ZMW=約0.67南アフリカ・ランド(2025年4月末時点)。対米ドルでは1USD=約20.2ZMW(2023年平均)。

為替は資源価格やインフレ動向に左右されやすい。

銅を主とする鉱業が経済の柱で、GDPは約281億米ドル(2023年、世界銀行)。2023年の実質GDP成長率は5.8%と高成長。ただし2010年代後半には銅相場下落や電力不足で成長が停滞し、一時対外債務不履行に陥った。

インフレ率は10.9%(2023年)と高めである。

一人当たりGNIは1,320米ドルで低中所得国に分類される。主要産業は鉱業(銅・コバルト)、農業(トウモロコシ等)、観光業。

1964年の独立と同時に日本はザンビアを承認し、1970年に在ザンビア日本大使館を開設した。以降、政治的に友好関係を維持し、2024年には投資協定が署名され経済関係の強化が図られている。

日本の対ザンビア輸出は167.6億円(2023年)で、自動車やタイヤなどが中心、輸入15.9億円でコバルトや銅を主とする。開発援助では日本は有償・無償合わせ約1,700億円を累計供与している。

2. 法人設立制度

現地で一般的な法人形態は有限責任会社(Private Limited Company)で、株主2~50名までの非公開会社が主流である。公開会社(Public Limited Company)や外国会社の支店開設も可能。外国資本100%で法人設立が認められており、現地出資者を義務付ける規制は基本的に存在しない。最低資本金の法定要件も特に定められていない(銀行など特殊業種を除く)。

会社設立は特許・会社登録庁(PACRA)にて行う。商号の事前承認後、定款(Articles of Association)と登記申請書類を提出し登録証明書(Certificate of Incorporation)を取得する流れである。オンラインでの電子登記システム(e-PACRA)が整備されており、代理人がインターネット経由で申請可能。そのため発起人の渡航無しでも設立手続きは完了できる。通常1〜2週間で法人登録が完了する。

登記にはザンビア国内の所在地住所が必要となる。

会社法上、取締役や会社秘書役に現地居住者を含める法定要件はないが、実務上は現地代理の法律事務所や会計事務所が登記手続きを代行することが多い。

会社設立後、税務当局(ZRA)への納税者番号(TPIN)登録や社会保険への事業所登録が必要。

外国企業が支店形態で登記する場合も、PACRAでの外国会社登録と現地代表者の選任が必要となる。支店と現地法人で税務上の差異は基本無いが、支店利益送金時に追加課税(支店税)が課される点に留意する。

なお事業分野によっては許認可(金融業、鉱業など)が別途必要となる。

3. 税制度

ザンビアの法人税率は標準30%である。

課税所得はザンビア源泉所得が基本だが、居住法人には世界所得のうち利子・配当も課税される。業種により税率優遇があり、農業・農産加工所得は10%、輸出(非伝統品)は20%、通信事業は35%など差別税率が適用される。鉱業の法人税率は基本30%で追加の超過利潤税は現在廃止されている。

課税年度は暦年。

欠損金の繰越控除は原則5年間で、鉱山業および発電事業は10年間まで繰越可。

非居住者への支店利益送金には20%の源泉課税がある。また利子・配当・使用料など国外送金には20%の源泉徴収税(WHT)が課される。

日本とザンビアの間には1971年発効の租税条約があり、これにより日本居住者への配当WHTは0%、利子・使用料は10%に軽減される(技術料等は条約上未定義のため事業所得扱い)。

ザンビアの付加価値税率は標準16%で、輸出などゼロ税率品目には0%が適用される。医薬品・教育など特定の財・サービスは非課税(免税)扱いで課税対象外。

課税事業者は月次でVAT申告・納税を行い、輸出企業は仕入VATの還付を受けられる。VATの仕入税額控除請求は発行日から3か月以内に行う必要があり、過去に遡る請求は制限される。

輸出企業向けには「商業輸出業者スキーム」により非居住者によるザンビア産品購入時のVAT還付制度もある。

2024年より電子的なインボイス発行システム(スマートインボイス)が全納税者に義務化され、売上の逐次報告が求められている。

個人の所得税は累進課税で、年間課税所得ZMW 61,200までが非課税、以降85,200まで20%、110,400まで30%、110,401超は37%の税率が適用される(2025年課税年度)。居住・非居住を問わず同じ税率体系だが、非居住者はザンビア源泉所得のみが課税対象となる。

給与所得については源泉徴収制度(PAYE)があり、雇用主が毎月税額控除を行うことで年末調整が完結する。給与以外に事業所得や利子所得がある場合や、赴任間もない駐在員など一部非居住者は年度末に個人確定申告を行い納税する義務がある。

社会保険としては国民年金(NAPSA)への加入が義務付けられ、従業員・使用者がそれぞれ給与の5%(計10%)を拠出する(一定額の上限あり)。2019年に国民健康保険法が施行され、医療保険料も従業員・使用者各1%負担となっている。

商取引では契約書・金融証書等に印紙税(定額または定率)が課される。

また不動産や株式譲渡益には物件譲渡税(PTT)が5%課税される。

輸入車両には排気量等に応じた関税・物品税に加え環境税(カーボン税)が賦課される。

事業所税や固定資産税は無いが、地方当局に対し不動産に関連する税・料金が別途課される場合がある。

なお納税環境として、電子申告(e-Returns)や電子納税がZRAにより提供されており比較的整備が進んでいる。

租税条約は日本のほかフランス、英国、中国など計20か国以上と締結され二重課税回避措置が講じられている。

税務調査はZRAが所轄し、近年は税務コンプライアンス強化のため、無申告のまま2,000米ドル超を海外送金する場合に15%の源泉徴収(Advance Income Tax)が課される制度も導入された。

4. 会計・監査制度

会社法および会計士法に基づき、ザンビアではザンビア勅許会計士協会(ZiCA)が会計基準を定めている。同協会は国際会計基準審議会(IASB)の基準を採用しており、2005年以降、国際財務報告基準(IFRS)が修正なしで全面適用されている。

企業の規模に応じた三層の財務報告フレームワークが導入されており、公的利害の高い企業(上場企業、銀行、国有企業など)はフルIFRSの適用が義務。年商2,000万クワチャ以上の大企業はIFRSまたは中小企業向けIFRS(IFRS for SMEs)のいずれかを適用可能。年商2,000万クワチャ未満の中小企業はZiCA制定の「ザンビア中小企業向け会計基準」を適用できる。同基準はIFRS for SMEsを簡易化したものである。

2017年会社法により全ての会社は年次の財務諸表監査を受けることが義務付けられている。

監査基準は国際監査基準(ISA)が2005年より導入されており、ZiCAが基準策定・適用を監督する。監査人はZiCAに登録された公認会計士でなければならず、上場企業の監査では更に証券法に基づく資格要件が課される。

監査報告書は株主総会で承認され、会社法に則り年次の会社登記情報とともに登録庁(PACRA)へ提出する義務がある。特に銀行と上場会社は監査済財務諸表を全国紙に公告することが求められている。一般非公開会社についても、利害関係人はPACRAで決算書類を閲覧可能である。

会計専門職は会計士法に基づきZiCAが規制する。ZiCAは会計基準・監査基準の設定のほか、会計士資格試験(ザンビア勅許会計士=CA資格)の実施や継続専門教育を担い、会計事務所の品質管理や会員の懲戒も所管する。ザンビアのCA資格は国際的にも認知されており、イギリス勅許会計士協会(ACCA)などとの相互承認も進む。

財務諸表は年度末から約6か月以内に株主総会で承認・提出されるのが一般的であり、透明性確保のため企業ウェブサイト等での公表も増えている。

5. 労務制度

2019年雇用法(Employment Code Act, 2019)により、労働者の雇用条件は詳細に法定化されている。同法は事業主に対し従業員との雇用契約を書面で締結し、賃金、勤務時間、休暇、解雇手当などを明示することを求めている。常用労働者は試用期間を含め一定期間後に無期限雇用へ移行する規定があり、臨時・短期契約の反復更新による偽装的な長期雇用を制限している。

外国人を雇用する場合には就労ビザ(労働許可証)を取得する必要があり、雇用主は資格要件や技術移転計画を移民局へ示すことが求められる。

最低賃金は労働大臣が職種区分ごとに定め、必要に応じ改定される。直近では2018年に一般労働者の最低月額賃金が約1,698クワチャ(約130ドル)に設定された(家政婦等は別基準)。

加えて時間外労働手当や深夜勤務手当(基本賃金の25%増)が法定されている。

多くの労働者は労働組合に加入し団体交渉で業種別の賃金水準が決定されているため、実際の給与水準は最低賃金を上回るケースが多い。

法定労働時間は週48時間(1日8時間・週6日)とされ、それを超える勤務は時間外労働として割増賃金の支払いが必要となる。

休日は週1日の有給週休(通常日曜)が最低保障されている。祝日は年間約12日あり、その労働には2倍賃金を支払うか代休を与える必要がある。年次有給休暇は勤続に応じ付与され、最低でも1ヶ月勤務あたり2日の権利が生じる(年間24日以上)。有給休暇は2年分まで繰越可能だが、未消化分は退職時に買い上げ精算する義務がある。

一般労働者は病気や負傷で就業不能の場合、最長3か月は給与全額、さらに次の3か月は半額が支給される(短期契約労働者は計52日間の半日支給) 。この期間を超える長期欠勤時は雇用主は医師の診断に基づき「医療上の解雇(medical discharge)」とすることができる。

産休は連続14週間取得でき、そのうち少なくとも6週間は出産後に消化することが義務付けられる。双子以上の場合はさらに4週間延長可能である。産休中の給与は法律上全額支給とされ、復職後の不利益取扱いは禁止されている。

男性従業員には有給の父親休暇が5日間認められている。

また近親者の死亡時などに年5日の慶弔休暇(compassionate leave)、家族の疾病・育児等に年7日の家族責任休暇が規定されている。

労働者を解雇するには、就労状況に応じた正当理由(業績不良、規律違反、経済的余剰など)が必要で、解雇手続きには一定の事前通知が求められる。勤続期間が3ヶ月を超えた労働者には少なくとも30日の解雇予告期間を与えるか、30日分の給与を即時解雇手当として支払う必要がある。

整理解雇(経営上の人員削減)の場合には30日前までに労働組合または従業員代表・労働局への通告が義務付けられ、労働長官の監督下で解雇基準の妥当性が審査される。整理解雇となった従業員には冗長手当(redundancy pay)が支払われ、その法定最低額は「勤続年数1年につき基本給2ヶ月分」である。これは例えば5年勤続なら基本給の10ヶ月分に相当し、使用者は最終勤務日までの一括支払いが義務付けられる。

なお試用期間内の解雇や有期契約満了による終了には冗長手当は発生しない。懲戒解雇(重大な背任行為など)には厳格な手続と証拠が必要で、従業員には弁明の機会が保障される。

労働者は労働組合結成と団体交渉の権利を有し、賃金や労働条件を巡る交渉が不調に終わった場合、合法的なストライキ権を行使できる。

6. 外国企業向け制度

ザンビア政府は製造業や輸出産業の促進のため、多数のマルチファシリティ経済特区(MFEZ)および工業団地を指定している。

特区に入居・操業する企業には税制優遇措置が与えられ、設立後5年間は法人税率0%、配当への源泉税0%とされ、6~8年目は法人税の50%減免(実効税率15%)、9~10年目は25%減免(同22.5%)となる。また特区内企業が海外から受け取るコンサル料・借入金利への源泉税が免除され、特区開発に必要な原材料・設備の輸入関税も免除される。

現在、首都郊外ルサカ東MFEZ、鉱工業のチャンビシMFEZなど複数の特区が稼働中である。

特区以外でも、投資奨励法に基づく優遇措置がある。ザンビア開発庁(ZDA)に所定額以上(2022年の法改正で5万ドル相当額以上)の投資計画を登録すると認定投資案件となり、輸入機械・設備の関税が5年間免除、初期設備投資の減価償却を加速償却(50%/年)できるなどの恩典を受けられる。

特に製造業では原材料の関税引下げ(15%→5%)や、操業開始前2年間の支出に対するVAT事前還付といった支援策が整備されている。

農業・観光・エネルギーなど重点分野にもそれぞれ輸送インフラ整備支援や税控除措置が設けられている。

輸出企業については法人税率が15%に引き下げられ(通常30%)、非伝統的輸出品の生産設備輸入に際して関税とVATが免除される。なお2023年度税制改正で輸出法人税率は20%へ引上げられたが、それでも標準税率よりは低い水準である。

ZDAはワンストップサービスを提供し、会社設立、免許取得、税関手続などを一括支援する窓口となっている。大型プロジェクトには政府との投資協定を締結し、電力・水道などインフラ供給の確約や必要な用地取得を円滑化する措置も取られる。2024年には内外資区別なく一律の優遇を享受できるよう最低投資額要件が5万ドルに統一され、中小規模の投資も支援対象となった。

外国企業が駐在員を派遣する場合、作業許可(Employment Permit)の取得が必要。通常、現地法人がスポンサーとなり、現地移民局へ申請する。許可は2年または3年の有効期間で更新可。高額投資家や専門人材向けには長期の投資許可証(例えば10年有効の投資促進許可)が発給される場合もある。

なおザンビアは一定規模以上のプロジェクトで技術移転計画の提出を求め、段階的な現地人材への交替を奨励しているため、専門技能の現地社員育成が重要となる。

2014年に外為規制が大幅に自由化され、ザンビアには現在厳格な資本規制や外貨送金制限はない。企業は正当な配当金や利払いを税後であれば制限なく本国送金できる。

ただし輸出代金の国内持ち帰りを確実にするため、輸出者は税関輸出申告とリンクした輸出代金回収モニタリングが義務付けられている。輸出取引ごとにユニーク番号(UCR)が発行され、90日以内に輸出代金がザンビアの銀行口座に入金されることを中央銀行が追跡する仕組みである。

これは外貨の違法流出や未申告収入を防ぐためのもので、通常の事業送金に対する障壁ではない。現地銀行口座では外貨建て口座も開設可能で、輸入決済や外貨建てローンの受入も認められている。

外資企業がグループ内貸付を行う場合、ザンビア税法上はThin Capitalization(過少資本税制)として利子控除に一定の制限がある。2019年の改正により、グループ会社からの借入利子はEBITDA(税前営業利益)の30%を超える部分は損金不算入となり、超過部分は翌期以降5年以内に繰越控除可能と定められた。従来存在した負債資本比率ベースの制限(3:1ルール)は撤廃され、より実質的な指標で判定される。

また国外関連者との取引全般に対して移転価格税制が適用され、市場価格からの乖離があれば税務調整の対象となる。契約法制はコモンローに基づき、英文契約がそのまま有効となる。紛争回避のため契約書に仲裁条項を入れることも一般的であり、ザンビアはニューヨーク条約加盟国として国際仲裁判断の執行が認められる。

7. 金融・資金調達

ザンビアの銀行システムは安定しており、英系バークレイズ(現在のABSA)やスタンダードチャータード、中資系の銀行など海外資本銀行も含め20行以上が営業する。

法人は現地で銀行口座を開設でき、クワチャ建て口座のほか必要に応じて米ドル・南アランドなど外貨口座の開設も可能である。

中央銀行(ザンビア銀行, BoZ)は政策金利で通貨価値を管理しつつ、インフレ抑制に努めている。近年インフレ率が二桁に及び公定歩合も高水準のため、市中金利は貸出ベースで20%前後と高めで資金調達コストは大きい。

企業から海外への配当金送金や親子ローンの利払い送金は、前述のように税務上適切に処理されていれば制限なく実行できる。ザンビアには外為庁による事前許可制度は無く、銀行を経由して自由に送金可能である。ただし、脱税防止の観点から大口送金時には税務当局がモニタリングを行っており、未納税のまま国外送金を行うと15%の源泉徴収が課される仕組みがある。

ザンビアでは銀行口座を持たない成人も多く、携帯電話を利用したモバイル送金サービスが急速に普及している。AirtelやMTNといった通信大手のモバイルマネーは農村部まで広がり、2015年に59%だった成人金融利用率は2020年には69%に上昇した。

2018年にはフィンテック規制サンドボックスを創設し、新興企業による電子決済サービスやデジタル融資モデルの試行を認可している。また2022年には国民IDと連動した信用情報共有システムを整備し、中小企業や個人の与信拡大を図っている。

8. 商習慣・文化・リスク

アフリカの中では腐敗が少ない方とされた時期もあったが、近年は公務員や政治家の汚職が社会問題となっている。2021年就任のヒチレマ大統領は汚職撲滅とガバナンス向上を最重要課題に掲げ、前政権の腐敗追及や行政手続の透明化を進めている。

ザンビアは1964年独立以来、一党制時代を経つつも大きな内戦や紛争を経験しておらず、周辺国に比べ政治的に安定した国家である。1991年以降は複数政党制による民主選挙が定着し、直近の2021年大統領選でも平和裡に政権交代が実現した。政情の安定はビジネス環境の安心材料となっている。

一方、一般犯罪は都市部で増加傾向にあり、失業や貧困を背景とした窃盗事件や強盗も発生している。首都ルサカでは夜間の外出に注意が必要で、現地法人でも事務所や倉庫への侵入盗に備えて警備員を配置するのが普通である。地方の鉱山地域では労働者の抗議活動や不法採掘者(ジェリーコ)との衝突が起こることもある。

テロ脅威は低いが、コンゴ民主共和国国境付近では難民流入の影響もあり治安当局が警戒を強めている。

9. 実務上の留意事項

ザンビアの投資環境は、治安・政治安定性でアフリカ有数と評価される一方、市場規模は2,000万人程度と限られる。南部アフリカの経済大国である南アフリカ共和国やナイジェリアと比べ需要規模は小さいものの、鉱物資源の裾野産業や農業開発など伸び代の大きい分野が存在する。

また国土が内陸に位置するため物流コストは高いが、SADCやCOMESAといった地域経済圏の一部として周辺国市場へのアクセス拠点ともなり得る。例えばコンゴ民民主共和国向け鉱山機材輸出はルサカ経由で展開しやすい利点がある。

東アフリカ(ケニア・タンザニア等)と比べ英語が公用語で行政手続きも英語で行える点は日本企業にとって追い風である。

総合すると、ザンビアはアフリカ市場戦略の中で「安定した中規模拠点」として位置付けられ、大規模消費市場ではないが堅実な事業展開が見込める国と言える。

ザンビアの税務・会計実務は、公用語が英語でありIFRSに準拠しているため比較的理解しやすい。一方で税法細則や申告様式に独自の要件があるため、現地の専門家の支援は不可欠である。

ZRAへの各種申告(VAT月次申告、源泉税月次納付、年次法人税申告など)は電子化されているが、期限管理と正確な申告計算が求められる。特に移転価格文書化や源泉税控除証明の発行など、日本本社が関与する事項は漏れなく対応する必要がある。

会計監査も全企業対象であるため、中小企業でも年次決算の監査準備に一定の工数を割く必要がある。

10. 関連法令

  • 雇用法 Employment Code Act, 2019
  • 会社法 Companies Act, 2017

ボツワナ共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

ボツワナ共和国(Republic of Botswana)。

面積は約56.7万平方キロメートル(日本の約1.5倍)。人口は約267万人(2023年、世界銀行)と小規模であり、主要都市は首都ハボローネ(Gaborone、約23万人)およびフランシスタウンなどである。

主要民族はツワナ族(79%)を中心に複数存在する。

公用語は英語で、日常的には現地語のツワナ語も広く話されている。

通貨はボツワナ・プラ(Botswana Pula, 通貨記号: P)。2024年7月末時点の為替レートは1米ドル=13.60プラで、プラと日本円のレートは概ね1プラ=10円前後で推移している(例: 1米ドル=140円の場合、1プラ≒10円)。

ボツワナ政府は安定した金融政策を維持しており、インフレ率は2023年に5.1%となっている。中央銀行(ボツワナ銀行)は政策金利を1桁台(2024年末時点で政策金利1.90%)に抑え、物価安定を図っている。

ボツワナは豊富なダイヤモンド資源に支えられた中高所得国であり、2023年の名目GDPは約194億米ドル、一人当たりGNIは7,620米ドルである。

ダイヤモンド産業が経済の柱で、輸出や政府歳入の大半を占めてきたが、近年は経済の多角化政策「Vision 2036」や国家開発計画の下で鉱業以外の育成に取り組んでいる。

2023年の実質GDP成長率は2.7%で緩やかな成長を示し、失業率は23.4%と依然高水準にある。

産業構成は鉱業(ダイヤモンド・銅など)のほか、牛肉輸出に基づく農牧畜、観光業、公的部門が主要な位置を占める。

日本とボツワナは1966年の独立以来友好関係にあり、在ボツワナ日本国大使館は2008年に開設された。貿易面では日本からボツワナへの輸出が2023年に約25.85億円、ボツワナから日本への輸入が約30.91億円となっており、日本は主に機械類や車両等を輸出し、ボツワナからダイヤモンド(宝石・工業用)が輸入されている。

日本企業の進出は限定的であり、拠点数は2024年時点で6社程度に留まる(鉱業向け機械や商社拠点など)。

一方、日本は長年にわたり政府開発援助(ODA)を通じた協力を行っており、火力発電所・道路建設への円借款や技術協力(職業訓練、人材育成など)を提供してボツワナの経済社会開発を支援してきた。

2. 法人設立制度

ボツワナで事業を行う法人形態としては、主に

(1) ボツワナ国内で新たに法人を設立する方法と、

(2) 海外法人を現地に登記する支店(External Company)として活動する方法

の2通りがある。

新設できる会社形態は会社法(Companies Act)上、

  • 有限責任会社(株式有限会社)、
  • 株主の少ないクローズド・カンパニー、
  • 保証有限会社

などが規定されている。

通常は株式有限責任会社(Company Limited by Shares)の形で設立され、公開会社(Public Limited Company, PLC)または非公開会社(Private Company, Pty Ltd)に分類される。非公開会社は株主数25名以下で株式の公募が禁止されており、公開会社は株主数に上限なく株式公開も可能である。

中小の外資企業には株主が1名から設立可能な非公開会社形態が一般的であり、他に現地登記の支店形態(External Company)も選択肢となる。支店は現地法人を新設しないため管理負担が軽い一方、ボツワナでの事業全責任が本社に及ぶ(無限責任)という特徴がある。

ボツワナでは外資に対して原則的に100%外資出資の会社設立が認められており、株主にボツワナ市民を含める法的義務はない。したがって日本企業が現地法人を設立する際も資本面で現地出資者を求められることはなく、親会社が全株式を保有できる(※取締役等の居住要件は別途あり)。

ただし一部の小売・サービス業など内需型の35業種については、商業取引法(Trade Act)によりボツワナ市民(あるいは市民が全株保有する法人)のみに免許が交付される「国民限定業種」に指定されている。

具体的には食料品の小売(スーパーマーケットチェーン除く)、酒類販売、ガソリンスタンド、美容院、タクシー営業、葬儀サービス、土地輸送業、小規模建設工事、家具製造などが該当し、外国企業がこれら業種に参入する場合はボツワナ人との合弁での中規模事業に留めるか、例外的に貿易大臣の事前承認を得て多数出資する必要がある。

この外資規制は地場中小企業保護の目的で運用されており、多くの製造業や輸出型産業については適用されない。

会社設立に必要な最低資本金の法定要件は基本的に存在せず、1プラからでも有限責任会社を設立できる。実務上は事業規模に見合った資本金を設定することが望ましいが、商業登記上の払込資本額に制限はない。

ただし、後述のように一定額以上の投資や外国人雇用ビザ取得の際には相応の事業資金を有することが事実上求められるケースがある。

法人登記は「会社・知的財産庁(CIPA)」が所管し、オンライン登記システム(OBRS)を通じて行うのが一般的である。

まず希望商号を3候補まで申請し、使用可能か名称調査を行った上で予約(予約料20プラ)する。その後、定款や株主・役員情報を登録システムに入力し、登録手数料360プラを支払って申請すると、問題がなければ数日〜1~2週間程度で法人登録証明書が発行される。

手続きはオンラインで完結可能だが、必要書類(設立申請書、役員の身分証明、住所証明など)は整備が必要である。

会社設立に際しては、少なくとも1名の取締役が「通常ボツワナ居住者」であること、および会社秘書役(Company Secretary)を任命することが義務付けられている。会社秘書役はボツワナ勅許会計士協会(BICA)会員や弁護士など資格を有する者が務める必要があり、登記申請時に秘書役の就任承諾も登録する。

これら要件・手続きを踏まえれば、ボツワナでの新規法人設立はオンライン化により以前より迅速化しており、手数料も低額で比較的手軽であるが、登記後には税務登録や事業免許取得など追加手続きが必要となる。

3. 税制度

ボツワナの法人所得税率は居住法人(一国二制度による本国税制の適用を受けない現地法人)の場合、標準税率22%である。また輸出型製造業など政府承認を受けた特定事業については優遇税制があり、適用対象となる「認可製造企業」の所得には15%の軽減税率が適用される。

他方、国外法人の支店形態(外資支店)はボツワナ源泉所得に対し30%の税率が課される。

なお2021年以降、特別経済区(SEZ)内で認可を受けた事業については、更に低い5%の特別法人税率(初年度から10年間、その後は10%)が適用される制度が開始された。

課税所得の算定にあたっては減価償却や損失繰越(通常期間6年、鉱業は無期限)、寄付金控除など一般的な税務調整が認められている。

源泉徴収税としては、配当金に対し10%(内国・非居住株主とも)、利子に対し居住者10%・非居住者15%、使用料に対し非居住者15%が課される。海外送金される配当・利息についてはこの源泉徴収をもって最終税となり、租税条約があれば軽減される場合がある(日本とボツワナ間に現在租税条約は締結されていない)。

法人税は年間を4期に分けて予定納税(SAT)し、事業年度終了後に確定申告を行う。法人の課税年度は通常7月1日から翌年6月30日だが、事業体ごとに選択も可能である。なお配当に対する二重課税を調整するため、法人段階の課税後に支払われた配当については受取側では非課税となる措置(免税配当)が設けられている。

ボツワナでは物品・サービスの売上に付加価値税(Value Added Tax, VAT)が課される。

標準税率は近年変更があり、2022年に一時12%へ引下げられた後、2023年4月より標準税率14%に戻された。VATは原則として国内取引および輸入取引に課税され、事業者はVAT登録義務がある(年間売上額が特定のしきい値以上の場合は強制登録、それ未満でも任意登録可)。

VAT登録事業者は売上VATから仕入VATを控除した差額を申告納付し、過払いの場合は還付を受けることができる。

基本的な食品・農産品や輸出売上には0%税率(ゼロ税率)が適用され、一部の金融・教育・医療サービス等は非課税(VAT対象外)と定められている。2023年の税法改正により、一定の生活必需品(調理前の食用油・動物飼料等)のVATゼロ税率範囲が拡大されるなどの措置も講じられた。

個人の所得税は累進課税で、課税所得が高くなるにつれて税率が0%から最大25%まで上昇する。税率構造は、年額48,000プラ以下の所得は非課税、48,001~84,000プラの部分に5%、84,001~120,000プラの部分に12.5%、120,001~156,000プラの部分に18.75%、156,000プラ超の部分に25%が課される。

非居住者についても税率帯は同じだが、最初から5%課税が適用される点が異なる。

給与所得については源泉徴収(PAYE制度)が義務付けられ、雇用主が月次で控除・納付する。社会保険料に相当する全国レベルの公的年金制度は存在せず、代わりに民間の積立年金基金(任意加入)が一般的なため、給与税以外の社会保障税はない。

また、キャピタルゲイン(資本利得)は譲渡益として別計算されるが累進税率(最高25%)で課税される。

不動産売買時には別途「譲渡益税」や登録免許税に類する税がかかるケースがあり、特に外国人が不動産を取得する際には物件価格に対して以前は30%もの高額な移転税(Transfer Duty)が課されていたが、2023年の法改正で非居住者の不動産取得税率は10%(物件価格200万プラ以下部分)に大幅軽減された。この改正により外国企業・個人による不動産購入時の税負担は緩和されている。

ボツワナには相続税・贈与税はなく、資本移転に関する課税は不動産の移転税(上記)程度である。

雇用主には従業員訓練のための「人材開発基金拠出金」が課されており、これは売上高の0.2%相当額が拠出金として徴収される制度で、付加価値税の仕組みを通じて歳入局(BURS)が代行徴収する。

また、取引相手が源泉徴収を行う形での税金も存在し、不動産賃料(年間48,000プラ超)に5%、建設工事代金に3%の源泉徴収税が定められている。

税務行政はボツワナ統合歳入局(BURS)が担当し、電子申告プラットフォームの導入など納税環境の整備が進められている。

4. 会計・監査制度

ボツワナでは国際会計基準の採用が進んでおり、公開会社および一定規模以上の非公開会社については国際財務報告基準(IFRS)の適用が義務付けられている。

2007年会社法および2010年財務報告法の下、公開会社および「非免除の私会社」(一定条件を満たし免除されていない非公開会社)はIFRSに準拠した財務諸表を作成しなければならない。上場企業や銀行・保険など公益性の高い企業(Public Interest Entities)は完全IFRSの適用が求められ、それ以外の中小企業についてはIFRS for SMEs(中小企業向け簡易基準)の使用も認められている。

ボツワナは1990年設立のボツワナ勅許会計士協会(BICA)が会計士資格の付与・監督を行い、2010年財務報告法に基づき設立された「ボツワナ会計監査監督庁(BAOA)」が会計・監査基準の採用と企業財務報告の品質管理を所管している。BAOAはIFRS基準書をそのまま受け入れる方針をとっており、現在ボツワナ国内ではIASBが公表する最新のIFRS基準がそのまま法的に有効となっている。

ボツワナ会社法では「免除私会社(exempt private company)」を除くすべての会社に財務諸表の法定監査を義務付けている。免除私会社とは一般に株主が役員を兼ねるなど小規模で外部利害関係者の少ない非公開会社を指し、その条件を満たす場合には監査が免除されうる。

一方で公開会社や免除対象外の会社は毎事業年度末に監査人による独立監査を受け、その監査報告書と財務諸表を株主総会で承認する必要がある。

監査人として署名できるのはBICAの公認会計士資格を持ち、かつBAOAにより監査実務登録された監査法人/会計士である。

上場企業については監査済み財務諸表を証券取引所(BSE)に提出し公開する義務があり、銀行など金融機関も監督当局への年次報告が課されている。一方、非公開会社は監査を受けた財務諸表を対外的に公開する法的義務はないが、歳入局への税務申告時や銀行融資時などには提出を求められる場合がある。

ボツワナで会計士・監査人として業務を行うには、ボツワナ勅許会計士協会(BICA)への会員登録が必要である。BICAは英国勅許会計士協会系の制度を踏襲しており、英国や南アフリカの会計士資格を持つ者にも相互認証の形で会員資格を付与している。

また監査業務を行うにはBAOAの発行する公認監査人ライセンスを取得しなければならない。

企業側の財務部門においても、一定規模以上の企業では財務担当役員にBICA会員を起用することが推奨される。

会社秘書役についても前述の通りBICA会員や弁護士資格者であることが要件となっている。

このように会計・監査の専門人材については資格制度により一定の水準が維持されている。

非公開会社の場合、法定監査を受けた財務諸表は社内保管が原則で、公的機関への定期提出義務はない。ただし、BAOAは公益性の高い企業(PIE)に対し財務報告のモニタリング権限を持ち、必要に応じて報告を求め監査品質を検査することができる。

公開会社はボツワナ証券取引所への年次報告書提出と投資家への開示が義務付けられる。

全ての会社は毎年、会社登記に関する年次届出(Annual Return)をCIPAに提出し、基本的な会社情報を更新する必要があるが、その際に財務情報の細部までは求められない。したがって、ボツワナでは未上場民間企業の財務諸表は外部から閲覧できず、信用調査には取引先から直接入手するか信用調査会社を利用する必要がある。

5. 労務制度

ボツワナの労働法制は主に労働法(Employment Act)に定められており、雇用契約は期間の定めの有無により無期契約と有期契約に大別される。試用期間(使用期間)についての規定は法律に明記されていないものの、慣行的に3〜6か月の試用期間を設ける企業が多い。雇用関係は原則として個人と企業の直接契約となるが、人材派遣会社が労働者を雇用して企業に派遣する形態(いわゆる雑役業など)が存在し、その場合も派遣労働者の最低賃金や労働条件は法により保護される。

ボツワナには産業別に最低賃金額が設定されており、労働省が定期的に見直しを行っている。

2024年2月に最低賃金の改定が実施され、多くの業種で時給9.06プラに引き上げられた。例えば建設業、卸売・運輸、製造業、サービス業(宿泊・娯楽・警備など)いずれも最低賃金は時給9.06プラ(改定前は7.34プラ)となっている。小売業についても同額の9.06プラ(改定前6.51プラ)に引き上げられた。なお家事使用人(メイド等)や農業分野は月額で定められており、農業労働者は月額1,500プラ(2024年改定、従前1,084プラ)となっている。

最低賃金の水準は日本円換算で時給約90〜100円程度と低く、人件費は比較的廉価である。ただし失業率が約27%(2024年)と高いため、都市部の技能労働者など一部職種では最低賃金を上回る水準での人材確保が必要となる。

法定の標準労働時間は週48時間(1日8時間・週6日)である。一般的な勤務体系は平日(月〜金)8時間+土曜半日勤務等で週40〜45時間程度に設定する企業が多い。週48時間を超える労働(残業)には時間外割増賃金の支払いが必要で、通常は平日残業が基本給の1.5倍、休日出勤は2倍の割増率が適用される。

週休は少なくとも連続24時間以上(日曜を休日とする例が一般的)与える義務がある。年次有給休暇は勤続1年ごとに最低15労働日(約3週間)付与され、未消化の場合は繰越しか買上げが必要となる。

また病気休暇についても年間14日(医師診断書提出の場合は年間30日まで)の有給保障が法律で定められている。

女性労働者には産前産後各6週間の産休があり、その間一定額の給与が支給される制度がある。

従業員を解雇(雇用契約の解除)するには正当な理由が必要で、不当解雇は法律で禁じられている。業績悪化などによる人員整理(整理解雇)や従業員の違法行為・能力不足による懲戒解雇の場合でも、事前の通知期間の付与または相当額の解雇手当(代償金)の支払いが求められる。解雇予告期間は勤続年数に応じて定められており、例えば2年以上5年未満の勤務者の場合30日間の予告、5年以上の場合60日間の予告が必要といった基準がある(雇用契約でより長い期間を定めることも可能)。

さらに勤続が長期に及ぶ従業員には「退職手当(Severance)」の支給義務が生じ、少なくとも勤続5年ごとに積み立てられた退職一時金を支払う必要がある。具体的には5年(60か月)継続雇用された労働者には1か月当たり基本給の1日分相当×60ヶ月=60日分の賃金が退職手当として支給される制度になっている(企業が同等以上の社内年金制度を有する場合は免除可)。この退職手当制度により長期勤続者の老後資金が一定程度保障される仕組みである。

ボツワナは労使関係が比較的安定した国と評価されているが、公務部門や鉱山セクターでは労働組合が組織されストライキが行われることもある。

労働争議が生じた場合、まず地方の労働局に紛争が通報され、政府の労働調停官が当事者間の和解を仲介する手続きが定められている。それでも解決しない場合には労働委員官から「セクション7証明」が発行され、労使双方は産業裁判所(Industrial Court)に訴えることが可能となる。法定の調停プロセスを経ずに行うストライキは違法となるため、大半の労働争議はまず調停段階で解決を図る。

ボツワナの腐敗認識指数(CPI)に見る低い汚職水準は労働行政にも反映されており、労働局での手続きが賄賂等で歪められる事態は稀である。全体として契約遵守意識は高く、従業員の権利保護と円満な労使関係の構築が重視される文化が根付いている。

6. 外国人進出企業向け制度

ボツワナ政府は海外からの投資誘致のため、複数の特別経済区(SEZ)を指定している。SEZに入居し認可を受けた企業には、税制・インフラ面で大幅な優遇措置が与えられる。

代表的なインセンティブとして、

  • 最初の10年間は法人税率5%(その後10%)という大幅な減税、
  • 原材料や機械設備の輸入関税免除、
  • 輸出向け原材料に対するVATゼロ税率、
  • 土地建物の取得にかかる移転税免除、
  • 操業開始後5年間の不動産税(財産税)免除

などがある。

また、99年間の長期土地リース契約の提供や、工業団地として整備された用地への優先入居、高速通信回線や上下水道等のインフラ完備、環境影響評価(EIA)手続のSEZ庁一括サポートといった優遇も提供される。

SEZ庁(SEZA)はワンストップサービス窓口を設置しており、企業登録、各種許認可、インフラ接続手配、税務登録まで一括して支援を行う。現在、ダイヤモンド加工の拠点であるガボローネ公園や、物流ハブとしてのシラセSEZなど複数のゾーンが稼働中で、製造業・物流業を中心に誘致が進んでいる。

一般の地域で事業を行う外資企業に対しても、政府は「ボツワナ投資貿易センター(BITC)」を通じワンストップ型のサービスを提供している。BITCは外国企業の会社設立手続き支援、事業許可・免許の取得サポート、現地サプライヤーや合弁相手の紹介、税関手続き相談など幅広く投資家を支援する窓口である。またBITCは特定の戦略分野(例:農業加工、金融サービス、エネルギーなど)への投資案件について、追加の税控除や補助金などを得られるよう政府と投資家の仲介も行っている。

ボツワナ政府は「経済多角化促進プログラム」の下、一定基準(輸出収入増、雇用創出、地域貢献など)を満たす新規投資プロジェクトに対し法人税の減免措置(先述の15%特別税率適用など)を個別認可する制度も運用しており、該当する場合はBITCを通じて申請が可能である。

全般的にボツワナはアフリカの中でも投資受入姿勢が良好な国と評価され、2022年には国際格付機関によるカントリーリスク評価で投資適格級を維持した。

日本国籍者は観光・商用目的の90日以内の滞在であればビザ不要で入国できる(二国間協定に基づく措置)。長期滞在や就労には就労許可証(ワークパーミット)と居住許可(レジデンス許可)が必要となる。

就労許可の取得には受入先企業が所管官庁に申請し、当該外国人の職務がボツワナ人では代替困難であることを示す必要がある。製造業・大型プロジェクトなどでは比較的許可が下りやすいものの、一般管理職や単純労務職への外国人起用は制限される傾向にある。近年では投資家や高度技能人材向けにビザ発給を迅速化する動きもあり、SEZ入居企業についてはSEZAがビザ・許可手続きの特別支援を提供している。

通常、就労許可は2〜3年ごとの更新制で、更新時には現地人材育成の進捗や事業の継続状況が審査される。なお、外国人駐在員の扶養家族についても付随的に居住許可が発給され、配偶者は別途就労許可なく就労できない点に留意が必要である。

ボツワナは1999年に為替管理を撤廃して以来、資本取引の自由化が確立されている。現在、外国為替及び資本送金に対する制限は原則存在せず、海外からの資本投資や利益・配当金の本国送金も自由に行うことができる。外貨建ての銀行口座開設も法人・個人ともに可能であり、企業は輸出代金や外貨借入金をプラ建てに強制転換されることなく保持できる。

ただし、マネーロンダリング防止(AML)の観点から、10万プラ相当額以上の国外送金を行う場合は銀行での申告手続きや送金理由の証明書類提出が求められる。また、企業が配当金やロイヤリティを海外送金する際には歳入局(BURS)から納税状況に問題がない旨の税務クリアランスを取得する実務慣行がある。これら手続きは為替統制ではなく税務管理上の措置である。

7. 金融・資金調達制度

ボツワナ国内には商業銀行が複数存在し、主な銀行としてはファースト・ナショナル銀行(FNB)、スタンダードチャータード銀行、スタンビック銀行、アブサ銀行(元バークレイズ)などが営業している。

法人の銀行口座を開設するには、会社登録証明書、取締役の身分証明書(パスポート等)と居住証明、株主構成や主要な事業内容の説明書類、税番号(TIN)の提示などが求められる。近年は金融当局の方針で口座開設時の顧客確認(KYC)が厳格化されており、取引銀行によって必要書類が若干異なるが、全般に準備書類が整っていれば口座開設手続き自体は数営業日で完了する。外国企業の現地法人や支店も、登記完了後であればプラ建て口座や外貨建て口座を自由に開設可能である。

なお個人(駐在員)の口座開設には就労許可や住所証明(公共料金請求書等)の提示が必要となる。

銀行は国内主要都市に支店網を持ち、インターネットバンキングも普及しているため、資金管理は比較的容易である。

現地銀行の貸出金利は中央銀行の政策金利に連動し、市場金利は2024年現在おおむね年6〜8%程度で推移している(ボツワナの政策金利1.90%+銀行のマージンを含む)。

資本市場面ではボツワナ証券取引所(BSE)に社債を上場することも一部企業で行われているが、基本的に資金調達は銀行借入に依存する企業が多い。南アフリカ共和国の金融市場とも繋がりが深く、必要に応じて南アフリカの銀行からボツワナ企業が資金調達するケースもみられる。

前述の通り外貨送金に制限はないため、企業は海外への送金(配当送金、輸入代金決済、親会社へのロイヤルティ支払い等)を自由に行える。商業銀行は主要通貨(米ドル、ユーロ、円など)の即日送金サービスを提供しており、SWIFTネットワークを通じた国際送金が可能である。

円貨建て送金も大手行では取り扱いがあり、日本への送金も円建て・ドル建ていずれかで迅速に処理される。為替取引についてはボツワナ・プラは国際的な取扱高が小さいため、日本国内銀行での直接両替は難しいが、プラ⇔米ドルの交換は国内銀行で日常的に可能である。

資金移動に際して注意すべき点は、送金額が大きい場合に銀行が資金の出所確認を行うことや、納税義務を確認するため歳入局のクリアランスレター取得を求めることがある点である。とはいえ、合法的な事業収益の範囲内であれば送金自体が規制されることはなく、企業は利益の本国送金や輸入代金支払いを滞りなく行える。

為替レートは管理フロート制の下で市場実勢に合わせて緩やかに変動しており、対米ドル相場は近年下落傾向にあるものの安定的である。

ボツワナでも近年、携帯電話を利用したモバイルマネー決済やフィンテックサービスの普及が進んでいる。通信各社(Mascom、Orange、BTCなど)は電子マネー口座を提供しており、都市・地方を問わず個人間送金や光熱費支払いに広く利用されている。

2024年時点で15歳以上のボツワナ国民の36.6%が何らかのモバイルマネー口座を保有しているとの統計があり、従来銀行口座を持たなかった層にも金融サービスが浸透しつつある。特に若年層や地方居住者にとって携帯決済は身近であり、給与の一部をモバイルウォレットで受け取るケースも増えている。

政府もキャッシュレス経済の推進を掲げており、2022年には電子決済の信頼性向上を目的とした決済システム規制の整備(フィンテック企業のライセンス制導入等)を行った。もっとも、電子商取引市場は規模が小さく、オンラインショッピングやデジタル金融商品は発展途上である。

8.コンプライアンス・その他リスク

ボツワナはアフリカで最も汚職が少ない国の一つとされ、2023年のトランスペアレンシー・インターナショナル腐敗認識指数(CPI)では100点満点中57点、世界180か国中43位と良好な評価を受けている。このスコアはアフリカ大陸内でトップクラスであり、汚職が社会に根深く蔓延していないことを示す。

同国では汚職・経済犯罪局(DCEC)が1980年代から積極的に汚職摘発に取り組み、公務員による収賄や公金横領には厳しい姿勢をとってきた。そのため、企業が役所で許認可を得る際に不当な賄賂を要求されるようなケースは極めて稀である。

ボツワナは政治的安定性が非常に高く、独立以来クーデターや内戦を一度も経験していない。与野党が存在する民主国家でありつつ、独立以降の長期政権与党が安定した統治を維持してきたという特徴がある。隣国も南アフリカ、ナミビア、ザンビア、ジンバブエと比較的安定した国々に囲まれており、周辺国との紛争リスクも低い。南部アフリカ関税同盟(SACU)や南部アフリカ開発共同体(SADC)の一員として地域協調を推進しており、近隣国との経済・人の往来も円滑である。

テロや戦乱といった地政学リスクは現時点で顕在化していないが、一方でボツワナ固有のリスク要因としては経済のダイヤモンド依存が挙げられる。ダイヤ価格の国際相場や需要変動によって国家収入が大きく左右されるため、世界経済の動向いかんでは政府歳入や為替相場に影響が及ぶ可能性がある。

また、大陸部の内陸国ゆえに港湾を持たず、輸出入は南アフリカやナミビアの港を経由する必要があるため、物流面で周辺国インフラに依存している。

総じてボツワナの治安は良好で、首都ハボローネでは夜間の徒歩移動も比較的安全と言われるが、失業問題に起因する軽犯罪(空き巣や窃盗)は存在するため注意が必要である。

ボツワナへの日本企業進出は他のアフリカ主要国に比べると少ない。多くは南アフリカや他国拠点からの駐在事務所や、特定分野でのニッチな事業展開となっている。現状では日本企業のプレゼンスは限定的で、ボツワナにおける外国企業と言えば南アフリカ資本や欧米資本が中心である。

ボツワナに進出するメリットとしては、まず政治・社会の安定と法制度の整備が挙げられる。汚職が少なく法治が行き届いているため、外国企業も公平にビジネスができる。

法人税率22%や配当の源泉税10%など税負担が適度に低く、特別経済区を活用すればさらに税率引下げや税免除の恩恵を受けられる。

南部アフリカ関税同盟(SACU)の一員であるため、ボツワナに拠点を構えることで南アフリカ共和国やナミビアなど周辺市場へ関税なしでアクセスできる点も戦略上有利である。

労働力は英語運用能力があり教育水準も比較的高い若年層が多く、技能訓練を施せば真面目に働く人材を確保できる。また現地人件費は総じて低廉で、特に非熟練労働力については周辺国よりもコスト競争力がある。

インフラ面では主要都市の電力・通信網が良好で、停電も少なく通信環境も4G通信が全国に普及している。

投資保護の観点でも、ボツワナは国際紛争解決機関への加入や投資保護協定の網にも積極的で、外国人資産の国有化リスクも極めて低い。加えて、豊富な野生動物と自然景観による観光ポテンシャルや、隣国ジンバブエ・ザンビアとのクロスボーダーインフラ(例:カズングラ橋)完成による物流効率化など、将来的な成長機会も期待される。

最大の課題は市場規模の小ささで、人口わずか260万人強の国内市場だけでは事業拡大に限界がある点である。そのためボツワナ拠点を周辺国市場攻略の一拠点と位置づけ、輸出ビジネスを前提にする戦略が求められる。

人材面では、高度技能人材(会計士、エンジニア、マネージャー等)が慢性的に不足しており、優秀な人材は南アフリカに流出するケースもある。

物流面では、ボツワナは海港から遠いため輸出入コストが割高になりがちであり、サプライチェーンの構築には注意を要する。

10. 参考ソース

  • 会社・知的財産庁(CIPA) – ボツワナの企業登記および知的財産登録機関
  • ボツワナ統合歳入局(BURS) – 税務当局
  • ボツワナ銀行(中央銀行) – 通貨金融政策・経済統計の公表
  • ボツワナ投資貿易センター(BITC) – 投資促進機関
  • 特別経済区庁(SEZA) – 特別経済区の規制・運営機関
  • ボツワナ勅許会計士協会(BICA) – 会計士資格付与・職業規範の団体

アンゴラ共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

アンゴラ共和国(Republic of Angola、現地語: República de Angola)

ルアンダ(Luanda)– 最大の都市であり、人口約907.9万人(2022年、国家統計院)。主要都市には旧都のウイラ州サウルイモネ(Lubango)や港湾都市ロビト(Lobito)などがある。

約3,668万人(2023年、世界銀行)。人口は若く増加傾向にあり、都市部への集中が進んでいる。

ポルトガル語(旧宗主国ポルトガルの影響)。ビリンバ語やコンゴ語など複数の現地言語も使用されるが、ビジネスや行政はポルトガル語が支配的。

クワンザ(Kwanza, AOA)。2025年4月末時点の為替レートは1 AOA ≈ 0.16 JPY、1 AOA ≈ 0.020 ZAR(概算)であり、変動相場制の下で通貨価値は近年不安定。中央銀行はインフレ抑制のため高金利政策を実施しており、政策金利も二桁台に及ぶ。

経済は石油に大きく依存し、原油価格の影響を受ける。

2024年の名目GDPは約1,184億米ドル、一人当たりGDPは約3,000米ドル強。

2025年の実質GDP成長率は+2.4%(予測)と緩やかな成長が見込まれ、消費者物価上昇率(インフレ率)は22.0%に達すると予測される。インフレ率は高位安定しており、中央銀行は通貨安と物価上昇に警戒を続けている。

主要産業は石油(輸出収入の約9割)およびダイヤモンドで、政府は農業・製造業振興による経済多角化を推進中。

2. 法人設立制度

アンゴラで一般的な法人形態は株式会社(Sociedade Anónima, S.A.)有限責任会社(Sociedade por Quotas, Lda.)である。

いずれも外国資本100%で設立可能で、外資企業に対する強制的な現地出資者の要求は2018年の新投資法以降原則撤廃された。

S.A.は株式による資本構成で株主数最低5名、Lda.は“クオータ”と呼ばれる持分による構成で出資者数2名以上とされる。

有限会社(Lda.)には法定の最低資本金規制はなく、出資者間の合意で任意に定められる。

株式会社(S.A.)は米ドル換算2万ドル相当の最低資本金が要求される。

資本金払込証明や公証を経て商業登記が完了するまでは営業開始できない。

会社設立は企業ワンストップ窓口(Guiché Único da Empresa, GUE)を通じて行う。

定款作成→公証人認証→商業登記簿への登録→納税者番号(NIF)取得→社会保障登録といった手続きをGUEが一括して支援する制度が整備されており、必要書類(定款、出資者身分証明、資本金払込証明など)を揃えれば数日~数週間で登記が完了する。

登記先機関は商業登記所(Conservatória do Registo Comercial)で、ルアンダではGUEでのオンライン登記も一部可能となっている。

かつては一定業種(石油・ダイヤモンド採掘、港湾など)で現地企業との合弁義務があったが、現在の民間投資法(2018年法10/18, 2021年法10/21改正)下では原則として外資100%事業が認められる。ただし、石油上流開発は依然として国営石油会社ソナンゴルとの協業が必須であるなど特別法による規制が残る分野もある。

また外資による不動産取得も可能だが、大口の土地取得には政府許可が必要になる場合がある。

取締役(Director)にアンゴラ国籍者や居住者を含める法定義務は存在しない。

取締役は外国人でもよいが、その場合労働(又は投資)ビザを取得し、商業登記簿に登録する必要がある。

少なくとも1名は現地における連絡責任者となることが望ましいとされ、現地代理人(弁護士や秘書役)の選任も推奨されている。

会社秘書役や法定代理人の設置義務はないが、S.A.の場合は監査役会(Conselho Fiscal)の設置が会社法上必要とされている。

全ての法人は商業登記後に税務登録を行い、年間の事業許可更新料や統計局への報告義務を負う。

また、商号は公序良俗に反しないポルトガル語表記である必要がある等の名称規制がある。

3. 税制度

アンゴラの法人所得税(Imposto Industrial)は標準税率25%である。銀行・保険・通信など特定セクターの所得には35%の引き上げ税率が適用される。

課税対象は世界所得(居住者法人の場合)。

課税年度は暦年で、年度終了後(12月末)から翌年5月末までに確定申告・納税を行う。

中小企業には簡易課税制度があり、売上一定以下(3.5億クワンザ未満)の企業は簡易帳簿で計算された所得に対し特別税率(6.5%等)で源泉徴収をもって納税を完結させることも可能である。

なお、石油・ガス開発事業には別途石油所得税(50%前後の高率)や生産分与契約が適用される。

2019年に導入された付加価値税(Imposto sobre o Valor Acrescentado, IVA)が国内売上および輸入に課される。

標準税率14%で、ほとんどの物品・サービスに適用。生活必需品(一部食品等)や農業資材には5%の軽減税率、ホテル・レストラン等や簡易課税対象事業者には7%の特別税率が適用される。輸出取引は零税率(0%)でVAT還付の対象。

申告は月次で行い、税務当局(AGT)へ電子申告・納付する。

導入当初は徴税インフラ未整備から猶予措置もあったが、現在は大企業を中心にVATシステムが定着している。

給与所得等に対して課される個人所得税(Imposto sobre os Rendimentos do Trabalho)は累進課税であり、最高税率は25%。給与は雇用主による源泉徴収が完結税となり、月給制従業員は確定申告不要。

自営業者は一定額について源泉徴収6.5%、その他部分に25%を適用する仕組み。

なお役員報酬等も給与所得とみなされ課税される。

社会保障負担控除等ごく一部の控除を除き、減税措置は限定的。

配当・利息・ロイヤルティ等の投資所得には一律10%の源泉課税(Imposto sobre a Aplicação de Capitais)があり、非居住者への支払いも10%である。

技術サービス料についても源泉徴収義務があり、国内・非居住者とも現在6.5%の税率(2022年引下げ)が適用され最終税となる。

これら源泉税は国外送金時に課される特別拠出税(以前は10%)と統合されており、外国企業に対するサービス費用支払いも所定の源泉徴収で完結する。

アンゴラにはこの他、印紙税(特定契約や公証行為に定額課税)、不動産移転税(譲渡価額の2%)、関税(最恵国税率0~50%の範囲)、消費税(ぜいたく品等に追加課税)などがある。

雇用に伴い社会保障拠出金(後述)も事業者負担が発生する。

地方税は未整備で、法人税・間接税はすべて国税となっている。

また、アンゴラは現時点で日本と租税条約を締結しておらず、二重課税回避は外国税額控除や法人税の益金不算入規定に依拠する(2024年現在、条約締結済は中国本土・ポルトガル・UAEのみ)。

税務当局は一般税務局(AGT: Administração Geral Tributária)で、財務省傘下に統合された組織が徴税を管轄する。

納税者番号(NIF)取得が法人・個人双方に義務付けられ、電子申告システム「ポルト(Portal do Contribuinte)」上で法人税・VAT申告が可能。

VATの還付申請も制度上可能だが、実務的には税務当局の審査に時間を要する傾向があり、繰越控除で調整する企業が多い。

税務調査は頻繁ではないが、油田関連や輸出入業者には抜き打ち検査が入ることもある。

罰則は延滞税・加算税の賦課や重過失時の刑事罰があり、企業は現地税理士・会計士の助言の下で適法な税務履行を求められる。

4. 会計・監査制度

アンゴラでは現在、一般企業向けに独自の会計基準(Angolan GAAP)が適用されている。

上場株式市場は未整備だが、銀行など金融機関には国際会計基準(IFRS)の適用が義務付けられている。中央銀行(BNA)の規定により、全銀行は2017年までにIFRSで財務諸表を作成することが定められ、実際に全商業銀行がIFRSベースで報告している。

それ以外の民間企業については、現在アンゴラ国内基準(2009年制定の会計基準計画PGC)による計算が行われており、IFRS for SMEsの導入は検討段階である。もっとも外資系企業の中には任意にIFRS基準で帳簿整備する例もあるが、税務申告上はアンゴラ基準へ調整する必要がある。

将来的には資本市場育成に合わせ、一般事業会社へのIFRS適用拡大も予想される。

会社法上、株式会社(S.A.)は監査役会または監査委員を置き監査を受ける義務がある。

他方、有限会社(Lda.)では法定監査の義務はないが、一定規模超のLda.(売上高や総資産の基準あり)は外部監査人を任意選任することが推奨されている。

金融機関や公開会社(将来の証券取引所上場企業)は外部監査が必須であり、監査報告書を金融当局へ提出する義務がある。

監査は国際監査基準(ISA)に準拠して行わる。

アンゴラで計算業務や監査業務を行う専門家はアンゴラ勅許会計士・監査士協会 (OCPCA) に登録する必要がある。

OCPCAは大統領令232/10により設立された公認団体で、必要資格は大学での会計・監査教育、実務経験、試験合格等と定められている。外国資格者がアンゴラで監査を行う場合、OCPCAへの一時登録や現地会計士との提携が必要となる。

会計年度末(12月31日)には翌年3月までに財務諸表を作成し、必要に応じて株主総会承認と監査人意見を得るフローとなる。

なお、アンゴラ政府は会計人材の育成を課題と認識しており、日本も含む海外からの技術協力を受けて会計士養成を進めている。

5. 労務制度

アンゴラの雇用関係は労働法(Lei Geral do Trabalho)によって包括的に規制される。契約形態は期間の定めのない常用契約が原則だが、プロジェクト期限付きの有期契約(最長5年、更新可)も認められる。

試用期間は職種により最大6か月まで設定可能。法定の最低賃金は月額32,181.15クワンザ(2023年)と定められているが、実際には職種別最低賃金(石油セクター等はより高額)やインフレ調整が行われるため都度確認が必要。

給与の現地通貨払いが原則で、外貨払いには中央銀行許可が必要となる。

原則として週44時間、日8時間が法定労働時間の上限である。時間外労働は1日2時間まで、週54時間(通常時間と合計)まで認められており、所定割増賃金(平日残業は50%増し、休日勤務は100%増し等)を支払う義務がある。

労働者には勤務時間内に1~2時間の休憩(食事休憩等)を与える必要があり、5時間連続勤務は認められない。

週休は通常日曜日(加えて土曜午後)で、少なくとも連続36時間の休息を保証しなければならない。

年次有給休暇は勤務12ヶ月につき連続22営業日(約1ヶ月)取得する権利がある。勤続5年ごとに休暇日数が増加する長期勤続休暇制度もある。

病気休暇は医師診断書により年間最大26週間の休業保証(賃金の一部は社会保障から給付)。

出産休暇は連続12週間(予定日4週前から取得開始)付与され、その間は給与全額が社会保障より支給される。復職後も子供が生後15ヶ月に達するまで1月1日の有給休暇(授乳休暇)が認められる。父親には法律上有給父親休暇1日が付与される。

祝祭日は独立記念日(11/11)等年間約14日が法律定休日と定められる。

賃金は月1回以上の支払いが必要で、遅延支払いには罰則が科される。

ボーナス支給は法定ではないが、慣行的に13ヶ月目給与(クリスマス手当)を支給する企業も存在する。

被用者は社会保障基金に加入し、拠出率は会社負担8%・本人負担3%である(給与天引き後に企業がまとめて納付)。社会保障は年金、疾病手当、失業手当などをカバーする。なお、労働者への住宅手当・通勤手当は一定額まで非課税所得として認められている。

アンゴラ労働法では解雇には正当な理由(Justa Causa)が必要とされる。労働者の重大な職務懈怠や背信行為などを除き、使用者側からの一方的解雇は制限される。経済上の理由による人員整理(客観的理由による解雇)の場合でも、所定の手続き(労働総局への通知・労組協議・30~60日前予告)が求められる。不当解雇と認定された場合、労働者は復職または補償金支払いの救済を受ける権利がある。

労働者からの自己都合退職の場合、勤続1年未満は15日、1年以上は30日の事前通知期間が必要。契約期間満了時の退職(有期契約満了)は所定の勤続補償金を支払う義務があり、一般に勤続年数に応じ1年当たり1ヶ月分程度の補償が支給される。

アンゴラ憲法は労働者の団結権を保障しており、組合の結成・加入は自由である。主要産業毎に労働組合が存在し、労使交渉による団体協約が締結されている場合もある(石油業界では強力な労組が賃上げ交渉を実施)。

ストライキ権も法律上認められているが、実際のスト実施には政府への通知や調停手続きが必要。労使紛争は労働裁判所や調停機関に付され、裁判は長期化する傾向がある(契約執行の司法手続きは世界でも最長水準)。

そのため、紛争未然防止のためにも日頃から労務管理を適切に行い、組合とも対話を維持することが重要である。

6. 外国企業向け支援制度

アンゴラ政府は外資誘致のため民間投資・輸出促進庁(AIPEX)を設置している。AIPEXは投資案件のワンストップ窓口として、プロジェクト申請の受理、投資契約の交渉、税制優遇の付与等を担当する。

民間投資法(2021年改正)により、投資家はAIPEXに対し投資計画の事前申告(または契約交渉)を行い、認可を得ることが推奨されている。これにより外資企業は後述の利益送金保証や税優遇を享受できる仕組みである。

1,000万米ドル超の大型案件や50人超の雇用創出案件は投資契約方式となり、政府と個別交渉でインセンティブを取り決める。それ未満の案件は定型的な事前届出方式で承認される(いずれも認可自体は義務ではないが、多くの企業が利用)。

認可投資プロジェクトには税制上の優遇が与えられる。

民間投資法および税優遇コードに基づき、投資分野と立地地域に応じ法人税・財産税・印紙税・配当源泉税などの減免措置(最大10年間の一定割合減税)が適用される。特に農業・製造業・医療教育など優先分野、および内陸部や北部カビンダ州など開発重点地域(Zone C・D)での投資は手厚い減免が受けられる。例えばゾーンC/Dでは法人税を最大85%減免、期限の制限も2021年改正で撤廃された。加えて輸入関税の免除、機械設備の増値税免税なども可能。

首都圏ルアンダ周辺にはルアンダ=ベンゴ特別経済区(ZEE)が整備され、区画内に進出する企業には用地リース料低減やインフラ優先提供のメリットがある。ZEEは製造業誘致を目的に2009年設立され、2022年には「世界有望経済区50」に選出されるなど拡充が進む。

さらに2023年にはカビンダに初の自由貿易区が設置され、域内企業には関税・間接税の全面免除措置が講じられている。

外国投資家には法律上、投資実行後に得た利益・配当の海外送金権が保証されている。投資認可を取得し、現地で納税義務を果たした後は、配当金や清算利益を制限なく本国送金可能である。

ただし外貨管理の実務面では中央銀行(BNA)の規制が存在する。アンゴラは2018年まで外貨不足が深刻で、国外送金に長期間を要する事例が多発した。現在もBNAは外貨持出に対し日次・月次制限枠を設定し、正当な取引に基づく送金(配当送金、親子ローン返済など)であっても即時には外貨調達できない場合がある。

したがって、余裕をもった資金計画と、必要に応じ現地銀行との折衝(優先的に外貨割当を受けるための手続き)が重要となる。

なお民間投資法改正により、以前存在した「投資完了まで外国企業は現地銀行から融資不可」との制限は撤廃され、現在は外資企業でも現地金融機関からの融資利用が可能となっている。

2018年以降、日本を含む一部国籍に対して観光ビザ(従来の業務渡航ビザ統合)のオンライン申請・空港発給が開始され、短期出張が容易になった。

長期駐在には労働ビザ(雇用主の受入れ前提、2年まで)または投資ビザが必要である。

投資ビザ(旧称Privileged Visa)は一定額以上を投資する外国人に発給され、2年間のマルチビザとして発給・更新可能で、3年間継続滞在すれば永住権申請資格も得られる。投資ビザの資本要件は段階別に設定され、最低5千USDから最大1500万USD以上の投資まで範囲があった(現在新規要件策定中)。

労働ビザについては、ポルトガル語翻訳の学位証明や無犯罪証明など煩雑な書類準備を要するため、現地の弁護士・エージェントのサポートを受けることが一般的である。なお、外国人不法就労への罰則は近年強化されており、企業・本人ともに厳しい処罰(懲役刑を含む)の対象となりうる。

7. 金融・資金調達制度

アンゴラで事業を行うには、現地銀行での口座開設が不可欠。主要都市ではBNA(国立銀行)認可の商業銀行(バンク・フィナンシエロBFA、アングラント銀行BAIなど)が営業しており、法人は会社登記証や納税者番号証明、取締役パスポート等の提出により口座を開設できる。

クワンザ建ての当座預金口座が一般的だが、ハードカレンシー(USDやEUR)の外貨口座も条件付きで開設可能(輸出企業や特定用途に限定)。

口座開設には本社の銀行紹介状が求められる場合もある。近年はマネーロンダリング対策が強化されており、厳格なKYC審査と取引モニタリングが行われる

。国際送金はSWIFT経由で可能だが、外貨不足時には着金まで時間を要することもある。

2018年以前は外資系企業が現地銀行からローンを受けるには投資完了後でなければならない制限があったが、現在この制約は撤廃された。外資企業でも営業開始直後から現地融資の検討が可能である。

商業銀行の貸出金利は政策金利の高さを反映し年20%前後と割高だが、信用力の高い企業(大手商社の子会社等)には比較的低利のドル建て融資が提案されることもある。アンゴラ政府系の開発銀行(BDA)は地場中小企業向けの低利融資スキームを運営しているが、外資企業は対象外。

貿易金融では輸出信用状(L/C)取引が一般的で、日本向け輸出については日本の商社金融やNEXI保証付き融資の活用例もある。

アンゴラは外貨管理が厳格な国として知られる。

輸出代金は原則として90日以内に本国送金しなければならず、海外への役務支払いも正規の請求書と税務申告を経て承認される。

外貨の社外持出には中央銀行のモニタリングがあり、累計一定額以上の送金は中央銀行の事前許可が必要となる。為替は2018年に固定相場制を廃止し管理フロートに移行したものの、政府はクワンザ急落時には市場介入を行い安定を図っている。結果として公式レートと闇レートの乖離は大幅に縮小したが、依然として企業は為替リスク管理が重要。

為替デリバティブ市場は未発達で、輸入企業はドル建て収支によるナチュラルヘッジや、親会社からの外貨借入を利用している。

アンゴラの金融インフラは近代化が進み、全国共通のATM・POSネットワーク「マルチカイシャ (Multicaixa)」が整備されている。クレジットカード決済も都市部で普及しつつある。

一方、電子マネー・モバイル決済も成長中であり、中央決済機関EMIS主導でモバイル送金サービス「e-Kwanza」や各携帯会社の電子ウォレット(Unitel Money等)が提供されている。2022年時点でモバイルマネー登録者数は約100万人と報告された。

政府は金融包摂を重要政策と位置付け、地方農村でも携帯決済が利用できるよう環境整備を進めている。外国企業も現地のモバイル決済プラットフォームと連携し、小口決済や給与支払いの効率化を図るケースが出始めている。もっとも現時点では、大半の商取引は銀行振込や現金決済が主流であり、大口送金は銀行ネットワーク経由となる。

アンゴラには現在、株式市場が存在しない。国債および一部社債がアンゴラ債券取引所(Bodiva)で電子取引されているのみである。

将来的に証券取引所開設計画があるものの、企業数や投資家育成が課題となっている。

外資企業が現地で株式公開による調達を行う環境は未整備であるため、資金需要は銀行借入や親会社からのエクイティ増資で賄う形になる。

8. 文化・商習慣・リスク

アンゴラの商習慣はポルトガルとアフリカの融合である。公用語がポルトガル語であるため、ビジネス上のコミュニケーションはポルトガル語となる可能性が高い(英語は一部の高学歴層のみ)。契約や公式文書も基本的にポルトガル語で作成される。

契約執行の難易度は高い。前述の通り裁判所での係争解決には非常に時間がかかり(世界銀行の評価で契約履行に要する期間は世界最遅水準)、法制度も旧ポルトガル法の影響で形式的要件が多い。例えば公証人による署名認証やポルトガル語翻訳が要求される場面が多々ある。

透明性国際の腐敗認識指数(CPI)では、アンゴラは2023年にスコア33/100・180ヶ国中121位と低く、官民とも汚職リスクが高いことを示している。特に公共契約取得や税関での通関時に非公式な賄賂要求が発生することが報告されている。

近年、政権は汚職防止法整備を進め、多少の改善(2019年からスコア+14ポイント)を見せているものの、なお企業活動には慎重なコンプライアンス対応が求められる。

アンゴラは2002年の内戦終結以降、政治的安定を保っている。与党による一党支配体制であり、大規模な内乱やテロのリスクは低い。

ただし懸念が全く無いわけではなく、石油埋蔵地帯の飛地カビンダ州では分離独立を主張する武装勢力(FLEC)が断続的に活動し、まれに治安事案が発生する。

また隣国コンゴ民主共和国からの難民流入や国境犯罪も懸念材料である。

中国との関係では、内戦後に中国政府・企業から巨額のインフラ融資と建設支援を受けた経緯があり、対中債務依存がリスク視されている。

原油価格の急変や主要貿易相手国(中国・米国)の経済動向がアンゴラ経済に直結するため、国際情勢の変化がビジネス環境に波及しやすい。

9. 留意事項

アンゴラのビジネス環境はアフリカの中でも難易度が高い部類に入る。世界銀行のビジネス環境ランク(2020年)では190ヶ国中177位と、ナイジェリアやエチオピアより下位であった。

アンゴラは資源大国ゆえ参入の魅力は大きいが、それに見合うリスクテイクが必要となる。アンゴラは競合こそ少ないものの、法制度未整備・行政能力不足が課題となる。

アンゴラでビジネスを営む上で、税務手続きの煩雑さに留意が必要となる。例えばVATの導入初期にはシステム不具合や税務官の知識不足から適切な申告が困難な場面があった。

また、外国企業が現地法人から配当をあげる際、上述の外貨規制も相まって税引後利益の還流に時間を要するなど、財務管理上の不確実性が高い。

法務面でも、労務紛争への対処や契約書レビューにはポルトガル法の専門知識が不可欠で、在ポルトガルの法律事務所と提携している例が多い。

以上より、専門家サービスへの依存度が高く、コスト要因となることを織り込む必要がある。

アンゴラ国内の会計士・弁護士など専門家人材はその質と数は依然限定的である。四大監査法人の現地事務所にはポルトガルやブラジルから派遣された人材が多く、サービス費用も高額で中小企業には利用が難しい。

ビザ・就労許可の延長更新に時間がかかることが多く、書類は早めに準備し継続的に入管当局をフォローすることが必要である。

10. 参考・法令ソース

  • 在アンゴラ日本国大使館 – 「アンゴラ基礎データ」「経済関係基礎データ」
  • 日本国外務省 – 「アンゴラ基礎データ」
  • アンゴラ投資促進庁(AIPEX)
  • アンゴラ国立銀行(BNA) (金融政策、通達・為替管理規則)
  • アンゴラ一般税務局(AGT)
  • 民間投資法: Lei n.º 10/18 de 26 de Junho 2018(2018年民間投資基本法)およびLei n.º 10/21 de 22 de Abril 2021(改正法)
  • 商事会社法: Lei das Sociedades Comerciais (Law No. 1/04)
  • 労働法: Lei Geral do Trabalho – Lei n.º 12/23 de 27 de Dezembro 2023
  • 税法典: Código Geral Tributário(税務一般法)、Código do Imposto Industrial(法人税法)、Código do IVA(付加価値税法)等
  • 為替法: Lei do Cambiou e Regulamentação Cambial(2012年改正外為法および規則集、外貨送金や投資家送金保証規定)

ポルトガル語用語日本語訳(定義)
Lei de Investimento Privado民間投資法(外国投資基本法)
Agência de Investimento e Promoção das Exportações (AIPEX)投資・輸出促進庁(AIPEX)
Sociedade Anónima (S.A.)株式会社(株式による有限責任会社)
Sociedade por Quotas (Lda.)有限会社(出資持分による有限会社)
Guiché Único da Empresa (GUE)企業ワンストップ窓口(商業登記・設立手続き窓口)
Imposto Industrial法人所得税(産業税)
Imposto sobre o Valor Acrescentado (IVA)付加価値税(VAT)
Imposto sobre Rendimentos do Trabalho (IRT)所得税(労働所得に対する個人所得税)
Banco Nacional de Angola (BNA)アンゴラ国立銀行(中央銀行)
Administração Geral Tributária (AGT)一般税務局(国税庁、税務当局)
Ordem dos Contabilistas e Peritos Contabilistas de Angola (OCPCA)アンゴラ公認会計士・監査士協会
Lei Geral do Trabalho (LGT)労働法(アンゴラ労働に関する基本法)
Zona Económica Especial (ZEE)特別経済区(ルアンダ=ベンゴ経済区)
Visto de Investidor (visto privilegiado)投資ビザ(旧称優遇ビザ)
Multicaixaマルチカイシャ(アンゴラ全国共通ATM・決済ネットワーク)

モザンビーク共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

  • モザンビーク共和国(Republic of Mozambique)。
  • 首都マプト(Maputo)は人口約112万人(2017年)を擁する港湾都市。
  • 国土面積約79.9万平方キロメートルで、日本の約2倍に相当する。
  • 人口は約3,389万人(2023年、世界銀行)とサブサハラ地域でも中規模の国家。
  • 公用語はポルトガル語であり、他に多数の先住民族語(マクア語、シャンガーナ語等)が話される多言語社会である​。
  • 通貨はモザンビーク・メティカル(Metical, 通貨記号: MZN)。2024年8月時点の為替レートは1米ドル=約63.9メティカル。
  • 主要産業は農林業(トウモロコシ、砂糖、カシューナッツ等)、鉱業(アルミニウム、石炭、天然ガス等)であり、近年は豊富な天然資源の開発が経済成長を牽引している。
  • 2023年の名目GDPは約206億米ドル、一人当たりGNIは530米ドルと低所得国に分類される水準である(2023年、世界銀行)。
  • 実質GDP成長率は2023年に5%を記録し、物価上昇率(インフレ率)は7.1%で推移した​。
  • 失業率は公的統計上3.5%(2023年)と低く見えるが、非正規就労や都市部の高失業が課題となっている​。
  • 1975年の独立と同時に日本はモザンビークを国家承認し、2000年に在モザンビーク日本国大使館を開設して以降、外交関係は良好である​。
  • 経済面では日本とモザンビークの貿易額は近年拡大傾向にあり、2023年の日本からモザンビークへの輸出は158.2億円、モザンビークから日本への輸入は263.0億円である。
  • 日本からは自動車や鉄鋼等を輸出し、モザンビークからは天然ガス、石炭、農産品(ゴマなど)を輸入する関係にある​。
  • 日本政府は円借款や無償資金協力による開発援助を実施しており、2021年度末までの累計で有償資金協力約752億円、無償資金協力約1,265億円を供与している。
  • 現地に滞在する邦人は148人(2023年10月現在)​と少数だが、日系企業は資源開発やインフラ分野を中心に約30社進出している(2020年10月時点)​。

2. 法人設立制度

モザンビークの会社法(2005年商法、法令第2/2005号)では5つの形態の法人設立が可能である。一般的に設立される法人形態は、出資者の責任が限定された「有限会社(Sociedade por Quotas)」または「株式会社(Sociedade Anónima)」であることが多い。

有限会社は株主2~30名で設立し(単独出資者による一人有限会社も可)、株式会社は株主3名以上が必要となる​。最低資本金額の法定規定は存在しない(資本金額に応じて登記料が変動)ため、少額資本でも設立可能な制度である​。

出資比率に関する外資規制は原則存在せず、外国人資本100%で現地法人を設立可能である​j。ただし特定業種については別途外資参入規制が設けられており、例えば旅行代理店業は筆頭株主がモザンビーク籍でなければならず、民間警備会社は外国資本が株式の過半数を保有できないと規定されている。また建設業については外国企業が公共工事を請け負う場合、10年以上の国内事業経験とモザンビーク資本過半が要求される。

会社登記手続は商工省傘下のワンストップサービス窓口「BAU (Balcão de Atendimento Único)」が一括して管轄する​。

設立手順は商業登記所での商号登録(名称予約)に始まり、

  • 定款の作成・公証
  • 登記(登記証明書の取得)
  • 税務登録(納税者番号NUITの取得)
  • 商業ライセンス(Alvará)の取得
  • 初期活動の宣言
  • 社会保険公庫(INSS)への登録

という順序で進む​。

現在はBAUにてこれら一連の手続きをまとめて行うことが可能であり、首都マプトを含む各州主要都市にBAU窓口が設置されている。

定款は公用語であるポルトガル語で作成し、出資者情報・社名・目的・資本金・機関設計等の基本事項を定めた上で官報掲載される。

全ての法人は営業開始にあたり業種に応じた商業ライセンスを取得する義務がある​。製造業や建設業の場合は別途産業別ライセンスも必要となる。

海外企業が直接モザンビークで事業を行う場合、現地法人の設立以外に「外国企業商業代表」(Foreign Commercial Representative)として登記する選択肢がある。これは商法第85条に基づき、外国企業がモザンビーク在住の代表者を指名して現地企業に業務委託する形で商業活動を行う制度である。

外国企業商業代表として事業を行う場合も通常の商業ライセンスに加えて所定の認可を取得する必要があるが、現地法人を新設せずに1年以上の継続事業が可能となる枠組みである​。

モザンビークでは憲法上すべての土地が国家所有と定められており、企業や個人による土地の私有は認められていない​。

代替措置として土地利用権(通称「DUAT」)が国家より付与される制度であり、外国企業の場合は最初2年間の暫定使用権が与えられ、所定の許可手続きを経て最長50年間の本使用権(更新可)が取得できる。

したがって工場用地やオフィス用地は所有ではなく長期リース(使用権)の形で確保する必要がある。

3. 税制度

モザンビークの法人所得税の標準税率は32%である(2008年法令第9/2008号)​。この税率が基本適用されるのは一般企業であり、公益法人(公共事業団体やスポーツ協会等)や政府機関には法人税が課されない。

特定分野には減税措置があり、文化・手工業振興を目的とする組合は税率16%(標準税率の半分)に軽減される​。さらに農業・畜産・養殖・都市交通業の事業者については、2023年1月1日から2025年12月31日まで期間限定で法人税率を10%に引き下げる優遇措置が講じられている​。

キャピタルゲイン課税については、非居住者がモザンビーク国内資産を譲渡した場合に32%の譲渡益税が課される(2014年改正)​。

源泉徴収税として、非居住法人がモザンビーク源泉所得を得る場合には原則20%の源泉課税が行われる(農業プロジェクト向け融資利息を除く)。同様に非居住個人に対しても20%の一律課税(源泉徴収)が適用される仕組みである。なお農業部門の振興策として、2023~2025年は国外から農業事業者への支払いについて源泉税10%の軽減税率が適用されている​。

付加価値税は標準税率16%で全国で課税される​。

課税対象は物品の販売およびサービス提供であり、輸出取引には0%税率が適用される。

特定の公益的サービス(金融、医療、教育など)や生活必需品にはVAT非課税措置や免税が定められている。例えば銀行業務、保険、医療・教育サービス、生鮮食品・医薬品等は課税対象外となる。一部品目には**軽減税率5%**も導入されており、ごく一部の指定商品のみに適用される。

VATの納税は月次で行われ、一定規模以下の事業者には簡易課税制度も存在する。

個人の所得税は累進課税であり、所得額に応じて税率が5段階で設定されている。

2023年時点の税率構造は、課税所得0~42,000MZNが10%、42,000超~168,000MZNが15%、168,000超~504,000MZNが20%、504,000超~1,512,000MZNが25%、1,512,000MZN超が32%の最高税率となる。年間所得が一定水準以下の低所得者には定額の控除が認められるほか、扶養家族の人数に応じた控除制度がある。

モザンビーク居住者(年183日以上滞在等の要件)は全世界所得が課税対象となり、非居住者はモザンビーク源泉所得のみ20%の定率課税となる。

この他、企業・個人には社会保障負担や間接税が存在する。

社会保険料は法定加入制で、雇用者(企業)が給与額の4%、被用者(労働者)が3%を毎月拠出する(詳細は労務制度参照)。

間接税としては、特定消費税(物品税)が酒類・たばこ・高級品等に課されており、例としてタバコ75%、ワイン55%、化粧品30%などの税率が定められている。

関税については南部アフリカ開発共同体(SADC)の協定に基づき域内貿易では段階的な関税撤廃が進められている。

モザンビークは諸外国と租税条約(租税二重課税防止協定)を締結しており、ポルトガル、南アフリカ、インドなど9か国との間で配当・利子・使用料等の軽減税率が適用される​。日本とは現時点で租税条約が締結されておらず、日本企業にはモザンビーク国内法の源泉税率(配当20%など)がそのまま適用される点に留意が必要である​。

モザンビークの財務報告制度は2005年商法および2009年政令第70/2009号に基づいて定められている​。2009年の会計制度改革により国際財務報告基準(IFRS)に準拠した勘定科目体系(Plano Geral de Contabilidade)が導入され、2010年1月以降、大中規模の企業はIFRSベースの会計処理が義務付けられた。

具体的には大企業(年間売上高または総資産が1,275百万MZN超、もしくは従業員500人超)および中企業(売上高または資産が500百万~1,275百万MZN、従業員250~500人)の企業は、IFRSに準拠した「企業会計制度(SCE)」による財務報告を行う必要がある。

一方、小規模企業(売上高・資産が500百万MZN未満、従業員250人未満)には報告負担軽減のためIFRSを簡易化したローカル基準(PGC-PE)が適用され、2011年から簡易会計基準が運用されている。

いずれの場合も複式簿記による記帳と年度末の財務諸表作成が法定義務となっており、すべての企業は暦年(1~12月)を事業年度として毎年5月31日までに前年度の決算報告書を税務当局へ提出する必要がある。

上場企業や金融機関などの公益企業は法定監査の対象であり、必ず公認会計士または監査法人による外部監査を受けなければならない。公開会社以外の民間企業については、株式会社(S.A.)および現地支店に対して計算書類の外部監査が義務付けられている​。

一方で最も一般的な有限会社(Quotas社)については法律上必ずしも監査義務はなく、規模に応じて任意監査となっている(ただし銀行借入や株主の要求により監査が行われるケースもある)。

監査人はモザンビーク会計・監査人協会(OCAM)に登録された資格保持者でなければならず、国際監査基準(ISA)に準拠して独立監査を実施する。

モザンビークには監査大手(ビッグ4)の現地事務所が存在し、日系を含む外資系企業の多くはこれら国際事務所や現地有力監査法人のサービスを利用している。

帳簿は原則ポルトガル語で整備し、すべての取引を逐次記録することが必要である。法定帳簿には仕訳帳、元帳のほか在庫台帳や固定資産台帳等が含まれ、税務調査時にはこれらの提示を求められる。

また、2018年施行の実質的支配者登録制度により、全ての法人は最終実質支配者(Beneficial Owner)の情報を登記当局に届け出る義務を負う。違反時には法人登記簿上の手続が受理されない等の罰則が定められており、会社設立後はガバナンスやコンプライアンス体制の整備も重要となっている。

モザンビークの労働法制は2023年に大幅改正が行われ、現行の労働法(法律第13/2023号)に基づき雇用関係が規定されている​。

法定労働時間は週40時間(1日8時間×週5日)を原則とし、最大で週48時間まで延長可能とされる。企業は職場ごとに就業時間帯を定め労働省(労働雇用社会保険省:MITESS)に届出・承認を得る義務がある。

時間外労働(残業)は所定労働時間の50%増し以上の割増賃金支払いが必要で、残業時間には月単位・年単位で上限が設けられている。

年次有給休暇は勤続12カ月ごとに連続して1ヶ月(労働日数で24日間)与える規定となっており、未取得分は翌年度に繰越可能だが2年分を超える繰越は無効となる。

女性労働者には産前産後各60日の産休が保障され、休業中の給与は社会保険制度から給付される。

雇用契約は書面による締結が義務付けられ、雇用者は全従業員を名簿に登録してMITESSのオンラインシステムへ届出なければならない。

契約形態は期間の定めのない常用契約が基本であるが、プロジェクト単位の有期契約や試用期間を設けた契約も認められる。有期契約の期間は最長2年で、更新は2回まで可能と規定されている。

解雇については正当な理由(重大な服務規律違反、経営上の合理事由等)が必要で、不当解雇と判断された場合は解雇無効や補償金の支払い命令が下る。勤続1年以上の労働者が解雇される場合、勤続年数に応じた退職金(セベランス)の支払いが法律上義務付けられている。

また従業員代表制度や労使協議手続が整備されており、一定規模以上の企業では労働組合(主要労組はモザンビーク労働組合連合: OTM)との団体交渉を経て就業規則や賃金引上げを決定する慣行がある。

モザンビークには全国民を対象とする国家社会保険公庫(INSS)があり、民間企業の従業員は全員加入が義務となる。

社会保険拠出料率は雇用者負担4%・被雇用者負担3%で、賃金から天引きする形で毎月納付する。

INSS加入により労働者は老齢年金、遺族年金、傷病手当、出産手当等の給付を受ける権利を得る。

なお外国人労働者については母国で類似の社会保障制度に加入している場合、事前申請によりモザンビーク社会保険の加入免除が認められる規定がある​。免除を受けない外国人労働者が退職・帰国する際には、それまで拠出した自己負担分の社会保険料(3%相当)の払い戻しを請求できる制度も整備されている。

法定最低賃金は産業別に定められており、毎年労使と政府の協議を経て改定される。

2024年4月に適用された最低賃金は全18部門で平均9.7%引き上げとなり、例えば鉱業セクター(大企業)では前年比+18.0%増の月額14,183.80メティカル(約34,893円)に達した​。

農林水産分野など他の部門では月額5,000~8,000メティカル台が多く、都市部の生活費(世帯月平均支出 都市部約12,548メティカル)との開きが指摘されている。

賃金の現地通貨払いが原則だが、高度人材について契約で外貨建て給与を定めることも許容される。

労働災害補償制度も法整備されており、業務上の災害・疾病が発生した場合、雇用者は治療費や休業補償を負担する責任を負う。

モザンビークで外国人を雇用する場合、労働許可(就労許可証)の取得が必要である。外国人の長期雇用枠にはクォータ制があり、社員規模に応じ次の比率まで外国人を採用できる​:

大企業(従業員101人以上)5%、中企業(31~100人)8%、小企業(11~30人)10%、零細企業(10人以下)15%(ただし零細でも最低1名は雇用可能)。

この範囲内で採用する場合は比較的簡易な届出で就労許可が発行される​。

クォータ枠を超える外国人を雇用する場合はMITESSへの個別許可申請が必要となり、「モザンビーク人で代替できない高度な資格・技能を有すること」などの条件を満たす場合に限り承認される。

なお投資促進庁(APIEX)認可の大規模プロジェクトに参画する外国人については特別枠があり、別途定められた手続で就労許可が取得可能である​。

外国人労働者の契約期間は最長2年で、契約更新により在留期間を延長できる。雇用者は外国人が入国後15日以内に雇用開始を労働省に報告する義務があるが、実務上は就労ビザ取得のため入国前に許可申請を完了させる必要があるため入国後の報告が省略されることも多い​。

外国企業の投資は1993年投資法に基づき保護・奨励されている。投資促進機関として2016年に設立されたモザンビーク投資輸出促進庁(APIEX)が窓口となり、一定額以上(外資は最低約250万メティカル)の投資プロジェクトには各種のインセンティブが付与される。

一般的な優遇策として、資本財(機械設備など)を輸入する際の関税・VAT免除、投資額に応じた法人税額控除、設備投資や人材教育費用の税額控除、加速償却の適用などが用意されている​。

またモザンビーク政府は特定地域への投資を促進するため経済特区(SEZ)および産業免税区(IFZ)制度を導入している。

SEZ内に新規企業を設立した場合、法人所得税が最初の3年間免税、第4~10年目は50%減税、第11~15年目は25%減税されるほか、建設資材・機械設備の輸入に係る関税とVATが全額免除される。

IFZに指定された工業団地等に立地する企業には、設立後5年間の法人税免除、第6~10年目50%減税、第11年目以降25%減税の措置がある​。

これら優遇措置の適用を受けるにはAPIEXへの投資登録が必要であり、要件を満たすと海外送金(利益や配当金の本国送還)の自由も保証される。実際、投資登録を完了した外国投資家には、現地で得た利益・配当・資本を対外送金できる法的権利(為替管理法上の保証)が与えられている。

現在、政府は全土で6箇所の経済特区と約4箇所の産業免税区を指定しており、代表例としてマプト臨海部のマトラ経済特区や北部ナカラ港周辺の経済特区が挙げられる。

特区内では税制優遇以外にも、ワンストップの行政サービス、インフラ整備支援、輸出手続の簡素化など投資家向けの便宜が図られている。

製造業や輸出志向産業の企業はこれら特区への進出を検討することで大幅なコストメリットを享受できる制度になっている。

外国人駐在員がモザンビークに滞在し事業活動を行うには、有効な就労ビザと居住許可を取得する必要がある。

短期の出張や市場調査で訪問する場合にはビジネス査証を事前に取得し、90日以内の滞在が可能である。長期駐在者には前述の労働許可取得後に居住ビザ(DIRE)の発給を申請する。

2017年以降、初回入国する外国人労働者にはDIREに代わり1年間有効のマルチプル入国就労ビザが発行される運用となっており、これを更新し続けることで長期の在留が認められる​。

ビザ延長申請の際には有効な労働契約書、商業ライセンス、納税証明書、無犯罪証明書等の提出が求められ​j、手続には相応の時間と費用を要する。

なお2023年時点で日本とモザンビーク間にはビザ免除協定がなく、日本国籍者は原則査証を取得して入国する必要がある(観光目的等の30日以内滞在についてはモザンビーク当局が指定する国に対し電子ビザ等の簡便措置あり)。

モザンビークは外貨管理制度を採用しており、一部の資本取引には中央銀行の事前許可が必要となる。

外為法上、「経常取引」に該当する通常の貿易代金決済やサービス料金の支払いは比較的自由に行えるが、投資資本の移動や国外貸付・借入といった「資本勘定取引」を行う際にはモザンビーク銀行(中央銀行)の承認と登録が求められる。

例えば現地企業が海外から借入を行う場合や、現地で得た売却益を本国に送金する場合には、事前に当局へ届出を行い許可を取得する必要がある。

また、一度に持ち出し・持ち込みできる外貨現金にも制限があり、5,000米ドル相当額を超える外貨を国外へ持ち出す場合は税関で申告が義務付けられている。

もっとも、適法に取得された利益や配当金については上記の投資登録を経ている限り海外送金が原則認められており、実務上は商業銀行を通じて中央銀行の許可手続きを行うことで円滑な本国送金が可能である。

メティカルは国際的な流通性が低いため、大口の取引や資本移動時には米ドル建て・ユーロ建てで資金を管理し、必要に応じて現地通貨に転換する形が一般的である。

モザンビークで事業を行うには、現地の商業銀行に法人口座を開設し、資本金や運転資金を入金・管理するのが前提となる。

主要都市にはモザンビーク商業投資銀行(BCI)やスタンダードバンク・モザンビーク、モザンビーク国営貯蓄信託銀行(Millennium BIM)などの商業銀行が支店網を持ち、外資系企業にも口座開設サービスを提供している。

口座開設時には会社登記証明書(Certidão)、税務登録証明(NUIT通知)、会社定款、代表者のID(パスポート)や所在証明等の提出が求められる。現地通貨建て口座に加え、必要に応じて米ドル建てなどの外貨口座を開設することも可能である(外貨口座開設には中央銀行への報告が付随)。

外資企業が最初に送金する資本金は、通常本国からの電信送金で商業銀行の外貨口座に入金し、その後必要に応じメティカルに転換して利用する。銀行間決済は電子送金システム(SIMOネットワーク)が整備されており、国内振込は比較的円滑に行える。クレジットカード決済も都市部の大手銀行では普及しているが、地方では現金取引が主体である。

モザンビーク国内での企業向け融資金利は高めで、中央銀行政策金利(MIMO金利)は2024年時点で17.25%と高水準にある。インフレ率が高止まりする中、商業銀行の企業向け貸出金利も年20~25%前後になることが多く、現地通貨建てでの長期借入にはコスト負担が大きい状況である。

このため大規模プロジェクトでは国際開発金融機関や親会社からのローンによる資金調達が併用される。外国親会社から現地法人への貸付(社内融資)を行う場合、事前に中央銀行へ外債登録を行う必要があり、利子支払い時には20%の源泉税が課税される(租税条約が無い日本企業の場合)点に注意が必要である。

一方、モザンビーク政府は中小企業向けの金融支援策として低利融資ファシリティや信用保証制度の整備を進めており、農業や製造業セクターでは特別低金利の融資プログラムが利用できる場合がある。

社債や株式による資金調達に関しては、モザンビーク証券取引所(BVM)が存在するものの上場企業は数社のみで市場規模は限定的である。

したがって外資企業の多くは現地での銀行借入よりも、本国からの資金拠出や国際金融市場で調達した資金を投入する形を取っている。

前項の通り、合法的に取得した利益や配当金については投資登録を条件に本国送金が保証されている。

実際に利益送金を行う際は、年度決算に基づき税務当局から納税完了証明(Quitação)を取得し、これをもとに取引銀行が中央銀行へ送金承認を申請する流れとなる。承認された送金は商業銀行経由で海外の親会社口座へ送金できる。

外貨の国内持ち込み・持ち出し規制については、前述のように5,000USD相当額を超える現金には申告義務があり、銀行送金の場合も1回あたりの送金額が一定額超の場合に当局報告が必要となる。

外国人旅行者や駐在員が出入国時に携行できる外貨現金も上限が設けられており、持込時に申告した金額までが持ち出し許容額となる​。

モザンビークでは慢性的な外貨不足もあり、企業が現地通貨を外貨に交換する際に時間を要するケースもみられる。特に輸入代金支払いが経済に与える影響が大きいため、政府は必要に応じ為替の管理や一時的な制限措置を行う可能性がある。

もっとも公式にはIMFルールに則り経常取引の外為規制は自由化されているため、通常の商取引や投資収益の送金が禁止されるようなリスクは低いといえる。

モザンビークでは行政手続や公共調達の過程において腐敗のリスクが指摘されている。

国際指標で見ると汚職認識指数(CPI)において2022年はスコア26/100と低く、世界で下位クラス(180か国中142位相当)の腐敗状況にあると評価されている。

実際、税関や警察による袖の下要求が散見されるなど、日常業務でも小口の賄賂を求められるケースが報告されている。

モザンビーク政府も汚職防止に取り組んでおり、2012年には反汚職法の制定、汚職対策局(GCCC)の設立が行われたが、司法制度の限界もあり実効性には課題が残る。

政治体制は大統領を元首とする共和制で、独立以来与党フレリモ党が長期政権を維持している。

内戦終結後は基本的に安定しているものの、依然として政治的競争は存在し、選挙前後には野党レナモとの緊張が高まることもある。

また近年懸念されるのが北部カボ・デルガード州における治安悪化である。2017年以降、同地域でイスラム過激派による武装反乱(いわゆるテロリズム)が発生し、天然ガス開発プロジェクトが一時中断に追い込まれるなど影響が広がった。

2021年にはルワンダや南部アフリカ開発共同体(SADC)の支援部隊により主要都市の治安は回復したが、依然として周辺地域では散発的な襲撃が報告されている。

これら紛争リスクは国土の一部に限られるものの、大規模資源プロジェクトの実行可能性に影響を与える要因となっている。

モザンビークの裁判所制度は人的・物的リソースが不足しており、訴訟による契約強制には長い年月を要する場合が多い。

世界銀行のビジネス環境指標(2020年)によれば、契約履行(紛争解決)の分野でモザンビークは世界15%以上の国よりも低いガバナンス水準しか持たないと評価されている(法の支配度15.38パーセンタイル)。これは司法の遅延や判決執行の困難さを反映している。

したがって契約上は紛争時の仲裁条項を入れて第三国仲裁を選択可能にする、重要取引では信用状決済やエスクラロー口座を活用するなど、現地での法的紛争リスクを軽減する策を講じることが推奨される。

また近年ではマネーロンダリング防止やテロ資金規制の強化により銀行口座の開設・維持に厳格なKYC手続が課されており、合法ビジネスであっても資金移動時に詳細な資金の出所説明を求められるケースが増えている。

モザンビークはインド洋のサイクロン(熱帯低気圧)の通り道に位置し、2019年にはサイクロン・イダイにより中部港湾都市ベイラが壊滅的被害を受けた。気候変動の影響もあり大型サイクロンの上陸頻度は増加傾向にあるため、工場・事務所の建設にあたっては耐風・防水対策が重要である。

加えてインフラの脆弱性から大雨による洪水や停電が日常的に発生しうる点にも留意が必要である。

進出分野は大きく二種類に分かれ、一つは豊富な資源を活用した資源・インフラ開発プロジェクト、もう一つは周辺国も視野に入れた市場開拓型ビジネスである。

前者の代表例として、北部沖合の巨大ガス田開発(LNGプロジェクト)には三井物産やJOGMECが参画し、発電所建設では丸紅や住友商事が現地政府との協業を進めている。炭鉱開発ではかつてヴァーレ社(ブラジル資本)と三菱商事が連携し石炭輸出事業を展開した実績がある(同事業は2021年に撤退)。

後者の市場開拓型では、自動車販売(中古車輸出)や物流サービス、建設機械代理店などが挙げられる。例えば豊田通商系列は現地でトラック販売網を運営し、双日系の物流企業が内陸アフリカ向けの貨物輸送拠点としてモザンビークの港湾を活用するなど、南部アフリカ地域のハブとして進出するケースも見られる。

今後は人口増加を見据えた消費財・食品産業への日系企業の関心も高まっており、実際にビール醸造や農業開発での協力案件が進行中である。

モザンビークの投資環境は、同じポルトガル語圏のアンゴラや隣国南アフリカ共和国と比較して政治的安定性経済規模で見劣りする部分がある。

南アフリカはアフリカ屈指の市場規模と先進的なビジネスインフラを有し、アンゴラは石油富による購買力が強い。一方モザンビークは市場規模こそ限定的だが、地理的に東南アフリカの要所に位置しインド洋交易の玄関口として戦略価値がある。

また労働力コストが低廉で英語圏諸国に比べ勤勉な労働者が多いとの評価もあり、製造拠点候補として潜在力を秘めている。

東アフリカのケニア・タンザニアなどと比べると法制度は大陸法系で安定しており、投資保護の法枠組みも整備されている点は安心材料といえる。

ただし世界銀行のビジネス環境ランキング(Doing Business 2020)ではモザンビークは190か国中138位にとどまり、手続コストや契約執行の面で依然課題が多い。

例えば法人設立に要する手続数は10件・日数17日、建設許可取得に平均118日、納税の種類は年間37件にも及ぶなど、官僚的な手続負担は周辺国と比べても重い部類に属する。

そのため他国と進出先を比較検討する際は、税制優遇や用地確保の容易さなどモザンビーク特有のメリットと、行政手続の煩雑さや市場規模の限界といったデメリットを総合的に勘案する必要がある。

モザンビークには日本人の公認会計士・弁護士は常駐していない。

言語面では日本語対応は難しいが、在南ア地域の日系コンサルタントが出張ベースで支援するケースもある。

日本政府関連機関の支援窓口も設置されており、在モザンビーク日本国大使館内には「日本企業支援デスク」が設けられている。

ジェトロ(JETRO)はマプトに事務所を持ち、現地情報の提供やビジネスマッチング支援を行っている。

  • 投資・法人登記: モザンビーク投資輸出促進庁(APIEX) – https://www.apiex.gov.mz (投資ガイドライン、特区情報)
  • モザンビーク商工省 ワンストップ投資センター(BAU) – http://www.bau.gov.mz (会社設立手続の案内)
  • 法的団体登記所(商業登記:CREL) – ※現在はBAUに統合(一部情報は法務省サイトに掲載)
  • 税務当局: モザンビーク歳入庁(AT:Autoridade Tributária de Moçambique) – http://www.at.gov.mz (税法・申告様式)
  • 金融・為替: モザンビーク銀行(中央銀行) – https://www.bancomoc.mz (金融政策、公定歩合、公示レート)
  • 労働行政: 労働雇用社会保険省(MITESS) – http://www.mitess.gov.mz (労働法令、就労許可手続)
  • 国家社会保険公庫(INSS) – https://www.inss.gov.mz (社会保険制度、加入手続)
  • 主要法令: 投資法(法律第3/1993号)・投資法施行令(法令第43/2009号)、商法(法律第2/2005号および改正デクレト法第1/2022号)、労働法(法律第13/2023号)、租税優遇法(法律第4/2009号)、外国為替法(法律第11/2009号)など(官報 Boletim da República にて公開)