アルジェリア民主人民共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

 

首都

首都:アルジェ

通貨・為替

通貨:アルジェリアン・ディナール(DZD)
為替:1 USD ≒ 132 DZD(2025/05 月平均)

経済指標

GDP:約2,636億ドル(2024年)
実質GDP成長率:3.3%(2024年)
一人当たりGNI:5,320ドル(2024年)
消費者物価上昇率:4.0%(2024年)
失業率:11.4%(2024年)
人口:約4,680万人(2024年)

主要産業は石油・天然ガス関連であり、輸出収入の大半を炭化水素資源が占める。

日本との関係

日本からの輸出:208.9億円(2024年)
日本への輸入:139.4億円(2024年)

日本は1962年の独立承認以降友好関係を築き、累計で有償資金協力約139億円・無償資金協力約14億円を供与(2023年度まで)。日本からは鉄鋼、機械、車両などを輸出し、アルジェリアからは液化天然ガス(LNG)や原油等のエネルギー資源を輸入する構造である。

日本企業にとってアルジェリアは大型プラント案件の市場であり、JGCや日揮などエンジニアリング企業が石油精製所や発電所建設に参加した実績がある。また近年は製薬や通信分野でも進出例があり、現地企業との合弁設立の動きもみられる。進出日本企業数は約15社(2025年時点)と限定的で、在留邦人も43名(2025年9月)と少数だが、両国政府間では経済連携対話や技術協力が継続している。

2. 法人設立制度

法人形態

アルジェリアで事業を行う場合、主な法人形態は有限責任会社(SARL)と株式会社(SPA)である。SARLは2名以上50名以下の出資者で設立する有限責任会社で、中小規模ビジネスに広く利用される(1名での設立も可能な一人有限会社制度あり)。株式会社(SPA)は7名以上の株主による大規模会社形態で、株式の譲渡性が高く将来的な公開も視野に入る。

その他、外国企業は現地支店(支店事務所)を開設して事業を行うことも可能であるが、支店は契約履行目的に限定されることが多い。また、営業行為を行わない駐在員事務所(リエゾンオフィス)の開設も認められている。

外資規制

外国資本の出資比率に関して、2020年財政法で規制が緩和され、現在は国家戦略分野に指定された業種のみ外資出資規制(49%上限)が維持されている。戦略分野とは石油・ガス開発、鉱業、金融・保険など政府が重要と認定する部門であり、それ以外の製造業・商業・サービス分野では100%外資出資の法人設立が可能である。

資本金要件

最低資本金要件
SARL:10万DZD(約75万円)
SPA非公開会社:100万DZD(約750万円)
SPA株式公開会社:500万DZD以上(約3750万円)

なおアルジェリアでは法人設立時に最低資本金額以上の払込証明を要するが、それ以外の一般業種で追加の資本要件はない。外資企業であっても資本金について内国企業と同等の扱いであり、事業規模に応じた資本準備が求められるのみである。

登記手続き

法人設立は公証人立会いのもと定款作成・署名することから始まる。商業登記(商業登記センターCNRC)への登録、定款要旨の官報公告、銀行での資本金払込証明取得が主な手続きである。

設立申請時には登記申請書、定款、公証人証書、出資払込証明、取締役の無犯罪証明等の書類を提出する。

近年、一括手続き窓口(ワンストップサービス)が整備されつつあり、通常は書類完備後2〜4週間程度で登記完了となる。もっとも官僚的手続きは依然多く、世界銀行「ビジネスのしやすさ指数」では190か国中157位(2020年)と低位にとどまる。

3. 税制度

法人税

法人所得税(IBS)標準税率:26%(2025年時点)
製造業優遇税率:19%
建設・公共事業・観光関連(旅行代理業除く)優遇税率:23%

税務年度は暦年(1〜12月)であり、決算終了後の翌年4月末までに法人税申告が必要。税額が確定した法人税の納付期限は毎年5月20日までである。

さらにアルジェリア特有の税として一部のパイプライン・炭化水素関連や鉱業など特定分野に限定して事業活動税(TAP)があり、売上高に対し一律2%が課税される(経費算入可)。

そのほか雇用者側に社会保障拠出金の負担があり、雇用主拠出分は賃金の26%、従業員拠出分9%である(2025年時点)。

配当金には15%、利子には10%の源泉徴収税が課せられる。

一方、海外から支店・PEを通じてサービス提供を行う非居住者に対しては、役務支払時に総額の30%の源泉徴収(内訳:法人税+TAP+VAT相当額を包含)が義務付けられており、租税条約のない国の外国法人サービス提供時には特に留意が必要である。

付加価値税(VAT)

付加価値税(TVA)標準税率:19%

食品や医薬品等に広く適用される軽減税率はなく、基本的に全商品・サービスが19%課税の対象となる。ただし一部に特別軽減税率9%が設定されており、電気・ガス(一定用量以下)、ホテル・観光サービス、映画館興行、リサイクル原材料取引など限定的な品目・サービスが9%対象となっている。

VATは月次または四半期次で納税申告を行い、売上VATから仕入VATを控除する仕入税額控除方式。外国企業がアルジェリア国内でVAT課税売上を行う場合は、現地でのVAT登録が必要になる。

個人所得税

個人所得税(PIT)は累進課税で、年収240,000 DZDまでが非課税、これを超える部分に対し5段階で税率が上がる。課税率は年収区分ごとに約23%・27%・30%・33%と上昇し、年収3,840,001 DZD超の部分に最高税率35%が適用される(2024年時点)。

給与所得については源泉徴収(PAYE)が義務付けられ、雇用主が毎月の給与支払時に天引き納税する。なお非居住者の個人所得には20%の定率課税が基本となる(租税条約により軽減される場合あり)。

その他の税金

資産課税として、一定額以上の純資産に対し富裕税(Net Wealth Tax)が最大1%が課される制度がある。また不動産には保有税(年間不動産税)が立地や評価額に応じて課税される。印紙税も各種行政サービスや契約書に対して定額・定率で発生する。

外国税額控除や投資インセンティブとして、新規投資プロジェクトに対する一定期間の法人税・VAT免税措置などが投資法に基づき存在する(後述の投資優遇制度参照)。

4. 会計・監査制度

会計基準

アルジェリアの会計基準「財務会計システム(SCF)」は国際財務報告基準(IFRS)の影響を強く受けつつ、一部フランス会計制度(勘定科目体系など)の流れを汲むローカルGAAPである。

すべての法人企業はSCFに従って記帳・財務諸表作成を行う義務があり、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書および注記類を含む決算書一式を作成する。上場企業や銀行など一部業種では規制当局がIFRS準拠の報告を求めるケースもあるが、一般事業会社ではSCFが適用基準となる。

帳簿はフランス語またはアラビア語で備え付け、取引証憑とともに10年間の保存義務がある。

監査要件

アルジェリアの会社法では一定規模以上の企業に対して法定監査人の選任を義務付けている。株式会社(SPA)は規模に関係なく少なくとも1名の公認会計士を監査人として株主総会で任命しなければならない。有限会社(SARL)についても資本金や売上高・従業員数が所定の基準を超える場合は監査人の選任が必要とされる。

監査人はアルジェリア公認会計士協会などに登録された有資格者でなければならず、任期は3年間で再任可である。

監査済み財務諸表および取締役会の事業報告は毎事業年度末後に作成され、6月30日までに定時株主総会で承認される必要がある(会計年度は通常1〜12月)。

登録要件

公認会計士・監査法人として監査業務を行うには、アルジェリアの職業会計士団体への登録と当局からの認可が必要である。海外資格の会計士が監査業務を行う場合、現地有資格者との提携や資格承認手続きが求められる。

税務に関しても、税理士制度があり、税務代理業務は登録税理士が行える。企業としては特段の登録義務はないが、年次決算終了後に税務当局への決算書提出義務があるため、会計監査人や税理士を通じた対応が実務上必須となる。

財務諸表の提出

会社は毎年度の財務諸表を監査人の監査を経て確定させた後、税務当局および商業登記当局へ提出する義務がある。税務申告の一環として確定財務諸表一式(貸借対照表・PL・CF計算書・附属明細)を所轄税務署に提出しなければならない。提出期限は法人税申告期限と同じく翌年4月末である。

また商業登記簿(CNRC)にも年次財務諸表を備え付けることが求められ、一般に事業年度終了後6か月以内に登記当局へ写しを届け出る。

5. 労務制度

雇用契約

契約形態は期間の定めのない無期雇用が原則で、業務の一時的な増加や季節労働、正社員の臨時代替など正当な事由がある場合のみ有期契約(CDD)が認められる。有期契約の乱用は法律で制限されており、同一労働者との有期契約の更新回数や契約期間の上限が定められている。

試用期間は職種により1〜6か月程度設定可能である。

解雇・退職に関して、使用者・労働者いずれからも契約解消は可能だが、不当解雇の防止規定があり、原則として正当な理由なく従業員を解雇することはできない(重大な背任行為などを除く)。解雇時には事前予告通知が必要で、勤続年数に応じて通知期間が延長される。

勤続2年以上の労働者には所定の退職金支払い義務も生じる。退職金額は勤続年に応じた給与〇ヶ月分という形で定められており、違法解雇と認定された場合には更なる補償金が科される場合がある。

最低賃金

法定最低賃金(SNMG):月額20,000 DZD(週40時間労働の総額賃金、2024年時点)

最低賃金は社会保障拠出後の手取額ベースで設定され、地域や年齢による差はない。賞与や手当は法律上義務ではないが、一般に業績連動のボーナス制度を採用する企業が多い。

労働時間

所定労働時間:週40時間(1日8時間・週5日勤務)

多くの企業で金曜日が休日(日曜は平日扱い)となるイスラム圏独自のカレンダーだが、土日休業とする企業も増えている。危険有害業務に従事する労働者については法定労働時間が短縮される場合があり、逆に監視業務など一部の職種では不活発な待機時間を含む特殊な勤務形態として週労働時間を延長できる場合もある。

時間外労働(残業)は原則として所定労働時間の20%を超えて行わせることは禁止されており、最大でも通常時間の120%(週48時間相当)までに制限される。残業代は通常賃金の○割増(法定割増率は平日残業で+50%、休日労働で+100%等)で支給しなければならない。

年次有給休暇は勤続1年で30日の権利が発生し、以降勤続年数により日数が加算される。女性労働者には14週間の出産休暇が保障される。

解雇・退職

上述の通り解雇には正当事由と予告期間の遵守が要求される。人員整理など経済的理由による解雇(整理解雇)の場合は、労働監督官への事前通告や労働組合との協議が必要となる。

不当解雇と認定された場合、労働審判所は解雇無効と賃金相当額の補償を命じ得る。自己都合退職の場合、労働者側からも所定の通知期間(通常1〜3か月程度)をもって退職届を提出する必要がある。

定年は一般的に60歳前後だが、法令上明確な全国統一の定年規定はなく、各企業や公務部門の規定による。公的年金の受給開始年齢は男性60歳・女性55歳(勤続年数要件あり)となっている。

労働争議・労使関係

アルジェリアでは労働組合の結成が認められており、最大のナショナルセンターはアルジェリア労働総同盟(UGTA)である。

労使紛争が生じた場合、まず労働監督官(労働局)による調停が図られ、それでも解決しない場合に労働審判所での裁定に進む仕組みである。合法的なストライキは労組が一定手続きを経て通告すれば実施可能であり、公営企業や教育・医療部門でストが起こることもある。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

2022年の新投資法で一定地域における税関・税制優遇を認める制度の整備が謳われ、現在沿岸部や国境付近での工業団地をSEZ化する計画が検討されている。また新投資法の下で、「国内経済に特別の利益をもたらす投資プロジェクト」に対しては法人税・VAT・関税を最長10年間免除するなど強力なインセンティブ措置が用意されている。

これら優遇適用を受けるには事前に当局(投資委員会)の承認を得て、政府との間で投資協定を締結する必要がある。

投資促進機関

2022年、新たにアルジェリア投資促進庁(AAPI)が設立された。AAPI内には特に「大型投資・外国投資専用」の一窓サービスが設置され、会社設立や各種許認可取得手続きをまとめて支援する枠組みが整備された。

また投資環境整備として、投資家の不服申立てを受け付ける投資高等評議会も新設され、行政手続の簡素化や投資家権益保護を図っている。

ビザ・労働許可

日本人を含む外国人がアルジェリアで駐在員として勤務するには、長期滞在ビザと就労許可(労働許可証)の両方が必要となる。長期ビザ(査証)は駐日アルジェリア大使館で予め取得し、入国後に現地で滞在許可証(居住証)の発給を受ける手順となる。就労許可はアルジェリア労働・雇用・社会保障省の管轄で、現地雇用主を通じて申請する。

雇用主は労働局に対し、外国人を雇用する理由(当該ポストに適任のアルジェリア人がいない等)を説明し、労働契約書や学歴・職歴証明を添えて許可を申請する必要がある。許可の有効期間は一般に1年で、更新可能である。また駐在員の帯同家族も居住許可(家族ビザ)が必要となる。

外貨規制

アルジェリア・ディナール(DZD)は国外持ち出しや他通貨との両替に制限がある管理通貨である。外国企業が利益送金(配当送金)や資本送金を行う場合、事前に税務申告を済ませ納税証明を取得した上で、商業銀行を通じて中央銀行の許可を得る必要がある。法律上、外国投資家には純利益の本国送金自由が保証されている。

また輸入代金決済については銀行での取引承認(ドミシリエーション)制度があり、一般に信用状(L/C)決済または前払送金に際して所轄銀行の審査を経る。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

主要行は国営のアルジェリア外貿易銀行(BEA)や国民貯蓄銀行(CNEP)などがあるほか、フランス系のBNPパリバやソシエテ・ジェネラルなど外国銀行も現地法人を有する。

口座開設には商業登記簿謄本、税務登録証明、会社定款、代表者ID、住所証明等の書類提出が求められる。全ての書類がフランス語またはアラビア語で揃っていることを確認し、不備がなければ1〜2週間程度で口座開設が完了する。

現地借入・金利水準

アルジェリアの金融市場は国営銀行が与信供給の中心を占めており、民間企業が融資を受ける際も政府系銀行からの借入が主流である。貸出金利は政策金利(現在2.75%)に基づき決定され、一般企業向けローン金利は年利7〜9%程度が相場(2025年)である。

日本企業が現地で長期投資を行う際、プロジェクトファイナンスや輸出信用を活用できる場合もある。

送金・為替サービス

国際送金は銀行経由が基本であり、SWIFTネットワークを通じた電信送金が一般的である。

個人の海外送金については年間制限額があり、学費送金や家族送金目的で一定額まで許可される仕組みである。

外貨の入手は中央銀行の管理下にあり、企業が輸入決済や配当送金で大量の外貨を調達する際、国内の銀行から中央銀行への買付申請が行われる。

フィンテック動向

近年、政府が「Vision 2030」のもとデジタル金融を推進し始め、銀行以外の決済サービスプロバイダを許可する法改正が行われた(2021年)。これによりモバイル決済や電子ウォレットの新興企業が登場しつつある。

国営のアルジェリア郵便(Algerie Poste)も電子マネー機能付きカード「Edahabia」を普及させ金融包摂に貢献している。

とはいえ全体としては金融サービスへのアクセスがMENA地域でも低水準で、政府によるフィンテック支援体制も緒に就いたばかりである。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

アルジェリアのビジネスにおいては、形式的な契約書を交わしても、実際の履行段階では状況変化や慣習を理由に条件交渉が続く場合がある。特に官公需や公共事業では、契約後に仕様変更や納期延長が発生しやすいため、柔軟な対応が求められる。

一方で正式な契約書(フランス語またはアラビア語)の取り交わしは法的紛争時の拠り所となるため必須であり、契約条件は詳細に詰めて文書化することが重要である。

汚職・賄賂リスク

アルジェリアでは汚職防止法制が存在し、高官の収賄などに厳しい罰則規定があるものの、依然として役所での許認可取得や公共調達などで腐敗のリスクが指摘されている。2023年の腐敗認識指数(CPI)においてアルジェリアは180か国中104位・スコア36と低く、賄賂慣行が根強いことを示している。

公共調達制度も電子入札の導入など透明化が図られている。

治安・政情リスク

現在、都市部の日常治安は比較的良好で、殺人発生率などは低い水準にある。外国人・駐在員に対する直接的なテロの危険性は限定的だが、国境付近(マリ・リビア側)やサハラ砂漠の一部地域は無政府状態の周辺国情勢の影響で渡航禁止となっている。

政治面では2019年に大規模デモ「ヒラク」により長期政権が崩壊し、その後選挙で就任したテブン大統領の下で一定の安定を保っている。ただ政権基盤は磐石ではなく、2024年大統領選でも野党不参加のまま再選されるなど民主化途上の側面もある。

パートナー関係構築の留意点

ビジネス上のコミュニケーション言語はフランス語が主であり、意思疎通にはフランス語堪能なスタッフを配置するか通訳を介する必要がある。

宗教・文化面では住民の大半がイスラム教徒であり、ラマダン月の勤務時間短縮や金曜礼拝などイスラム習慣への理解が求められる。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

進出日本企業:15社(2025年現在)
進出分野:エネルギー、プラント建設、インフラ、商社取引など

また近年、トヨタ自動車が現地企業との合弁で組立工場設立を検討するなど製造業にも機運がみられる。住友商事はアルジェリア国営通信との提携で通信インフラ案件に関与し、塩野義製薬は現地製薬会社とのライセンス契約を結ぶなど、新分野への進出例も出ている。

競争優位性・課題

アルジェリア市場の魅力は、まず豊富な天然資源収入による政府資金力とインフラ需要の大きさである。人口規模も北アフリカ最大級で一人当たり所得は5千ドル超と、中東アフリカ地域では購買力が比較的高い。

一方、課題としては行政手続の煩雑さや投資規制の不確実性が挙げられる。例えば突然の輸入規制変更(車輌輸入禁止措置など過去に例あり)や、外貨不足時の送金遅延など、公権力による経済統制リスクは無視できない。

また製造業基盤が脆弱なため現地調達が難しく、原材料や部品の多くを輸入に頼る必要がある点もコスト増要因となる。

労働面では大卒人材が豊富で技術者の質は比較的高いものの、官僚文化の影響で民間ビジネス経験に乏しい人材も多い。加えて企業間競争においては旧宗主国フランスや近年台頭する中国企業が有利なポジションを築いており、日本企業は知名度やネットワークで後れを取る場面もある。

手続き難易度

アルジェリアで事業を始めるには行政手続きのハードルが高く、世界銀行によるビジネス環境評価では「開業」「建設許可」「輸出入」「納税」など多数の分野で下位に位置していた。

もっとも政府は投資誘致のため規制緩和と電子化を進めており、例えば2021年には企業設立資本金要件の撤廃やオンライン納税システムの導入が図られた。

専門家ネットワーク

・在アルジェリア日本国大使館
・JETRO(日本貿易振興機構)

また「アルジェリア日本ビジネス協議会」や日系企業連絡会といった非公式ネットワークも存在し、安全対策や労務管理の情報交換が行われている。

現地専門家では、四大会計事務所(PwCやKPMGなど)がアルジェに拠点を構え税務・法務アドバイザリーサービスを提供しているほか、フランス系の法律事務所やコンサル会社がビザ取得代行や許認可取得支援を請け負っている。

カメルーン共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

首都

首都:ヤウンデ
公用語:フランス語、英語

通貨・為替

通貨:CFAフラン(XAF)
為替:1EUR=655.957XAF、1USD=590XAF

経済指標

人口:約2,900万人(2024年)
GDP規模:約510億米ドル(2024年)
実質GDP成長率:約3.5%(2024年)
一人当たりGDP:約1,737米ドル(2023年)
主要産業:原油・天然ガス、農産品(ココア、コーヒー等)、林業、鉱業
インフレ率:4〜6%程度

日本との関係

日本への輸出:約11億円(アルミニウム地金等)(2022年)
日本からの輸入:約49億円(機械類・車両等)(2022年)

1960年の独立時に日本と国交樹立。日本のODAにより道路整備や農業開発などが支援されている。

2. 法人設立制度

法人形態

OHADA統一商法に基づき、主な法人形態は株式会社(SA)と有限会社(SARL)である。他に現地支店や駐在員事務所の設置も可能である。

外資規制

原則外資100%出資の会社設立が認められており、外資規制は緩やかである。特定の戦略分野(石油・鉱業など)では事前許可や現地企業との提携条件が課される場合がある。土地の所有は外資に制限があり、長期リースで対応する例が多い。

資本金要件

SARLは事実上最低資本金なしで設立可能。SA(公開会社)は約1,000万XAFの最低資本金が必要とされる。2014年のOHADA改正で要件が緩和され、小規模企業では象徴的な金額で会社設立が可能となっている。

登記手続き

設立手続きは企業登記センター(CFCE)で一括処理される。必要書類を揃えて申請すれば、標準で約1週間で法人登記が完了する。

3. 税制度

法人税

基本税率:30%(地方税加算後の実効税率33%)

一部中小企業には27.5%の軽減税率が認められる。赤字の場合でも最低税(年間売上高の2.2〜5.5%)の納付が必要である。

付加価値税(VAT)

標準税率:19.25%

一部生活必需品に軽減税率・免税措置あり。

個人所得税

個人の給与所得は累進課税(最高税率38.5%)で課される。その他の事業所得等には定率で約33%が適用される。

その他の税金

配当・利子・使用料などには源泉徴収税(約16.5%)が課税される。この他、不動産に対する固定資産税(評価額の0.1%)、事業ライセンス税(売上規模に応じ年額課税)、印紙税・登録税、酒・たばこ等への物品税など各種間接税が存在する。

4. 会計・監査制度

会計基準

カメルーンではOHADAの統一会計制度(SYSCOHADA)が採用されている。上場企業や資本市場調達企業は2019年以降IFRS(国際財務報告基準)の適用が義務付けられており、それ以外の企業はSYSCOHADA基準で財務諸表を作成する。

監査要件

すべての株式会社(SA)は法定監査人(コミサール・オ・コント)の選任が義務である。有限会社(SARL)や簡易株式会社(SAS)も、一定規模以上(資産・売上・従業員数が所定基準超)の場合には監査人を置き監査を受ける必要がある。

登録要件

監査人や公認会計士として業務を行うには、カメルーン公認会計士協会(ONECCA)への登録が必要である。

財務諸表の提出

企業は毎決算年度終了後、財務諸表を商業登記所および税務当局へ決算期末から4ヶ月以内に提出する義務がある。大規模企業では監査済み財務諸表の提出が求められる。

5. 労務制度

雇用契約

労働契約は原則書面で締結し、雇用形態や賃金、業務内容を明示する必要がある。試用期間は最長6ヶ月まで設定可能である。

最低賃金

法定最低賃金:月額43,969 XAF(約76米ドル)(2024年2月時点)

労働時間

法定週労働時間:40時間(1日8時間

週20時間以内の時間外労働が許容され、割増賃金の支払いが義務付けられる。

解雇・退職

無期雇用契約の解雇には正当理由が必要で、勤続年数に応じた予告期間(最大4ヶ月)が定められている。企業都合による解雇では勤続年数に応じた退職手当(例:勤続1年あたり月給の20%など)を支払う必要がある。

労働争議・労使関係

労働者は労組結成と団体交渉の権利を有する。ストライキには事前予告などの手続き義務がある。労使紛争は労働監督官の調停や労働裁判所で解決が図られる。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

輸出志向企業向けに自由貿易区制度があり、初期10年間の法人税免除等の税制優遇が提供される。また投資促進法に基づき、一定の新規投資には関税・法人税の減免措置が適用される。

投資促進機関

投資促進庁(API)が投資関連手続のワンストップ窓口となっており、優遇措置申請の受け付けも行う。

ビザ・労働許可

外国人が就労するには就労ビザと労働許可が必要であり、企業が労働省に許可申請を行う。入国後は居住許可証の取得も必要となる。

外貨規制

CEMAC共通の外為規制により、輸出代金の一定割合を所定期間内に本国送金する義務がある。海外送金や資本移動の際には中央銀行(BEAC)の許可や申告が必要となり、配当送金・投資資金の撤収も納税証明の提出と認可取得を要する。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

法人名義の銀行口座開設には登記証明書、納税者番号証明、代表者IDなどを銀行に提出する。KYC審査を経るため開設完了まで通常1週間程度を要する。

現地借入・金利水準

中央銀行政策金利:5.0%(2025年)
商業銀行の平均貸出金利:約8%(中小企業向けは更に高金利)

銀行融資は大企業に偏重し、中小企業の資金調達難が課題となっている。

送金・為替サービス

国際送金は銀行経由のSWIFT送金が主流であり、契約書や請求書の提示が求められる。為替はユーロ連動で安定しているが、高額送金には中央銀行の事前許可が必要となる。個人送金にはWestern Unionやモバイル送金サービスも利用される。

フィンテック動向

モバイルマネーが普及し、2023年時点で国内に約1,066万のアクティブ利用者がいる。電気料金や税金の支払いにも活用され、金融包摂が拡大している。政府は決済サービスの規制整備を進めており、フィンテック企業の台頭も続いている。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

契約は法的拘束力を持つが、履行遅延や債務不履行も発生し得る。裁判による解決は長期化しがちであるため、契約時に担保や違約金条項を設定することが望ましい。信頼関係の醸成も重視され、定期的な意思疎通が取引の円滑化に寄与する。

汚職・賄賂リスク

行政手続や取引に汚職のリスクが伴い、許認可取得や税務調査の場面で非公式な支払いを求められるケースがある。企業は贈賄を排除する社内コンプライアンスを徹底する必要がある。

治安・政情リスク

長期政権下で政治的安定は維持されているが、英語圏の北西・南西州では分離独立問題から武力紛争が続く。また極北州では過激派によるテロの懸念がある。主要都市は概ね安定しているものの、都市犯罪には警戒を要する。

パートナー関係構築の留意点

ビジネスではフランス語が主に使用され、英語圏では英語対応が必要となる。商工会議所や業界団体でのネットワーキングも有益である。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

日系企業の現地法人進出は少ない。日本製自動車や二輪車の販売代理店は存在するが、製造業などの大規模進出例は限定的である。政府開発援助(ODA)や技術協力を通じた潜在市場の育成が図られている段階である。

競争優位性・課題

カメルーンは中部アフリカの地理的要衝に位置し、ドゥアラ港を有する物流拠点かつ域内最大の市場である。インフラ水準も周辺国より整っている。

他方、官僚的な手続の煩雑さや汚職、物流コストの高さ、行政の非効率といった課題がビジネス上の障壁となる。

手続き難易度

企業設立や許認可に要する時間と労力は大きく、ビジネス環境ランキングでも下位に位置する。近年ワンストップ窓口整備や電子化が進むものの、進出に際しては現地専門家の支援を受け煩雑な手続きを乗り切ることが重要である。

専門家ネットワーク

・在カメルーン日本大使館
・JETRO

国内には国際系の会計事務所や法律事務所が存在し、進出時の相談が可能である。フランス語対応できる人材や通訳を確保し、専門家ネットワークを活用することで円滑な事業運営につながる。

ケニア共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

首都

首都:ナイロビ

通貨・為替

通貨:ケニア・シリング (KES)
為替:1 USD = 約129.3ケニア・シリング(2025/05月平均)

経済指標

人口:約5,643万人(2024年)
名目GDP:約1,245億USD(2024年)
一人当たりGDP:約2,206USD(2024年)
実質GDP成長率:4.7%(2024年推定)
消費者物価上昇率:4.5%(2024年)

日本との関係

日本からの輸入:1,531億円
日本への輸出:125億円

日本からの直接投資額は年間約15億円(2023年)。

日系企業拠点数:118拠点(2023年10月現在)
在留邦人数:826人(2024年10月現在)

ケニアはサブサハラ・アフリカで日本の政府開発援助(ODA)最大の受取国となっており、インフラ開発や人材育成など幅広い分野で日本の支援が行われている。

2. 法人設立制度

法人形態

外国企業がケニアで事業を行う場合、「現地法人(有限責任会社)」を設立するか、外国会社の「支店」として登記するのが一般的である。ケニアの株式会社(Company Limited by Shares)は非公開の私会社(Private Company)と公開会社(Public Company)に分かれ、私会社は株主1名での設立が可能(外国人100%出資も可)である。

支店は外国会社と同一の法人格のまま現地で事業活動を行う形態で、駐在員事務所(連絡事務所)の制度は現在存在しない。

外資規制

原則として外資による100%出資が認められており、一般業種の会社設立に現地資本参加義務はない。ただし特定の業種では外資比率に制限が設けられている。例として通信業では外資出資比率の上限80%、保険業では現地役員の選任義務等があり、航空業ではケニア国籍資本の過半出資(51%以上)が必要と定められている。

また外国人による土地所有は制限されており、外国人や外資系法人は土地の所有権を取得できず最長99年のリース(借地権)の形でのみ利用が許される。

資本金要件

一般的な有限責任会社について法定の最低資本金規制はなく、1株から会社を設立できる。非公開会社に最低払込資本の要件はないが、公開会社(上場企業)は約675万ケニア・シリング以上の払込資本を有することが要求されるなど、特定の場合に最低資本要件が存在する。

規制業種でも個別法で資本要件が設定されている場合がある。

登記手続き

現地法人および支店の設立登記は政府のオンライン窓口「eCitizen」を通じて行う(登記完了まで通常1~2か月)。まず社名を3案以上申請して使用可能性を確認・予約する。次に会社情報(事業目的、定款内容、取締役・株主情報等)をオンライン入力し、登録手数料を納付する(現地法人は10,650 KSh、支店は7,550 KSh)。

申請フォームの署名・提出後、問題がなければ提出から約2週間で現地法人には設立証明書、支店には適合証明書が発行される。登記後は法人の納税者識別番号 (PIN) 登録、労働者社会保険(NSSF)や国民医療保険(NHIF)への加入、必要な業種別ライセンスの取得なども行う必要がある。

3. 税制度

法人税

法人税率:30%

課税対象はケニア国内で発生した所得に限定される。

税制上、輸出促進や投資誘致のための優遇措置があり、輸出加工区 (EPZ) 企業は操業開始後10年間法人税免除(11~20年目は25%、以降30%)となる。また特別経済区 (SEZ) 指定を受けた企業は最初の10年間法人税率10%、次の10年間15%とされる特別税率が適用される。

その他にも大規模投資に対する初年度100%減価償却など各種の投資減税措置が用意されている。

付加価値税(VAT)

付加価値税の標準税率:16%

輸出取引や一部の生活必需品・農産品には税率0%(ゼロ税率)が適用され、医療・教育など特定のサービスは非課税とされている。

VAT課税事業者はケニア歳入庁 (KRA) に登録し、原則として毎月VAT申告・納付を行う義務がある。

個人所得税

個人所得税は累進課税であり、課税所得額に応じて5段階の税率(10%、25%、30%、32.5%、35%)が適用される(最高税率35%は年間約960万KSh超部分に適用、2023年法改正)。

給与所得者の場合、所得税は源泉徴収 (PAYE) により毎月控除・納付される。個人は基礎控除として月額2,400 KShの個人税額控除が適用され、また年金積立への拠出など一定の控除制度も設けられている。

その他の税金

配当・利子・ロイヤルティ等の対価を非居住者に支払う際には源泉徴収税が課される(非居住者配当15%、利子15%、ロイヤルティ20%が標準税率)。

不動産や株式の譲渡益にはキャピタルゲイン税15%が適用され、譲渡所得に対する最終課税となる。不動産売買には別途印紙税(都市部で物件価格の4%、その他地域で2%)が課される。

また特定の商品・サービスには物品税(エクサイズ)が課せられており、例えば燃料、酒類、タバコ、金融サービスなどが対象である。さらに雇用者は給与支払い時に社会保険料として国民社会保障基金 (NSSF) への拠出や国民医療保険 (NHIF) 保険料の控除を行う義務がある。

4. 会計・監査制度

会計基準

ケニアでは国際財務報告基準 (IFRS) が会計基準として採用されている。公開市場から資金調達を行う企業(上場企業や銀行など)はフルIFRSの適用が義務付けられ、その他の企業については簡易版であるIFRS for SMEs(中小企業向け会計基準)の使用が認められている(希望すればフルIFRSを適用することも可能)。

会計士・監査人は1978年設立のケニア公認会計士協会 (ICPAK) によって資格付与・規制されており、国際基準に準拠した職業倫理と専門基準の遵守が求められる。

監査要件

原則として全ての株式会社は各事業年度ごとに財務諸表について公認会計士による外部監査を受ける義務がある。もっとも会社法により、休眠会社および一定の小規模会社については監査義務の免除規定が設けられている。

小規模会社とみなされる条件は会社法で定められており、一例として当該年度の売上高が5000万KSh以下かつ期末純資産が2000万KSh以下であること等が挙げられる(その他に株主数や親子会社関係に関する条件あり)。この要件を満たす場合、その年度の財務諸表について監査を省略できる。

登録要件

会社法上、一定規模以上の会社には有資格の会社秘書役(カンパニー・セクレタリー)を置く義務がある。公開会社(上場企業)は常に公認秘書 (Certified Public Secretary) の資格を持つ会社秘書を選任しなければならず、非公開会社でも払込資本が500万KSh以上の場合は有資格秘書役の設置が法定義務となる。

会社秘書役資格はケニア公認秘書協会 (ICPSK) により付与・管理されている。また前述の通り監査人についてもICPAKへの登録が必要である。

財務諸表の提出

ケニアでは事業年度終了後に各社が年次の定時株主総会を開催し財務諸表の承認を受ける。上場企業など公益性の高い企業は監査済み財務諸表を当局(資本市場機構や会社登記局)へ提出する義務があり、投資家にも開示される。

非公開の有限会社については毎年、会社登記局へ年次報告(Annual Return)を提出する際に基本的な財務情報を届け出る必要がある。ただし小規模私企業については詳細な財務諸表の提出は実務上省略される場合が多い。

また外国企業の支店は毎事業年度、本社の監査済財務諸表を会社登記局に提出する法的義務があり、支店の現地活動報告とあわせて登録維持手続きを行う。

5. 労務制度

雇用契約

ケニアの雇用法は、継続勤務3か月を超える労働者に対し書面の雇用契約書を交付することを義務付けている。

一般に常用(期間の定めのない)雇用契約と有期契約があり、試用期間は最長6か月まで設定可能である(労働者の書面同意により一回限り最大6か月延長可)。試用期間中も含め、最低賃金や労働時間など基本的な労働条件は法律によって保護される。

また契約終了時の手続きや権利義務についても法律で規定されており、口頭のみの解雇通告や即時解雇は許されない。

最低賃金

ケニアには職種や技能レベル、勤務地域に応じた法定最低賃金が定められている。2024年11月発効の最新改定最低賃金では、未熟練労働者(一般労働者)の都市部における最低月額賃金が16,113.75KSh(住宅手当別)と規定された。

職種ごとに細かい基準額が設定されており、例えば警備員や運転手など技能を要する職種では更に高い最低賃金が適用される。

なお雇用主は労働者に住居を提供しない場合、給与と別に住宅手当を支給する法的義務がある。

労働時間

所定労働時間:週48時間(1日8時間×週6日)程度

法定では週休1日が最低保証され、賃金規則上は通常の勤務時間は昼間労働で週52時間以内、夜間労働で週60時間以内とされている。時間外労働(残業)は週平均で6時間以内に制限され、2週間の合計労働時間は通常116時間、夜間労働者は144時間を超えてはならないと規定されている。

残業代は法定割増率が適用され、平日の時間外は通常賃金の1.5倍、週末・祝日の勤務は2倍の率で支払わねばならない。

解雇・退職

解雇に際して使用者は事前に解雇理由を本人に通知し、弁明の機会を与えなければならない。解雇理由は勤務成績不良、規律違反、経営上の必要(業績悪化による人員整理)など合理的なものであることが求められる。法定の解雇予告期間は勤務期間や賃金形態に応じて異なるが、月給制労働者の場合少なくとも30日以上前の予告が必要となる(予告期間未満で解雇する場合はその期間分の給与を支払う義務がある)。

整理解雇(レイオフ)を行う際には労働局および労働組合(ある場合)への事前通告と協議が義務付けられ、対象者の選定基準も公正でなければならない。整理解雇された労働者には勤続年数に応じた退職手当として1年につき15日分以上の給与相当額を支払うことが法定されている。

なお民間企業の定年は法律で一律には定められていないが、一般的に公的セクターでは60歳前後が退職年齢の目安となっている。

労働争議・労使関係

労働者には憲法により団結権・団体交渉権・団体行動権が保障されており、主要産業には労働組合が組織されている。合法的なストライキを行うには争議行為の7日前までに書面で予告する必要があり、さらに事前に調停手続きを経ることが求められる。こうした手続きを踏んだ上での争議行為は労働法で保護される。

一方、無許可の突然のストライキ(ワイルドキャット・ストライキ)は違法となり、指導者には解雇や損害賠償請求など厳しい措置がとられ得る。労働紛争の裁定は労使関係裁判所(雇用労働関係裁判所)が扱い、不当解雇と認定された場合には労働者に最大12か月分の賃金の補償命令が出されることもある。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

ケニア政府は輸出振興と外資誘致のため特別経済区(SEZ)や輸出加工区(EPZ)の制度を設けている。指定区域に進出し認可を受けた企業には各種税制優遇措置が与えられる。

例えばEPZ企業は初年度から10年間法人税が免除され、輸出向け製品の原材料・機械設備の輸入に対し関税やVATが免除される。

SEZ企業も10年間は法人税率10%(通常30%)、次の10年は15%に軽減されるほか、SEZ内での付加価値活動に係るVATや印紙税が免除される優遇がある。

さらにナイロビ国際金融センター (NIFC) 法に基づき登録された金融企業には、認定から10年間法人税15%の特別税率や金融規制のサンドボックス適用などのメリットが提供される。

投資促進機関

外国企業の投資ワンストップ窓口としてケニア投資庁 (KenInvest) が設置されている。KenInvestは投資許可証の発給、事業設立手続きのガイド、税関・移民局など関係当局との調整を支援し、投資家への各種サービスを提供する。

また輸出加工区庁 (EPZA) や特別経済区庁など政府機関が特定分野の投資案件を所管している。大型プロジェクトについては政府が閣僚級で構成する投資委員会を設け個別案件をフォローする仕組みもある。

ビザ・労働許可

ケニアで90日を超えて滞在・就労する外国人は、事前にケニア政府から労働許可(Work Permit)を取得しなければならない。就労許可は活動内容により種類が分かれており、一般駐在員はクラスD(現地雇用の専門職)、現地法人の投資家・役員はクラスG(事業投資)などに該当する。クラスDでは雇用主が当該ポストにケニア人では代替できない理由を示す必要があり、クラスGでは最低10万USD相当の出資が条件となっている。

また外国人が一時的に就労する場合、90日以内であれば短期就労許可(Special Pass)を取得して業務に従事することが可能である。

外貨規制

ケニアでは外国からの資金持込や利益送金に対する厳格な外為規制は設けられていない。企業は国内銀行に外貨預金口座を開設でき、事業収益を外貨で保持することも可能である。

外国人投資家が現地企業から受け取る配当金や撤退時に回収する資本も、関連税金を納付した上で自由に海外送金できる。ただし中央銀行 (CBK) はマネーロンダリング防止の観点から一度に10,000 USD相当を超える送金時には送金目的などの申告と裏付け書類の提出を義務付けている。

また輸出代金については一定期間内に国内に持ち戻ることが求められる(外貨建てで国外に留保することは不可)。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

ケニアで法人の銀行口座を開設するには各銀行が定めるKYC(顧客確認)書類を提出する必要がある。一般的には会社の設立証明書、定款および株主・役員名簿、会社の納税者識別証明書、取締役会決議書、ならびに口座署名者となる担当者の身分証明書(パスポート等)が求められる。

口座開設には数日から数週間程度を要し、開設される口座は通常ケニア・シリング建ての当座預金口座である(必要に応じてUSD・EURなど外貨口座も併せて開設可能)。

現地借入・金利水準

ケニア国内での銀行融資金利は高水準で、2025年現在、企業向け貸出金利は年利12~15%前後が一般的である(中央銀行政策金利は10.5%、2025年)。

金利は市場原理に委ねられているが、インフレ圧力等により商業金利は二桁台で推移している。

送金・為替サービス

国内送金は銀行振込のほか、携帯電話を活用したモバイル送金が広く利用されている。企業間取引では銀行振込が主流であり、オンラインバンキングにより当日~翌日中に送金が完了する。

国際送金については、各商業銀行がSWIFTを利用した外国送金サービスを提供している。

為替取引は銀行を通じて行い、必要に応じて銀行とフォワード契約(為替予約)を結ぶこともできる。

なお、国内では外貨の持ち込み・持ち出しに10万USD相当額以上の場合の申告義務があるものの、それ以下の旅行者程度の額であれば制限なく持ち運びできる。

フィンテック動向

ケニアは「シリコン・サバンナ」と称されるほどフィンテック産業が盛んな国である。携帯電話ベースの送金サービスM-Pesaは2007年に世界に先駆けて商用化され、2020年代には成人の大半がモバイルマネー口座を保有するまでに普及した。これにより金融包摂が飛躍的に進み、地方住民でも貯蓄・送金・決済が容易になっている。

ナイロビには多数のフィンテック系スタートアップが集積し、決済ゲートウェイやデジタル送金、仮想通貨取引、アグリテック融資など様々な分野で新興企業が台頭している。政府も中央銀行主導でイノベーション促進のための規制サンドボックス制度を運用しており、キャッシュレス社会への移行を戦略的に支援している。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

官公庁との取引や大企業間では契約書による法的拘束力が重視される一方、中小企業や零細事業者の間では伝統的な口約束や関係重視の商習慣が残る場面もある。

契約の履行について司法救済を求めることは可能だが、商事裁判の平均審理期間は数年規模に及ぶことがあり、実務上は調停や仲裁による解決が多用されている。ナイロビには国際仲裁センター (NCIA) が設立されており、国際商事紛争を裁判外で解決する基盤も整備されつつある。

汚職・賄賂リスク

ケニアでは腐敗の根絶が長年の課題であり、ビジネス環境における汚職リスクは依然高い。公共調達や税関手続、許認可取得の場面で賄賂の要求や不正な便宜供与が発生する事例が指摘されている。

国際的な腐敗認識指数(CPI)でもケニアのスコアは低く、2022年は180か国中121位(スコア32)と下位に位置した。政府は汚職撲滅委員会 (EACC) を設置し官民の腐敗事案摘発に取り組んでいるものの、一般企業が日常業務で直面する小規模汚職(いわゆるグレーゾーンの要求)まで完全に排除するには至っていない。

治安・政情リスク

ケニアは東アフリカ有数の安定国とみなされるが、治安面・政治面のリスクは存在する。ソマリア系イスラム武装勢力アル・シャバーブによるテロの脅威も残存しており、2013年のショッピングモール襲撃事件や2019年の高級ホテル襲撃事件では多数の犠牲者が出た。

政治情勢については、おおむね民主的な選挙と政権交代が定着しているものの、選挙前後には野党支持者による抗議デモや騒乱が発生することがある。

パートナー関係構築の留意点

一般に日本ほど時間厳守の文化ではなく、商談やプロジェクトが予定より遅延することもしばしばあるため、柔軟な姿勢と忍耐が求められる。政府機関や業界団体のイベントに参加して顔を広げることも有効であり、ケニア私企業連盟 (KEPSA) などのビジネスネットワークを通じて有用な情報や人脈を得られる。

日系企業間では在ケニア日本人会や商工会を中心に情報交換や親睦が図られており、先発企業から非公式なアドバイスを受けられる土壌もある。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

・トヨタ:現地法人を通じて自動車・部品販売や組立拠点を展開
・ホンダ:ナイロビ近郊に工場を設立
・ケニア政府案件のインフラプロジェクト(発電所建設や道路整備など)に参画
・住友商事:地熱発電事業に出資
・三井住友銀行:ナイロビに駐在員事務所を開設

ケニアには幅広い業種で日系企業が進出している。ケニアに拠点を置く日系企業数は南アフリカに次いでアフリカ第2位となっており、東アフリカのハブとして多くの企業が地域統括拠点をナイロビに構えている。

現地には日系向け医療クリニックや日本食レストランも存在し、日本人社会(在留邦人約800名)が形成されつつある。

競争優位性・課題

ケニア市場の魅力は、東アフリカ最大の人口・経済規模と地理的ハブとしての位置付けにある。域内物流の要であるモンバサ港や国際機関が集積するナイロビの存在など、周辺国も含めたビジネス拠点としての戦略価値が高い。また英語公用語であることや市場経済の成熟度、ICTインフラの整備状況など、アフリカ諸国の中では事業運営の障壁が比較的低い点も優位性である。

若年人口が多く人材プールが豊富であることから、中長期的な消費市場としての成長やデジタル分野での革新にも期待が持てる。

一方、進出企業にとっての課題も存在する。電力・水道などインフラ供給コストが高く、製造業では慢性的な電力不足に備え発電機を自前で用意する必要がある場合がある。ビジネス関連法規や税制が頻繁に改正される傾向もある。現地市場では中国・インド・欧米企業が熾烈な競争を展開しており、価格競争力やスピードで日系企業が遅れをとる場面も散見される。さらに汚職や官僚的手続きは依然ビジネス上のリスクであり、透明性確保に追加のコストや労力を要する。

手続き難易度

会社設立手続き自体はeCitizenで完結するが、入力内容の訂正要求や追加提出書類の通知が後から来ることもあり、全ての要件を満たすまでに時間を要することがある。

労働許可の取得は難易度が高く、申請書類の準備から実際の許可証発給まで半年近くかかる例もある。税務・社会保険の申告はオンラインポータルで可能だが、当局からの照会への対応や現地税務調査への備えなど、日本に比べ管理負担が大きい面がある。

世界銀行の「ビジネス環境ランキング」(2020年版)ではケニアは全体で56位とアフリカ上位に位置し、開業手続きの迅速さや融資の容易さで高評価を得た反面、建築許可取得や契約執行の指標では低評価だった。

専門家ネットワーク

・JETROナイロビ事務所
・在ケニア日本大使館
・国際会計事務所(PwC、KPMG等)

ナイロビには主要な国際会計事務所(PwC、KPMG等)や法律事務所の提携オフィス、コンサルティング会社が多数進出しており、日系企業もこうした専門家ネットワークを活用している。

チャド共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

 

 

 

1. 国家基本情報

 

首都

首都:ンジャメナ

通貨・為替

通貨:中央アフリカCFAフラン(XAF)
為替:1 USD=約582 XAF(2025/05月平均)

経済指標

名目GDP:約216億ドル(2024年)
一人当たりGDP:約1,200ドル(2024年)

石油輸出が経済の柱で、近年は2023年に実質GDP成長率5%を記録したが、2024年は約3.5%に減速する見通しである。インフレ率は2024年に8~9%となっている。

日本との関係

日本との貿易額は2021年時点で対日輸出約0.1億円、対日輸入約3.4億円と極めて小さい。日本は人道支援を中心に累計約8.2億円の無償資金協力を行ってきた。

2. 法人設立制度

法人形態

チャドはOHADA(一体化されたアフリカ企業法)の加盟国であり、有限会社(SARL)や株式会社(SA)、簡易株式会社(SAS)など標準的な法人形態が利用できる。支店形態での進出も可能である。

外資規制

外国資本に対する包括的な持株規制は基本的に存在しない。原則として全ての産業で100%外資が認められるが、国防など一部安全保障上の分野では例外的に制限が課される場合がある。

資本金要件

OHADA企業法では有限会社(SARL)は最低10万CFAフラン、株式会社(SA)は最低1,000万CFAフランの資本金が要求される。簡易株式会社(SAS)には法定の最低資本金はなく、柔軟に設定できる。

支店開設時には資本金は不要だが、2020年財政法の規定で年間想定売上の0.5%相当額を保証金として政府に一時預託する要件がある。

登記手続き

投資促進庁(ANIE)が企業登記のワンストップサービスを提供している。商業登記には定款の公証、出資金払込証明、取締役の身分証提出などが必要である。なお、前述の保証金0.5%の納付も登記完了の条件となっている。

3. 税制度

法人税

法人税率:35%(国外源泉所得は非課税)

最低税として売上高の1.5%を毎月納付する規定がある。

付加価値税(VAT)

標準VAT税率:17.5%

一部の生活必需品や現地生産品には軽減税率9%が適用される。輸出取引および国際輸送には0%の税率(輸出免税)が適用される。

VATの納税義務者は月次で申告納付し、一定条件下でVAT還付を申請できる制度がある。

個人所得税

個人所得税は累進税率で最高30%(年収約1,200万CFAフラン超部分)となる。給与所得は源泉徴収され、従業員3.5%・雇用主16.5%の社会保険料控除後の所得に課税される。利子・配当・家賃収入などには5〜20%の分離課税が適用される。

その他の税金

その他、源泉徴収税(配当・サービス料に10〜20%)、関税(5〜30%)、物品税、財産税など複数の税目が課されている。社会保障のための給与課税も存在する。

4. 会計・監査制度

会計基準

チャドではOHADA会計システム(Syscohada)が適用されており、OHADA統一会計基準に従い帳簿を作成する義務がある。企業はフランス語で会計記録を備え付け、毎年度の財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を作成する。

監査要件

株式会社(SA)は法定監査人(コミッサール・オ・コンプト)の選任が義務付けられ、大規模な有限会社(SARL)も一定基準(資本金や売上高)を満たす場合には監査人の任命が必要となる。それ以外の中小企業では法定監査義務はないが、自発的に任意監査を受けることも可能である。

登録要件

公認会計士・監査人として業務を行うには、国家会計士協会への登録が必要である。監査業務はチャド公認会計士(Expert Comptable)の資格保持者かつ協会に認可された者に限られる。国外資格者が業務提供する場合、現地の専門家と提携する必要がある。

財務諸表の提出

事業年度終了後、法人は税務申告時に財務諸表を税務当局へ提出する義務がある。また一定規模以上の企業は商業登記所へ財務諸表を所定の様式で開示・登録する必要がある。これにより第三者が決算情報を閲覧可能となる仕組みである。

5. 労務制度

雇用契約

チャド労働法では期間の定めのない契約(無期雇用)が原則であり、期間限定の有期契約は最大24か月まで(1回更新可)とされる。有期契約は書面で締結し、試用期間は最長3か月程度設けられる。

最低賃金

最低賃金:月額約6万CFA(2011年改訂)

全国一律の法定最低賃金は長らく改定されていない。

労働時間

所定労働時間:週39時間(1日8時間×週5日相当)

時間外労働は年間94時間を上限に認められる。時間外労働には割増賃金(通常賃金の1〜2割増以上)が支払われる。法定労働時間の上限は休憩含め1日11時間、週54時間(残業込み)である。

解雇・退職

無期雇用契約の解雇には労働者の勤続年数に応じた解雇予告期間(通常1〜3か月)が法定されている。不当解雇の場合、雇用主には解雇補償金の支払い義務が生じる。

労働争議・労使関係

労働組合の結成とスト権は法律で認められている。労使紛争は労働監督官の調停や労働裁判所で処理される。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

チャドには明確な経済特区(SEZ)は整備されていないが、投資奨励法に基づき特定分野への投資に対する優遇措置が用意されている。新規投資案件に対しては操業開始から最長5年間の法人税免除などの税制優遇措置が講じられる。また大型投資には設備輸入関税の免除など追加インセンティブも与えられる。

投資促進機関

前述のANIE(投資・輸出促進庁)が対内投資の窓口であり、海外企業の法人設立や各種許認可取得を支援している。ANIEではワンストップショップにより現地法人設立の手続きをまとめて行うことができる。加えて商工会議所等も現地ビジネス情報の提供や投資家へのサポートを行っている。

ビザ・労働許可

チャドで就労する外国人は就労ビザおよび労働許可証を要する。雇用企業が政府の雇用促進局(ONAPE)を通じて申請し、当該職務に適任のチャド人がいないことを証明する必要がある。法律上、外国人労働者は全従業員の2%以内(チャド人98%以上)に制限されており、これを超える雇用には労働当局の特別許可が必要となる。

外貨規制

チャドはCEMAC域内通貨であるCFAフランを採用しており、その資本取引には域内共通の外為管理規則が適用される。合法的な利益配当金等の送金は認められるが、約50万ドル超の国外送金には中央銀行(BEAC)の許可が必要になるなど、資金移動には規制がある。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

現地で銀行口座を開設するには、法人登記証明書、定款、代表者身分証明、納税者番号などの提出が求められる。外為規制上、株主資本の払込証明を銀行経由で行う必要がある場合もある。

現地借入・金利水準

商業銀行の貸出金利は年10〜15%と高く、十分な担保がない中小企業にとって資金調達は困難である。

送金・為替サービス

国内送金は銀行経由が中心だが、民間送金サービスも利用される。CFAフランはユーロにペッグされ安定している。国際送金は外貨規制の下で可能だが、手続きに時間を要し注意が必要である。

フィンテック動向

金融インフラが未発達な中、モバイルマネーなどフィンテックサービスが徐々に拡大している。2023年に通信大手のモバイル送金サービスが認可され、2025年には初の地場企業が決済サービスの免許を取得した。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

ビジネスにおいて契約書は締結されるものの、法的強制力よりも相互の信頼関係に依拠する場面が多い。ただし裁判手続きは長期化しがちで、現地パートナーとの十分な協議と信頼関係構築がトラブル防止に重要となる。

汚職・賄賂リスク

行政手続には汚職のリスクがあり、贈賄要求を排除する厳格な社内統制が不可欠である。

治安・政情リスク

国内治安は不安定であり、特にリビア・スーダン国境周辺やチャド湖地域では武装勢力・テロ組織の活動により極めて危険である。2021年には大統領が戦闘で死亡し軍事政権へ移行する政変が起きるなど、政治情勢も流動的である。

渡航に際しては最新の安全情報の確認が不可欠であり、進出時には万全の安全対策と有事対応計画を講じる必要がある。

パートナー関係構築の留意点

人間関係を重視する文化のため、初期段階では頻繁に対面で協議を重ね、相互理解を深めることが重要である。ビジネス言語はフランス語(および一部アラビア語)であり、言語面の配慮も必要である。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

2023年現在、チャドに恒久的拠点を置く日系企業は存在しない。他国からの駐在員事務所等も確認されておらず、日本企業のプレゼンスは主に政府開発援助(ODA)や国際機関経由の活動に限られる。

競争優位性・課題

チャド市場は経済規模が小さい反面、石油・鉱物資源や農牧業など未開拓分野に商機が存在する。一方で内陸国ゆえの物流制約、インフラ未整備、消費市場の購買力不足といった構造的課題が多い。

また、低価格品では欧州・中国企業との競争が激しいため、自社の強みを活かした差別化戦略が重要となる。

手続き難易度

事業環境の難易度は非常に高く、世界銀行「ビジネスのしやすさ」ランキングでは190か国中182位(2020年)と下位に位置する。法人設立に2か月以上かかるなど行政手続に長期間を要する。

専門家ネットワーク

チャド進出にあたっては現地事情に通じた専門家の支援が不可欠である。各分野の信頼できる法律・税務・労務の専門家を確保し、当局対応や許認可取得の支援を受けることが望ましい。またJETRO等のネットワークから最新の規制動向やリスク情報を収集する努力も重要である。

セネガル共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

 

 

1. 国家基本情報

首都:

首都:ダカール

通貨・為替:

通貨:西アフリカCFAフラン(XOF)
為替:1 USD = 約581 XOF(2025/05月平均)

CFAフランは西アフリカ経済通貨同盟(WAEMU)の共通通貨であり、フランス財務省の保証の下で通貨の交換性が担保されている。

経済指標:

人口:約1,850万人(2024年、世銀)
GDP:約322.7億米ドル(2024年、世銀)
一人当たりGDP:1,744ドル(2024年)
実質GDP成長率:6.9%(2024年、世銀)
インフレ率:0.8%(2024年)

主要産業は農業(落花生や雑穀、綿花など)・漁業(マグロ、カツオ、エビ、タコ等)であり、第3次産業(商業、物流、通信)がGDPの約3分の2を占める。近年は金やリン鉱石等の鉱物資源に加え、南部沖合での石油生産(2024年開始)や近隣海域での天然ガス生産(2025年開始)も始まり、資源産出国としての展望も開けている。一方で貧富の差や若年層失業が課題となっている。

日本との関係:

対セネガルODA累計
有償資金協力:785.92億円
無償資金協力:1,296.67億円
技術協力:626.84億円

輸出:約55.9億円(魚介類・金属鉱石など)
輸入:約93.8億円(合成繊維・鉄鋼・機械類など)

日系進出企業数:24社(2024年10月現在)
進出業種:自動車・商社・プラント・サービス業など

1960年のセネガル独立直後に日本は国家承認し、以降外交関係は良好である。政府要人往来も活発で、経済協力分野では日本は主要援助国の一つである。駐在員やその家族を含む在留邦人数は227人(2024年10月現在)と少数だが、日本大使館やJETRO(在アビジャン事務所管轄)によるビジネス支援が行われている。

2. 法人設立制度

法人形態:

主な法人形態
株式会社(Société Anonyme, SA)
有限責任会社(Société à Responsabilité Limitée, SARL)
合名会社(Société en Nom Collectif, SNC)
合資会社(Société en Commandite Simple, SCS)
単純型株式会社(Société par Actions Simplifiée, SAS)

セネガルではOHADA(一括されたアフリカ商法)に基づき複数の法人形態が認められる。SAは株式公開の有無により要件が異なり、SARLは中小企業で一般的な形態である。

外国企業が現地事業を行う場合、現地法人設立のほか支店(法人格なしで登記可能)や駐在員事務所の開設も認められている(ただしOHADA規定により、非OHADA加盟国企業の支店は開設後2年以内に現地法人へ移行する必要がある)。

外資規制:

原則として外資に対する株主比率規制はなく、ほとんどの業種で100%外資出資の会社設立が可能である。電力・公共事業など一部の戦略分野では別途規制や政府許認可が求められる場合があるが、全体としてセネガルは外資投資を歓迎し自由化された法制度となっている。

外国投資家の利益送金や資本撤退の自由も法律上保証され(後述の投資法による外貨送金保証)、国有化や接収のリスクに対しても法令で保護規定が整備されている。

資本金要件:

SARL(有限会社)については法定の最低資本金規定が撤廃され、理論上は1フランから設立可能である。しかし実務上、多くの銀行や登記官は最低資本金として約100万XOF程度を要求する傾向がある。

SA(株式会社)の場合、OHADA統一法により非公開SAは最低資本金1,000万XOF、株式公開SAは最低1億XOFと定められている。

SNCやSCSなどの人的会社(パートナーシップ)は出資者が自由に資本金額を決定できる。

なおSAS(単純型株式会社)は設立要件が柔軟で、資本金額や株式の額面も出資者の任意に定められる。

登記手続き:

会社設立手続きはワンストップサービスにより効率化されている。まず公証人の下で定款を作成し、必要に応じ資本金を銀行の仮口座に払い込む。次に投資促進庁APIXの「企業設立局(BCE: Bureau de Création d’Entreprise)」で登記申請を行う。

必要書類は定款、公証人作成の設立証書、商業登記簿(RCCM)登録申請書、出資者全員の身分証コピー(外国人出資者はパスポート)、代表者の無犯罪証明書またはAPIX所定の誓約書等である。登記申請は迅速であり、書類が整っていれば2〜3営業日程度で完了する。登記完了後、法人には商業登記番号(RCCM番号)と税務番号(NINEA)が付与される。

3. 税制度

法人税:

法人税率:30%(2024年時点)

納税は暦年を事業年度とし、通常翌年4月末までに確定申告・納付を行う(中間納付制度あり)。

企業が未課税利益や剰余金を資本化(増資)する場合、1%(未課税部分は2%)の資本税が課される。配当金、利子、ロイヤルティ等の源泉課税は支払先や条約によって10〜20%の税率が課される(非居住者配当は通常10%)。

また最低税負担として、利益が小額でも年間売上に一定率(通常0.5〜1%)を乗じた最低税が発生する制度がある。なお特定産業(銀行・保険等)や活動には別途附加税が課される場合がある。

付加価値税(VAT):

標準VAT税率:18%(2024年現在)

原則として国内で対価を得て行われる物品の販売、サービス提供および輸入取引が課税対象となる。観光業等一部の限定分野には10%の軽減税率が適用される。輸出取引や国際輸送、教育・医療等は非課税もしくは免税となる。

VAT納税義務者は月次で申告・納付を行い、納付期限は翌月15日までである。仕入VATは要件を満たせば控除可能で、不足分は還付も認められる。

金融サービスにはVATに相当する**金融活動税(TAF)**が課され、金融機関の貸付利息や送金手数料等に対し適用される(標準税率17%相当で一部取引除外)。

農産品初加工や鉱業探鉱段階など投資法上の特典対象事業では、VATの一時免除や繰延が認められる場合がある。

個人所得税:

所得税率は段階的累進構造で最高税率は40%(2024年時点)である(課税所得金額に応じ0%〜40%の税率帯)。給与所得については源泉徴収され、雇用主は毎月天引き納付する義務がある。給与所得には家族手当的控除が設けられ、扶養家族数に応じ課税所得を減じる制度がある。

なお高額退職金等には分離課税規定があり、一定額を超える部分に5%の特別税が課される。

その他、雇用者は給与総額の3%相当の拠出金(雇用者拠出税)を負担する。この拠出税は職業訓練促進等に充当される目的税である。

その他の税金:

上記以外に事業税(特許税)がある。これは地方税であり、営業許可料や固定資産割に相当する税金が毎年課せられる。

資産保有に対しては不動産税や自動車税などが存在する。輸出入時には関税のほか、統一関税(CET)や統計税などが賦課される。

印紙税・登録税も各種取引(不動産譲渡や公証手続きなど)で発生する。

4. 会計・監査制度

会計基準:

セネガルはOHADAの統一会計制度に則った会計基準を採用する。OHADA加盟各国共通のSYSCOHADA(西・中部アフリカ会計システム)に基づき、フランス式の勘定科目体系と財務諸表フォーマットが定められている。すべての企業はこの基準に従って記帳し、年次財務諸表を作成しなければならない。

一般企業はSYSCOHADAの通常基準を用いるが、銀行・保険等の特定業種には別途統一会計基準が適用される。国際会計基準(IFRS)は法定では必須ではないが、一部多国籍企業や地域株式市場上場企業は任意でIFRSに準拠した連結財務諸表を作成する場合もある。

会計年度は暦年(1月1日~12月31日)が原則で、年度終了後6ヶ月以内に定時株主総会で決算承認を行う必要がある。

監査要件:

株式会社(SA)については法定監査役(Commissaire aux Comptes)の設置が義務付けられる。その役割は会計帳簿の検査と財務諸表が適用基準に準拠して適正に作成されているかの証明である。公開SAでは常任監査役2名(補欠2名)、非公開SAでは常任監査役1名(補欠1名)が必要で、任期は設立時2年、以降6年ごとの選任となる。

有限会社(SARL)は原則として監査役の設置義務はないが、次の3要件のうち2つ以上を満たす場合には監査役を置かなければならない。
(1) 総資産1億2,500万XOF以上
(2) 年間売上高2億5,000万XOF以上
(3) 常時使用従業員数50人超
SARLの監査役任期は3年。監査役は独立した公認会計士でなければならず、会社から委嘱を受け財務諸表の監査報告書を作成する義務がある。

また、会社が現物出資を行う場合、その評価について公認の出資監査人による査定が必要であり、SAでは現物出資に必ず査定が要求される(SARLでは出資額が500万XOF超の場合に必要)。

登録要件:

セネガルで監査業務や会計士業務を提供するには、国家専門家協会への登録が必要である。公認会計士や監査法人は同協会に属し、資格要件(フランスやOHADA圏の公認会計士資格等)を満たす者のみが監査報告書へ署名することが許される。

また税理士・会計士として企業の帳簿を預かる場合にも登録が求められ、無資格での業務は罰則の対象となる。

企業側には特段の会計士設置義務はないが、一定規模以上の会社は経理責任者に専門資格者を起用することが望ましいとされる。

財務諸表の提出:

決算承認後1ヶ月以内に商業・動産財務登記所(RCCM)に対し貸借対照表・損益計算書等を備え置き・提出することが要求される(これにより一般に閲覧可能な状態とする)。

提出を怠った会社の経営者には1〜3ヶ月の禁錮または罰金が科され得る旨が法定されている。

さらに西アフリカ地域の指令に基づき、WAEMU加盟国では財務諸表提出のワンストップ窓口(GUDEF)が設けられ、企業は電子的に年次財務諸表を登録できる仕組みが整いつつある。税務当局への提出については、法人税申告時に財務諸表の添付提出が必要となる。

5. 労務制度

雇用契約:

セネガルの労働関係は1997年制定の労働法(法律第97-17号)および職種別労働協約によって規律される。

雇用契約は期間の定めのない常用契約(CDI)が原則だが、一定条件下で有期契約(CDD)も認められる。CDDは原則2年以内で更新1回まで(それ以上はCDIとみなされる)という制限がある。雇用契約は書面で締結することが推奨され、使用者は契約内容を仏語で記載した労働契約書を作成し、労働監督局に届出る慣行がある。

試用期間は職種により1〜3ヶ月程度設定可能で、試用中は双方即時解約が認められる。

企業は従業員を雇用した場合、8日以内に労働当局への通知(採用届)を行う義務がある。また従業員の権利を守るため、労働規則や就業規則を備え置くことが義務付けられている(常時雇用者50名以上の場合)。

最低賃金:

非農業部門:時給370.52 XOF
農業部門等:時給236.86 XOF

この水準は月額換算で非農業労働者約6.4万CFAフラン、農業労働者約4.1万CFAフランに相当する。

最低賃金は全国一律であり、使用者はこれを下回る賃金で労働者を雇用することは禁止されている。産業別労働協約により、各職種・技能等級ごとにより高い基準賃金が定められている場合もある。

なお労働者にはこのほか法律で定める家族手当や通勤手当等の支給が必要な場合があり、総労働コストには付随的給付も考慮する必要がある。

労働時間:

法定通常労働時間は週40時間である(1日8時間×5日相当)。農牧業・関連業種については年間労働時間上限が2,352時間と規定されており、季節変動に応じた時間配分が可能となっている。

時間外労働は原則として労使協議の上で可能だが、割増賃金の支払いが義務付けられる。通常残業割増率は平日時間外で基本給の15%増し、深夜・休日はもっと高率(例:夜間は50%増し)と労働協約等で定められる。

法定の休憩・休日として、週1日の有給休日(通常日曜)と、年間労働日数に応じた有給休暇(勤続1年で24労働日の年次有給)が保障される。

女性労働者には産前産後各6週間の産休(有給)が認められている。

また宗教上の祝祭日(イスラム教・キリスト教双方の祝日)や独立記念日等が法定休日として定められている。

解雇・退職:

解雇は個人的理由(能力不足・違法行為等)によるものと、経済的理由(業績不振や組織再編による人員削減)によるものに大別される。

個人的理由解雇の場合、従業員の明白な職務不適格や重大な背信行為等が要件となり、手続きとしては事前に書面で弁明の機会を与え、懲戒委員会での審査を経て、解雇通知を出し労働監督官に報告する必要がある。

経済的理由による解雇の場合、まず解雇回避のため従業員代表との協議を行い、労働時間短縮・他職への配置転換・一時帰休等あらゆる方策を検討する義務が使用者に課される。それでも余剰人員の削減が不可避の場合、合理的な人選基準に従って解雇対象者を決定する。一般に能力の低い者から選定し、同等の場合は勤続年数が長い者を優先的に残すとされ、さらに既婚者には勤続年数に1年分、扶養家族を有する者には一定の加算考慮を行う規定がある。

従業員代表(労組委員など)の解雇には労働監督官の事前承認が必要である。解雇予告期間は勤続年数に応じ1〜2ヶ月(勤続2年未満で1ヶ月、2年以上で2ヶ月)とされ、その期間中も賃金を支払う。

解雇手当(退職金)は、解雇が労働者の重大な過失によらない場合、勤続1年以上で支給義務が生じ、勤続年に応じた平均月給の一定割合(例えば勤続年数ごとに月給の25%など累進)が支給される。

定年は60歳に定められており、一般企業・公務員とも原則60歳で退職となる(医師等専門職は65歳まで延長例外あり)。希望者は55歳以上での早期退職も可能であるが、企業内規定に従う必要がある。

労働争議・労使関係:

労働者は企業内に労働組合を組織する権利を有し、セネガルには複数のナショナルセンター(労組全国組織)が存在する。

労働争議(紛争)は個別紛争と集団紛争に分かれる。個別労働紛争では、まず当事者間での協議・和解が試みられ、解決しない場合は労働監督官(Inspection du Travail)に調停を申請できる。監督官主導の調停でも合意できない場合、労働裁判所に訴訟提起が可能である。

集団労働紛争(複数労働者が関与する労使対立)の場合、ストライキ権が認められる。ただしストを行うには事前に使用者へ書面による予告通告を行い(通常10日前まで)、その間に労働当局を交えた和解手続きを経る必要がある。公共サービス部門については最低サービス維持のための制限規定もある。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇:

セネガル政府は外国直接投資促進のため経済特区(ZES)を整備している。代表的なのが首都近郊ジャムナジョ(Diamniadio)経済特区で、西アフリカ最大規模とされる工業団地・物流拠点が開発されている。また郊外のンジャッセ(Ndiass)には日本企業専用経済特区が構想され、投資誘致が進められている。

経済特区内の企業には最大25年間の税制優遇が与えられ、関税・付加価値税の免除や法人税率引下げ(通常30%→15%)などが適用される。また特区では労働契約の柔軟化(有期契約の長期化容認等)などビジネスに有利な条件が整備されている。

投資法(Investment Code)に基づく優遇措置も全国で利用可能である。投資法は2004年法律第2004-06号(2012年改正)で制定され、新規事業創出や内陸部投資に対し税制上の特典を付与する。投資法の認可を受けた企業は法人税の一部免除や設備投資のVAT免除(最初の3年間)、機械・原料の輸入関税免除、投資額の40%分の税額控除(5年間)等のメリットを享受できる。

投資促進機関:

セネガルの対投資窓口機関はセネガル投資促進・大型事業庁(APIX)である。APIXは投資案件の情報提供から企業設立ワンストップサービス、各種許認可の取得支援まで包括的にサポートする。

海外投資家向けには英文の投資ガイドや案件相談を提供しており、重点分野(製造業、農水産、IT等)の投資フォーラム開催やインフラPPP案件の募集も行っている。

さらに首相直属の投資・大規模プロジェクト評議会が設置され、ビジネス環境の改善や外資誘致政策の立案を統括している。具体的施策として、企業設立手続の簡素化、税関手続オンライン化、特区開発などが進められてきた。日本企業向けにもAPIX内に日本デスクが設置されており、必要に応じ言語サポートも受けられる。

ビザ・労働許可:

日本国籍者は観光・短期出張目的であればセネガル入国にビザは不要であり、90日以内の滞在は査証免除となっている(2015年査証制度改正による)。90日を超えて滞在する場合や就労を伴う場合は、長期ビザ(滞在許可)と労働許可証が必要である。

労働許可(Permis de Travail)は内務省配下の労働局に申請し取得する。主な必要書類は就労ビザ申請書、雇用契約書、申請者の無犯罪証明書(本国発行)、健康診断書、写真、パスポートの写し等で、書類はフランス語翻訳・公証が求められる。通常、労働許可は最初2年間有効なものが発行され、更新可能である。労働許可と並行して外国人滞在者証の取得も必要であり、セネガル到着後に居住地管轄の警察当局へ申請する。

なお労働許可はスポンサー企業に紐づくため、転職する際は新たに許可を取り直す必要がある。

外貨規制:

経常取引の支払い(輸入代金決済・サービス料支払いなど)は制限なく認められ、公認の金融機関(銀行)を通じて自由に外貨送金可能である。

一方、資本取引(外国への投資・貸付・証券取得等)については事前承認や事後報告が義務付けられている。具体的には、居住者が海外へ直接投資を行う場合、財務大臣の事前許可を取得しなければならない。

また非居住者間の送金や、居住者による国外からの借入、国外へのローン返済・配当送金等は対外金融局およびBCEAOへの報告が必要とされている。これらの送金はすべてBCEAO認可の銀行(公認仲介業者)経由で行う義務がある。

外国投資家の利益送金については、必要な税金納付を終えていれば配当・事業利益を海外本国に送金することが認められており、投資清算時の資本回収送金も含め1ヶ月以内に自由に本国送金可能と法令で保証されている。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き:

口座開設には各銀行所定の申込書のほか、会社の商業登記簿謄本(RCCM証明書)、税務登録証明(NINEA)、定款写し、官報公告コピー、代表者のID(外国人はパスポート)、代表者住所証明(公共料金領収書等)、写真などの提出が求められる。

法人の場合、最低預入金額として10万CFAフラン程度を初回入金する必要がある(銀行により異なる)。手続き自体は数日で完了し、口座番号とIBANが発行される。

注意すべきは口座維持手数料で、セネガルの銀行口座は毎月の維持費が発生する。例えば一般的な法人当座口座で月額7,500〜23,500 XOF程度の維持料が銀行ごとに設定されている(2024年現在)。

現地借入・金利水準:

融資金利は中央銀行BCEAOの政策金利および市場金利に連動する。BCEAOは域内共通の金融政策を行い、政策金利は2023年に5.50%まで引き上げられた後、2025年には3.25%に引き下げられた。これに各銀行のスプレッド(信用コスト)が上乗せされ、一般企業向け貸出金利は平均で年利7〜10%程度となっている。

銀行融資の期間は運転資金用の短期ローン(1年以内)が多く、長期投資資金は国際金融機関(IFCや開発銀行)のラインを使った融資スキームが利用されることもある。政府は中小企業向けの低利融資促進のため国家開発銀行(BNDE等)への資金拠出を行い、一定の優遇融資制度も設けている。

送金・為替サービス:

企業間の海外送金は通常銀行のSWIFT送金により行い、日本への送金も各都市銀行で可能である。

為替サービスについて、CFAフランはユーロと固定であるため対ユーロ為替リスクは無いが、対ドル等他通貨への換金は銀行で行う。企業は必要に応じ外貨建て口座を開設することも可能で、輸出代金等を一時的に外貨で保持できる(ただし一定期間内にCFAフランへ転換するよう義務付けられる場合あり)。

為替取引には銀行手数料(1%前後)や公定の金融取引税(TOB)が付加される。

フィンテック動向:

現在ではOrange Money・Waveが二大勢力として、個人間送金、光熱費支払い、携帯料金チャージなど日常決済の主要手段となっている。

決済以外のフィンテック分野でも、オンライン融資、クラウドファンディング、暗号資産取引などのサービスが徐々に登場している。全体としてセネガルは若年層人口の多さとITリテラシー向上により、フィンテックが著しい発展を遂げつつあり、今後も金融サービスの革新が期待される。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化:

セネガルはフランス法の強い影響下にあり、ビジネス契約も欧州型の形式で締結されることが多い。企業間取引では契約書を詳細に作成し、公証人認証を付すケースも見られる。法制度上は債務不履行に対する救済手段(損害賠償請求や仲裁)が整備されているため、外国企業としては契約条項を明確に定め、違反時のペナルティや準拠法・紛争解決方法(例:国際仲裁)を契約書に明記することが重要である。

セネガルはOHADA統一商法の一環として調停・仲裁制度も導入しており、紛争時に利用可能である。

汚職・賄賂リスク:

透明性国際の腐敗認識指数(CPI)では毎年180か国中70位前後(2023年は70位、スコア43)と健闘しており、政府の汚職撲滅への取組みも一定の成果を上げている。2004年には国家汚職対策庁(OFNAC)が設立され、公務員の不正監視や汚職摘発を行っている。セネガル政府はビジネス環境改善の一環で賄賂追放キャンペーンを続けており、ビジネス上の倫理遵守姿勢は長期的に評価される傾向にある。

治安・政情リスク:

セネガルは1960年独立以降、クーデターを一度も経験しておらず、西アフリカで最も政治的安定性が高い国の一つである。民主的な政権交代も複数回実現し、現在も立憲共和国制が維持されている。ただ近年は政治的緊張が高まる局面もあり、2023年には有力野党指導者の訴追を巡る抗議デモが発生し、一部地域で暴動や衝突が起きた。ただし政府と反政府勢力の和平交渉が進み、近年は大規模な戦闘は発生していない。

治安面では、都市部でスリや置き引き等の軽犯罪が発生するが、殺人や武装強盗といった凶悪犯罪は少ない。テロの脅威は近隣マリやブルキナファソ等と比べ低い水準だが、国際情勢の影響で油断は禁物である。政府は国境警備や情報機関を強化しており、現在までセネガル国内で大規模テロ事件は起きていない。

総じて治安は西アフリカで最良クラスだが、油断せず企業として危機管理計画(安全マニュアル、緊急連絡網、避難ルート確認等)を用意することが望ましい。

パートナー関係構築の留意点:

主要ビジネス言語はフランス語であり、政府・企業の公式文書や交渉も仏語で行われる。英語だけでは十分でないため、仏語対応可能な人材を配置するか通訳を活用する必要がある。

時間感覚については比較的おおらかであり、約束の時間に多少遅れることも日常茶飯事だが、外国企業側は時間厳守の姿勢を示しつつ柔軟に構えることが求められる。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例:

・トヨタ:現地代理店を通じ自動車販売網を開拓
・住友商事:電力インフラプロジェクトに参画
・豊田通商:農業機械の普及事業を展開
・キッコーマン:日本食品の市場流通

セネガルに進出した日系企業は自動車販売、総合商社、建設機械、食品、水産加工、サービス業など多岐にわたる。2022年には日系メーカー数社が特区内進出に関心を示し、現地視察団が派遣された。

日系企業間では緩やかな情報交換ネットワークがあり、日本大使館やJICAを中心に安全情報や経済情報の共有が行われている。

競争優位性・課題:

セネガル市場の魅力は政治的安定、戦略的な地理位置、そして比較的高い教育水準にある。西アフリカの玄関口であるダカール港は物流拠点として重要で、内陸国マリへの中継貿易も担う。WAEMU共通通貨圏であるため加盟国内(Côte d’IvoireやMali等)への製品移動が関税なしで可能な点も競争優位と言える。

また人口は増加傾向にあり若年層比率が高く、将来的な労働力・消費市場として成長余地が大きい。

課題としては市場規模の限定、製造基盤の脆弱性、そしてビジネスコストの高さが挙げられる。電力料金やインターネット費用はアジア諸国に比べ割高で、企業経営コストとなる。輸入に依存する製品が多く、消費財市場では欧州・中国・トルコなど海外製品との競争も激しい。

手続き難易度:

世界銀行のDoing Business指標(2020年版)ではセネガルは総合123位で、アフリカで中位グループに属する。会社設立手続(4日・費用GDP比11.1%)や不動産登記、少額投資家保護の分野で評価が高い一方、建設許可取得、電力引込、契約執行(訴訟手続期間約740日)等は依然課題とされる。特に行政の電子化は進行中で、税申告などはオンライン可能だが、土地登記や許認可は対面申請が残り時間を要する場合がある。

労働許可取得なども前述のように制度化されているため、手順を踏めば特段難しくはない。総じてセネガルで事業を始める難易度は、アフリカの中では中程度である。

専門家ネットワーク:

ダカールには国際会計事務所(Big4系列)やフランス系の大手法律事務所が進出しており、会計監査、税務申告、法務デューデリジェンス等のサポートを提供している。

さらに公的ネットワークとして在セネガル日本国大使館やJICA事務所が情報提供を行っており、JETROはコートジボワールのアビジャン事務所がセネガルもカバーして相談対応している。

ニジェール共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

アフリカ各国の情報

1. 国家基本情報

首都

首都はニアメ。国土面積は約126.7万平方km(日本の約3.3倍)である。

人口

約2,703万人(2024年)

公用語

フランス語

通貨

西アフリカ CFAフラン(XOF) 為替レートは1 USD=約581.71 XOF(2025/05月平均)

経済指標:

名目GDP:約195億ドル(2024年) 一人当たりGDP:約723ドル(2024年) 実質GDP成長率:8.4%(2024年) インフレ率:9.1%(2024年) 輸出額:約4.46億ドル(2022年) 輸入額:約37.9億ドル(2022年)

石油生産開始による一時的ブームもあったが、経済は天候や周辺国情勢に左右されやすい。

主要産業は農牧業とウラン採掘であり、近年少量の原油生産も始まっている。主要輸出品はウランなど鉱物資源・金属類やゴマ種子等、主要輸入品は食料(穀物)、車両、機械類である。

日本との関係:

対日輸出:約1.8億円(2022年) 対日輸入:約9.9億円(2022年) 日本への輸出品目:ゴマなど 日本からの輸入品目:機械類など

1960年の独立以来、日本と友好関係を維持している。日本国大使館は隣国コートジボワールの大使館が兼轄し、ニジェール側も駐日大使館を北京の在中国ニジェール大使館で兼轄している。

一方、日本は同国に対し累計で無償資金協力約613億円、技術協力約222億円(~2020年)を実施しており、教育・保健や食糧支援など開発協力を通じた関与が中心である。

2. 法人設立制度

法人形態:

ニジェールはビジネス法をOHADA(アフリカ商事法統一機構)の統一法に従っており、主な法人形態は「有限責任会社(SARL)」と「株式会社(SA)」である。SARLは1名から50名までの出資者で設立できる。また、OHADA法により一人会社(SARLユニパーソネル、SAユニプソネル)も認められている。

外国企業が現地で活動する場合、現地法人設立のほかに支店(支社, succursale)や駐在員事務所(bureau de liaison)の開設も可能であるが、支店は親会社から独立しない無限責任形態であり、駐在員事務所は商取引活動が制限されるため、進出形態としては通常SARLの設立が選択される。

外資規制:

ニジェールでは法律上、外資に対して包括的な参入規制はなく、ほとんどの業種で100%外資による法人所有が認められている。投資法(2014年改正)により外資も内資と同等に保護されており、投資資本や利益の送金の自由が保証されている。ただし、鉱業・石油など特定分野は個別の鉱業法・石油法に基づく許認可が必要で、商業(単なる商品売買)のみを目的とする事業は投資優遇の対象外とされる。

資本金要件:

法定最低資本金 SARL:10万CFAフラン(約170米ドル) SA:1,000万CFAフラン(約17000米ドル相当)

資本金は設立時に銀行口座へ払い込み、SARLの場合は出資金の2年以内分割払いも認められる。OHADA法上、株主の有限責任が確立されており、出資額を超える負債責任は負わない。

登記手続き:

ニジェールでは企業登録手続きが近年簡素化されており、ワンストップ窓口で設立関連手続きを一括処理できる。具体的な手順は、商号の事前確認、定款(Statuts)の作成、公証人による認証、銀行への資本金払込証明取得、そして商業登記・税務登録・社会保障(CNSS)登録の申請となる。必要書類一式が整えば、通常数週間で法人登記が完了し、登録証明書と納税者番号などが付与される。

3. 税制度

法人税:

法人税率:30%(2025年時点)

課税対象は原則としてニジェール国内源泉所得であり、内国法人は全世界所得課税だが国外所得には外国税額控除などが適用される。赤字が生じた場合、最大3年間の繰越控除が認められる(繰戻し不可)。

また、企業が無利益であっても最低税(売上高に対する最小税負担)が課される制度がある。配当金や利子・使用料等の国外送金には源泉徴収税(通常10%)がかかる。

付加価値税(VAT):

付加価値税率:標準税率19%

国内で提供される商品・サービスの販売に広く適用され、月次もしくは四半期毎に申告・納付する義務がある。一定の生活必需品(医薬品や一部食料品など)には軽減税率10%や5%が適用される場合がある。

個人所得税:

個人の給与・事業収入には累進課税の所得税が適用される。給与所得については源泉徴収される「給与所得税(IUTS)」があり、課税所得額に応じ0%~35%の税率が段階的に適用される。非居住者はニジェール国内源泉の所得のみ課税対象となる。なお、家族構成に応じた諸控除が認められる。

その他の税金:

上記以外に、事業活動に関連する主な税として事業税や登記税、印紙税等が存在する。例えば企業の営業許可税(ライセンス税)が年次で課され、不動産所有には地方税として資産税が課せられる。

また企業が従業員を雇用する場合、給与総額に対し給与税(法人負担: 自国民2%、外国人4%)が賦課される。社会保険への拠出も雇用主17.4%、労働者5.25%の率で義務付けられている(年収600万CFAフランまでの部分に適用)。

さらに、対外送金に係る源泉徴収税として、非居住者への配当・利息・ロイヤルティ支払に一律10%(技術サービス料は16%)の課税が行われる(租税条約がある場合はその定めによる)。

税制は基本的に申告納税方式であり、適時の申告・納付と正確な会計記録の整備が求められる。

4. 会計・監査制度

会計基準:

ニジェールはOHADAの統一会計制度(SYSCOHADA)を採用している。すべての企業はSYSCOHADAに従った帳簿記録と財務諸表の作成が義務付けられており、勘定科目や報告様式が統一されている。

上場企業や金融機関など公共的利害の強い企業については、連結財務諸表に限り国際会計基準(IFRS)の適用が認められるが、一般企業の法定財務諸表は原則としてOHADA会計基準に準拠する必要がある。

監査要件:

OHADA会社法に基づき、株式会社(SA)では常に公認会計監査人(Commissaire aux comptes)の選任と定期監査が義務付けられる。

一方、SARL(有限会社)では小規模企業に監査義務はないが、総資産額が1,250万CFAフラン超、または年商2億50百万CFAフラン超、または従業員50名超のいずれかに該当する中堅以上のSARLは監査人を選任し会計監査を受ける必要がある。

監査人は株主総会で選任され、任期3年で監査報告書を提出する。

登録要件:

ニジェールにおける会計士・監査人は国家資格と登録が必要となっている。国家公認会計士協会(ONECCA)が存在し、会計監査業務を行うには同協会への加盟と公認会計士資格が求められる。

また、監査人には職務上の独立性が法律で要求されており、経営関与や利害関係がある場合は就任できない。

財務諸表の提出:

企業は事業年度終了後、定時株主総会を開催して財務諸表を承認し、その後一定期間内(通常年度末から6か月以内)に所管機関への提出が義務付けられる。

また税務当局にも毎年度の財務諸表と法人税申告書を提出しなければならない。

適時な決算と所定の提出を怠ると罰金等の行政処分対象となる。

5. 労務制度

雇用契約:

労働契約は原則として期間の定めのない無期契約が標準であり、雇用主が労働者を解雇する場合は正当な理由(勤務成績や企業運営上の必要)が求められる。

期間の定めのある契約(有期契約)はプロジェクト等の一時的業務に限られ、契約期間の最長や更新回数に制限がある(連続した長期の有期契約は無期契約と見なされる場合がある)。

試用期間は労働者の職種に応じて設定できるが最長6か月程度で、試用期間内は双方からの即時解約が可能である。

使用者は採用に際し労働監督局(労働省付属機関)への報告義務があり、とくに外国人労働者を雇用する際には別途後述の許可手続きが課される。

最低賃金:

最低賃金額:月額42,000 CFAフラン(約70米ドル)

最低賃金は主に非熟練労働者の給与下限として適用され、違反した雇用主には罰則が科される。なお、各種手当やインフレ補正は別途政令や労働協約で定められることがある。

労働時間:

法定労働時間:週40時間(1日8時間×5日) 時間外労働割増賃金率:平均35%程度

一般に週労働は月~金曜日の所定労働と土曜日午前の一部勤務で調整される場合もあるが、公務員や多くの企業では金曜日午後を休業とする形で40時間に収めている。

また、労働者は年間少なくとも30日の有給休暇を取得する権利があり(1ヶ月勤務につき2.5日換算)、雇用主は年次休暇の取得を保障しなければならない。祝祭日はイスラム教の行事に基づくもの(例: 犠牲祭、開斎祭)や独立記念日などが年間10日前後ある。

解雇・退職:

無期契約社員を解雇する場合、あらかじめ解雇予告期間を設ける必要があり、勤続年数に応じた最低予告期間が定められている。解雇予告を行わない場合はその相当額の解雇予告手当を支払う義務がある。労働者側にも退職の際は同様の予告義務がある。

解雇理由が労働者の重責懲戒に基づかない場合、勤続1年以上の労働者には退職手当(解雇手当)が支給される。ただし労働者に重大な過失・違法行為があった場合は解雇補償は支払われない。

定年は公務員の場合60歳前後だが、民間では特に法定の退職年齢規定はなく、多くは60歳程度で社会保障基金の老齢年金受給資格を得て引退する。

労働争議・労使関係:

労働者の団結権と団体交渉権は法律で認められており、主要産業には複数の労働組合が存在する。労働争議が発生した場合、労働監督官(労働省の労働局)が紛争調停に関与し、必要に応じて労働裁判所での解決が図られる。労働法により不当解雇と認定された場合には労働者の復職または損害賠償が命じられる制度になっている。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇:

ニジェールには明確な「特別経済区(経済特区)」はないものの、国家投資コードに基づく投資優遇制度が整備されている。大きく分けて、一般投資優遇措置と輸出型企業向けのフリーポート(Zone Franche)制度がある。

一般投資優遇では、新規投資プロジェクトが投資証明書を取得することで、設置段階(最大3年間)の設備・建材・機械の輸入関税とVATの免除、操業段階(開始後5~10年間)の法人税(BIC)や事業税の減免措置が受けられる。この操業段階の優遇期間は投資地域により異なり、開発が遅れた地方に投資するほど長期の免税(最大10年)が認められる仕組みである。

また、輸出指向企業については、製品の80%以上を輸出することを条件に「輸出加工企業(Zone Franche企業)」認定を受けることが可能であり、認定企業は長期にわたり法人税率の大幅軽減(場合によっては10~15年間ゼロ税率)や関税免除など特別な税制恩典を享受できる。

投資促進機関:

外国企業の進出を支援する公的窓口として、商工会議所内に「投資促進センター」が設置されている。また、政府機関としては民間投資・戦略的プロジェクト促進庁(ANPIPS)が投資誘致と事業環境の整備を担っている。これらの機関は投資に関する法令情報の提供、企業設立手続きの案内、各種許認可の調整などワンストップサービス的な役割を果たす。

ビザ・労働許可:

日本を含む外国籍者がニジェールで長期滞在・就労するには、渡航前に在外ニジェール大使館で長期滞在ビザを取得し、入国後は現地移民局にて滞在許可証(居住者カード)を申請する流れとなる。

さらに就労については、雇用主を通じて労働省または公共雇用庁(ANPE)に外国人労働許可を申請しなければならない。許可は通常1年更新で、就労者は毎年在留資格と就労許可の更新手続きを行う必要がある。

また、入国90日以上滞在する外国人は警察当局への登録義務も課される。

外貨規制:

ニジェールはCFAフランを採用するフランス共同通貨圏の一員であり、資本取引・為替管理についてはUEMOAおよびフランス銀行との協定に基づく共通規制が敷かれている。基本的に企業利益の本国送金や配当支払いに上限規制はなく、投資元本や利益は自由に送金できると法律で保証されている。

ただし、外貨の持ち出し・持ち込みや海外送金については中央銀行(BCEAO)の外為規則に従った申告と許可が必要である。輸出代金など外国通貨で得た収入は、一旦国内の認可銀行口座に入金し所定期間内にCFAフランに転換する義務がある(外貨建て口座の開設・保持には中央銀行許可が必要)。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き:

主要市中銀行としては、仏系のソシエテ・ジェネラル銀行や地場のソニバンク、国際系ではエコバンクやBOA(Bank of Africa)などが営業している。

口座開設にあたっては企業登記証明書(または設立中の場合は仮登記証)や納税者番号証明、代表者の身分証・署名届などを提出する。開設手続き自体は数営業日で完了し、初期預金として数万CFAフラン程度の預け入れが求められる。

銀行は厳格なマネーロンダリング対策を行っており、株主や実質支配者情報の提供も必要となる。

現地借入・金利水準:

政策金利:4%台半ば(2025年) 平均融資金利:年9~10%前後

ニジェールの金融市場は商業銀行による間接金融が中心で、企業の資金調達は銀行融資に依存する。

送金・為替サービス:

民間銀行は国際送金や為替取引サービスを提供している。CFAフランはユーロと固定相場のため、対ドル等の為替レートはユーロ相場に連動する。企業は銀行を通じて海外送金(貿易決済や配当送金等)を行う際、所定の為替申請書や取引証憑を提出する。輸入企業は銀行から信用状(L/C)発行等のサポートも受けられる。

個人送金についてはWestern Unionなど国際送金業者も広く利用されている。なお、多額の現金持込・持出は制限されているため、公式な金融経路を使うことが推奨される。

フィンテック動向:

金融包摂が課題となっているニジェールでは、近年フィンテックやモバイルマネーの普及が注目されている。携帯電話回線を利用したモバイルマネーサービス(Orange MoneyやMoov Moneyなど)が都市部から農村部まで広がり、銀行口座を持たない層でも送金・決済が可能になりつつある。

西アフリカ中央銀行(BCEAO)は加盟各国で電子マネーの規制整備を進め、UEMOA共通の決済ネットワーク(GIM-UEMOA)により異なる国間でもカードやモバイルで相互に送金できる環境が整備されている。国内でもI-Futur社の「iPayMoney」のように複数の決済サービスを統合するプラットフォームが登場するなど、新興企業がデジタル決済インフラを充実させつつある。

ただし、携帯普及率や識字率の問題もあり現金文化は根強く残っている。政府も給与支払いのデジタル化や公共料金の電子決済導入を推進しており、金融IT分野は今後成長が期待される領域である。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化:

司法制度の整備不足から契約紛争の法的解決には時間がかかる傾向があるため、契約履行を確実にするには相手先との信頼関係構築や履行保証(保証金や担保取得等)の工夫が求められる。全般に時間に対する感覚は日本ほど厳密ではなく、締切や日程が守られないケースもあるため、進捗管理を密にし根気強く交渉を続ける姿勢が必要となる。

汚職・賄賂リスク:

ニジェールは腐敗認識指数(CPI)で180か国中107位・スコア34(2024年)と、腐敗リスクが存在する国である。公的手続きにおいて非公式な謝礼を求められるケースや、入札・契約での汚職疑惑が指摘されることもある。特に資源開発や大型調達分野では不透明な取引慣行が残存しているとされ、外国企業も現地代理人等を起用する際にはコンプライアンスに十分注意する必要がある。日本の「外国公務員贈賄防止」法令にも留意する必要がある。

治安・政情リスク:

治安および政治情勢の不安定さはニジェール進出に際して最大のリスク要因である。同国は独立以来クーデターが度々発生し、直近では2023年7月に軍事クーデターが発生して民選政権が崩壊し、軍政が樹立された。この政変により周辺国や国際社会との関係が緊張し、ECOWASによる経済制裁措置や国境封鎖が取られる局面もあった。

また、サヘル地域特有のテロ・武装勢力の脅威も深刻である。特にマリやブルキナファソ国境付近、ナイジェリア北部に接する南東部ではイスラム過激派による襲撃・誘拐事件が頻発し、首都ニアメも完全に安全とは言えない状況である。在留外国人や投資プロジェクトが標的となる恐れもあるため、厳重な安全対策(警備員の配置、移動時の車両防護、渡航制限遵守等)が必須である。日本政府も全土に渡航中止勧告(首都のみレベル3、その他地域レベル4)を出している。自然災害面では深刻な干ばつ・砂嵐が発生しやすく、また感染症の流行など保健衛生リスクも高いため、包括的なリスク管理が求められる。

パートナー関係構築の留意点:

ニジェールで事業を成功させるには、政府当局や現地ビジネスパートナーとの良好な関係構築が不可欠である。ビジネス文化としては人間関係や信頼を重視する傾向が強い。特に地方社会では部族や宗教コミュニティの繋がりが強いため、地域有力者の信用を得ることが事業円滑化につながる。

イスラム教徒が人口の大半を占めるため、金曜日の礼拝時間やラマダン(月例断食)の慣習に配慮し、アルコールの扱いなど宗教的感情を尊重することも重要なマナーとなる。

言語面では公用語のフランス語がビジネスで必須であり、通訳を介する場合でも契約書や公式文書は仏語で作成する必要がある。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例:

日本の海外ウラン資源開発株式会社(OURD)がフランス系企業と共同でアコウタ(Akouta)鉱山の権益の一部(25%)を保有しウラン採掘に関与した事例など。

これまでの日本との関係は政府開発援助(ODA)や国際協力銀行(JICA)の技術協力プロジェクト(教育・水供給等)が中心である。

競争優位性・課題:

ニジェール市場の魅力としては、豊富な天然資源(ウランの世界有数の埋蔵、石油・金などの開発余地)や安価で若年層中心の労働力(平均年齢約15歳)を挙げることができる。また、西アフリカ経済通貨同盟・ECOWASの加盟国であるため、関税同盟と域内自由貿易のメリットから、人口3億人規模の西アフリカ市場へのゲートウェイとなり得る。

競争環境としては先行する中国・フランス企業のプレゼンスが強く、公共事業や資源開発では中国企業との競合が想定される。日系企業が進出する場合、自社の強み(高品質や安全技術)を活かしつつ、こうした経営環境上のハンデを乗り越える計画が求められる。

手続き難易度:

ニジェールのビジネス環境はアフリカ平均と比べても手続きの煩雑さが指摘されている。世界銀行「ビジネス環境ランキング」(2020年)では190か国中およそ132位と下位に位置しており、特に建設許可取得(同180位)や電力接続(同159位)で極めて低い評価となっている。

ただし、会社設立に関しては前述のワンストップ化により比較的短期間(2~3週間)で完了でき、制度改善がみられる分野もある。税務申告や貿易手続きでは電子システム導入が遅れている。

専門家ネットワーク:

・在コートジボワール日本大使館 ・JETRO(例えばラゴス事務所等の西アフリカ拠点)

ニジェールの国家会計士協会(ONECCA)に登録する公認会計士は数十名規模と限られる。

ガーナ共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

国名・首都

ガーナ共和国。首都はアクラ。

英語を公用語とする。

人口は約 3,200 万人(2024年)。

独立以来、西アフリカ地域の要衝とされる。

通貨・為替

通貨はガーナセディ(GHS)。1 USD = 12 GHS(2025/05 月平均)。

経済政策や輸出入の動向により為替相場が変動しやすい。

経済指標

GDP は約 770 億米ドル(2024 年)。

主要産業は金・原油・カカオなどの資源関連とサービス業。

インフレ率は高めに推移しているが、近年は金融政策強化による抑制が図られている。

日本との関係

1960 年に外交関係を樹立。日本企業の進出は製造業・商社・建設・サービスなど多岐にわたる。政府間の経済協力や人材育成支援も積極的に行われている。

2. 法人設立制度

法人形態

主な形態は有限責任会社 (Limited Liability Company) と支店 (Branch) が挙げられる。

有限責任会社は株主の責任範囲が出資額に限定されるため、最も一般的な形態である。

外資規制

外資規制は特定の戦略業種(石油・ガス・鉱業など)を除き厳しくない。

ガーナ投資促進センターへの登録が必要な場合があるが、外資比率の上限は基本的になく、出資比率 100% の設立も認められる。

資本金要件

外資企業の場合、完全外資では最低 50 万米ドル相当、ガーナ人パートナーとの合弁では最低 20 万米ドル相当の払込資本金が求められる(2025/05 時点)。業種により要件が異なる場合がある。

登記手続き

登記は会社登記局で行う。会社名の予約、定款作成、法定書類の提出、納付金支払い、納税者番号 (TIN) 登録などの手続きが必要。完了までの所要期間は 2〜4 週間程度とされる。

2. 法人設立制度

法人形態

ガーナの会社形態は主に有限責任会社 (Limited Liability Company) と支店 (Branch) がある。

有限責任会社は株主の責任範囲が出資額に限定されるため、最も一般的である。有限責任会社には下記の特徴がある。

  • 株主数は 1 名以上で設立可能。複数株主の場合、株主合意書(Shareholders Agreement)の締結が推奨される。
  • 取締役は通常 2 名以上とし、うち少なくとも 1 名はガーナ国内で常住することが望ましい。
  • 社名の末尾に “Limited” の表記を付す必要がある。

支店の場合、本社が外国にある法人がガーナ国内で事業活動を行うために登録する形態であり、独自の法人格を持たない。本社がすべての債務責任を負う点が有限責任会社と異なる。

外資規制

ガーナでは外資規制が比較的緩やかであり、特定の戦略業種(石油・ガス・鉱業など)を除き、外資の参入に大きな制限はない。ガーナ投資促進センター (GIPC) への登録が要求される場合があり、登録後は投資許可証が交付される。主な外資規制のポイントは以下のとおり。

  • 石油・ガスや採掘関連など一部業種については事前許可またはライセンス取得が必要。
  • 一定の業種でガーナ人パートナーとの共同出資を推奨する指針がある。
  • 設立形態は完全外資でも認められ、経営権の制限は原則ない。
  • GIPC 登録を行わないと法人化手続きが完了しないため、事業計画や投資額に応じた手続きを事前に確認することが重要である。

資本金要件

外資企業の場合、以下の最低払込資本金要件が定められている。

  • 完全外資 (100% 外資):最低 50 万米ドル相当
  • ガーナ人パートナーとの合弁:最低 20 万米ドル相当

外国人による貿易業(輸入販売など)の場合は最低 100 万米ドル相当が求められるケースもある。業種により要件が変更されることがある。払込資本金は通常、ガーナ国内の銀行口座へ送金するかたちで実行される。

登記手続き

法人設立の主な登記手続きは以下のステップに沿って進める。

  • 会社名の事前予約:重複がないか会社登記局で確認し、名称を保護する。
  • 定款および細則 (Regulations) の作成:会社の目的、株主や取締役の権限、資本金などを記載。
  • 会社登記局への提出:必要書類(定款、細則、取締役・株主情報など)を提出し、登録料を納付。
  • 納税者番号 (TIN) の取得:法人および取締役がガーナ税務当局で登録を行う。
  • GIPC 登録(外資の場合):所定の書類と投資額証明を添えて申請し、投資許可証を得る。

登記完了までの所要期間は概ね 2〜4 週間程度であるが、提出書類に不備がある場合はさらに時間を要する。登記が完了したら法人印の作成、銀行口座の開設などを行い事業活動を開始する。

3. 税制度

法人税

一般的な法人税率は 25%(2024 年)である。農業、製造業、観光業など一部の優遇措置対象業種には減免が適用されることがある。

法人税は課税所得に基づき算出され、課税年度中に四半期ごとに予定納税を行う。年度末に決算申告と精算を行い、過不足分を調整する。

法人税計算の際は、ガーナ税務当局の定める損金不算入項目や減価償却の区分率を順守する必要がある。新規投資に対しては初年度のみ追加減価償却率が適用される場合がある。

付加価値税(VAT)

標準税率は 12.5%(2024 年)であり、これに国民医療保険税 (NHIL) や教育基金税 (GETFund Levy) が上乗せされ、実効税率は 17.5% 前後となる。

医薬品や農産物の一部など非課税・免税対象となる品目も存在し、これらについては売上時に VAT を課さない。また、輸出取引はゼロ税率が適用される。

課税対象となる財・サービスの取引時に課税し、事業者は売上 VAT を徴収する一方で、仕入 VAT を控除して納付額を計算する。

事業者は月次または四半期で VAT 申告を行い、期限内に納付する必要がある。

個人所得税

個人所得税は累進課税方式を採用し、最高税率は 30%(2024 年)となる。

給与所得には源泉徴収義務があり、雇用主が毎月給与から所定の税額を控除してガーナ税務当局に納付する。

年間所得が一定額以下の場合は低率または非課税帯に分類される。

ボーナスや手当も課税対象となるが、一部の福利厚生は非課税となる。

非居住者の給与所得には別途の税率や源泉徴収規定が適用される場合がある。

その他の税金

  • 印紙税:契約書や不動産取引文書などに課される。契約金額に応じた定率または定額の納税が必要。
  • 不動産関連税:土地・建物の所有や譲渡に際して課税される。地方自治体に対して年次の不動産税が発生する。
  • 源泉徴収税:非居住者への配当・利子・ロイヤルティ支払い時には 8〜15% 程度の源泉徴収が課される。条約の有無により優遇税率が適用される場合がある。

4. 会計・監査制度

会計基準

ガーナでは上場企業や大規模企業には国際財務報告基準(IFRS)が適用される。中小企業や小規模事業者には IFRS for SMEs が認められる。会計処理は真実性・正確性の確保が求められ、減価償却や在庫評価については IFRS に準拠することが一般的である。

監査要件

ガーナの会社法では、全ての有限責任会社は外部監査人の任命と年次監査を義務付けている。監査人はガーナで認定された公認会計士または監査法人でなければならない。

監査報告書は株主総会に提出し、承認を得ることが求められる。

登録要件

監査業務を実施する監査法人や公認会計士は、ガーナ会計士協会など所定の専門機関に登録される必要がある。

登録は定期更新制であり、法定の継続教育要件を満たす必要がある。

財務諸表の提出

各会計年度終了後、法定期限内(通常 6 か月以内)に監査済の財務諸表を会社登記局へ提出する義務がある。財務諸表はバランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書および株主資本等変動計算書など IFRS で定められる主要書類を含む。未提出や虚偽の提出があった場合は罰則が科される。

5. 労務制度

雇用契約

雇用契約は書面で締結することが原則とされ、就業条件(給与、労働時間、福利厚生、契約期間など)を明確に記載する。試用期間は一般的に 3〜6 か月程度で、その間の解雇規定は契約で取り決める。

最低賃金

日額 15 GHS(2024 年時点)が法定最低賃金であり、雇用者はこれを下回る賃金を支払うことは認められない。実際には業種や地域によって相場がやや異なり、労使協議や労働組合との合意により若干の上乗せが行われる場合もある。違反には罰則が定められている。

労働時間

週 40〜48 時間程度が標準労働時間である。超過勤務を行う場合、法定の割増賃金を支払う義務がある。祝日や休日出勤に対しても割増賃金の対象となる。勤務形態にはフレックスタイム制や交代制なども認められるが、就業規則上の明示が必要である。

解雇・退職

解雇には正当な理由と手続きが要求され、能力不足や重大な規律違反などが主な正当事由となる。解雇予告期間は労働者の勤続年数に応じて設定され、退職金の規定がある場合は労働法に基づいて支払う。リストラや業績悪化による解雇(Redundancy)の場合は、追加の補償も定められている。

労働争議・労使関係

多くの業種で労働組合が結成されており、団体交渉のほか、必要に応じてストライキ権が行使される。企業側は労働委員会による調停手続きや集団交渉に応じる義務がある。労使紛争が発生した場合、労働委員会や裁判所を通じて解決を図る体制が整備されている。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

ガーナ自由区域局 (GFZA) が運営する輸出特区制度があり、指定エリア内に製造拠点を置く企業は法人税減免や関税免除などの優遇措置を享受できる。適用を受けるには以下の要件を満たす必要がある。

  • 生産品の一定割合を輸出に回すこと
  • 指定の最低投資額を満たすこと
  • ガーナ自由区域局への登録およびライセンス取得

優遇を受けられる期間や税率は事業分野や投資額により異なるが、最大 10 年程度の法人税免除措置が認められるケースもある。

投資促進機関

ガーナ投資促進センター (GIPC) が外国投資受け入れを一元的に担当し、設立支援や行政手続きの簡素化に取り組んでいる。投資登録を行うことで、税制上の優遇措置や現地ビジネスネットワークの紹介などの支援を受けられる。登録申請時には事業計画や投資額、資本金証明書などを提出し、審査を経て認可が下りる。

ビザ・労働許可

外国人がガーナで長期的に就労する場合、就労ビザと労働許可証が必要になる。雇用主が内務省や移民局に対して書類を提出し、許可を取得する。手続きの主な流れは以下のとおり。

  • 雇用主が移民局に対して申請書類(事業ライセンス、雇用契約書、事業計画など)を提出。
  • 就労期間に応じた労働許可証の発行(通常 1 年単位で更新)。
  • 家族滞在ビザの申請(配偶者や子女など同伴家族がいる場合)。

許可証の取得後も、在留届や居住許可の更新手続きが適宜必要となる。

外貨規制

ガーナでは大幅な外貨規制は敷かれていないが、海外送金や資金移動を行う場合は、銀行を通じた正式な手続きが必要である。中央銀行 (Bank of Ghana) の監督下で、事業収益や配当金の本国送金は原則として認められる。送金時に必要な主な書類は以下のとおり。

  • 納税証明書(法人税や VAT の支払い状況を示す書類)
  • 取引根拠書類(配当であれば株主総会議事録等、利子であれば貸付契約等)

ガーナセディ(GHS)の為替相場は変動しやすいため、送金タイミングの検討が重要となる。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

口座開設には会社登記証明や納税者番号 (TIN)、代表者の身分証明書などが必要。

金融機関によっては本店所在地への訪問を求める場合がある。

現地借入・金利水準

ガーナの政策金利は比較的高い水準にあり、民間向け融資金利も年率 20〜25% 程度(2025/05 時点)に達する。

送金・為替サービス

民間銀行や送金会社を通じて海外送金が可能。為替は変動幅が大きい場合があるため、定期的なレートチェックが望ましい。海外からの送金受領にも同様の書類提出が求められる。

フィンテック動向

携帯電話を用いた送金サービスやモバイルマネーの普及が進む。

小口決済に強みがあり、インターネット接続が限定的な地域でも電子決済の利用が拡大している。

8. 文化・商習慣・その他リスク

汚職・賄賂リスク

公的機関における汚職は完全には解消されていない。透明性の確保と適切なコンプライアンス体制の整備が重要となる。

治安・政情リスク

西アフリカの中では比較的安定した政治状況と評価されるが、都市部ではスリや詐欺などの犯罪被害が報告されている。選挙前後には政治的デモが活発化する場合がある。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

競争優位性・課題

ガーナは西アフリカ市場へのゲートウェイとしての利点があるが、インフラや電力供給が十分でない地域も多い。輸送コストや通関手続きの煩雑さが課題となり得る。

手続き難易度

法人設立や労働許可取得の手続きは一定の時間を要するが、他国と比較すると比較的整備されている。汚職防止のため、正規手続きの遵守が不可欠である。

ジンバブエ共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

国名・首都

ジンバブエ共和国(Republic of Zimbabwe)。

首都はハラレである。

通貨・為替

法定通貨はジンバブエ・ドル(ZWL)だが、過去のハイパーインフレにより米ドルなど複数通貨が流通し、事実上経済の8割以上が米ドル建てで運用されている。2024年4月には金担保の新通貨「ジンバブエ・ゴールド(ZiG)」が導入された。

為替レートは不安定であり、2024年12月平均で1 ZWL=約0.48円程度で推移した。

経済指標(2024年)

2023年の国民総所得(GNI)は約290億米ドル、一人当たりGNIは1,740米ドルである。

同年の実質GDP成長率は5.0%。インフレ率は近年極めて高く、2022年には104.7%に達した。

失業率は公式統計で8.8%(2023年)だが、実質的な失業・非正規率はそれ以上とみられる。

主要産業は農業(たばこ・綿花等)、鉱業(プラチナ・金など)および観光業である。

日本との関係

2000年代以降の政治・経済混乱で日本の政府開発援助(ODA)は一時停止していたが、近年一部再開された。貿易面では日本から中古車を含む自動車が多数輸出され、ジンバブエ国内で広く利用されている。

本政府はTICAD(アフリカ開発会議)等を通じ同国との経済関係強化に努めているが、日系企業の進出事例は限定的である。

2. 法人設立制度

法人形態

主な法人形態は私会社(Private Limited Company, 通常の有限責任会社)と私的事業法人(Private Business Corporation, PBC)である。

私会社は株主50名までで設立でき、取締役が最低2名必要となる。

私的事業法人は中小事業向けの制度で、1名から最大20名のメンバーで構成される法人形態であり、取締役ではなくメンバーによって運営される。私的事業法人のメンバーに国籍要件はなく、外国人のみでも構成可能である。

外国企業が現地支店(支店登記)として登記することも可能である。

外資規制

外資規制は2010年代に存在した「インディジェナイゼーション(先住民資本強制)」政策によって一時厳格であったが、2020年の法改正で全セクターにおける現地資本51%要件が撤廃された。現在は鉱業を含め外国企業が100%出資で事業を行うことが法的に可能であり、一般に特定業種での外資参入禁止や出資比率規制は確認されていない。ただし、運輸(大型貨物輸送)分野など一部で外国企業参入を制限する政策が打ち出される動きも報じられており、最新動向の確認が必要である(確認できないため詳細は記述を省略)。

政府は「Openness for Business」を掲げ、外資誘致を推進している。

資本金要件

ジンバブエでは会社設立時の最低資本金要件は法令上定められていない。実務上は定款に発行可能株式資本を記載し、少額(例:1ドル相当)から設立可能である。なお、登録資本額に応じて登録手数料が段階的に課される制度があり、高額の資本金を設定する場合はその分の登録料負担が生じる。

登記手続き

法人設立は企業登録局(Registrar of Companies)への登録によって行う。一般的な手続きは以下の通り

  • オンラインで商号の予約申請(候補名を5つまで提出)。
  • 定款類(私会社の場合は定款・会社登記フォーム、PBCの場合は定款に相当する書類)の作成。
  • 取締役・株主情報、会社所在地、事業目的など必要情報を準備し登録申請。
  • 所定の登録料の支払い(例:外国会社の支店登録は一律1,100米ドル)。
  • 登記官による審査・認可を経て会社設立証明書(Certificate of Incorporation)が交付される。

全手続きには通常数週間を要する。登記完了後は税務当局(ZIMRA)への納税者登録や事業許可の取得(業種による)も必要となる。

3. 税制度

法人税

法人所得に対する基本税率は25%である。さらに計算された法人税額に対して3%のエイズ税(AIDS Levy)が加算される。結果として実効税率は約25.75%となる。

特定分野には優遇税制があり、例えば特定の鉱業権者は15%、輸出加工企業は輸出比率に応じ15~20%の軽減税率が適用される。また、政府認定の投資案件では操業開始から最初の5年間法人税免税(0%)とする措置も存在する。

税務当局はジンバブエ歳入庁(ZIMRA)であり、決算期ごとの申告納税が義務付けられる。

付加価値税(VAT)

標準VAT税率は15%である。2023年1月の財政法改正により従来の14.5%から15%へ引き上げられた。

原則全ての財貨・サービスの国内供給に課税されるが、基礎食料品等の特定品目は非課税またはゼロ税率の対象となる。

VATは売上に対する付加価値部分に課税される仕入税額控除方式である。

ジンバブエ歳入庁(ZIMRA)の公表資料によると、過去12か月または今後12か月以内の課税売上高が合計6万米ドルを超える場合に、事業者はVATの登録義務が生じる。ZIMRAの指針上、要件を満たす事業者は速やかに登録申請を行い、登録完了後は所定のVATインボイスの発行や定期申告・納付を行わなければならない。

個人所得税

個人所得税は累進課税であり、課税所得に応じ段階的に税率が上昇する。最高税率は約40%で、加えて課税額に対し3%のエイズ税が課される。

給与所得に対する源泉徴収(PAYE)が主要な徴税手段となっており、税率や控除額は毎年の財政法で更新される。

なお、外貨建て収入(米ドル建て給与等)については物価変動を考慮し独自の課税表が適用されている。

その他の税金

その他主要な税目としては源泉徴収税や資本利得税、印紙税、関税・物品税等がある。

配当に対する源泉税は20%(非居住者配当)、利子や使用料等にも15~20%程度の源泉課税が定められている(租税条約により軽減される)。

資本利得税は資産譲渡益に対し5~20%程度の税率が課され、土地や株式の譲渡に適用される(保有期間等で変動)。

このほか、デジタル取引に対する税(Electronic Transactions Levy)及び2%の中間取引税(IMTT)がある。

4. 会計・監査制度

会計基準

全ての会社は国際会計基準(国際財務報告基準IFRS)を適用して財務諸表を作成することが法令で義務付けられている。1996年施行の公認会計士・監査人法に基づき、会計基準の設定は会計監査委員会(PAAB)が所管し、IFRSがそのまま国内基準として採用されている。

中小企業向けにはIFRS for SMEsの適用も認められている。

会計期間は通常暦年ベース(1月~12月)だが、会社定款で任意に定めることも可能である。

税務申告上は現地通貨建てでの帳簿記載が求められるが、ハイパーインフレ環境下では実務上外貨建て帳簿との換算調整が課題となっている。

監査要件

公開会社(上場企業)や公的利害関係者(PIE)に該当する企業は年度ごとに外部監査を受けることが義務づけられている。一方、非公開の私企業については、親会社が公開会社でない限り法定監査義務は免除されている。

監査基準は国際監査基準(ISA)が法的に採用されており、PAAB登録の公認監査人がISAに準拠して監査を実施する。

監査報告書および財務諸表は株主総会で承認された後、必要に応じ規制当局(証券委員会や中央銀行など)に提出される。

登録要件

ジンバブエで職業会計士・監査人として業務を行うには、PAAB(公認会計士・監査人委員会)への登録が必要である。PAABは会計士資格の付与・監督機関であり、全ての公認会計士(財務会計士、税務会計士、監査人等)を登録・規制している。また会計事務所自体もPAABまたは管轄官庁への開業登録が必要となる。

会社側には、一定規模以上の企業は財務担当責任者に有資格会計士を任命することが推奨されているが法定ではない。

財務諸表の提出

会社法(Companies and Other Business Entities Act)により、全ての会社は毎事業年度終了後に財務諸表(貸借対照表・損益計算書)および取締役報告書を作成し、株主総会で承認の上、所定の期間内に会社登録局へ提出する義務がある。

また年次の会社年次報告(Annual Return)も提出しなければならず、これには株主・役員情報とともに財務情報の届出が含まれる。未提出や期限遅延には罰金等の制裁が科される。

5. 労務制度

雇用契約

労働契約は原則書面によることが推奨され、常用従業員については労働法(労働法Chapter 28:01)により雇用条件を書面提示する義務が定められている。契約書には職務内容、賃金計算方法と支払間隔、労働時間、休暇、解雇手続き等を明記する必要がある。

雇用形態には期間の定めのない常用雇用のほか、有期契約、パートタイム契約、時間契約が認められている。試用期間(プロベーション)は慣行的に3か月程度設けられる。

最低賃金

全国一律の法定最低賃金は存在しない。労働大臣は業種ごとに最低賃金を定める権限を有し、実際には産業別団体交渉(National Employment Council; NEC)で合意された賃金テーブルが各業界の最低賃金水準となっている。例えば製造業や商業など主要セクターではNEC協約で職級別の最低給与額が定められており、これが法的拘束力を持つ。

未組織セクターについては政府の告示で最低賃金が指定されることもある(農業や家事労働等を除く一般労働者向けの最低賃金通知が過去に発出された事例があるが、最新状況は確認できないため詳細省略)。

なお年末賞与(ボーナス)の支給は法律上義務ではないが、一部の団体協約で13ヶ月目給与として定められることがある。

労働時間

通常の法定労働時間は労働法上明確な数値規定がなく、各産業別の団体協約や個別契約によって定められる。一般的には1日8時間・週40~45時間が標準的だが、シフト勤務者では1日12時間まで認める業種もある。

少なくとも週に連続24時間の休息日(週休)が全ての労働者に保証されており、これは法定で明文化されている。時間外労働(残業)は業種毎の協約で割増賃金率等が定められており、割増率は通常1.5倍~2倍程度である。管理職層は時間外手当の対象外とされることが多い。

解雇・退職

労働者の解雇には正当な理由(Just cause)が必要で、不当解雇は禁止されている。懲戒解雇の場合は事前に懲戒手続き(聞き取りや審問)の実施が求められ、労働者には弁明の機会が与えられる。経済的理由による整理解雇(レイオフ/リストラ)は「Retrenchment」と呼ばれ、事前に従業員代表への通知と労働省への申請が必要である。

2023年の労働法改正により、レイオフ時の退職パッケージ(法定最小解雇補償)が強化され、最低基準として勤続年数に応じた手当支給が義務化された。具体的には、法定最低補償として勤続1年当たり少なくとも給与数週間分(詳細額は法令参照)が支払われる。

定年については法定年齢の定めはない(公的年金の給付開始年齢は60歳)。

労働争議・労使関係

労働争議が発生した場合、当事者間協議→労働省認定の調停員(コンシリエーター)による調停→労働裁判所による裁定という多段階の紛争処理手続きが用意されている。ストライキは憲法上の権利として認められるが、合法スト実施には事前の通知期間遵守や争議手続きの完了が必要である。実際には高インフレ下の賃金目減りに対するストライキや抗議行動が頻発しており、教員組合や医療労組によるストが報じられている。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

政府は特別経済区(SEZ)制度を設け、指定区域やプロジェクトに対して各種の投資優遇措置を付与している。

SEZ認定企業には法人税免除(操業初5年間0%、以降15%)、配当の源泉税免除、輸出税・資本取引税の免除など大幅な税制優遇が与えられる。また輸入関税・付加価値税の免除(資本財の無税輸入)も適用される。

外資企業は案件単位でSEZライセンスを申請可能であり、要件として一定額以上の投資や雇用創出計画などが審査される(具体基準はZIDAの公表資料参照)。現在、首都ハラレ周辺や港湾都市ブルワヨ等に複数のSEZ指定区域が存在する。

加えて一般投資向けの奨励策として、新規投資の初期資本設備に対する減価償却特例(100%即時償却)や輸出収益に対する課税軽減などが提供されている。

投資促進機関

2020年に設立されたジンバブエ投資開発庁(ZIDA)が、対内投資促進のワンストップ機関として機能している。ZIDAは投資ライセンスの発給、SEZ指定管理、各種許認可の取得支援を一括して担い、海外投資家の窓口となっている。

ZIDA法では投資の保護(収用しない保証)や内外無差別待遇の原則が定められており、外資企業の権益保護を法的に裏付けている。また、経済省や商工会議所とも連携し、投資案件毎の課題解決や政府側折衝を代行する。

ビザ・労働許可

外国人がジンバブエで長期駐在・就労するには適切な居住許可(Residence Permit)および就労許可(Work Permit)が必要である。

投資家本人は「投資家居住許可(Class A)」の対象となり、通常10万米ドル以上の投資実績とZIDA発行の投資ライセンスを条件に付与される。

現地法人に雇用される駐在員・専門家は「就労許可(Class B)」を申請し、必要技能の現地不足を証明する書類や契約書等の提出が求められる。

許可の有効期間は1~3年程度で更新可能である。申請手続きは内務省入国管理局が所管し、ZIDAや現地弁護士が取得手続きを支援することもできる。

外貨規制

企業が国内で外貨収入を得た場合、その25%は中央銀行(RBZ)の定める公式レートで強制売却(現地通貨転換)しなければならない。また、国内で販売した商品・サービスの外貨収入については15%を同様に当局へ売却する義務がある。残余の外貨については企業の外貨口座に留保可能で、輸入代金決済や配当送金に充当できる。

配当や利益送金は100%送金自体は許可されているが、実務上は上記の強制転換による目減りや送金許可の遅延リスクがある。

為替レートは公式レートと並行市場レートの乖離が見られ、外貨の現地調達には困難が伴う。もっとも近年は外貨規制が緩和傾向にあり、以前は輸出収入の40%強制転換だったものが25%に緩和されるなど、投資資金の本国送還リスク軽減が進められている。

なお、銀行に外貨建て口座(FCA)を開設し、外貨を保有・利用すること自体は企業・個人とも認められている。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

現地で法人銀行口座を開設するには、会社設立証明書、定款、取締役会決議書、株主・役員身分証明、税番号などの書類を銀行に提出する必要がある。主要商業銀行(スタンダードバンク、スタンビック銀行、エコバンク等)は外資企業の口座開設に対応しており、通常は数日~数週間で開設可能である。

口座は現地通貨建てと外貨建て(FCA)の双方を開設でき、日常決済用には米ドル建てFCA口座が広く利用されている。

なお、外貨建て口座からの現金引出し額については中央銀行規制で上限や事前通知が求められる場合がある。またマネーロンダリング防止の観点から、UBO(最終実質支配者)情報の開示や最低預入金要件を課す銀行もある。

現地借入・金利水準

ジンバブエ国内の商業銀行からの借入は、インフレ率が高騰しているため金利水準も非常に高い。中央銀行政策金利は一時年200%に達し、市中貸出金利も年100%以上となった例がある(2023年時点)と報じられている。その結果、銀行融資は原則短期(180日以内)が中心で、長期融資(2年以上)はほとんど行われていない。

多くの企業は運転資金を自己資金や親会社からの社内ローンに依存している。外貨建てでの現地融資は限られるが、一部銀行では米ドル預金を原資とした融資商品も提供している。もっとも外貨融資の金利も年10~15%前後と周辺国に比べ高い水準である。

国際金融公社(IFC)など国際機関の融資枠も政治リスクから限定的である。

今後インフレ鎮静化により金利が低下すれば現地資金調達環境も改善が期待されるが、2024年時点では現地通貨建て借入は事実上困難である。

送金・為替サービス

海外送金は各銀行の国際決済ネットワーク(SWIFT)を通じて行う。配当送金やロイヤリティ送金にはRBZの事前承認が要るケースがあるが、外資規制緩和後は形式的な通知で済むことも多い。外貨不足が深刻だった時期には銀行が送金申請を受けても実行まで数週間待たされることもあった。現在は主要輸入用途の送金は比較的円滑に処理されているが、高額の資本送金は慎重な審査が行われる。

為替サービスについて、RBZが定期的にオークション方式で外貨売買を行い公式レートを形成しているが、市場実勢と乖離がある場合がある。企業は民間両替商(公式認可ディーラー)を通じてZWLとUSD等を交換できるが、取引額に上限がある。

なお、Western UnionやMoneyGramといった送金業者も国内に展開しており、小口送金にはそれらが利用される。

フィンテック動向

ジンバブエでは携帯電話を利用したモバイルマネーが非常に普及している。代表的なサービスは大手通信会社エコネット社の「EcoCash」で、ピーク時には国内決済の9割近くを占めたとも言われる(政府統計)。しかし政府は過去にインフレ対策としてEcoCashによる現金引出を停止する措置を取るなど、フィンテック分野にも規制介入が行われた。現在はQRコード決済やデビットカード決済が都市部で広く利用され、現金不足を補っている。

中央銀行は2022年に金貨(ゴールドコイン)を導入し、更に2023年にはデジタル通貨(ZiG)を発行するなど、独自のデジタル金融政策にも乗り出した。これらはインフレヘッジ策として導入されたが、市民の現地通貨不信を払拭するには至っていない。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

経済環境の不安定さから、契約条件(特に支払通貨や価格)が政府政策で変更を余儀なくされるリスクがある。またインフレによる商取引の混乱で、契約当事者が一方的な履行猶予や条件変更を求めるケースもみられる。

一般的にビジネス上の時間感覚は柔軟で、日本のような厳密な納期遵守意識は相対的に低い傾向がある。

汚職・賄賂リスク

汚職のリスクは高い。2024年の腐敗認識指数(CPI)では100点中21点と低得点で、世界180か国中158位と評価されている。官公庁での許認可取得や警察検問で賄賂が要求される事例も報告されている。政治上層部の汚職も慢性化しており、資源利権や公共調達を巡る不透明な取引が指摘されている。

治安・政情リスク

治安はアフリカ地域の中では比較的穏やかな方だが、経済困窮により窃盗や強盗事件は増加傾向にある。都市部では夜間の単独行動を避け、警備付きの移動を利用することが望ましい。

政治的には与党ZANU-PFによる長期政権が続き、選挙時に野党支持者との衝突や抗議デモが発生することがある。直近の2023年選挙後も野党から不正の指摘があり、一部で騒乱が起きた。政情不安が高まる局面では、当局が通信規制や夜間外出禁止令を発令する場合もあり、企業活動に影響を及ぼす可能性がある。

加えて経済政策の突然の変更(通貨制度や価格統制等)は常にリスクとして存在する。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

南アフリカ経由の間接的な進出形態が若干みられるが、本格的な製造拠点新設などの大型投資事例は見当たらない。日系商社もかつて鉱物資源開発の検討を行った例があるが、政治リスクから実現に至っていない。

競争優位性・課題

ジンバブエ市場での日系企業の競争優位性としては、高品質な製品やサービスへの信頼が挙げられる。例えば日本車は信頼性により中古市場でも高値を維持している。

一方、課題は通貨・経済の不安定性と複雑な規制環境である。頻繁な政策変更に対応できる俊敏性が求められ、加えて為替制限や価格統制により利益を海外送金できないリスクもある。

また欧米の対ジンバブエ制裁継続に伴い、国際金融決済や保険引受で制約を受ける場合がある。

現地の人的資源は識字率が約90%と高く高度技能者も多いため、うまく活用すれば人件費メリットと相まって競争力となる。ただし優秀な人材は国外流出もしやすく、人材定着策も課題となりうる。

手続き難易度

会社設立には9つの手続き・約27日間を要するとされる。加えて投資許可、税登録、労働許可、各種営業ライセンス取得など、多岐にわたる要件を満たす必要がある。ZIDAがワンストップサービスを提供しているものの、実務的には各官庁との調整が必要で申請フォローアップに神経を使う。

契約執行や債権回収に司法の支援を仰ぐ場合も、裁判所の手続き遅延がリスクとなる(訴訟は数年単位で長期化しやすい)。

総じて進出の事務負担は大きく、「ビジネスのしやすさ」ランキングでも同地域平均を下回っている(世界銀行Doing Business指標では下位に位置していた)。

南アフリカ共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

首都

  • 行政首都:プレトリア
  • 立法首都:ケープタウン
  • 司法首都:ブルームフォンテーン

人口

約6,200万人(2022年国勢調査)

公用語

公用語は英語を含む11言語。

通貨

南アフリカ・ランド(ZAR)

為替レートは1 USD=約18.5 ZAR(2025/05 月平均)

主要経済指標

GDPは約3,807億ドル(2023年)とサブサハラ・アフリカで第2位の規模を誇る。2023年の実質GDP成長率は0.6%と低迷し、インフレ率は6.0%(2023年平均)、失業率は約32%(2023年)と経済課題が大きい。

一方、輸出額は1,247億ドル、輸入額は1,234億ドル(共に2023年)で、主要輸出品は白金族金属・金・鉄鉱石・石炭・自動車など。

日本との関係では、南アフリカは日本企業のアフリカ最大の進出先であり、2023年時点で日系企業拠点数はアフリカ最多。日本は南アフリカの主要貿易相手国の一つで(南アの対日輸出品目は自動車等、対日輸入品目は白金族金属等)、経済協力や投資も活発である。

2. 法人設立制度

法人形態

南アフリカで事業を行うには、現地法人の設立または支店(外部会社)の登記が必要である。

現地法人の形態は主に公開会社(Ltd)と非公開会社(Pty Ltd)があり、一般的に日系企業は非公開会社形態を選択する。非公開会社は取締役1名から設立可能で株式譲渡に制限がある。公開会社は取締役3名以上が必要で株式を公開募集でき、証券取引所への上場も想定される。

外国企業が南アフリカで継続的事業を行う場合、現地法人化せずに支店(External Company)として登記する選択肢もある。

外資規制:

外資に対する包括的な持株規制はなく、南アフリカでは原則100%外資出資の法人設立が認められる。もっとも、産出資源への戦略や国益に絡む特定分野(例:鉱業権や農地保有など)では外国資本比率の制限や許認可条件が存在する場合がある。

また、黒人経済権限強化(B-BBEE)政策により、実質的な外資規制ではないものの、企業に黒人株主や従業員の登用を促す枠組みがあり、公共調達や特定産業ではB-BBEEで高評価の企業が優遇される。

資本金要件:

会社設立時の最低資本金の規制はなく、1ランドからでも法人を設立できる。出資金についても規制上の下限は定められていないが、事業規模に見合った適切な資本構成とすることが求められる。

なお、公開会社として株式上場する場合は取引所規則に基づく一定の資本要件や株主数要件を満たす必要がある。

登記手続き:

法人の設立登記は企業知的財産委員会(CIPC)で行う。まず会社名の予約申請を行い、定款(Memorandum of Incorporation)など所定書類を提出する。オンライン申請も可能で、登記完了までの所要期間は数日~数週間程度である。

登記完了後は南アフリカ歳入庁(SARS)への税務登録(法人税・VAT・給与税/PAYE等)や労働省へのUIF(失業保険基金)登録を行い、事業開始に必要な諸手続きを完了させる必要がある。また、事業分野によっては追加の営業許可や業種別ライセンスの取得が求められる。

3. 税制度

南アフリカの税務は南アフリカ歳入庁(SARS)が管轄し、主要な税目として法人所得税、付加価値税(VAT)、個人所得税などがある。以下に企業活動に関連する主な税制度を示す。

法人所得税(Corporate Income Tax):

税率は基本27%で、南アフリカ源泉の課税所得に対して課される(2023年3月以降開始事業年度より28%から27%へ引下げ)。内国・外国資本を問わず現地で事業を行う法人は原則として全所得にこの税率が適用される。

ただし、中小企業向けに税率軽減措置があり、年間売上高が2,000万ランド以下の小規模法人は課税所得に応じて0~27%の累進税率、それよりさらに小規模な零細企業(売上100万ランド以下)は一定額まで免税や低率課税(最大3%)が適用される特例がある。

なお、外国企業の南ア支店(外国会社)が本国へ利益送金する場合、追加の支店税はなく通常の法人税のみである。

源泉税(Withholding Tax):

南アフリカから非居住者へ支払われる所得には源泉徴収課税が行われる。配当金には20%の源泉税(Dividend Tax)が課され、利子およびロイヤルティには各15%の源泉税が課せられる。

南アフリカと日本の間には租税条約が締結されており、例えば日本の親会社が25%以上出資する子会社からの配当に対する源泉税は5%に軽減されるなど、一定の軽減措置が適用可能。

なお、サービス料等には基本的に源泉税はないが、建設工事など一部取引に対して例外的に課税が行われる場合がある。

付加価値税(VAT):

日本の消費税に相当する間接税で、標準税率は15%(2018年に14%より引上げ)。国内で供給されるほとんどの財貨・サービスに課税され、輸出取引や一部基本食品にはゼロ税率(0%)、金融・教育・住宅賃貸等特定分野は非課税となっている。

年間売上高が100万ZAR(ランド)超の事業者はVAT登録が法定義務となり、課税事業者(ベンダー)として定期的にVAT申告・納付を行う(月次または2ヶ月毎が一般的)。売上高5万ZAR超から任意登録も可能で、仕入VAT控除を受けるため小規模事業者でも任意登録を選択することがある。

個人所得税(Personal Income Tax):

個人の所得に対して累進課税が適用され、2023年度現在の税率は18%~45%である(最高税率45%は年間課税所得1,817,000 ZAR超部分に適用)。給与所得者の場合、雇用者が毎月PAYE(Pay-As-You-Earn)として源泉徴収し納税する仕組みになっている。

南アフリカ居住者は世界所得が課税対象となるが、一定の海外所得は非課税枠が設けられている。一方、非居住者は南アフリカ国内源泉の所得のみ課税対象となる。

給与所得に対しては雇用主・労働者双方から給与の1%ずつ失業保険拠出金(UIF)が徴収されるほか、雇用主は従業員訓練税(SDL)として給与総額の1%を別途納付する。社会保険料はそれらに限定的で、日本のような厚生年金保険は存在しない。

その他の税金:

上記のほか、南アフリカには資本的所得に対する課税としてキャピタルゲイン税(資本利得税)がある(法人の場合、資産譲渡益の80%を法人所得に加算し実質約21.6%の税率に相当)。

不動産を取得した際には物件価額に応じた移転税(Transfer Duty)が課され、一定額以下の住宅用不動産取引を除き累進税率(最大13%)が適用される。

また、鉱業権や天然資源の採掘にはロイヤルティ(Mining Royalty)が課される。

二酸化炭素排出量に応じたカーボン税も導入されており(2019年施行)、環境対策として排出企業に追加負担が生じる場合がある。

税制は頻繁に改正が行われるため、最新の税率や優遇措置については毎年度の予算発表を確認する必要がある。

4. 会計・監査制度

南アフリカの企業会計は国際水準に準拠しており、財務報告や監査に関する制度も整備されている。企業は適用区分に応じて国際会計基準を採用し、一定規模以上の場合は外部監査が義務付けられる。

会計基準:

南アフリカでは上場企業および大多数の非上場企業に国際財務報告基準(IFRS)が適用されている。

非公開会社など中小規模の企業については、IFRSを簡素化した「IFRS for SMEs(中小企業向け会計基準)」の適用が認められており、企業規模や利害関係者の状況に応じた会計処理が行われる。

いずれの場合も会計帳簿の調整・保存義務があり、年度ごとに財務諸表を作成することが法律で求められる。決算期は各社任意に設定可能だが、多くは12月末や3月末を年度末に採用している。

監査要件:

会社法により、全ての公開会社と一定規模以上の非公開会社には財務諸表の外部監査が義務付けられる。

監査要否はPublic Interest Score(PIS)と呼ばれる指標で判定され、PISは従業員数・売上高・負債・株主構成から算出される点数である。一般に、PISが350点を超える企業は強制監査の対象となり、PISが100~350点の場合も、財務諸表を社内で作成している場合には法定監査が必要となる。それ以外の中小企業でも、定款(MOI)や契約上の要請、自主的な選択により監査を受けるケースがある。

法定監査の対象とならない企業は、独立審査(Independent Review)と呼ばれる外部者による財務諸表レビューを受ける義務がある。ただし、株主=役員の同族会社でかつ年次財務諸表を社外の会計士に委託して作成している場合などは、監査・独立審査とも法定義務から除外される緩和措置も存在する。

なお、南アフリカにおける外国会社(支店)は原則として現地法上の監査・独立審査義務の対象外である。

登録要件:

監査業務を実施できるのは南アフリカ公認会計士(Chartered Accountant (SA))であり、かつ監査人登録機関(IRBA)に登録した監査人のみである。監査報告書には登録監査人の署名が必要となる。

独立審査を行うレビュー担当者も公認会計士など有資格者であることが求められる。

会計士・監査人の職業倫理は厳格に定められており、不正防止の内部統制やコンプライアンス体制の整備も企業の責務となっている。

財務諸表の提出:

全ての企業は会計年度末後、遅滞なく株主総会(年次総会)で財務諸表の承認を行い、所管官庁の要求に応じて提出できるようにしておく必要がある。特に公開会社や一定規模以上の企業は、CIPC(会社委員会)への年次報告として財務諸表を提出する義務がある。

上場企業は証券取引所規則により監査済み決算の適時開示も求められる。

これらに違反した場合、罰金や登記抹消等の制裁を受ける可能性があるため、適正かつタイムリーな財務報告が重要である。

5. 労務制度

南アフリカの労働法制は労働基準や雇用平等、労使関係に関する包括的な枠組みを提供しており、企業はこれらを遵守して人事労務管理を行う必要がある。主な事項として雇用契約、賃金、労働時間、解雇手続、労使関係などが法律で定められている。

雇用契約:

基本的就業条件は労働基準法(Basic Conditions of Employment Act)で規定されており、契約書には職務内容、給与、勤務時間、休暇、解雇通知期間などを明記する。契約形態は期間の定めのない常用雇用が原則で、有期契約はプロジェクトや代替要員など合理的理由がある場合に限られる。試用期間は3~6か月程度設けられることが多い。就業規則やハンドブックを整備し、企業内の勤怠・懲戒手続きを明文化しておくことも望ましい。

最低賃金:

南アフリカには全国一律の法定最低賃金が設定されている。2024年3月の改定後、最低賃金は時間額27.58 ZAR(ランド)となっており、フルタイム(週45時間)換算で月額約4,800ランド程度に相当する。農業や家事労働者等一部職種には別途最低賃金が規定されているが、一般企業で雇用する労働者には原則この全国最低賃金以上の賃金支払いが義務付けられる。

最低賃金は毎年見直されており、インフレ率等を考慮して政府が改定を行う。違反した企業には罰則が科される。

労働時間:

通常の法定労働時間は週45時間(1日あたり9時間〈週5日勤務の場合〉または8時間〈週6日勤務の場合〉)である。これを超える勤務は時間外労働(残業)となり、労使合意により週10時間を上限に認められる。時間外労働に対しては通常賃金の1.5倍以上の割増賃金を支払う義務がある(休日勤務は1.5倍、法定休日勤務は2倍の割増率が一般的)。

有給休暇は最低でも年15営業日(3週間)の取得が法律で保障されており、勤続12か月ごとに発生する。また病気休暇は3年間で30労働日分の権利が与えられ、出産休暇(4か月間の無給産休)や家族責任休暇(年間3~5日)も定められている。

これらの最低基準を下回る就業条件は無効となる。

解雇・退職:

労働関係法(Labour Relations Act)により、従業員の解雇には公正な理由(業務上の不適格・規律違反、能力不足、経営上の都合など)と公正な手続きが求められる。不当解雇と判断された場合、従業員は調停仲裁機関(CCMA)や労働裁判所に提訴し、復職命令や補償金支払いが命じられる可能性がある。解雇時の通知期間は勤務年数に応じて1~4週間以上必要である(試用期間中を除く)。

経営悪化等による整理解雇(経済的理由の解雇)の場合、30日前通知に加え、勤続1年当たり最低1週間分の法定退職手当(Severance Pay)を支払う義務がある。

定年年齢に関する法律上の規定はない。

労働争議・労使関係:

南アフリカの労働組合組織率は比較的高く、特に鉱業、製造業、公共交通などでは強力な全国単一労組が存在する。労使紛争が生じた場合、まずCCMA(労働争議調停・仲裁委員会)での調停を経て、解決しない場合に合法的なストライキまたはロックアウトに発展することがある。

ストライキは手続遵守の下で認められた権利であり、毎年労働者による大規模なストが発生している(賃上げ争議が中心)。企業は団体交渉協定に基づき年1回程度の賃金改定交渉を行うケースが多く、労使関係の安定には労組との建設的な対話が重要である。

また、雇用平等法(Employment Equity Act)により、従業員50名超の企業等には黒人や女性など被差別層の積極登用を図る雇用平等計画の策定・報告義務が課されている。これはB-BBEE政策の一環でもあり、人種・性別の多様性確保が企業の社会的責務と位置付けられている。違反時には罰金等もあり、人事制度上も留意が必要である。

6. 外国人進出企業向け制度

南アフリカ政府は海外からの投資を促進するため、企業進出を支援する各種制度や優遇策を用意している。特別経済区でのインセンティブや投資促進機関のサポート、外国人の就労ビザ制度、外為規制の枠組みが主なポイントである。

特別経済区と投資優遇:

政府は国内数箇所を特別経済区(SEZ: Special Economic Zone)に指定し、新規投資に対して税制優遇やインフラ提供などのインセンティブを与えている。例えば、一部SEZでは法人税率の優遇(15%への引下げ)や設備投資減税、関税の免除措置などが適用される。

また、製造業や農業、観光業など特定産業向けにも、補助金や融資制度、減税措置といった支援策が講じられている。

これらの制度を活用することで、外国企業は初期投資コストの低減や操業環境の改善が期待できる。ただし、優遇措置の適用には事前認可や実績報告など所定の要件を満たす必要がある。

投資促進機関:

南アフリカ政府は「南アフリカ投資促進機構(InvestSA)」を設置し、外国企業の現地進出をワンストップで支援している。InvestSAでは投資案件の相談対応、必要許認可取得手続の調整、関係当局との調整や現地ビジネスパートナー紹介などのサービスを提供している。

また、各州にも投資開発公社(例えばハウテン州のGEDAや西ケープ州のWesgro等)があり、地域ごとの投資情報提供や誘致活動を行っている。これら公的機関を通じて、進出企業は行政手続の円滑化や各種情報提供などの支援を受けることが可能である。

ビザ・労働許可:

一般就労ビザ(General Work Visa)

2024年10月の改正によって、一般就労ビザには新たにポイント制が導入された。下記のような項目を数値化し、一定の合計ポイントを満たす必要がある。

  • 学歴・専門資格
  • 実務経験年数
  • 年収(給与水準)
  • 南アフリカ人従業員への技能移転計画の有無
  • 雇用契約期間

高い給与水準や特定分野の先端スキルを有する応募者にはポイントが加算されるため、条件を満たせば比較的短期間で承認が得られる可能性もある。一般就労ビザの滞在可能期間は原則5年である。

高度技能ビザ(Critical Skills Work Visa)

南アフリカ政府の定める欠乏技能リスト(Critical Skills List)に合致する職種で、必要学歴・実務経験を有する外国人が対象となる。2024年10月改正でリスト内容が見直され、一部のIT・医療・エンジニアリング分野が追加された。改正後は、雇用先未定での申請は不可とされ、南アフリカ国内企業との雇用契約が申請時点で必須となる。ビザの有効期間は最大5年で、更新も可能である。

社内転勤ビザ(Intra-company Transfer Visa)

海外本社から南アフリカ法人へ出向・転勤する駐在員向けのビザである。2024年10月改正で、最長滞在期間が4年から5年に延長された。延長を申請する場合、当初の転勤期間中に現地スタッフへの技能移転を適切に実施した実績を証明する必要がある。グループ会社間の異動であれば比較的取得しやすいが、雇用契約企業が明確に親子関係にあることが前提条件となる。

リモートワークビザ(Remote Work Visa)

同改正で新設されたビザ区分で、南アフリカ国内に居住しつつ、海外の雇用主やクライアント向けにリモート就労する外国人が対象である。滞在可能期間は1年が基本だが、一定要件を満たせば最長2年まで延長可能となる。ただし、このビザでは南アフリカ国内企業との雇用契約や対価受領は認められない。申請には、海外との就業契約や十分な収入証明、居住先情報などを提出する。

その他の留意点

いずれのビザも南アフリカ大使館・領事館での事前申請が必要で、審査には数か月を要する場合がある。短期の商用訪問(90日以内)に関しては、日本を含む一部国の国民がビザ免除の対象となるが、会議や商談などに限定され、現地企業での就労は認められない。
改正内容は今後も追加的に見直しが行われる可能性があるため、最新の要件やポイント制の基準を常に確認し、十分な準備期間を確保して申請する必要がある。

外貨規制:

南アフリカ準備銀行(中央銀行, SARB)はAuthorized Dealerと呼ばれる市中銀行を通じて資金の流出入を統制しており、外国企業が利益送金や資本撤収を行う際には所定の報告・承認手続きが必要となる。

具体的には、現地法人が本国親会社へ配当金やロイヤルティ送金を行う場合、SARB指定の銀行にて利益計上や納税が適切に行われたことの証明を提出し、送金承認(Tax Clearance)を取得する必要がある。

また、親会社から現地法人への増資や社内貸付についても事前にSARBへの届け出を行い、後日の資本送還時に備えておくことが求められる。

外為規制下ではランド建て通貨の持ち出し制限などもあるが、近年は段階的な規制緩和が進められており、合法的な投資収益の本国送金は概ね保証されている。

もっとも、通貨危機時等には規制強化のリスクも考慮し、資金計画には余裕を持たせることが望ましい。

7. 金融・資金調達制度

南アフリカの金融システムはアフリカで最も発達しており、銀行取引や資金調達の環境は比較的整っている。もっとも、金利水準は日本に比べ高く、為替変動リスクも大きいため、資金計画において留意が必要である。

以下、金融実務上の主要ポイントを解説する。

銀行口座開設:

現地で法人活動を行うには南ア国内の銀行で口座を開設する必要がある。南アフリカの主要銀行(スタンダード銀行、ファーストランド銀行、ABSA銀行、ネッドバンク等)は世界的に信用力が高く、都市部に支店網を持つ。小切手文化は縮小傾向にあり、振込(EFT)やモバイル決済が主流である。

口座開設時には会社登記証明書(MoIやCIPC発行の証書)、役員・口座署名者の身分証明(パスポート)および居住住所証明、税番号(SARS発行の納税者番号)などの提出が求められる。これはFICA(金融情報センター法)に基づく厳格な顧客確認手続き(KYC)であり、マネーロンダリング防止の観点から必須である。口座開設プロセス自体は数日~数週間で完了し、インターネットバンキングや各種決済サービスの利用が可能となる。

現地借入・金利:

南アフリカの金融市場は発達しており、海外企業でも与信条件を満たせば現地金融機関からの借入が可能である。もっとも政策金利(レポレート)は直近で7.50%(2025/05時点)と高く、市中銀行の最優遇貸出金利(プライムレート)は約11%前後と金利負担は大きい。企業向け融資では不動産・在庫など資産担保や親会社保証が求められる場合が多い。

設備投資案件では開発金融機関(産業開発公社IDCなど)や政府系の低利融資制度を利用できる可能性もある。近年は金利高騰を背景に社債発行や本国からの社内融資で賄う企業もみられるが、本国からの貸付金は外貨規制上SARB承認を要し、利子支払いにも15%の源泉税が課される点に留意が必要である。

送金・為替:

南アフリカ・ランド(ZAR)は変動相場制で取引されており、対主要通貨で変動が大きい。

2010年代以降、ランドは資源価格や国際金融情勢の影響を受けやすく、対米ドル相場は10年で約2倍に下落するなど乱高下を経験している。為替リスク管理のため、現地銀行はフォワード為替やデリバティブ商品によるヘッジ手段を提供しており、輸出入取引の決済時期に合わせてレートを固定する企業も多い。

国外への送金は前述のとおり中央銀行管理下で可能であり、適切な手続を踏めば配当・ライセンス料・債務返済等を本国送金できる。資金移動にはSWIFTを利用した国際送金が一般的で、送金所要日は日本宛で2~5営業日程度である。外貨規制により一度に持ち出せる額など制約はあるものの、事業運転上通常必要となる範囲で大きな障害はない。

為替手数料や送金コストは日本より割高な場合が多く、契約通貨や支払条件の設定にも工夫が求められる。

フィンテックの活用:

南アフリカでは銀行サービスの電子化が進んでおり、法人・個人ともにインターネットバンキングやモバイル送金が広く普及している。

主要銀行のスマートフォンアプリで口座残高確認から振込、支払まで完結可能で、企業も給与振込や仕入支払をオンラインで効率的に行っている。

近年はフィンテック企業の台頭も著しく、電子ウォレットやQRコード決済(例:SnapScanなど)、ECプラットフォーム向け決済代行サービスなど新しい金融サービスが登場している。

暗号資産やブロックチェーンを用いた送金も試験的に行われ始めている。

金融当局も革新的サービスに理解を示し、規制サンドボックスを通じてフィンテック育成を図っている。

総じて南アフリカの金融制度は信頼性が高く、最新テクノロジーも取り入れながら進化している。

8. 文化・商習慣・その他リスク

南アフリカでビジネスを行うにあたっては、現地独特の商習慣や潜在的リスクへの理解が欠かせない。契約交渉のスタイルや倫理観、治安情勢など、日本とは異なる側面を事前に把握し適切に対応することが重要である。

契約文化:

南アフリカのビジネスは基本的に英米法の流れを汲む商習慣にあり、契約の成立・履行には書面(契約書)の取り交わしと当事者間の合意内容の明確化が重視される。口約束や暗黙の了解に依存することは少なく、契約書には取引条件・納期・支払条件・責任分担・紛争解決条項(調停や仲裁の合意事項)まで詳細に規定されるのが一般的である。

汚職リスク:

国有企業を巡るいわゆる「国家の私物化(State Capture)」問題など腐敗スキャンダルが過去に大きく報じられ、企業が官公庁と取引する際には不透明な要求に直面する可能性が指摘されている。国際NGOの透明性国際による腐敗認識指数(CPI)では南アフリカは41(100点満点中、2023年)となっており、主要先進国と比べスコアは低い。

治安・政情:

南アフリカは政権交代も安定した民主主義国家である一方、治安面では凶悪犯罪の多発する国でもある。特にヨハネスブルクやプレトリア等の都市部では強盗、車の窃盗、侵入盗、誘拐といった犯罪が日常的に発生し、邦人を含む外国人も被害に遭うケースが報告されている。企業としてはオフィスや工場にセキュリティシステムや警備員を配置し、従業員の通勤にも安全対策を講じる必要がある。夜間の徒歩や治安の悪い地域への立ち入りは避け、自動車移動時もドアロックや停車時の警戒を怠らないことが肝要である。

政治情勢については、長年与党ANC(アフリカ民族会議)による政権運営が続き大規模な政治混乱は起きていないものの、近年は経済低迷や汚職問題から政権への批判が高まっている。2024年の総選挙ではANCの得票率が過半数割れし、今後の連立政権誕生や政策の不透明感が指摘される。

加えて、国家電力会社Eskomの経営難に起因する電力不足は深刻で、2018年頃より全国規模で計画停電(ロードシェディング)が常態化している。電力制約は工場稼働や店舗営業に直接影響し、治安悪化や追加コスト(自家発電機やUPS設置等)を招く大きなリスクとなっている。

パートナー選定上の留意点:

日系企業が現地企業や代理店と提携する際には、慎重な相手先選定と契約上の担保が重要となる。進出初期には現地事情に通じたローカルパートナーの協力が有益だが、相手先の信用度や実績、人脈に過度に依存しすぎないよう注意すべきである。提携前にデューデリジェンス(財務内容や評判の調査)を実施し、契約書で権利義務や知的財産の扱い、損害賠償条項などを明確化することで、後のトラブルを防止できる。

また、B-BBEE政策の下では黒人株主持分や現地経営参画が企業評価に影響するため、官民問わずビジネスを円滑に進める上で信頼できる黒人パートナーとの提携は大きなメリットとなり得る。

ローカル企業の中には政界との太いコネを売りにするケースもあるが、腐敗リスクを伴う提案には毅然と対応する必要がある。

9. 実務ポイント・進出のしやすさ

日系企業の進出事例:

南アフリカにはトヨタ自動車や日産自動車をはじめ、日本の製造業・商社・金融機関など多種多様な企業が進出している。トヨタはダーバン近郊の工場で乗用車を生産し、現地市場だけでなく欧州や日本向けにも輸出する成功事例として知られる。また建設機械のコマツは現地法人を設け鉱山向け重機販売・サービスで大きなシェアを有している。商社各社も資源・インフラプロジェクトに参画し、みずほ銀行や三菱UFJ銀行などメガバンクもヨハネスブルクに拠点を置く。

2023年時点で日系企業拠点数はアフリカ最多であり、業種も製造業から卸売・物流、サービスまで幅広い。現地法人の業績も概ね好調で、JETROの調査によれば在南ア日系企業の実に8割以上が2024年の業績見通しを「黒字」と回答している。このように多数の先行企業が培った知見やネットワークがあるため、新規進出企業にとって心強い土壌が整っているといえる。

南ア市場の魅力と課題:

南アフリカは豊富な鉱物資源と工業基盤、購買力のある中間層人口を抱え、アフリカでは突出した経済規模を持つ。有力企業の本社が集積するヨハネスブルクは“アフリカの経済首都”とも称され、南部アフリカ開発共同体(SADC)加盟国へのゲートウェイとしての地位を占める。

インフラ面では港湾・空港や幹線道路、通信網が比較的整い、サプライチェーンの構築もしやすい。また、ビジネス上の使用言語が英語であり法制度も整然としていることから、外国企業にとって事業展開しやすい市場環境が整っている。

一方で課題も存在し、近年は経済成長の鈍化や慢性的な電力不足、高失業率に伴う治安不安などが投資マインドの阻害要因となっている。

また、国内市場規模(GDP約3,800億ドル)は先進国に比べれば限定的であり、高級耐久消費財など一部を除き購買力は中所得国水準に留まる。

アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)発効により域内市場の一体化が進む中、南アだけでなく周辺国も含めた広域展開戦略が求められる局面でもある。

総じて、南アフリカは 「アフリカ市場参入の足掛かり」 としての優位性を持ちながら、内在する経済・社会課題への対処も必要な市場といえる。

進出手続の難易度:

南アフリカのビジネス環境は法制度が整っており行政サービスも比較的充実しているため、途上国の中では進出手続は平易な部類に属する。会社設立登記はオンラインで完結可能、税務登録も電子申請が整備されている。ただし官公庁によっては処理に時間を要するケースもあり、例えば労働ビザの取得には数ヶ月単位の時間を見込む必要がある。

南ア政府はInvestSAによるワンストップショップを設けて手続簡素化を図っているので、進出準備段階から同機関に相談することで各種申請を効率化できる。またJETROや現地商工会議所などの支援機関からも手続情報を得られる。

全般として、進出のしやすさはアフリカ諸国の中でトップクラスではあるものの、日本や先進国に比べれば官僚手続は煩雑で、意思決定のスピード感も緩やかである。従って、余裕を持ったスケジュール計画と専門家のサポート活用が円滑な立ち上げのポイントとなる。

ナイジェリア連邦共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

国名・首都

ナイジェリアの正式名称はナイジェリア連邦共和国である。

首都はアブジャであり、国土面積は約 92 万平方キロメートルである(2024 年時点推計)。

通貨・為替

通貨はナイラ(NGN)である。

為替レートは 1 USD=460 NGN(2025/05 月平均)で推移している。

ナイジェリア中央銀行は公式レートを維持する方針を掲げるが、実勢と差が生じる場合がある。

経済指標

人口は約 2 億 2,500 万人(2024 年時点推計)でアフリカ最大規模である。

名目 GDP は約 4,800 億米ドル(2024 年推計)とされ、アフリカ最大の経済規模を持つ。

経済は原油輸出に依存する一方、農業やサービス業の比重が拡大し、多様化が進んでいる。

日本との関係

自動車や電子機器を中心とする輸入が多く、日本からは主に工業製品・機械類などが輸出される。日本企業の進出は製造業のみならず、商社やサービス業にも拡大傾向にある。

政治的にはアフリカにおける主要国として二国間協力が継続され、インフラ整備をはじめとした開発協力が行われている。

2. 法人設立制度

法人形態

一般的な形態として有限責任会社(Private Limited Company)と公開会社(Public Limited Company)がある。ナイジェリアでは外国資本が全額出資する法人の設立も認められている。支店や駐在事務所の形態をとる場合は、商業活動や納税義務の範囲が限定されるため、進出目的に応じた検討が必要である。

外資規制

原則として外資規制は緩やかであり、ほとんどの業種で 100% 外資が認められる。しかし石油・ガス、一部鉱業や通信など戦略セクターでは特定のライセンスが必要となり、技術移転や現地人材育成を義務付けられる場合がある。

また投資総額が大きい場合は、ナイジェリア投資促進委員会への届け出が推奨される。

資本金要件

有限責任会社の法定最低資本金は比較的低額であるが、事業分野によっては当局が追加の最低資本金額を設定しているケースがある。公開会社はより高額の資本金要件を課される。

また、外国人株主が資本金を送金する際には、送金証明書の取得や外貨規制への対応が求められる。

登記手続き

法人登記はナイジェリア企業局(Corporate Affairs Commission)を通じて行う。

大まかな流れは以下のとおりである。

  • 会社名の事前予約
  • 定款(Memorandum and Articles of Association)や取締役情報の提出
  • 登録手数料の支払い
  • 登録証明書(Certificate of Incorporation)の発行

登記完了後は、連邦内国歳入庁(Federal Inland Revenue Service)で納税者番号(Tax Identification Number)を取得する。銀行口座開設や各種ライセンス取得の際にも TIN が必要となる。

設立までに要する期間は書類準備が整っていれば 2〜4 週間程度だが、提出書類の不備などにより延長する場合がある。

3. 税制度

法人税

ナイジェリアの法人税(Company Income Tax)は標準税率が 30% である。石油・ガス関連企業については石油利益税(Petroleum Profits Tax)が課され、税率が高く設定されている。

年度決算後 6 か月以内に確定申告を行い納付する必要がある。中間納付制度があり、通年での分割納付が求められる場合もある。

売上規模の小さい法人には一部軽減税率が適用される制度も存在する。

付加価値税(VAT)

付加価値税の標準税率は 7.5% である。

国内取引全般に広く課税され、サービス提供も課税対象となる。一定の食料品や医薬品などは非課税扱いまたは軽減措置が認められる。

課税事業者は毎月の申告・納付が義務付けられており、申告内容の正確性が監査で確認される場合がある。

個人所得税

個人所得税は累進課税で最高税率は 24% 前後である。

外国人駐在員もナイジェリア国内源泉所得については課税対象となる。

一般的に給与支給時に源泉徴収が行われ、雇用主が取りまとめて納付する(Pay-As-You-Earn 制度)。滞在日数や雇用契約の内容によっては、納税義務が発生しない場合もあるため、駐在開始時に確認が必要である。

その他の税金

関税や印紙税、資本利得税(Capital Gains Tax)などの間接税がある。

州政府や地方自治体レベルでも商業活動税や看板広告税などが課される場合があり、地域によって税率やルールが異なる。

税務当局による監査や調査が定期的に行われるため、記帳と申告を厳密に行い、根拠資料を保管しておくことが重要である。

4. 会計・監査制度

会計基準

ナイジェリアでは国際財務報告基準(IFRS)の導入が進み、公開会社や大企業に対しては完全適用が義務付けられている。

中小企業については IFRS for SMEs を適用可能とする制度が整備されているが、外資系企業の多くは国際的な整合性を重視してフル IFRS を採用している。

監査要件

すべての有限責任会社は公認会計士(Chartered Accountant)の監査を受けなければならない。監査法人はナイジェリア会計士協会(Institute of Chartered Accountants of Nigeria)やナイジェリア国家会計士協会(Association of National Accountants of Nigeria)に登録されたメンバーが運営する事務所でなければならない。

上場企業や大企業は、金融報告評議会(Financial Reporting Council of Nigeria)のガイドラインに従い、より詳細な監査報告書を求められる。また、内部統制やリスク管理体制が整備されているかも評価の対象となる。

登録要件

監査法人や会計事務所の選任は株主総会の決議事項である。初回監査時には監査人の選任を正式に決議し、その後継続的に任命する場合も毎年再任手続きが必要となる。交代の際には適切な引継ぎや通知が義務付けられており、監査の中立性・独立性を確保する仕組みが整えられている。

財務諸表の提出

法人は事業年度終了後一定期間内(一般的には 6 か月程度)に財務諸表を作成し、企業局(Corporate Affairs Commission)へ提出する。提出書類には監査報告書や取締役報告書、株主総会議事録などが含まれる。公的申告に際しては英語での作成が求められる。

また、納税の観点では連邦内国歳入庁(FIRS)への法人税申告が必要であり、監査後の財務諸表が申告計算の基礎となる。監査で修正が生じた場合は、財務諸表と税務申告の整合性を確保しなければならない。

企業規模や業種、上場の有無により詳細な開示が追加で求められる場合がある。

5. 労務制度

雇用契約

書面による雇用契約を締結することが原則である。契約には職務内容、就業場所、報酬、労働時間、試用期間などを明記する。試用期間は通常 3〜6 か月程度で設定される場合が多い。外国人駐在員を雇用する場合は、就労許可条件に合致した契約内容とする必要がある。

最低賃金

2024 年時点の全国最低賃金は月額 30,000 NGN である。高いインフレ率や地域差を踏まえ、都市部や特定の業種では上乗せ交渉が一般的である。また、大手企業や外資企業では最低賃金を大きく上回る設定とする傾向がある。

労働時間

一般的な週労働時間は 40〜48 時間である。時間外労働に対しては割増賃金を支払うことが義務付けられている。労働法上、過度な残業を強要することは禁じられており、安全衛生面での配慮も求められる。

解雇・退職

解雇するには正当な理由を示すことが必要であり、事前通知(通常 1〜3 か月)や解雇手当の支払いが義務付けられる場合がある。労働組合が強い業種では、団体交渉や組合規約による解雇手続きが厳格化される。定年退職年齢は公的セクターを中心に 60 歳前後とされるが、民間企業は契約により自由に設定可能である。

労働争議・労使関係

労使間に紛争が生じた場合、労働省や調停機関が介入し、話し合いによる解決を促す。

ストライキは合法とされるが、公共の安全や公共サービスに重大な影響を与える分野(公共交通、電力など)では制限がある。

労働組合は産業別や企業別に組織されており、賃金・労働条件の集団交渉を行う。

社会保険制度

公的年金制度(Contributory Pension Scheme)は、企業・従業員双方が一定割合(企業が 10%、従業員が 8% など)を拠出する仕組みとなっている。

企業規模や業種により、健康保険や労災保険への加入が義務付けられる場合がある。

企業は、法令で定められた期間内に適切な届出と拠出を行わなければならない。

休暇制度

有給休暇は労働法で最低日数が定められており、1 年間の継続勤務につき 6 日以上が原則とされる。ただし外資系企業や大手企業では自社規定を定め、より長い休暇を付与するケースが多い。

産休・育児休暇についても労働法に規定があり、女性労働者には一定期間の有給産休が認められる。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

一部の自由貿易区(Free Trade Zone)では、法人税や関税の減免措置、輸出入手続きの簡素化などが適用される。また、加工貿易を促進するためのインフラ(工業団地、電力供給など)も整備されている。

投資促進機関

ナイジェリア投資促進委員会(NIPC)は、外国投資家に対して投資情報の提供、各種許認可の手続き支援を行う。投資規模や業種に応じて、税制上の特典やインセンティブを受けられる場合がある。主要官庁との連携窓口としても機能し、事業拡大に際する追加登録やライセンス取得のサポートを提供する。

ビザ・労働許可

外国人がナイジェリアで就労するには、事前に企業が移民局へ労働許可の申請を行う必要がある。経営幹部や専門職が対象となる「Subject to Regularization (STR) ビザ」や、短期プロジェクト向けの「Temporary Work Permit (TWP)」など、滞在目的に応じてビザ種別が異なる。許可期間満了前に更新手続きを行わなければならない。

外貨規制

中央銀行が為替管理を行っており、正規の手続きを踏めば配当送金や投資元本の回収は原則自由である。

外国人投資家は資本輸入証明書(Certificate of Capital Importation)の取得を通じて、事業で得た利益や資金を本国へ送金できる。ただし、為替不足や規制強化による送金遅延が発生する場合があるため、十分な外貨準備と計画的なキャッシュマネジメントが重要である。

その他投資優遇策

投資促進委員会や産業貿易投資省が指定する重点産業(農業、ICT、製造業など)に対しては、一定期間の法人税免除(Pioneer Status)などの特典が与えられる制度がある。

適用を受けるためには詳細な事業計画書の提出や現地雇用の創出が必須であり、承認プロセスには時間を要する。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

法人設立後に商業銀行で口座を開設する場合、登記証明書、定款、納税者番号(TIN)、取締役の身分証明書などの書類が必要である。銀行によっては現地取締役の面談が必須となる。審査期間は通常数週間だが、提出資料に不備がある場合はさらに時間を要する。

現地借入・金利水準

ナイジェリアの金融機関は貸出金利が比較的高く、年率 10〜20% 程度が一般的である。信用リスクや担保状況に応じて金利は変動し、借入の際には土地・建物など不動産担保や社債発行による補完が求められる場合がある。

送金・為替サービス

大手銀行では外国送金や為替予約サービスを提供しており、事前に資金繰り計画を立てることで為替変動リスクを軽減できる。ただし、外貨不足の影響で送金が遅延するリスクがあり、企業は複数の金融機関を利用しながら流動性を確保する必要がある。

フィンテック動向

モバイル決済やオンライン融資サービスが都市部を中心に急速に普及しており、国内外の投資家がこの分野に注目している。電子ウォレットや QR コード決済などのサービスを提供するスタートアップ企業が増加し、銀行を介さない資金決済手段が拡大している。

資金調達の多様化

ナイジェリア証券取引所(NGX)への上場や社債発行など、公的マーケットを利用した調達手段が存在する。特に大規模プロジェクトやインフラ事業では、国際機関や開発銀行からの融資や保証枠を活用する例がある。

中小企業向けにはマイクロファイナンス銀行などが少額資金を提供しており、起業支援策として活用されている。

8. 文化・商習慣・その他リスク

汚職・賄賂リスク

汚職は依然として深刻な課題であり、一部の公的機関や業務過程で賄賂要求が生じるリスクがある。現地法令と企業コンプライアンス規定を順守し、違法行為を避けるための対策が必要である。

治安・政情リスク

地域によって治安状況が異なる。特に北東部では過激派によるテロ活動が懸念される。政情は比較的安定しているが、定期的に発生する民族や宗教対立に注意が必要である。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

競争優位性・課題

豊富な人口を背景に消費市場は拡大しつつあるが、インフラ整備の遅れや電力事情の不安定さが課題となる。ICT や農業関連技術など日本企業の強みを活かせる分野も多い。

手続き難易度

企業登録や税務手続きは電子化が進展しているが、実務上は提出書類や監査要件が多く、担当官との交渉に時間を要する場合がある。