1. 国家基本情報

ザンビア共和国

国名・首都・人口:
ザンビア共和国(Republic of Zambia)。
首都ルサカ(Lusaka)は標高約1,272m、人口約308万人(2022年国勢調査)で国内最大の都市である。
全国人口は約2,057万人(2023年)で、主要都市は首都ルサカのほか、鉱業都市キトウェ(Kitwe)やンドラ(Ndola)などがある。
言語・宗教:
公用語は英語。現地主要言語としてベンバ語、ニャンジャ語、トンガ語など73の部族語が使われる。
国民の約8割がキリスト教徒である。
通貨・為替レート:
通貨はザンビア・クワチャ(Zambian Kwacha, 通貨記号ZMW)。1ZMW=約5.1円、1ZMW=約0.67南アフリカ・ランド(2025年4月末時点)。対米ドルでは1USD=約20.2ZMW(2023年平均)。
為替は資源価格やインフレ動向に左右されやすい。
経済指標:
銅を主とする鉱業が経済の柱で、GDPは約281億米ドル(2023年、世界銀行)。2023年の実質GDP成長率は5.8%と高成長。ただし2010年代後半には銅相場下落や電力不足で成長が停滞し、一時対外債務不履行に陥った。
インフレ率は10.9%(2023年)と高めである。
一人当たりGNIは1,320米ドルで低中所得国に分類される。主要産業は鉱業(銅・コバルト)、農業(トウモロコシ等)、観光業。
日本との関係:
1964年の独立と同時に日本はザンビアを承認し、1970年に在ザンビア日本大使館を開設した。以降、政治的に友好関係を維持し、2024年には投資協定が署名され経済関係の強化が図られている。
日本の対ザンビア輸出は167.6億円(2023年)で、自動車やタイヤなどが中心、輸入15.9億円でコバルトや銅を主とする。開発援助では日本は有償・無償合わせ約1,700億円を累計供与している。
2. 法人設立制度
法人形態:
現地で一般的な法人形態は有限責任会社(Private Limited Company)で、株主2~50名までの非公開会社が主流である。公開会社(Public Limited Company)や外国会社の支店開設も可能。外国資本100%で法人設立が認められており、現地出資者を義務付ける規制は基本的に存在しない。最低資本金の法定要件も特に定められていない(銀行など特殊業種を除く)。
設立手続:
会社設立は特許・会社登録庁(PACRA)にて行う。商号の事前承認後、定款(Articles of Association)と登記申請書類を提出し登録証明書(Certificate of Incorporation)を取得する流れである。オンラインでの電子登記システム(e-PACRA)が整備されており、代理人がインターネット経由で申請可能。そのため発起人の渡航無しでも設立手続きは完了できる。通常1〜2週間で法人登録が完了する。
現地拠点要件:
登記にはザンビア国内の所在地住所が必要となる。
会社法上、取締役や会社秘書役に現地居住者を含める法定要件はないが、実務上は現地代理の法律事務所や会計事務所が登記手続きを代行することが多い。
その他留意点:
会社設立後、税務当局(ZRA)への納税者番号(TPIN)登録や社会保険への事業所登録が必要。
外国企業が支店形態で登記する場合も、PACRAでの外国会社登録と現地代表者の選任が必要となる。支店と現地法人で税務上の差異は基本無いが、支店利益送金時に追加課税(支店税)が課される点に留意する。
なお事業分野によっては許認可(金融業、鉱業など)が別途必要となる。
3. 税制度
法人税(CIT):
ザンビアの法人税率は標準30%である。
課税所得はザンビア源泉所得が基本だが、居住法人には世界所得のうち利子・配当も課税される。業種により税率優遇があり、農業・農産加工所得は10%、輸出(非伝統品)は20%、通信事業は35%など差別税率が適用される。鉱業の法人税率は基本30%で追加の超過利潤税は現在廃止されている。
課税年度は暦年。
欠損金の繰越控除は原則5年間で、鉱山業および発電事業は10年間まで繰越可。
非居住者への支店利益送金には20%の源泉課税がある。また利子・配当・使用料など国外送金には20%の源泉徴収税(WHT)が課される。
日本とザンビアの間には1971年発効の租税条約があり、これにより日本居住者への配当WHTは0%、利子・使用料は10%に軽減される(技術料等は条約上未定義のため事業所得扱い)。
付加価値税(VAT):
ザンビアの付加価値税率は標準16%で、輸出などゼロ税率品目には0%が適用される。医薬品・教育など特定の財・サービスは非課税(免税)扱いで課税対象外。
課税事業者は月次でVAT申告・納税を行い、輸出企業は仕入VATの還付を受けられる。VATの仕入税額控除請求は発行日から3か月以内に行う必要があり、過去に遡る請求は制限される。
輸出企業向けには「商業輸出業者スキーム」により非居住者によるザンビア産品購入時のVAT還付制度もある。
2024年より電子的なインボイス発行システム(スマートインボイス)が全納税者に義務化され、売上の逐次報告が求められている。
所得税(個人所得税/PAYE):
個人の所得税は累進課税で、年間課税所得ZMW 61,200までが非課税、以降85,200まで20%、110,400まで30%、110,401超は37%の税率が適用される(2025年課税年度)。居住・非居住を問わず同じ税率体系だが、非居住者はザンビア源泉所得のみが課税対象となる。
給与所得については源泉徴収制度(PAYE)があり、雇用主が毎月税額控除を行うことで年末調整が完結する。給与以外に事業所得や利子所得がある場合や、赴任間もない駐在員など一部非居住者は年度末に個人確定申告を行い納税する義務がある。
社会保険としては国民年金(NAPSA)への加入が義務付けられ、従業員・使用者がそれぞれ給与の5%(計10%)を拠出する(一定額の上限あり)。2019年に国民健康保険法が施行され、医療保険料も従業員・使用者各1%負担となっている。
その他の税金:
商取引では契約書・金融証書等に印紙税(定額または定率)が課される。
また不動産や株式譲渡益には物件譲渡税(PTT)が5%課税される。
輸入車両には排気量等に応じた関税・物品税に加え環境税(カーボン税)が賦課される。
事業所税や固定資産税は無いが、地方当局に対し不動産に関連する税・料金が別途課される場合がある。
なお納税環境として、電子申告(e-Returns)や電子納税がZRAにより提供されており比較的整備が進んでいる。
租税条約は日本のほかフランス、英国、中国など計20か国以上と締結され二重課税回避措置が講じられている。
税務調査はZRAが所轄し、近年は税務コンプライアンス強化のため、無申告のまま2,000米ドル超を海外送金する場合に15%の源泉徴収(Advance Income Tax)が課される制度も導入された。
4. 会計・監査制度
会計基準:
会社法および会計士法に基づき、ザンビアではザンビア勅許会計士協会(ZiCA)が会計基準を定めている。同協会は国際会計基準審議会(IASB)の基準を採用しており、2005年以降、国際財務報告基準(IFRS)が修正なしで全面適用されている。
企業の規模に応じた三層の財務報告フレームワークが導入されており、公的利害の高い企業(上場企業、銀行、国有企業など)はフルIFRSの適用が義務。年商2,000万クワチャ以上の大企業はIFRSまたは中小企業向けIFRS(IFRS for SMEs)のいずれかを適用可能。年商2,000万クワチャ未満の中小企業はZiCA制定の「ザンビア中小企業向け会計基準」を適用できる。同基準はIFRS for SMEsを簡易化したものである。
監査義務:
2017年会社法により全ての会社は年次の財務諸表監査を受けることが義務付けられている。
監査基準は国際監査基準(ISA)が2005年より導入されており、ZiCAが基準策定・適用を監督する。監査人はZiCAに登録された公認会計士でなければならず、上場企業の監査では更に証券法に基づく資格要件が課される。
監査報告書は株主総会で承認され、会社法に則り年次の会社登記情報とともに登録庁(PACRA)へ提出する義務がある。特に銀行と上場会社は監査済財務諸表を全国紙に公告することが求められている。一般非公開会社についても、利害関係人はPACRAで決算書類を閲覧可能である。
会計士制度:
会計専門職は会計士法に基づきZiCAが規制する。ZiCAは会計基準・監査基準の設定のほか、会計士資格試験(ザンビア勅許会計士=CA資格)の実施や継続専門教育を担い、会計事務所の品質管理や会員の懲戒も所管する。ザンビアのCA資格は国際的にも認知されており、イギリス勅許会計士協会(ACCA)などとの相互承認も進む。
財務諸表は年度末から約6か月以内に株主総会で承認・提出されるのが一般的であり、透明性確保のため企業ウェブサイト等での公表も増えている。
5. 労務制度
雇用契約:
2019年雇用法(Employment Code Act, 2019)により、労働者の雇用条件は詳細に法定化されている。同法は事業主に対し従業員との雇用契約を書面で締結し、賃金、勤務時間、休暇、解雇手当などを明示することを求めている。常用労働者は試用期間を含め一定期間後に無期限雇用へ移行する規定があり、臨時・短期契約の反復更新による偽装的な長期雇用を制限している。
外国人を雇用する場合には就労ビザ(労働許可証)を取得する必要があり、雇用主は資格要件や技術移転計画を移民局へ示すことが求められる。
最低賃金:
最低賃金は労働大臣が職種区分ごとに定め、必要に応じ改定される。直近では2018年に一般労働者の最低月額賃金が約1,698クワチャ(約130ドル)に設定された(家政婦等は別基準)。
加えて時間外労働手当や深夜勤務手当(基本賃金の25%増)が法定されている。
多くの労働者は労働組合に加入し団体交渉で業種別の賃金水準が決定されているため、実際の給与水準は最低賃金を上回るケースが多い。
労働時間:
法定労働時間は週48時間(1日8時間・週6日)とされ、それを超える勤務は時間外労働として割増賃金の支払いが必要となる。
休日は週1日の有給週休(通常日曜)が最低保障されている。祝日は年間約12日あり、その労働には2倍賃金を支払うか代休を与える必要がある。年次有給休暇は勤続に応じ付与され、最低でも1ヶ月勤務あたり2日の権利が生じる(年間24日以上)。有給休暇は2年分まで繰越可能だが、未消化分は退職時に買い上げ精算する義務がある。
休暇制度:
一般労働者は病気や負傷で就業不能の場合、最長3か月は給与全額、さらに次の3か月は半額が支給される(短期契約労働者は計52日間の半日支給) 。この期間を超える長期欠勤時は雇用主は医師の診断に基づき「医療上の解雇(medical discharge)」とすることができる。
産休は連続14週間取得でき、そのうち少なくとも6週間は出産後に消化することが義務付けられる。双子以上の場合はさらに4週間延長可能である。産休中の給与は法律上全額支給とされ、復職後の不利益取扱いは禁止されている。
男性従業員には有給の父親休暇が5日間認められている。
また近親者の死亡時などに年5日の慶弔休暇(compassionate leave)、家族の疾病・育児等に年7日の家族責任休暇が規定されている。
解雇と補償:
労働者を解雇するには、就労状況に応じた正当理由(業績不良、規律違反、経済的余剰など)が必要で、解雇手続きには一定の事前通知が求められる。勤続期間が3ヶ月を超えた労働者には少なくとも30日の解雇予告期間を与えるか、30日分の給与を即時解雇手当として支払う必要がある。
整理解雇(経営上の人員削減)の場合には30日前までに労働組合または従業員代表・労働局への通告が義務付けられ、労働長官の監督下で解雇基準の妥当性が審査される。整理解雇となった従業員には冗長手当(redundancy pay)が支払われ、その法定最低額は「勤続年数1年につき基本給2ヶ月分」である。これは例えば5年勤続なら基本給の10ヶ月分に相当し、使用者は最終勤務日までの一括支払いが義務付けられる。
なお試用期間内の解雇や有期契約満了による終了には冗長手当は発生しない。懲戒解雇(重大な背任行為など)には厳格な手続と証拠が必要で、従業員には弁明の機会が保障される。
労働争議:
労働者は労働組合結成と団体交渉の権利を有し、賃金や労働条件を巡る交渉が不調に終わった場合、合法的なストライキ権を行使できる。
6. 外国企業向け制度
特区制度(MFEZ):
ザンビア政府は製造業や輸出産業の促進のため、多数のマルチファシリティ経済特区(MFEZ)および工業団地を指定している。
特区に入居・操業する企業には税制優遇措置が与えられ、設立後5年間は法人税率0%、配当への源泉税0%とされ、6~8年目は法人税の50%減免(実効税率15%)、9~10年目は25%減免(同22.5%)となる。また特区内企業が海外から受け取るコンサル料・借入金利への源泉税が免除され、特区開発に必要な原材料・設備の輸入関税も免除される。
現在、首都郊外ルサカ東MFEZ、鉱工業のチャンビシMFEZなど複数の特区が稼働中である。
税制優遇:
特区以外でも、投資奨励法に基づく優遇措置がある。ザンビア開発庁(ZDA)に所定額以上(2022年の法改正で5万ドル相当額以上)の投資計画を登録すると認定投資案件となり、輸入機械・設備の関税が5年間免除、初期設備投資の減価償却を加速償却(50%/年)できるなどの恩典を受けられる。
特に製造業では原材料の関税引下げ(15%→5%)や、操業開始前2年間の支出に対するVAT事前還付といった支援策が整備されている。
農業・観光・エネルギーなど重点分野にもそれぞれ輸送インフラ整備支援や税控除措置が設けられている。
輸出企業については法人税率が15%に引き下げられ(通常30%)、非伝統的輸出品の生産設備輸入に際して関税とVATが免除される。なお2023年度税制改正で輸出法人税率は20%へ引上げられたが、それでも標準税率よりは低い水準である。
投資庁の支援:
ZDAはワンストップサービスを提供し、会社設立、免許取得、税関手続などを一括支援する窓口となっている。大型プロジェクトには政府との投資協定を締結し、電力・水道などインフラ供給の確約や必要な用地取得を円滑化する措置も取られる。2024年には内外資区別なく一律の優遇を享受できるよう最低投資額要件が5万ドルに統一され、中小規模の投資も支援対象となった。
駐在員ビザ:
外国企業が駐在員を派遣する場合、作業許可(Employment Permit)の取得が必要。通常、現地法人がスポンサーとなり、現地移民局へ申請する。許可は2年または3年の有効期間で更新可。高額投資家や専門人材向けには長期の投資許可証(例えば10年有効の投資促進許可)が発給される場合もある。
なおザンビアは一定規模以上のプロジェクトで技術移転計画の提出を求め、段階的な現地人材への交替を奨励しているため、専門技能の現地社員育成が重要となる。
外貨規制:
2014年に外為規制が大幅に自由化され、ザンビアには現在厳格な資本規制や外貨送金制限はない。企業は正当な配当金や利払いを税後であれば制限なく本国送金できる。
ただし輸出代金の国内持ち帰りを確実にするため、輸出者は税関輸出申告とリンクした輸出代金回収モニタリングが義務付けられている。輸出取引ごとにユニーク番号(UCR)が発行され、90日以内に輸出代金がザンビアの銀行口座に入金されることを中央銀行が追跡する仕組みである。
これは外貨の違法流出や未申告収入を防ぐためのもので、通常の事業送金に対する障壁ではない。現地銀行口座では外貨建て口座も開設可能で、輸入決済や外貨建てローンの受入も認められている。
契約・グループ内貸付:
外資企業がグループ内貸付を行う場合、ザンビア税法上はThin Capitalization(過少資本税制)として利子控除に一定の制限がある。2019年の改正により、グループ会社からの借入利子はEBITDA(税前営業利益)の30%を超える部分は損金不算入となり、超過部分は翌期以降5年以内に繰越控除可能と定められた。従来存在した負債資本比率ベースの制限(3:1ルール)は撤廃され、より実質的な指標で判定される。
また国外関連者との取引全般に対して移転価格税制が適用され、市場価格からの乖離があれば税務調整の対象となる。契約法制はコモンローに基づき、英文契約がそのまま有効となる。紛争回避のため契約書に仲裁条項を入れることも一般的であり、ザンビアはニューヨーク条約加盟国として国際仲裁判断の執行が認められる。
7. 金融・資金調達
銀行・通貨事情:
ザンビアの銀行システムは安定しており、英系バークレイズ(現在のABSA)やスタンダードチャータード、中資系の銀行など海外資本銀行も含め20行以上が営業する。
法人は現地で銀行口座を開設でき、クワチャ建て口座のほか必要に応じて米ドル・南アランドなど外貨口座の開設も可能である。
中央銀行(ザンビア銀行, BoZ)は政策金利で通貨価値を管理しつつ、インフレ抑制に努めている。近年インフレ率が二桁に及び公定歩合も高水準のため、市中金利は貸出ベースで20%前後と高めで資金調達コストは大きい。
資金移動と規制:
企業から海外への配当金送金や親子ローンの利払い送金は、前述のように税務上適切に処理されていれば制限なく実行できる。ザンビアには外為庁による事前許可制度は無く、銀行を経由して自由に送金可能である。ただし、脱税防止の観点から大口送金時には税務当局がモニタリングを行っており、未納税のまま国外送金を行うと15%の源泉徴収が課される仕組みがある。
フィンテック動向:
ザンビアでは銀行口座を持たない成人も多く、携帯電話を利用したモバイル送金サービスが急速に普及している。AirtelやMTNといった通信大手のモバイルマネーは農村部まで広がり、2015年に59%だった成人金融利用率は2020年には69%に上昇した。
2018年にはフィンテック規制サンドボックスを創設し、新興企業による電子決済サービスやデジタル融資モデルの試行を認可している。また2022年には国民IDと連動した信用情報共有システムを整備し、中小企業や個人の与信拡大を図っている。
8. 商習慣・文化・リスク
贈賄・汚職リスク:
アフリカの中では腐敗が少ない方とされた時期もあったが、近年は公務員や政治家の汚職が社会問題となっている。2021年就任のヒチレマ大統領は汚職撲滅とガバナンス向上を最重要課題に掲げ、前政権の腐敗追及や行政手続の透明化を進めている。
治安・政情:
ザンビアは1964年独立以来、一党制時代を経つつも大きな内戦や紛争を経験しておらず、周辺国に比べ政治的に安定した国家である。1991年以降は複数政党制による民主選挙が定着し、直近の2021年大統領選でも平和裡に政権交代が実現した。政情の安定はビジネス環境の安心材料となっている。
一方、一般犯罪は都市部で増加傾向にあり、失業や貧困を背景とした窃盗事件や強盗も発生している。首都ルサカでは夜間の外出に注意が必要で、現地法人でも事務所や倉庫への侵入盗に備えて警備員を配置するのが普通である。地方の鉱山地域では労働者の抗議活動や不法採掘者(ジェリーコ)との衝突が起こることもある。
テロ脅威は低いが、コンゴ民主共和国国境付近では難民流入の影響もあり治安当局が警戒を強めている。
9. 実務上の留意事項
他国との比較:
ザンビアの投資環境は、治安・政治安定性でアフリカ有数と評価される一方、市場規模は2,000万人程度と限られる。南部アフリカの経済大国である南アフリカ共和国やナイジェリアと比べ需要規模は小さいものの、鉱物資源の裾野産業や農業開発など伸び代の大きい分野が存在する。
また国土が内陸に位置するため物流コストは高いが、SADCやCOMESAといった地域経済圏の一部として周辺国市場へのアクセス拠点ともなり得る。例えばコンゴ民民主共和国向け鉱山機材輸出はルサカ経由で展開しやすい利点がある。
東アフリカ(ケニア・タンザニア等)と比べ英語が公用語で行政手続きも英語で行える点は日本企業にとって追い風である。
総合すると、ザンビアはアフリカ市場戦略の中で「安定した中規模拠点」として位置付けられ、大規模消費市場ではないが堅実な事業展開が見込める国と言える。
税務・会計の実務難易度:
ザンビアの税務・会計実務は、公用語が英語でありIFRSに準拠しているため比較的理解しやすい。一方で税法細則や申告様式に独自の要件があるため、現地の専門家の支援は不可欠である。
ZRAへの各種申告(VAT月次申告、源泉税月次納付、年次法人税申告など)は電子化されているが、期限管理と正確な申告計算が求められる。特に移転価格文書化や源泉税控除証明の発行など、日本本社が関与する事項は漏れなく対応する必要がある。
会計監査も全企業対象であるため、中小企業でも年次決算の監査準備に一定の工数を割く必要がある。
10. 関連法令
- 雇用法 Employment Code Act, 2019
- 会社法 Companies Act, 2017