ガーナ共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

国名・首都

ガーナ共和国。首都はアクラ。

英語を公用語とする。

人口は約 3,200 万人(2024年)。

独立以来、西アフリカ地域の要衝とされる。

通貨・為替

通貨はガーナセディ(GHS)。1 USD = 12 GHS(2025/05 月平均)。

経済政策や輸出入の動向により為替相場が変動しやすい。

経済指標

GDP は約 770 億米ドル(2024 年)。

主要産業は金・原油・カカオなどの資源関連とサービス業。

インフレ率は高めに推移しているが、近年は金融政策強化による抑制が図られている。

日本との関係

1960 年に外交関係を樹立。日本企業の進出は製造業・商社・建設・サービスなど多岐にわたる。政府間の経済協力や人材育成支援も積極的に行われている。

2. 法人設立制度

法人形態

主な形態は有限責任会社 (Limited Liability Company) と支店 (Branch) が挙げられる。

有限責任会社は株主の責任範囲が出資額に限定されるため、最も一般的な形態である。

外資規制

外資規制は特定の戦略業種(石油・ガス・鉱業など)を除き厳しくない。

ガーナ投資促進センターへの登録が必要な場合があるが、外資比率の上限は基本的になく、出資比率 100% の設立も認められる。

資本金要件

外資企業の場合、完全外資では最低 50 万米ドル相当、ガーナ人パートナーとの合弁では最低 20 万米ドル相当の払込資本金が求められる(2025/05 時点)。業種により要件が異なる場合がある。

登記手続き

登記は会社登記局で行う。会社名の予約、定款作成、法定書類の提出、納付金支払い、納税者番号 (TIN) 登録などの手続きが必要。完了までの所要期間は 2〜4 週間程度とされる。

2. 法人設立制度

法人形態

ガーナの会社形態は主に有限責任会社 (Limited Liability Company) と支店 (Branch) がある。

有限責任会社は株主の責任範囲が出資額に限定されるため、最も一般的である。有限責任会社には下記の特徴がある。

  • 株主数は 1 名以上で設立可能。複数株主の場合、株主合意書(Shareholders Agreement)の締結が推奨される。
  • 取締役は通常 2 名以上とし、うち少なくとも 1 名はガーナ国内で常住することが望ましい。
  • 社名の末尾に “Limited” の表記を付す必要がある。

支店の場合、本社が外国にある法人がガーナ国内で事業活動を行うために登録する形態であり、独自の法人格を持たない。本社がすべての債務責任を負う点が有限責任会社と異なる。

外資規制

ガーナでは外資規制が比較的緩やかであり、特定の戦略業種(石油・ガス・鉱業など)を除き、外資の参入に大きな制限はない。ガーナ投資促進センター (GIPC) への登録が要求される場合があり、登録後は投資許可証が交付される。主な外資規制のポイントは以下のとおり。

  • 石油・ガスや採掘関連など一部業種については事前許可またはライセンス取得が必要。
  • 一定の業種でガーナ人パートナーとの共同出資を推奨する指針がある。
  • 設立形態は完全外資でも認められ、経営権の制限は原則ない。
  • GIPC 登録を行わないと法人化手続きが完了しないため、事業計画や投資額に応じた手続きを事前に確認することが重要である。

資本金要件

外資企業の場合、以下の最低払込資本金要件が定められている。

  • 完全外資 (100% 外資):最低 50 万米ドル相当
  • ガーナ人パートナーとの合弁:最低 20 万米ドル相当

外国人による貿易業(輸入販売など)の場合は最低 100 万米ドル相当が求められるケースもある。業種により要件が変更されることがある。払込資本金は通常、ガーナ国内の銀行口座へ送金するかたちで実行される。

登記手続き

法人設立の主な登記手続きは以下のステップに沿って進める。

  • 会社名の事前予約:重複がないか会社登記局で確認し、名称を保護する。
  • 定款および細則 (Regulations) の作成:会社の目的、株主や取締役の権限、資本金などを記載。
  • 会社登記局への提出:必要書類(定款、細則、取締役・株主情報など)を提出し、登録料を納付。
  • 納税者番号 (TIN) の取得:法人および取締役がガーナ税務当局で登録を行う。
  • GIPC 登録(外資の場合):所定の書類と投資額証明を添えて申請し、投資許可証を得る。

登記完了までの所要期間は概ね 2〜4 週間程度であるが、提出書類に不備がある場合はさらに時間を要する。登記が完了したら法人印の作成、銀行口座の開設などを行い事業活動を開始する。

3. 税制度

法人税

一般的な法人税率は 25%(2024 年)である。農業、製造業、観光業など一部の優遇措置対象業種には減免が適用されることがある。

法人税は課税所得に基づき算出され、課税年度中に四半期ごとに予定納税を行う。年度末に決算申告と精算を行い、過不足分を調整する。

法人税計算の際は、ガーナ税務当局の定める損金不算入項目や減価償却の区分率を順守する必要がある。新規投資に対しては初年度のみ追加減価償却率が適用される場合がある。

付加価値税(VAT)

標準税率は 12.5%(2024 年)であり、これに国民医療保険税 (NHIL) や教育基金税 (GETFund Levy) が上乗せされ、実効税率は 17.5% 前後となる。

医薬品や農産物の一部など非課税・免税対象となる品目も存在し、これらについては売上時に VAT を課さない。また、輸出取引はゼロ税率が適用される。

課税対象となる財・サービスの取引時に課税し、事業者は売上 VAT を徴収する一方で、仕入 VAT を控除して納付額を計算する。

事業者は月次または四半期で VAT 申告を行い、期限内に納付する必要がある。

個人所得税

個人所得税は累進課税方式を採用し、最高税率は 30%(2024 年)となる。

給与所得には源泉徴収義務があり、雇用主が毎月給与から所定の税額を控除してガーナ税務当局に納付する。

年間所得が一定額以下の場合は低率または非課税帯に分類される。

ボーナスや手当も課税対象となるが、一部の福利厚生は非課税となる。

非居住者の給与所得には別途の税率や源泉徴収規定が適用される場合がある。

その他の税金

  • 印紙税:契約書や不動産取引文書などに課される。契約金額に応じた定率または定額の納税が必要。
  • 不動産関連税:土地・建物の所有や譲渡に際して課税される。地方自治体に対して年次の不動産税が発生する。
  • 源泉徴収税:非居住者への配当・利子・ロイヤルティ支払い時には 8〜15% 程度の源泉徴収が課される。条約の有無により優遇税率が適用される場合がある。

4. 会計・監査制度

会計基準

ガーナでは上場企業や大規模企業には国際財務報告基準(IFRS)が適用される。中小企業や小規模事業者には IFRS for SMEs が認められる。会計処理は真実性・正確性の確保が求められ、減価償却や在庫評価については IFRS に準拠することが一般的である。

監査要件

ガーナの会社法では、全ての有限責任会社は外部監査人の任命と年次監査を義務付けている。監査人はガーナで認定された公認会計士または監査法人でなければならない。

監査報告書は株主総会に提出し、承認を得ることが求められる。

登録要件

監査業務を実施する監査法人や公認会計士は、ガーナ会計士協会など所定の専門機関に登録される必要がある。

登録は定期更新制であり、法定の継続教育要件を満たす必要がある。

財務諸表の提出

各会計年度終了後、法定期限内(通常 6 か月以内)に監査済の財務諸表を会社登記局へ提出する義務がある。財務諸表はバランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書および株主資本等変動計算書など IFRS で定められる主要書類を含む。未提出や虚偽の提出があった場合は罰則が科される。

5. 労務制度

雇用契約

雇用契約は書面で締結することが原則とされ、就業条件(給与、労働時間、福利厚生、契約期間など)を明確に記載する。試用期間は一般的に 3〜6 か月程度で、その間の解雇規定は契約で取り決める。

最低賃金

日額 15 GHS(2024 年時点)が法定最低賃金であり、雇用者はこれを下回る賃金を支払うことは認められない。実際には業種や地域によって相場がやや異なり、労使協議や労働組合との合意により若干の上乗せが行われる場合もある。違反には罰則が定められている。

労働時間

週 40〜48 時間程度が標準労働時間である。超過勤務を行う場合、法定の割増賃金を支払う義務がある。祝日や休日出勤に対しても割増賃金の対象となる。勤務形態にはフレックスタイム制や交代制なども認められるが、就業規則上の明示が必要である。

解雇・退職

解雇には正当な理由と手続きが要求され、能力不足や重大な規律違反などが主な正当事由となる。解雇予告期間は労働者の勤続年数に応じて設定され、退職金の規定がある場合は労働法に基づいて支払う。リストラや業績悪化による解雇(Redundancy)の場合は、追加の補償も定められている。

労働争議・労使関係

多くの業種で労働組合が結成されており、団体交渉のほか、必要に応じてストライキ権が行使される。企業側は労働委員会による調停手続きや集団交渉に応じる義務がある。労使紛争が発生した場合、労働委員会や裁判所を通じて解決を図る体制が整備されている。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

ガーナ自由区域局 (GFZA) が運営する輸出特区制度があり、指定エリア内に製造拠点を置く企業は法人税減免や関税免除などの優遇措置を享受できる。適用を受けるには以下の要件を満たす必要がある。

  • 生産品の一定割合を輸出に回すこと
  • 指定の最低投資額を満たすこと
  • ガーナ自由区域局への登録およびライセンス取得

優遇を受けられる期間や税率は事業分野や投資額により異なるが、最大 10 年程度の法人税免除措置が認められるケースもある。

投資促進機関

ガーナ投資促進センター (GIPC) が外国投資受け入れを一元的に担当し、設立支援や行政手続きの簡素化に取り組んでいる。投資登録を行うことで、税制上の優遇措置や現地ビジネスネットワークの紹介などの支援を受けられる。登録申請時には事業計画や投資額、資本金証明書などを提出し、審査を経て認可が下りる。

ビザ・労働許可

外国人がガーナで長期的に就労する場合、就労ビザと労働許可証が必要になる。雇用主が内務省や移民局に対して書類を提出し、許可を取得する。手続きの主な流れは以下のとおり。

  • 雇用主が移民局に対して申請書類(事業ライセンス、雇用契約書、事業計画など)を提出。
  • 就労期間に応じた労働許可証の発行(通常 1 年単位で更新)。
  • 家族滞在ビザの申請(配偶者や子女など同伴家族がいる場合)。

許可証の取得後も、在留届や居住許可の更新手続きが適宜必要となる。

外貨規制

ガーナでは大幅な外貨規制は敷かれていないが、海外送金や資金移動を行う場合は、銀行を通じた正式な手続きが必要である。中央銀行 (Bank of Ghana) の監督下で、事業収益や配当金の本国送金は原則として認められる。送金時に必要な主な書類は以下のとおり。

  • 納税証明書(法人税や VAT の支払い状況を示す書類)
  • 取引根拠書類(配当であれば株主総会議事録等、利子であれば貸付契約等)

ガーナセディ(GHS)の為替相場は変動しやすいため、送金タイミングの検討が重要となる。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

口座開設には会社登記証明や納税者番号 (TIN)、代表者の身分証明書などが必要。

金融機関によっては本店所在地への訪問を求める場合がある。

現地借入・金利水準

ガーナの政策金利は比較的高い水準にあり、民間向け融資金利も年率 20〜25% 程度(2025/05 時点)に達する。

送金・為替サービス

民間銀行や送金会社を通じて海外送金が可能。為替は変動幅が大きい場合があるため、定期的なレートチェックが望ましい。海外からの送金受領にも同様の書類提出が求められる。

フィンテック動向

携帯電話を用いた送金サービスやモバイルマネーの普及が進む。

小口決済に強みがあり、インターネット接続が限定的な地域でも電子決済の利用が拡大している。

8. 文化・商習慣・その他リスク

汚職・賄賂リスク

公的機関における汚職は完全には解消されていない。透明性の確保と適切なコンプライアンス体制の整備が重要となる。

治安・政情リスク

西アフリカの中では比較的安定した政治状況と評価されるが、都市部ではスリや詐欺などの犯罪被害が報告されている。選挙前後には政治的デモが活発化する場合がある。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

競争優位性・課題

ガーナは西アフリカ市場へのゲートウェイとしての利点があるが、インフラや電力供給が十分でない地域も多い。輸送コストや通関手続きの煩雑さが課題となり得る。

手続き難易度

法人設立や労働許可取得の手続きは一定の時間を要するが、他国と比較すると比較的整備されている。汚職防止のため、正規手続きの遵守が不可欠である。