アルジェリア民主人民共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

 

首都

首都:アルジェ

通貨・為替

通貨:アルジェリアン・ディナール(DZD)
為替:1 USD ≒ 132 DZD(2025/05 月平均)

経済指標

GDP:約2,636億ドル(2024年)
実質GDP成長率:3.3%(2024年)
一人当たりGNI:5,320ドル(2024年)
消費者物価上昇率:4.0%(2024年)
失業率:11.4%(2024年)
人口:約4,680万人(2024年)

主要産業は石油・天然ガス関連であり、輸出収入の大半を炭化水素資源が占める。

日本との関係

日本からの輸出:208.9億円(2024年)
日本への輸入:139.4億円(2024年)

日本は1962年の独立承認以降友好関係を築き、累計で有償資金協力約139億円・無償資金協力約14億円を供与(2023年度まで)。日本からは鉄鋼、機械、車両などを輸出し、アルジェリアからは液化天然ガス(LNG)や原油等のエネルギー資源を輸入する構造である。

日本企業にとってアルジェリアは大型プラント案件の市場であり、JGCや日揮などエンジニアリング企業が石油精製所や発電所建設に参加した実績がある。また近年は製薬や通信分野でも進出例があり、現地企業との合弁設立の動きもみられる。進出日本企業数は約15社(2025年時点)と限定的で、在留邦人も43名(2025年9月)と少数だが、両国政府間では経済連携対話や技術協力が継続している。

2. 法人設立制度

法人形態

アルジェリアで事業を行う場合、主な法人形態は有限責任会社(SARL)と株式会社(SPA)である。SARLは2名以上50名以下の出資者で設立する有限責任会社で、中小規模ビジネスに広く利用される(1名での設立も可能な一人有限会社制度あり)。株式会社(SPA)は7名以上の株主による大規模会社形態で、株式の譲渡性が高く将来的な公開も視野に入る。

その他、外国企業は現地支店(支店事務所)を開設して事業を行うことも可能であるが、支店は契約履行目的に限定されることが多い。また、営業行為を行わない駐在員事務所(リエゾンオフィス)の開設も認められている。

外資規制

外国資本の出資比率に関して、2020年財政法で規制が緩和され、現在は国家戦略分野に指定された業種のみ外資出資規制(49%上限)が維持されている。戦略分野とは石油・ガス開発、鉱業、金融・保険など政府が重要と認定する部門であり、それ以外の製造業・商業・サービス分野では100%外資出資の法人設立が可能である。

資本金要件

最低資本金要件
SARL:10万DZD(約75万円)
SPA非公開会社:100万DZD(約750万円)
SPA株式公開会社:500万DZD以上(約3750万円)

なおアルジェリアでは法人設立時に最低資本金額以上の払込証明を要するが、それ以外の一般業種で追加の資本要件はない。外資企業であっても資本金について内国企業と同等の扱いであり、事業規模に応じた資本準備が求められるのみである。

登記手続き

法人設立は公証人立会いのもと定款作成・署名することから始まる。商業登記(商業登記センターCNRC)への登録、定款要旨の官報公告、銀行での資本金払込証明取得が主な手続きである。

設立申請時には登記申請書、定款、公証人証書、出資払込証明、取締役の無犯罪証明等の書類を提出する。

近年、一括手続き窓口(ワンストップサービス)が整備されつつあり、通常は書類完備後2〜4週間程度で登記完了となる。もっとも官僚的手続きは依然多く、世界銀行「ビジネスのしやすさ指数」では190か国中157位(2020年)と低位にとどまる。

3. 税制度

法人税

法人所得税(IBS)標準税率:26%(2025年時点)
製造業優遇税率:19%
建設・公共事業・観光関連(旅行代理業除く)優遇税率:23%

税務年度は暦年(1〜12月)であり、決算終了後の翌年4月末までに法人税申告が必要。税額が確定した法人税の納付期限は毎年5月20日までである。

さらにアルジェリア特有の税として一部のパイプライン・炭化水素関連や鉱業など特定分野に限定して事業活動税(TAP)があり、売上高に対し一律2%が課税される(経費算入可)。

そのほか雇用者側に社会保障拠出金の負担があり、雇用主拠出分は賃金の26%、従業員拠出分9%である(2025年時点)。

配当金には15%、利子には10%の源泉徴収税が課せられる。

一方、海外から支店・PEを通じてサービス提供を行う非居住者に対しては、役務支払時に総額の30%の源泉徴収(内訳:法人税+TAP+VAT相当額を包含)が義務付けられており、租税条約のない国の外国法人サービス提供時には特に留意が必要である。

付加価値税(VAT)

付加価値税(TVA)標準税率:19%

食品や医薬品等に広く適用される軽減税率はなく、基本的に全商品・サービスが19%課税の対象となる。ただし一部に特別軽減税率9%が設定されており、電気・ガス(一定用量以下)、ホテル・観光サービス、映画館興行、リサイクル原材料取引など限定的な品目・サービスが9%対象となっている。

VATは月次または四半期次で納税申告を行い、売上VATから仕入VATを控除する仕入税額控除方式。外国企業がアルジェリア国内でVAT課税売上を行う場合は、現地でのVAT登録が必要になる。

個人所得税

個人所得税(PIT)は累進課税で、年収240,000 DZDまでが非課税、これを超える部分に対し5段階で税率が上がる。課税率は年収区分ごとに約23%・27%・30%・33%と上昇し、年収3,840,001 DZD超の部分に最高税率35%が適用される(2024年時点)。

給与所得については源泉徴収(PAYE)が義務付けられ、雇用主が毎月の給与支払時に天引き納税する。なお非居住者の個人所得には20%の定率課税が基本となる(租税条約により軽減される場合あり)。

その他の税金

資産課税として、一定額以上の純資産に対し富裕税(Net Wealth Tax)が最大1%が課される制度がある。また不動産には保有税(年間不動産税)が立地や評価額に応じて課税される。印紙税も各種行政サービスや契約書に対して定額・定率で発生する。

外国税額控除や投資インセンティブとして、新規投資プロジェクトに対する一定期間の法人税・VAT免税措置などが投資法に基づき存在する(後述の投資優遇制度参照)。

4. 会計・監査制度

会計基準

アルジェリアの会計基準「財務会計システム(SCF)」は国際財務報告基準(IFRS)の影響を強く受けつつ、一部フランス会計制度(勘定科目体系など)の流れを汲むローカルGAAPである。

すべての法人企業はSCFに従って記帳・財務諸表作成を行う義務があり、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書および注記類を含む決算書一式を作成する。上場企業や銀行など一部業種では規制当局がIFRS準拠の報告を求めるケースもあるが、一般事業会社ではSCFが適用基準となる。

帳簿はフランス語またはアラビア語で備え付け、取引証憑とともに10年間の保存義務がある。

監査要件

アルジェリアの会社法では一定規模以上の企業に対して法定監査人の選任を義務付けている。株式会社(SPA)は規模に関係なく少なくとも1名の公認会計士を監査人として株主総会で任命しなければならない。有限会社(SARL)についても資本金や売上高・従業員数が所定の基準を超える場合は監査人の選任が必要とされる。

監査人はアルジェリア公認会計士協会などに登録された有資格者でなければならず、任期は3年間で再任可である。

監査済み財務諸表および取締役会の事業報告は毎事業年度末後に作成され、6月30日までに定時株主総会で承認される必要がある(会計年度は通常1〜12月)。

登録要件

公認会計士・監査法人として監査業務を行うには、アルジェリアの職業会計士団体への登録と当局からの認可が必要である。海外資格の会計士が監査業務を行う場合、現地有資格者との提携や資格承認手続きが求められる。

税務に関しても、税理士制度があり、税務代理業務は登録税理士が行える。企業としては特段の登録義務はないが、年次決算終了後に税務当局への決算書提出義務があるため、会計監査人や税理士を通じた対応が実務上必須となる。

財務諸表の提出

会社は毎年度の財務諸表を監査人の監査を経て確定させた後、税務当局および商業登記当局へ提出する義務がある。税務申告の一環として確定財務諸表一式(貸借対照表・PL・CF計算書・附属明細)を所轄税務署に提出しなければならない。提出期限は法人税申告期限と同じく翌年4月末である。

また商業登記簿(CNRC)にも年次財務諸表を備え付けることが求められ、一般に事業年度終了後6か月以内に登記当局へ写しを届け出る。

5. 労務制度

雇用契約

契約形態は期間の定めのない無期雇用が原則で、業務の一時的な増加や季節労働、正社員の臨時代替など正当な事由がある場合のみ有期契約(CDD)が認められる。有期契約の乱用は法律で制限されており、同一労働者との有期契約の更新回数や契約期間の上限が定められている。

試用期間は職種により1〜6か月程度設定可能である。

解雇・退職に関して、使用者・労働者いずれからも契約解消は可能だが、不当解雇の防止規定があり、原則として正当な理由なく従業員を解雇することはできない(重大な背任行為などを除く)。解雇時には事前予告通知が必要で、勤続年数に応じて通知期間が延長される。

勤続2年以上の労働者には所定の退職金支払い義務も生じる。退職金額は勤続年に応じた給与〇ヶ月分という形で定められており、違法解雇と認定された場合には更なる補償金が科される場合がある。

最低賃金

法定最低賃金(SNMG):月額20,000 DZD(週40時間労働の総額賃金、2024年時点)

最低賃金は社会保障拠出後の手取額ベースで設定され、地域や年齢による差はない。賞与や手当は法律上義務ではないが、一般に業績連動のボーナス制度を採用する企業が多い。

労働時間

所定労働時間:週40時間(1日8時間・週5日勤務)

多くの企業で金曜日が休日(日曜は平日扱い)となるイスラム圏独自のカレンダーだが、土日休業とする企業も増えている。危険有害業務に従事する労働者については法定労働時間が短縮される場合があり、逆に監視業務など一部の職種では不活発な待機時間を含む特殊な勤務形態として週労働時間を延長できる場合もある。

時間外労働(残業)は原則として所定労働時間の20%を超えて行わせることは禁止されており、最大でも通常時間の120%(週48時間相当)までに制限される。残業代は通常賃金の○割増(法定割増率は平日残業で+50%、休日労働で+100%等)で支給しなければならない。

年次有給休暇は勤続1年で30日の権利が発生し、以降勤続年数により日数が加算される。女性労働者には14週間の出産休暇が保障される。

解雇・退職

上述の通り解雇には正当事由と予告期間の遵守が要求される。人員整理など経済的理由による解雇(整理解雇)の場合は、労働監督官への事前通告や労働組合との協議が必要となる。

不当解雇と認定された場合、労働審判所は解雇無効と賃金相当額の補償を命じ得る。自己都合退職の場合、労働者側からも所定の通知期間(通常1〜3か月程度)をもって退職届を提出する必要がある。

定年は一般的に60歳前後だが、法令上明確な全国統一の定年規定はなく、各企業や公務部門の規定による。公的年金の受給開始年齢は男性60歳・女性55歳(勤続年数要件あり)となっている。

労働争議・労使関係

アルジェリアでは労働組合の結成が認められており、最大のナショナルセンターはアルジェリア労働総同盟(UGTA)である。

労使紛争が生じた場合、まず労働監督官(労働局)による調停が図られ、それでも解決しない場合に労働審判所での裁定に進む仕組みである。合法的なストライキは労組が一定手続きを経て通告すれば実施可能であり、公営企業や教育・医療部門でストが起こることもある。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

2022年の新投資法で一定地域における税関・税制優遇を認める制度の整備が謳われ、現在沿岸部や国境付近での工業団地をSEZ化する計画が検討されている。また新投資法の下で、「国内経済に特別の利益をもたらす投資プロジェクト」に対しては法人税・VAT・関税を最長10年間免除するなど強力なインセンティブ措置が用意されている。

これら優遇適用を受けるには事前に当局(投資委員会)の承認を得て、政府との間で投資協定を締結する必要がある。

投資促進機関

2022年、新たにアルジェリア投資促進庁(AAPI)が設立された。AAPI内には特に「大型投資・外国投資専用」の一窓サービスが設置され、会社設立や各種許認可取得手続きをまとめて支援する枠組みが整備された。

また投資環境整備として、投資家の不服申立てを受け付ける投資高等評議会も新設され、行政手続の簡素化や投資家権益保護を図っている。

ビザ・労働許可

日本人を含む外国人がアルジェリアで駐在員として勤務するには、長期滞在ビザと就労許可(労働許可証)の両方が必要となる。長期ビザ(査証)は駐日アルジェリア大使館で予め取得し、入国後に現地で滞在許可証(居住証)の発給を受ける手順となる。就労許可はアルジェリア労働・雇用・社会保障省の管轄で、現地雇用主を通じて申請する。

雇用主は労働局に対し、外国人を雇用する理由(当該ポストに適任のアルジェリア人がいない等)を説明し、労働契約書や学歴・職歴証明を添えて許可を申請する必要がある。許可の有効期間は一般に1年で、更新可能である。また駐在員の帯同家族も居住許可(家族ビザ)が必要となる。

外貨規制

アルジェリア・ディナール(DZD)は国外持ち出しや他通貨との両替に制限がある管理通貨である。外国企業が利益送金(配当送金)や資本送金を行う場合、事前に税務申告を済ませ納税証明を取得した上で、商業銀行を通じて中央銀行の許可を得る必要がある。法律上、外国投資家には純利益の本国送金自由が保証されている。

また輸入代金決済については銀行での取引承認(ドミシリエーション)制度があり、一般に信用状(L/C)決済または前払送金に際して所轄銀行の審査を経る。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

主要行は国営のアルジェリア外貿易銀行(BEA)や国民貯蓄銀行(CNEP)などがあるほか、フランス系のBNPパリバやソシエテ・ジェネラルなど外国銀行も現地法人を有する。

口座開設には商業登記簿謄本、税務登録証明、会社定款、代表者ID、住所証明等の書類提出が求められる。全ての書類がフランス語またはアラビア語で揃っていることを確認し、不備がなければ1〜2週間程度で口座開設が完了する。

現地借入・金利水準

アルジェリアの金融市場は国営銀行が与信供給の中心を占めており、民間企業が融資を受ける際も政府系銀行からの借入が主流である。貸出金利は政策金利(現在2.75%)に基づき決定され、一般企業向けローン金利は年利7〜9%程度が相場(2025年)である。

日本企業が現地で長期投資を行う際、プロジェクトファイナンスや輸出信用を活用できる場合もある。

送金・為替サービス

国際送金は銀行経由が基本であり、SWIFTネットワークを通じた電信送金が一般的である。

個人の海外送金については年間制限額があり、学費送金や家族送金目的で一定額まで許可される仕組みである。

外貨の入手は中央銀行の管理下にあり、企業が輸入決済や配当送金で大量の外貨を調達する際、国内の銀行から中央銀行への買付申請が行われる。

フィンテック動向

近年、政府が「Vision 2030」のもとデジタル金融を推進し始め、銀行以外の決済サービスプロバイダを許可する法改正が行われた(2021年)。これによりモバイル決済や電子ウォレットの新興企業が登場しつつある。

国営のアルジェリア郵便(Algerie Poste)も電子マネー機能付きカード「Edahabia」を普及させ金融包摂に貢献している。

とはいえ全体としては金融サービスへのアクセスがMENA地域でも低水準で、政府によるフィンテック支援体制も緒に就いたばかりである。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

アルジェリアのビジネスにおいては、形式的な契約書を交わしても、実際の履行段階では状況変化や慣習を理由に条件交渉が続く場合がある。特に官公需や公共事業では、契約後に仕様変更や納期延長が発生しやすいため、柔軟な対応が求められる。

一方で正式な契約書(フランス語またはアラビア語)の取り交わしは法的紛争時の拠り所となるため必須であり、契約条件は詳細に詰めて文書化することが重要である。

汚職・賄賂リスク

アルジェリアでは汚職防止法制が存在し、高官の収賄などに厳しい罰則規定があるものの、依然として役所での許認可取得や公共調達などで腐敗のリスクが指摘されている。2023年の腐敗認識指数(CPI)においてアルジェリアは180か国中104位・スコア36と低く、賄賂慣行が根強いことを示している。

公共調達制度も電子入札の導入など透明化が図られている。

治安・政情リスク

現在、都市部の日常治安は比較的良好で、殺人発生率などは低い水準にある。外国人・駐在員に対する直接的なテロの危険性は限定的だが、国境付近(マリ・リビア側)やサハラ砂漠の一部地域は無政府状態の周辺国情勢の影響で渡航禁止となっている。

政治面では2019年に大規模デモ「ヒラク」により長期政権が崩壊し、その後選挙で就任したテブン大統領の下で一定の安定を保っている。ただ政権基盤は磐石ではなく、2024年大統領選でも野党不参加のまま再選されるなど民主化途上の側面もある。

パートナー関係構築の留意点

ビジネス上のコミュニケーション言語はフランス語が主であり、意思疎通にはフランス語堪能なスタッフを配置するか通訳を介する必要がある。

宗教・文化面では住民の大半がイスラム教徒であり、ラマダン月の勤務時間短縮や金曜礼拝などイスラム習慣への理解が求められる。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

進出日本企業:15社(2025年現在)
進出分野:エネルギー、プラント建設、インフラ、商社取引など

また近年、トヨタ自動車が現地企業との合弁で組立工場設立を検討するなど製造業にも機運がみられる。住友商事はアルジェリア国営通信との提携で通信インフラ案件に関与し、塩野義製薬は現地製薬会社とのライセンス契約を結ぶなど、新分野への進出例も出ている。

競争優位性・課題

アルジェリア市場の魅力は、まず豊富な天然資源収入による政府資金力とインフラ需要の大きさである。人口規模も北アフリカ最大級で一人当たり所得は5千ドル超と、中東アフリカ地域では購買力が比較的高い。

一方、課題としては行政手続の煩雑さや投資規制の不確実性が挙げられる。例えば突然の輸入規制変更(車輌輸入禁止措置など過去に例あり)や、外貨不足時の送金遅延など、公権力による経済統制リスクは無視できない。

また製造業基盤が脆弱なため現地調達が難しく、原材料や部品の多くを輸入に頼る必要がある点もコスト増要因となる。

労働面では大卒人材が豊富で技術者の質は比較的高いものの、官僚文化の影響で民間ビジネス経験に乏しい人材も多い。加えて企業間競争においては旧宗主国フランスや近年台頭する中国企業が有利なポジションを築いており、日本企業は知名度やネットワークで後れを取る場面もある。

手続き難易度

アルジェリアで事業を始めるには行政手続きのハードルが高く、世界銀行によるビジネス環境評価では「開業」「建設許可」「輸出入」「納税」など多数の分野で下位に位置していた。

もっとも政府は投資誘致のため規制緩和と電子化を進めており、例えば2021年には企業設立資本金要件の撤廃やオンライン納税システムの導入が図られた。

専門家ネットワーク

・在アルジェリア日本国大使館
・JETRO(日本貿易振興機構)

また「アルジェリア日本ビジネス協議会」や日系企業連絡会といった非公式ネットワークも存在し、安全対策や労務管理の情報交換が行われている。

現地専門家では、四大会計事務所(PwCやKPMGなど)がアルジェに拠点を構え税務・法務アドバイザリーサービスを提供しているほか、フランス系の法律事務所やコンサル会社がビザ取得代行や許認可取得支援を請け負っている。

カメルーン共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

首都

首都:ヤウンデ
公用語:フランス語、英語

通貨・為替

通貨:CFAフラン(XAF)
為替:1EUR=655.957XAF、1USD=590XAF

経済指標

人口:約2,900万人(2024年)
GDP規模:約510億米ドル(2024年)
実質GDP成長率:約3.5%(2024年)
一人当たりGDP:約1,737米ドル(2023年)
主要産業:原油・天然ガス、農産品(ココア、コーヒー等)、林業、鉱業
インフレ率:4〜6%程度

日本との関係

日本への輸出:約11億円(アルミニウム地金等)(2022年)
日本からの輸入:約49億円(機械類・車両等)(2022年)

1960年の独立時に日本と国交樹立。日本のODAにより道路整備や農業開発などが支援されている。

2. 法人設立制度

法人形態

OHADA統一商法に基づき、主な法人形態は株式会社(SA)と有限会社(SARL)である。他に現地支店や駐在員事務所の設置も可能である。

外資規制

原則外資100%出資の会社設立が認められており、外資規制は緩やかである。特定の戦略分野(石油・鉱業など)では事前許可や現地企業との提携条件が課される場合がある。土地の所有は外資に制限があり、長期リースで対応する例が多い。

資本金要件

SARLは事実上最低資本金なしで設立可能。SA(公開会社)は約1,000万XAFの最低資本金が必要とされる。2014年のOHADA改正で要件が緩和され、小規模企業では象徴的な金額で会社設立が可能となっている。

登記手続き

設立手続きは企業登記センター(CFCE)で一括処理される。必要書類を揃えて申請すれば、標準で約1週間で法人登記が完了する。

3. 税制度

法人税

基本税率:30%(地方税加算後の実効税率33%)

一部中小企業には27.5%の軽減税率が認められる。赤字の場合でも最低税(年間売上高の2.2〜5.5%)の納付が必要である。

付加価値税(VAT)

標準税率:19.25%

一部生活必需品に軽減税率・免税措置あり。

個人所得税

個人の給与所得は累進課税(最高税率38.5%)で課される。その他の事業所得等には定率で約33%が適用される。

その他の税金

配当・利子・使用料などには源泉徴収税(約16.5%)が課税される。この他、不動産に対する固定資産税(評価額の0.1%)、事業ライセンス税(売上規模に応じ年額課税)、印紙税・登録税、酒・たばこ等への物品税など各種間接税が存在する。

4. 会計・監査制度

会計基準

カメルーンではOHADAの統一会計制度(SYSCOHADA)が採用されている。上場企業や資本市場調達企業は2019年以降IFRS(国際財務報告基準)の適用が義務付けられており、それ以外の企業はSYSCOHADA基準で財務諸表を作成する。

監査要件

すべての株式会社(SA)は法定監査人(コミサール・オ・コント)の選任が義務である。有限会社(SARL)や簡易株式会社(SAS)も、一定規模以上(資産・売上・従業員数が所定基準超)の場合には監査人を置き監査を受ける必要がある。

登録要件

監査人や公認会計士として業務を行うには、カメルーン公認会計士協会(ONECCA)への登録が必要である。

財務諸表の提出

企業は毎決算年度終了後、財務諸表を商業登記所および税務当局へ決算期末から4ヶ月以内に提出する義務がある。大規模企業では監査済み財務諸表の提出が求められる。

5. 労務制度

雇用契約

労働契約は原則書面で締結し、雇用形態や賃金、業務内容を明示する必要がある。試用期間は最長6ヶ月まで設定可能である。

最低賃金

法定最低賃金:月額43,969 XAF(約76米ドル)(2024年2月時点)

労働時間

法定週労働時間:40時間(1日8時間

週20時間以内の時間外労働が許容され、割増賃金の支払いが義務付けられる。

解雇・退職

無期雇用契約の解雇には正当理由が必要で、勤続年数に応じた予告期間(最大4ヶ月)が定められている。企業都合による解雇では勤続年数に応じた退職手当(例:勤続1年あたり月給の20%など)を支払う必要がある。

労働争議・労使関係

労働者は労組結成と団体交渉の権利を有する。ストライキには事前予告などの手続き義務がある。労使紛争は労働監督官の調停や労働裁判所で解決が図られる。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

輸出志向企業向けに自由貿易区制度があり、初期10年間の法人税免除等の税制優遇が提供される。また投資促進法に基づき、一定の新規投資には関税・法人税の減免措置が適用される。

投資促進機関

投資促進庁(API)が投資関連手続のワンストップ窓口となっており、優遇措置申請の受け付けも行う。

ビザ・労働許可

外国人が就労するには就労ビザと労働許可が必要であり、企業が労働省に許可申請を行う。入国後は居住許可証の取得も必要となる。

外貨規制

CEMAC共通の外為規制により、輸出代金の一定割合を所定期間内に本国送金する義務がある。海外送金や資本移動の際には中央銀行(BEAC)の許可や申告が必要となり、配当送金・投資資金の撤収も納税証明の提出と認可取得を要する。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

法人名義の銀行口座開設には登記証明書、納税者番号証明、代表者IDなどを銀行に提出する。KYC審査を経るため開設完了まで通常1週間程度を要する。

現地借入・金利水準

中央銀行政策金利:5.0%(2025年)
商業銀行の平均貸出金利:約8%(中小企業向けは更に高金利)

銀行融資は大企業に偏重し、中小企業の資金調達難が課題となっている。

送金・為替サービス

国際送金は銀行経由のSWIFT送金が主流であり、契約書や請求書の提示が求められる。為替はユーロ連動で安定しているが、高額送金には中央銀行の事前許可が必要となる。個人送金にはWestern Unionやモバイル送金サービスも利用される。

フィンテック動向

モバイルマネーが普及し、2023年時点で国内に約1,066万のアクティブ利用者がいる。電気料金や税金の支払いにも活用され、金融包摂が拡大している。政府は決済サービスの規制整備を進めており、フィンテック企業の台頭も続いている。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

契約は法的拘束力を持つが、履行遅延や債務不履行も発生し得る。裁判による解決は長期化しがちであるため、契約時に担保や違約金条項を設定することが望ましい。信頼関係の醸成も重視され、定期的な意思疎通が取引の円滑化に寄与する。

汚職・賄賂リスク

行政手続や取引に汚職のリスクが伴い、許認可取得や税務調査の場面で非公式な支払いを求められるケースがある。企業は贈賄を排除する社内コンプライアンスを徹底する必要がある。

治安・政情リスク

長期政権下で政治的安定は維持されているが、英語圏の北西・南西州では分離独立問題から武力紛争が続く。また極北州では過激派によるテロの懸念がある。主要都市は概ね安定しているものの、都市犯罪には警戒を要する。

パートナー関係構築の留意点

ビジネスではフランス語が主に使用され、英語圏では英語対応が必要となる。商工会議所や業界団体でのネットワーキングも有益である。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

日系企業の現地法人進出は少ない。日本製自動車や二輪車の販売代理店は存在するが、製造業などの大規模進出例は限定的である。政府開発援助(ODA)や技術協力を通じた潜在市場の育成が図られている段階である。

競争優位性・課題

カメルーンは中部アフリカの地理的要衝に位置し、ドゥアラ港を有する物流拠点かつ域内最大の市場である。インフラ水準も周辺国より整っている。

他方、官僚的な手続の煩雑さや汚職、物流コストの高さ、行政の非効率といった課題がビジネス上の障壁となる。

手続き難易度

企業設立や許認可に要する時間と労力は大きく、ビジネス環境ランキングでも下位に位置する。近年ワンストップ窓口整備や電子化が進むものの、進出に際しては現地専門家の支援を受け煩雑な手続きを乗り切ることが重要である。

専門家ネットワーク

・在カメルーン日本大使館
・JETRO

国内には国際系の会計事務所や法律事務所が存在し、進出時の相談が可能である。フランス語対応できる人材や通訳を確保し、専門家ネットワークを活用することで円滑な事業運営につながる。

ケニア共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

1. 国家基本情報

首都

首都:ナイロビ

通貨・為替

通貨:ケニア・シリング (KES)
為替:1 USD = 約129.3ケニア・シリング(2025/05月平均)

経済指標

人口:約5,643万人(2024年)
名目GDP:約1,245億USD(2024年)
一人当たりGDP:約2,206USD(2024年)
実質GDP成長率:4.7%(2024年推定)
消費者物価上昇率:4.5%(2024年)

日本との関係

日本からの輸入:1,531億円
日本への輸出:125億円

日本からの直接投資額は年間約15億円(2023年)。

日系企業拠点数:118拠点(2023年10月現在)
在留邦人数:826人(2024年10月現在)

ケニアはサブサハラ・アフリカで日本の政府開発援助(ODA)最大の受取国となっており、インフラ開発や人材育成など幅広い分野で日本の支援が行われている。

2. 法人設立制度

法人形態

外国企業がケニアで事業を行う場合、「現地法人(有限責任会社)」を設立するか、外国会社の「支店」として登記するのが一般的である。ケニアの株式会社(Company Limited by Shares)は非公開の私会社(Private Company)と公開会社(Public Company)に分かれ、私会社は株主1名での設立が可能(外国人100%出資も可)である。

支店は外国会社と同一の法人格のまま現地で事業活動を行う形態で、駐在員事務所(連絡事務所)の制度は現在存在しない。

外資規制

原則として外資による100%出資が認められており、一般業種の会社設立に現地資本参加義務はない。ただし特定の業種では外資比率に制限が設けられている。例として通信業では外資出資比率の上限80%、保険業では現地役員の選任義務等があり、航空業ではケニア国籍資本の過半出資(51%以上)が必要と定められている。

また外国人による土地所有は制限されており、外国人や外資系法人は土地の所有権を取得できず最長99年のリース(借地権)の形でのみ利用が許される。

資本金要件

一般的な有限責任会社について法定の最低資本金規制はなく、1株から会社を設立できる。非公開会社に最低払込資本の要件はないが、公開会社(上場企業)は約675万ケニア・シリング以上の払込資本を有することが要求されるなど、特定の場合に最低資本要件が存在する。

規制業種でも個別法で資本要件が設定されている場合がある。

登記手続き

現地法人および支店の設立登記は政府のオンライン窓口「eCitizen」を通じて行う(登記完了まで通常1~2か月)。まず社名を3案以上申請して使用可能性を確認・予約する。次に会社情報(事業目的、定款内容、取締役・株主情報等)をオンライン入力し、登録手数料を納付する(現地法人は10,650 KSh、支店は7,550 KSh)。

申請フォームの署名・提出後、問題がなければ提出から約2週間で現地法人には設立証明書、支店には適合証明書が発行される。登記後は法人の納税者識別番号 (PIN) 登録、労働者社会保険(NSSF)や国民医療保険(NHIF)への加入、必要な業種別ライセンスの取得なども行う必要がある。

3. 税制度

法人税

法人税率:30%

課税対象はケニア国内で発生した所得に限定される。

税制上、輸出促進や投資誘致のための優遇措置があり、輸出加工区 (EPZ) 企業は操業開始後10年間法人税免除(11~20年目は25%、以降30%)となる。また特別経済区 (SEZ) 指定を受けた企業は最初の10年間法人税率10%、次の10年間15%とされる特別税率が適用される。

その他にも大規模投資に対する初年度100%減価償却など各種の投資減税措置が用意されている。

付加価値税(VAT)

付加価値税の標準税率:16%

輸出取引や一部の生活必需品・農産品には税率0%(ゼロ税率)が適用され、医療・教育など特定のサービスは非課税とされている。

VAT課税事業者はケニア歳入庁 (KRA) に登録し、原則として毎月VAT申告・納付を行う義務がある。

個人所得税

個人所得税は累進課税であり、課税所得額に応じて5段階の税率(10%、25%、30%、32.5%、35%)が適用される(最高税率35%は年間約960万KSh超部分に適用、2023年法改正)。

給与所得者の場合、所得税は源泉徴収 (PAYE) により毎月控除・納付される。個人は基礎控除として月額2,400 KShの個人税額控除が適用され、また年金積立への拠出など一定の控除制度も設けられている。

その他の税金

配当・利子・ロイヤルティ等の対価を非居住者に支払う際には源泉徴収税が課される(非居住者配当15%、利子15%、ロイヤルティ20%が標準税率)。

不動産や株式の譲渡益にはキャピタルゲイン税15%が適用され、譲渡所得に対する最終課税となる。不動産売買には別途印紙税(都市部で物件価格の4%、その他地域で2%)が課される。

また特定の商品・サービスには物品税(エクサイズ)が課せられており、例えば燃料、酒類、タバコ、金融サービスなどが対象である。さらに雇用者は給与支払い時に社会保険料として国民社会保障基金 (NSSF) への拠出や国民医療保険 (NHIF) 保険料の控除を行う義務がある。

4. 会計・監査制度

会計基準

ケニアでは国際財務報告基準 (IFRS) が会計基準として採用されている。公開市場から資金調達を行う企業(上場企業や銀行など)はフルIFRSの適用が義務付けられ、その他の企業については簡易版であるIFRS for SMEs(中小企業向け会計基準)の使用が認められている(希望すればフルIFRSを適用することも可能)。

会計士・監査人は1978年設立のケニア公認会計士協会 (ICPAK) によって資格付与・規制されており、国際基準に準拠した職業倫理と専門基準の遵守が求められる。

監査要件

原則として全ての株式会社は各事業年度ごとに財務諸表について公認会計士による外部監査を受ける義務がある。もっとも会社法により、休眠会社および一定の小規模会社については監査義務の免除規定が設けられている。

小規模会社とみなされる条件は会社法で定められており、一例として当該年度の売上高が5000万KSh以下かつ期末純資産が2000万KSh以下であること等が挙げられる(その他に株主数や親子会社関係に関する条件あり)。この要件を満たす場合、その年度の財務諸表について監査を省略できる。

登録要件

会社法上、一定規模以上の会社には有資格の会社秘書役(カンパニー・セクレタリー)を置く義務がある。公開会社(上場企業)は常に公認秘書 (Certified Public Secretary) の資格を持つ会社秘書を選任しなければならず、非公開会社でも払込資本が500万KSh以上の場合は有資格秘書役の設置が法定義務となる。

会社秘書役資格はケニア公認秘書協会 (ICPSK) により付与・管理されている。また前述の通り監査人についてもICPAKへの登録が必要である。

財務諸表の提出

ケニアでは事業年度終了後に各社が年次の定時株主総会を開催し財務諸表の承認を受ける。上場企業など公益性の高い企業は監査済み財務諸表を当局(資本市場機構や会社登記局)へ提出する義務があり、投資家にも開示される。

非公開の有限会社については毎年、会社登記局へ年次報告(Annual Return)を提出する際に基本的な財務情報を届け出る必要がある。ただし小規模私企業については詳細な財務諸表の提出は実務上省略される場合が多い。

また外国企業の支店は毎事業年度、本社の監査済財務諸表を会社登記局に提出する法的義務があり、支店の現地活動報告とあわせて登録維持手続きを行う。

5. 労務制度

雇用契約

ケニアの雇用法は、継続勤務3か月を超える労働者に対し書面の雇用契約書を交付することを義務付けている。

一般に常用(期間の定めのない)雇用契約と有期契約があり、試用期間は最長6か月まで設定可能である(労働者の書面同意により一回限り最大6か月延長可)。試用期間中も含め、最低賃金や労働時間など基本的な労働条件は法律によって保護される。

また契約終了時の手続きや権利義務についても法律で規定されており、口頭のみの解雇通告や即時解雇は許されない。

最低賃金

ケニアには職種や技能レベル、勤務地域に応じた法定最低賃金が定められている。2024年11月発効の最新改定最低賃金では、未熟練労働者(一般労働者)の都市部における最低月額賃金が16,113.75KSh(住宅手当別)と規定された。

職種ごとに細かい基準額が設定されており、例えば警備員や運転手など技能を要する職種では更に高い最低賃金が適用される。

なお雇用主は労働者に住居を提供しない場合、給与と別に住宅手当を支給する法的義務がある。

労働時間

所定労働時間:週48時間(1日8時間×週6日)程度

法定では週休1日が最低保証され、賃金規則上は通常の勤務時間は昼間労働で週52時間以内、夜間労働で週60時間以内とされている。時間外労働(残業)は週平均で6時間以内に制限され、2週間の合計労働時間は通常116時間、夜間労働者は144時間を超えてはならないと規定されている。

残業代は法定割増率が適用され、平日の時間外は通常賃金の1.5倍、週末・祝日の勤務は2倍の率で支払わねばならない。

解雇・退職

解雇に際して使用者は事前に解雇理由を本人に通知し、弁明の機会を与えなければならない。解雇理由は勤務成績不良、規律違反、経営上の必要(業績悪化による人員整理)など合理的なものであることが求められる。法定の解雇予告期間は勤務期間や賃金形態に応じて異なるが、月給制労働者の場合少なくとも30日以上前の予告が必要となる(予告期間未満で解雇する場合はその期間分の給与を支払う義務がある)。

整理解雇(レイオフ)を行う際には労働局および労働組合(ある場合)への事前通告と協議が義務付けられ、対象者の選定基準も公正でなければならない。整理解雇された労働者には勤続年数に応じた退職手当として1年につき15日分以上の給与相当額を支払うことが法定されている。

なお民間企業の定年は法律で一律には定められていないが、一般的に公的セクターでは60歳前後が退職年齢の目安となっている。

労働争議・労使関係

労働者には憲法により団結権・団体交渉権・団体行動権が保障されており、主要産業には労働組合が組織されている。合法的なストライキを行うには争議行為の7日前までに書面で予告する必要があり、さらに事前に調停手続きを経ることが求められる。こうした手続きを踏んだ上での争議行為は労働法で保護される。

一方、無許可の突然のストライキ(ワイルドキャット・ストライキ)は違法となり、指導者には解雇や損害賠償請求など厳しい措置がとられ得る。労働紛争の裁定は労使関係裁判所(雇用労働関係裁判所)が扱い、不当解雇と認定された場合には労働者に最大12か月分の賃金の補償命令が出されることもある。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

ケニア政府は輸出振興と外資誘致のため特別経済区(SEZ)や輸出加工区(EPZ)の制度を設けている。指定区域に進出し認可を受けた企業には各種税制優遇措置が与えられる。

例えばEPZ企業は初年度から10年間法人税が免除され、輸出向け製品の原材料・機械設備の輸入に対し関税やVATが免除される。

SEZ企業も10年間は法人税率10%(通常30%)、次の10年は15%に軽減されるほか、SEZ内での付加価値活動に係るVATや印紙税が免除される優遇がある。

さらにナイロビ国際金融センター (NIFC) 法に基づき登録された金融企業には、認定から10年間法人税15%の特別税率や金融規制のサンドボックス適用などのメリットが提供される。

投資促進機関

外国企業の投資ワンストップ窓口としてケニア投資庁 (KenInvest) が設置されている。KenInvestは投資許可証の発給、事業設立手続きのガイド、税関・移民局など関係当局との調整を支援し、投資家への各種サービスを提供する。

また輸出加工区庁 (EPZA) や特別経済区庁など政府機関が特定分野の投資案件を所管している。大型プロジェクトについては政府が閣僚級で構成する投資委員会を設け個別案件をフォローする仕組みもある。

ビザ・労働許可

ケニアで90日を超えて滞在・就労する外国人は、事前にケニア政府から労働許可(Work Permit)を取得しなければならない。就労許可は活動内容により種類が分かれており、一般駐在員はクラスD(現地雇用の専門職)、現地法人の投資家・役員はクラスG(事業投資)などに該当する。クラスDでは雇用主が当該ポストにケニア人では代替できない理由を示す必要があり、クラスGでは最低10万USD相当の出資が条件となっている。

また外国人が一時的に就労する場合、90日以内であれば短期就労許可(Special Pass)を取得して業務に従事することが可能である。

外貨規制

ケニアでは外国からの資金持込や利益送金に対する厳格な外為規制は設けられていない。企業は国内銀行に外貨預金口座を開設でき、事業収益を外貨で保持することも可能である。

外国人投資家が現地企業から受け取る配当金や撤退時に回収する資本も、関連税金を納付した上で自由に海外送金できる。ただし中央銀行 (CBK) はマネーロンダリング防止の観点から一度に10,000 USD相当を超える送金時には送金目的などの申告と裏付け書類の提出を義務付けている。

また輸出代金については一定期間内に国内に持ち戻ることが求められる(外貨建てで国外に留保することは不可)。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

ケニアで法人の銀行口座を開設するには各銀行が定めるKYC(顧客確認)書類を提出する必要がある。一般的には会社の設立証明書、定款および株主・役員名簿、会社の納税者識別証明書、取締役会決議書、ならびに口座署名者となる担当者の身分証明書(パスポート等)が求められる。

口座開設には数日から数週間程度を要し、開設される口座は通常ケニア・シリング建ての当座預金口座である(必要に応じてUSD・EURなど外貨口座も併せて開設可能)。

現地借入・金利水準

ケニア国内での銀行融資金利は高水準で、2025年現在、企業向け貸出金利は年利12~15%前後が一般的である(中央銀行政策金利は10.5%、2025年)。

金利は市場原理に委ねられているが、インフレ圧力等により商業金利は二桁台で推移している。

送金・為替サービス

国内送金は銀行振込のほか、携帯電話を活用したモバイル送金が広く利用されている。企業間取引では銀行振込が主流であり、オンラインバンキングにより当日~翌日中に送金が完了する。

国際送金については、各商業銀行がSWIFTを利用した外国送金サービスを提供している。

為替取引は銀行を通じて行い、必要に応じて銀行とフォワード契約(為替予約)を結ぶこともできる。

なお、国内では外貨の持ち込み・持ち出しに10万USD相当額以上の場合の申告義務があるものの、それ以下の旅行者程度の額であれば制限なく持ち運びできる。

フィンテック動向

ケニアは「シリコン・サバンナ」と称されるほどフィンテック産業が盛んな国である。携帯電話ベースの送金サービスM-Pesaは2007年に世界に先駆けて商用化され、2020年代には成人の大半がモバイルマネー口座を保有するまでに普及した。これにより金融包摂が飛躍的に進み、地方住民でも貯蓄・送金・決済が容易になっている。

ナイロビには多数のフィンテック系スタートアップが集積し、決済ゲートウェイやデジタル送金、仮想通貨取引、アグリテック融資など様々な分野で新興企業が台頭している。政府も中央銀行主導でイノベーション促進のための規制サンドボックス制度を運用しており、キャッシュレス社会への移行を戦略的に支援している。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

官公庁との取引や大企業間では契約書による法的拘束力が重視される一方、中小企業や零細事業者の間では伝統的な口約束や関係重視の商習慣が残る場面もある。

契約の履行について司法救済を求めることは可能だが、商事裁判の平均審理期間は数年規模に及ぶことがあり、実務上は調停や仲裁による解決が多用されている。ナイロビには国際仲裁センター (NCIA) が設立されており、国際商事紛争を裁判外で解決する基盤も整備されつつある。

汚職・賄賂リスク

ケニアでは腐敗の根絶が長年の課題であり、ビジネス環境における汚職リスクは依然高い。公共調達や税関手続、許認可取得の場面で賄賂の要求や不正な便宜供与が発生する事例が指摘されている。

国際的な腐敗認識指数(CPI)でもケニアのスコアは低く、2022年は180か国中121位(スコア32)と下位に位置した。政府は汚職撲滅委員会 (EACC) を設置し官民の腐敗事案摘発に取り組んでいるものの、一般企業が日常業務で直面する小規模汚職(いわゆるグレーゾーンの要求)まで完全に排除するには至っていない。

治安・政情リスク

ケニアは東アフリカ有数の安定国とみなされるが、治安面・政治面のリスクは存在する。ソマリア系イスラム武装勢力アル・シャバーブによるテロの脅威も残存しており、2013年のショッピングモール襲撃事件や2019年の高級ホテル襲撃事件では多数の犠牲者が出た。

政治情勢については、おおむね民主的な選挙と政権交代が定着しているものの、選挙前後には野党支持者による抗議デモや騒乱が発生することがある。

パートナー関係構築の留意点

一般に日本ほど時間厳守の文化ではなく、商談やプロジェクトが予定より遅延することもしばしばあるため、柔軟な姿勢と忍耐が求められる。政府機関や業界団体のイベントに参加して顔を広げることも有効であり、ケニア私企業連盟 (KEPSA) などのビジネスネットワークを通じて有用な情報や人脈を得られる。

日系企業間では在ケニア日本人会や商工会を中心に情報交換や親睦が図られており、先発企業から非公式なアドバイスを受けられる土壌もある。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

・トヨタ:現地法人を通じて自動車・部品販売や組立拠点を展開
・ホンダ:ナイロビ近郊に工場を設立
・ケニア政府案件のインフラプロジェクト(発電所建設や道路整備など)に参画
・住友商事:地熱発電事業に出資
・三井住友銀行:ナイロビに駐在員事務所を開設

ケニアには幅広い業種で日系企業が進出している。ケニアに拠点を置く日系企業数は南アフリカに次いでアフリカ第2位となっており、東アフリカのハブとして多くの企業が地域統括拠点をナイロビに構えている。

現地には日系向け医療クリニックや日本食レストランも存在し、日本人社会(在留邦人約800名)が形成されつつある。

競争優位性・課題

ケニア市場の魅力は、東アフリカ最大の人口・経済規模と地理的ハブとしての位置付けにある。域内物流の要であるモンバサ港や国際機関が集積するナイロビの存在など、周辺国も含めたビジネス拠点としての戦略価値が高い。また英語公用語であることや市場経済の成熟度、ICTインフラの整備状況など、アフリカ諸国の中では事業運営の障壁が比較的低い点も優位性である。

若年人口が多く人材プールが豊富であることから、中長期的な消費市場としての成長やデジタル分野での革新にも期待が持てる。

一方、進出企業にとっての課題も存在する。電力・水道などインフラ供給コストが高く、製造業では慢性的な電力不足に備え発電機を自前で用意する必要がある場合がある。ビジネス関連法規や税制が頻繁に改正される傾向もある。現地市場では中国・インド・欧米企業が熾烈な競争を展開しており、価格競争力やスピードで日系企業が遅れをとる場面も散見される。さらに汚職や官僚的手続きは依然ビジネス上のリスクであり、透明性確保に追加のコストや労力を要する。

手続き難易度

会社設立手続き自体はeCitizenで完結するが、入力内容の訂正要求や追加提出書類の通知が後から来ることもあり、全ての要件を満たすまでに時間を要することがある。

労働許可の取得は難易度が高く、申請書類の準備から実際の許可証発給まで半年近くかかる例もある。税務・社会保険の申告はオンラインポータルで可能だが、当局からの照会への対応や現地税務調査への備えなど、日本に比べ管理負担が大きい面がある。

世界銀行の「ビジネス環境ランキング」(2020年版)ではケニアは全体で56位とアフリカ上位に位置し、開業手続きの迅速さや融資の容易さで高評価を得た反面、建築許可取得や契約執行の指標では低評価だった。

専門家ネットワーク

・JETROナイロビ事務所
・在ケニア日本大使館
・国際会計事務所(PwC、KPMG等)

ナイロビには主要な国際会計事務所(PwC、KPMG等)や法律事務所の提携オフィス、コンサルティング会社が多数進出しており、日系企業もこうした専門家ネットワークを活用している。

チャド共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

 

 

 

1. 国家基本情報

 

首都

首都:ンジャメナ

通貨・為替

通貨:中央アフリカCFAフラン(XAF)
為替:1 USD=約582 XAF(2025/05月平均)

経済指標

名目GDP:約216億ドル(2024年)
一人当たりGDP:約1,200ドル(2024年)

石油輸出が経済の柱で、近年は2023年に実質GDP成長率5%を記録したが、2024年は約3.5%に減速する見通しである。インフレ率は2024年に8~9%となっている。

日本との関係

日本との貿易額は2021年時点で対日輸出約0.1億円、対日輸入約3.4億円と極めて小さい。日本は人道支援を中心に累計約8.2億円の無償資金協力を行ってきた。

2. 法人設立制度

法人形態

チャドはOHADA(一体化されたアフリカ企業法)の加盟国であり、有限会社(SARL)や株式会社(SA)、簡易株式会社(SAS)など標準的な法人形態が利用できる。支店形態での進出も可能である。

外資規制

外国資本に対する包括的な持株規制は基本的に存在しない。原則として全ての産業で100%外資が認められるが、国防など一部安全保障上の分野では例外的に制限が課される場合がある。

資本金要件

OHADA企業法では有限会社(SARL)は最低10万CFAフラン、株式会社(SA)は最低1,000万CFAフランの資本金が要求される。簡易株式会社(SAS)には法定の最低資本金はなく、柔軟に設定できる。

支店開設時には資本金は不要だが、2020年財政法の規定で年間想定売上の0.5%相当額を保証金として政府に一時預託する要件がある。

登記手続き

投資促進庁(ANIE)が企業登記のワンストップサービスを提供している。商業登記には定款の公証、出資金払込証明、取締役の身分証提出などが必要である。なお、前述の保証金0.5%の納付も登記完了の条件となっている。

3. 税制度

法人税

法人税率:35%(国外源泉所得は非課税)

最低税として売上高の1.5%を毎月納付する規定がある。

付加価値税(VAT)

標準VAT税率:17.5%

一部の生活必需品や現地生産品には軽減税率9%が適用される。輸出取引および国際輸送には0%の税率(輸出免税)が適用される。

VATの納税義務者は月次で申告納付し、一定条件下でVAT還付を申請できる制度がある。

個人所得税

個人所得税は累進税率で最高30%(年収約1,200万CFAフラン超部分)となる。給与所得は源泉徴収され、従業員3.5%・雇用主16.5%の社会保険料控除後の所得に課税される。利子・配当・家賃収入などには5〜20%の分離課税が適用される。

その他の税金

その他、源泉徴収税(配当・サービス料に10〜20%)、関税(5〜30%)、物品税、財産税など複数の税目が課されている。社会保障のための給与課税も存在する。

4. 会計・監査制度

会計基準

チャドではOHADA会計システム(Syscohada)が適用されており、OHADA統一会計基準に従い帳簿を作成する義務がある。企業はフランス語で会計記録を備え付け、毎年度の財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を作成する。

監査要件

株式会社(SA)は法定監査人(コミッサール・オ・コンプト)の選任が義務付けられ、大規模な有限会社(SARL)も一定基準(資本金や売上高)を満たす場合には監査人の任命が必要となる。それ以外の中小企業では法定監査義務はないが、自発的に任意監査を受けることも可能である。

登録要件

公認会計士・監査人として業務を行うには、国家会計士協会への登録が必要である。監査業務はチャド公認会計士(Expert Comptable)の資格保持者かつ協会に認可された者に限られる。国外資格者が業務提供する場合、現地の専門家と提携する必要がある。

財務諸表の提出

事業年度終了後、法人は税務申告時に財務諸表を税務当局へ提出する義務がある。また一定規模以上の企業は商業登記所へ財務諸表を所定の様式で開示・登録する必要がある。これにより第三者が決算情報を閲覧可能となる仕組みである。

5. 労務制度

雇用契約

チャド労働法では期間の定めのない契約(無期雇用)が原則であり、期間限定の有期契約は最大24か月まで(1回更新可)とされる。有期契約は書面で締結し、試用期間は最長3か月程度設けられる。

最低賃金

最低賃金:月額約6万CFA(2011年改訂)

全国一律の法定最低賃金は長らく改定されていない。

労働時間

所定労働時間:週39時間(1日8時間×週5日相当)

時間外労働は年間94時間を上限に認められる。時間外労働には割増賃金(通常賃金の1〜2割増以上)が支払われる。法定労働時間の上限は休憩含め1日11時間、週54時間(残業込み)である。

解雇・退職

無期雇用契約の解雇には労働者の勤続年数に応じた解雇予告期間(通常1〜3か月)が法定されている。不当解雇の場合、雇用主には解雇補償金の支払い義務が生じる。

労働争議・労使関係

労働組合の結成とスト権は法律で認められている。労使紛争は労働監督官の調停や労働裁判所で処理される。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

チャドには明確な経済特区(SEZ)は整備されていないが、投資奨励法に基づき特定分野への投資に対する優遇措置が用意されている。新規投資案件に対しては操業開始から最長5年間の法人税免除などの税制優遇措置が講じられる。また大型投資には設備輸入関税の免除など追加インセンティブも与えられる。

投資促進機関

前述のANIE(投資・輸出促進庁)が対内投資の窓口であり、海外企業の法人設立や各種許認可取得を支援している。ANIEではワンストップショップにより現地法人設立の手続きをまとめて行うことができる。加えて商工会議所等も現地ビジネス情報の提供や投資家へのサポートを行っている。

ビザ・労働許可

チャドで就労する外国人は就労ビザおよび労働許可証を要する。雇用企業が政府の雇用促進局(ONAPE)を通じて申請し、当該職務に適任のチャド人がいないことを証明する必要がある。法律上、外国人労働者は全従業員の2%以内(チャド人98%以上)に制限されており、これを超える雇用には労働当局の特別許可が必要となる。

外貨規制

チャドはCEMAC域内通貨であるCFAフランを採用しており、その資本取引には域内共通の外為管理規則が適用される。合法的な利益配当金等の送金は認められるが、約50万ドル超の国外送金には中央銀行(BEAC)の許可が必要になるなど、資金移動には規制がある。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

現地で銀行口座を開設するには、法人登記証明書、定款、代表者身分証明、納税者番号などの提出が求められる。外為規制上、株主資本の払込証明を銀行経由で行う必要がある場合もある。

現地借入・金利水準

商業銀行の貸出金利は年10〜15%と高く、十分な担保がない中小企業にとって資金調達は困難である。

送金・為替サービス

国内送金は銀行経由が中心だが、民間送金サービスも利用される。CFAフランはユーロにペッグされ安定している。国際送金は外貨規制の下で可能だが、手続きに時間を要し注意が必要である。

フィンテック動向

金融インフラが未発達な中、モバイルマネーなどフィンテックサービスが徐々に拡大している。2023年に通信大手のモバイル送金サービスが認可され、2025年には初の地場企業が決済サービスの免許を取得した。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

ビジネスにおいて契約書は締結されるものの、法的強制力よりも相互の信頼関係に依拠する場面が多い。ただし裁判手続きは長期化しがちで、現地パートナーとの十分な協議と信頼関係構築がトラブル防止に重要となる。

汚職・賄賂リスク

行政手続には汚職のリスクがあり、贈賄要求を排除する厳格な社内統制が不可欠である。

治安・政情リスク

国内治安は不安定であり、特にリビア・スーダン国境周辺やチャド湖地域では武装勢力・テロ組織の活動により極めて危険である。2021年には大統領が戦闘で死亡し軍事政権へ移行する政変が起きるなど、政治情勢も流動的である。

渡航に際しては最新の安全情報の確認が不可欠であり、進出時には万全の安全対策と有事対応計画を講じる必要がある。

パートナー関係構築の留意点

人間関係を重視する文化のため、初期段階では頻繁に対面で協議を重ね、相互理解を深めることが重要である。ビジネス言語はフランス語(および一部アラビア語)であり、言語面の配慮も必要である。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

2023年現在、チャドに恒久的拠点を置く日系企業は存在しない。他国からの駐在員事務所等も確認されておらず、日本企業のプレゼンスは主に政府開発援助(ODA)や国際機関経由の活動に限られる。

競争優位性・課題

チャド市場は経済規模が小さい反面、石油・鉱物資源や農牧業など未開拓分野に商機が存在する。一方で内陸国ゆえの物流制約、インフラ未整備、消費市場の購買力不足といった構造的課題が多い。

また、低価格品では欧州・中国企業との競争が激しいため、自社の強みを活かした差別化戦略が重要となる。

手続き難易度

事業環境の難易度は非常に高く、世界銀行「ビジネスのしやすさ」ランキングでは190か国中182位(2020年)と下位に位置する。法人設立に2か月以上かかるなど行政手続に長期間を要する。

専門家ネットワーク

チャド進出にあたっては現地事情に通じた専門家の支援が不可欠である。各分野の信頼できる法律・税務・労務の専門家を確保し、当局対応や許認可取得の支援を受けることが望ましい。またJETRO等のネットワークから最新の規制動向やリスク情報を収集する努力も重要である。

セネガル共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

 

 

1. 国家基本情報

首都:

首都:ダカール

通貨・為替:

通貨:西アフリカCFAフラン(XOF)
為替:1 USD = 約581 XOF(2025/05月平均)

CFAフランは西アフリカ経済通貨同盟(WAEMU)の共通通貨であり、フランス財務省の保証の下で通貨の交換性が担保されている。

経済指標:

人口:約1,850万人(2024年、世銀)
GDP:約322.7億米ドル(2024年、世銀)
一人当たりGDP:1,744ドル(2024年)
実質GDP成長率:6.9%(2024年、世銀)
インフレ率:0.8%(2024年)

主要産業は農業(落花生や雑穀、綿花など)・漁業(マグロ、カツオ、エビ、タコ等)であり、第3次産業(商業、物流、通信)がGDPの約3分の2を占める。近年は金やリン鉱石等の鉱物資源に加え、南部沖合での石油生産(2024年開始)や近隣海域での天然ガス生産(2025年開始)も始まり、資源産出国としての展望も開けている。一方で貧富の差や若年層失業が課題となっている。

日本との関係:

対セネガルODA累計
有償資金協力:785.92億円
無償資金協力:1,296.67億円
技術協力:626.84億円

輸出:約55.9億円(魚介類・金属鉱石など)
輸入:約93.8億円(合成繊維・鉄鋼・機械類など)

日系進出企業数:24社(2024年10月現在)
進出業種:自動車・商社・プラント・サービス業など

1960年のセネガル独立直後に日本は国家承認し、以降外交関係は良好である。政府要人往来も活発で、経済協力分野では日本は主要援助国の一つである。駐在員やその家族を含む在留邦人数は227人(2024年10月現在)と少数だが、日本大使館やJETRO(在アビジャン事務所管轄)によるビジネス支援が行われている。

2. 法人設立制度

法人形態:

主な法人形態
株式会社(Société Anonyme, SA)
有限責任会社(Société à Responsabilité Limitée, SARL)
合名会社(Société en Nom Collectif, SNC)
合資会社(Société en Commandite Simple, SCS)
単純型株式会社(Société par Actions Simplifiée, SAS)

セネガルではOHADA(一括されたアフリカ商法)に基づき複数の法人形態が認められる。SAは株式公開の有無により要件が異なり、SARLは中小企業で一般的な形態である。

外国企業が現地事業を行う場合、現地法人設立のほか支店(法人格なしで登記可能)や駐在員事務所の開設も認められている(ただしOHADA規定により、非OHADA加盟国企業の支店は開設後2年以内に現地法人へ移行する必要がある)。

外資規制:

原則として外資に対する株主比率規制はなく、ほとんどの業種で100%外資出資の会社設立が可能である。電力・公共事業など一部の戦略分野では別途規制や政府許認可が求められる場合があるが、全体としてセネガルは外資投資を歓迎し自由化された法制度となっている。

外国投資家の利益送金や資本撤退の自由も法律上保証され(後述の投資法による外貨送金保証)、国有化や接収のリスクに対しても法令で保護規定が整備されている。

資本金要件:

SARL(有限会社)については法定の最低資本金規定が撤廃され、理論上は1フランから設立可能である。しかし実務上、多くの銀行や登記官は最低資本金として約100万XOF程度を要求する傾向がある。

SA(株式会社)の場合、OHADA統一法により非公開SAは最低資本金1,000万XOF、株式公開SAは最低1億XOFと定められている。

SNCやSCSなどの人的会社(パートナーシップ)は出資者が自由に資本金額を決定できる。

なおSAS(単純型株式会社)は設立要件が柔軟で、資本金額や株式の額面も出資者の任意に定められる。

登記手続き:

会社設立手続きはワンストップサービスにより効率化されている。まず公証人の下で定款を作成し、必要に応じ資本金を銀行の仮口座に払い込む。次に投資促進庁APIXの「企業設立局(BCE: Bureau de Création d’Entreprise)」で登記申請を行う。

必要書類は定款、公証人作成の設立証書、商業登記簿(RCCM)登録申請書、出資者全員の身分証コピー(外国人出資者はパスポート)、代表者の無犯罪証明書またはAPIX所定の誓約書等である。登記申請は迅速であり、書類が整っていれば2〜3営業日程度で完了する。登記完了後、法人には商業登記番号(RCCM番号)と税務番号(NINEA)が付与される。

3. 税制度

法人税:

法人税率:30%(2024年時点)

納税は暦年を事業年度とし、通常翌年4月末までに確定申告・納付を行う(中間納付制度あり)。

企業が未課税利益や剰余金を資本化(増資)する場合、1%(未課税部分は2%)の資本税が課される。配当金、利子、ロイヤルティ等の源泉課税は支払先や条約によって10〜20%の税率が課される(非居住者配当は通常10%)。

また最低税負担として、利益が小額でも年間売上に一定率(通常0.5〜1%)を乗じた最低税が発生する制度がある。なお特定産業(銀行・保険等)や活動には別途附加税が課される場合がある。

付加価値税(VAT):

標準VAT税率:18%(2024年現在)

原則として国内で対価を得て行われる物品の販売、サービス提供および輸入取引が課税対象となる。観光業等一部の限定分野には10%の軽減税率が適用される。輸出取引や国際輸送、教育・医療等は非課税もしくは免税となる。

VAT納税義務者は月次で申告・納付を行い、納付期限は翌月15日までである。仕入VATは要件を満たせば控除可能で、不足分は還付も認められる。

金融サービスにはVATに相当する**金融活動税(TAF)**が課され、金融機関の貸付利息や送金手数料等に対し適用される(標準税率17%相当で一部取引除外)。

農産品初加工や鉱業探鉱段階など投資法上の特典対象事業では、VATの一時免除や繰延が認められる場合がある。

個人所得税:

所得税率は段階的累進構造で最高税率は40%(2024年時点)である(課税所得金額に応じ0%〜40%の税率帯)。給与所得については源泉徴収され、雇用主は毎月天引き納付する義務がある。給与所得には家族手当的控除が設けられ、扶養家族数に応じ課税所得を減じる制度がある。

なお高額退職金等には分離課税規定があり、一定額を超える部分に5%の特別税が課される。

その他、雇用者は給与総額の3%相当の拠出金(雇用者拠出税)を負担する。この拠出税は職業訓練促進等に充当される目的税である。

その他の税金:

上記以外に事業税(特許税)がある。これは地方税であり、営業許可料や固定資産割に相当する税金が毎年課せられる。

資産保有に対しては不動産税や自動車税などが存在する。輸出入時には関税のほか、統一関税(CET)や統計税などが賦課される。

印紙税・登録税も各種取引(不動産譲渡や公証手続きなど)で発生する。

4. 会計・監査制度

会計基準:

セネガルはOHADAの統一会計制度に則った会計基準を採用する。OHADA加盟各国共通のSYSCOHADA(西・中部アフリカ会計システム)に基づき、フランス式の勘定科目体系と財務諸表フォーマットが定められている。すべての企業はこの基準に従って記帳し、年次財務諸表を作成しなければならない。

一般企業はSYSCOHADAの通常基準を用いるが、銀行・保険等の特定業種には別途統一会計基準が適用される。国際会計基準(IFRS)は法定では必須ではないが、一部多国籍企業や地域株式市場上場企業は任意でIFRSに準拠した連結財務諸表を作成する場合もある。

会計年度は暦年(1月1日~12月31日)が原則で、年度終了後6ヶ月以内に定時株主総会で決算承認を行う必要がある。

監査要件:

株式会社(SA)については法定監査役(Commissaire aux Comptes)の設置が義務付けられる。その役割は会計帳簿の検査と財務諸表が適用基準に準拠して適正に作成されているかの証明である。公開SAでは常任監査役2名(補欠2名)、非公開SAでは常任監査役1名(補欠1名)が必要で、任期は設立時2年、以降6年ごとの選任となる。

有限会社(SARL)は原則として監査役の設置義務はないが、次の3要件のうち2つ以上を満たす場合には監査役を置かなければならない。
(1) 総資産1億2,500万XOF以上
(2) 年間売上高2億5,000万XOF以上
(3) 常時使用従業員数50人超
SARLの監査役任期は3年。監査役は独立した公認会計士でなければならず、会社から委嘱を受け財務諸表の監査報告書を作成する義務がある。

また、会社が現物出資を行う場合、その評価について公認の出資監査人による査定が必要であり、SAでは現物出資に必ず査定が要求される(SARLでは出資額が500万XOF超の場合に必要)。

登録要件:

セネガルで監査業務や会計士業務を提供するには、国家専門家協会への登録が必要である。公認会計士や監査法人は同協会に属し、資格要件(フランスやOHADA圏の公認会計士資格等)を満たす者のみが監査報告書へ署名することが許される。

また税理士・会計士として企業の帳簿を預かる場合にも登録が求められ、無資格での業務は罰則の対象となる。

企業側には特段の会計士設置義務はないが、一定規模以上の会社は経理責任者に専門資格者を起用することが望ましいとされる。

財務諸表の提出:

決算承認後1ヶ月以内に商業・動産財務登記所(RCCM)に対し貸借対照表・損益計算書等を備え置き・提出することが要求される(これにより一般に閲覧可能な状態とする)。

提出を怠った会社の経営者には1〜3ヶ月の禁錮または罰金が科され得る旨が法定されている。

さらに西アフリカ地域の指令に基づき、WAEMU加盟国では財務諸表提出のワンストップ窓口(GUDEF)が設けられ、企業は電子的に年次財務諸表を登録できる仕組みが整いつつある。税務当局への提出については、法人税申告時に財務諸表の添付提出が必要となる。

5. 労務制度

雇用契約:

セネガルの労働関係は1997年制定の労働法(法律第97-17号)および職種別労働協約によって規律される。

雇用契約は期間の定めのない常用契約(CDI)が原則だが、一定条件下で有期契約(CDD)も認められる。CDDは原則2年以内で更新1回まで(それ以上はCDIとみなされる)という制限がある。雇用契約は書面で締結することが推奨され、使用者は契約内容を仏語で記載した労働契約書を作成し、労働監督局に届出る慣行がある。

試用期間は職種により1〜3ヶ月程度設定可能で、試用中は双方即時解約が認められる。

企業は従業員を雇用した場合、8日以内に労働当局への通知(採用届)を行う義務がある。また従業員の権利を守るため、労働規則や就業規則を備え置くことが義務付けられている(常時雇用者50名以上の場合)。

最低賃金:

非農業部門:時給370.52 XOF
農業部門等:時給236.86 XOF

この水準は月額換算で非農業労働者約6.4万CFAフラン、農業労働者約4.1万CFAフランに相当する。

最低賃金は全国一律であり、使用者はこれを下回る賃金で労働者を雇用することは禁止されている。産業別労働協約により、各職種・技能等級ごとにより高い基準賃金が定められている場合もある。

なお労働者にはこのほか法律で定める家族手当や通勤手当等の支給が必要な場合があり、総労働コストには付随的給付も考慮する必要がある。

労働時間:

法定通常労働時間は週40時間である(1日8時間×5日相当)。農牧業・関連業種については年間労働時間上限が2,352時間と規定されており、季節変動に応じた時間配分が可能となっている。

時間外労働は原則として労使協議の上で可能だが、割増賃金の支払いが義務付けられる。通常残業割増率は平日時間外で基本給の15%増し、深夜・休日はもっと高率(例:夜間は50%増し)と労働協約等で定められる。

法定の休憩・休日として、週1日の有給休日(通常日曜)と、年間労働日数に応じた有給休暇(勤続1年で24労働日の年次有給)が保障される。

女性労働者には産前産後各6週間の産休(有給)が認められている。

また宗教上の祝祭日(イスラム教・キリスト教双方の祝日)や独立記念日等が法定休日として定められている。

解雇・退職:

解雇は個人的理由(能力不足・違法行為等)によるものと、経済的理由(業績不振や組織再編による人員削減)によるものに大別される。

個人的理由解雇の場合、従業員の明白な職務不適格や重大な背信行為等が要件となり、手続きとしては事前に書面で弁明の機会を与え、懲戒委員会での審査を経て、解雇通知を出し労働監督官に報告する必要がある。

経済的理由による解雇の場合、まず解雇回避のため従業員代表との協議を行い、労働時間短縮・他職への配置転換・一時帰休等あらゆる方策を検討する義務が使用者に課される。それでも余剰人員の削減が不可避の場合、合理的な人選基準に従って解雇対象者を決定する。一般に能力の低い者から選定し、同等の場合は勤続年数が長い者を優先的に残すとされ、さらに既婚者には勤続年数に1年分、扶養家族を有する者には一定の加算考慮を行う規定がある。

従業員代表(労組委員など)の解雇には労働監督官の事前承認が必要である。解雇予告期間は勤続年数に応じ1〜2ヶ月(勤続2年未満で1ヶ月、2年以上で2ヶ月)とされ、その期間中も賃金を支払う。

解雇手当(退職金)は、解雇が労働者の重大な過失によらない場合、勤続1年以上で支給義務が生じ、勤続年に応じた平均月給の一定割合(例えば勤続年数ごとに月給の25%など累進)が支給される。

定年は60歳に定められており、一般企業・公務員とも原則60歳で退職となる(医師等専門職は65歳まで延長例外あり)。希望者は55歳以上での早期退職も可能であるが、企業内規定に従う必要がある。

労働争議・労使関係:

労働者は企業内に労働組合を組織する権利を有し、セネガルには複数のナショナルセンター(労組全国組織)が存在する。

労働争議(紛争)は個別紛争と集団紛争に分かれる。個別労働紛争では、まず当事者間での協議・和解が試みられ、解決しない場合は労働監督官(Inspection du Travail)に調停を申請できる。監督官主導の調停でも合意できない場合、労働裁判所に訴訟提起が可能である。

集団労働紛争(複数労働者が関与する労使対立)の場合、ストライキ権が認められる。ただしストを行うには事前に使用者へ書面による予告通告を行い(通常10日前まで)、その間に労働当局を交えた和解手続きを経る必要がある。公共サービス部門については最低サービス維持のための制限規定もある。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇:

セネガル政府は外国直接投資促進のため経済特区(ZES)を整備している。代表的なのが首都近郊ジャムナジョ(Diamniadio)経済特区で、西アフリカ最大規模とされる工業団地・物流拠点が開発されている。また郊外のンジャッセ(Ndiass)には日本企業専用経済特区が構想され、投資誘致が進められている。

経済特区内の企業には最大25年間の税制優遇が与えられ、関税・付加価値税の免除や法人税率引下げ(通常30%→15%)などが適用される。また特区では労働契約の柔軟化(有期契約の長期化容認等)などビジネスに有利な条件が整備されている。

投資法(Investment Code)に基づく優遇措置も全国で利用可能である。投資法は2004年法律第2004-06号(2012年改正)で制定され、新規事業創出や内陸部投資に対し税制上の特典を付与する。投資法の認可を受けた企業は法人税の一部免除や設備投資のVAT免除(最初の3年間)、機械・原料の輸入関税免除、投資額の40%分の税額控除(5年間)等のメリットを享受できる。

投資促進機関:

セネガルの対投資窓口機関はセネガル投資促進・大型事業庁(APIX)である。APIXは投資案件の情報提供から企業設立ワンストップサービス、各種許認可の取得支援まで包括的にサポートする。

海外投資家向けには英文の投資ガイドや案件相談を提供しており、重点分野(製造業、農水産、IT等)の投資フォーラム開催やインフラPPP案件の募集も行っている。

さらに首相直属の投資・大規模プロジェクト評議会が設置され、ビジネス環境の改善や外資誘致政策の立案を統括している。具体的施策として、企業設立手続の簡素化、税関手続オンライン化、特区開発などが進められてきた。日本企業向けにもAPIX内に日本デスクが設置されており、必要に応じ言語サポートも受けられる。

ビザ・労働許可:

日本国籍者は観光・短期出張目的であればセネガル入国にビザは不要であり、90日以内の滞在は査証免除となっている(2015年査証制度改正による)。90日を超えて滞在する場合や就労を伴う場合は、長期ビザ(滞在許可)と労働許可証が必要である。

労働許可(Permis de Travail)は内務省配下の労働局に申請し取得する。主な必要書類は就労ビザ申請書、雇用契約書、申請者の無犯罪証明書(本国発行)、健康診断書、写真、パスポートの写し等で、書類はフランス語翻訳・公証が求められる。通常、労働許可は最初2年間有効なものが発行され、更新可能である。労働許可と並行して外国人滞在者証の取得も必要であり、セネガル到着後に居住地管轄の警察当局へ申請する。

なお労働許可はスポンサー企業に紐づくため、転職する際は新たに許可を取り直す必要がある。

外貨規制:

経常取引の支払い(輸入代金決済・サービス料支払いなど)は制限なく認められ、公認の金融機関(銀行)を通じて自由に外貨送金可能である。

一方、資本取引(外国への投資・貸付・証券取得等)については事前承認や事後報告が義務付けられている。具体的には、居住者が海外へ直接投資を行う場合、財務大臣の事前許可を取得しなければならない。

また非居住者間の送金や、居住者による国外からの借入、国外へのローン返済・配当送金等は対外金融局およびBCEAOへの報告が必要とされている。これらの送金はすべてBCEAO認可の銀行(公認仲介業者)経由で行う義務がある。

外国投資家の利益送金については、必要な税金納付を終えていれば配当・事業利益を海外本国に送金することが認められており、投資清算時の資本回収送金も含め1ヶ月以内に自由に本国送金可能と法令で保証されている。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き:

口座開設には各銀行所定の申込書のほか、会社の商業登記簿謄本(RCCM証明書)、税務登録証明(NINEA)、定款写し、官報公告コピー、代表者のID(外国人はパスポート)、代表者住所証明(公共料金領収書等)、写真などの提出が求められる。

法人の場合、最低預入金額として10万CFAフラン程度を初回入金する必要がある(銀行により異なる)。手続き自体は数日で完了し、口座番号とIBANが発行される。

注意すべきは口座維持手数料で、セネガルの銀行口座は毎月の維持費が発生する。例えば一般的な法人当座口座で月額7,500〜23,500 XOF程度の維持料が銀行ごとに設定されている(2024年現在)。

現地借入・金利水準:

融資金利は中央銀行BCEAOの政策金利および市場金利に連動する。BCEAOは域内共通の金融政策を行い、政策金利は2023年に5.50%まで引き上げられた後、2025年には3.25%に引き下げられた。これに各銀行のスプレッド(信用コスト)が上乗せされ、一般企業向け貸出金利は平均で年利7〜10%程度となっている。

銀行融資の期間は運転資金用の短期ローン(1年以内)が多く、長期投資資金は国際金融機関(IFCや開発銀行)のラインを使った融資スキームが利用されることもある。政府は中小企業向けの低利融資促進のため国家開発銀行(BNDE等)への資金拠出を行い、一定の優遇融資制度も設けている。

送金・為替サービス:

企業間の海外送金は通常銀行のSWIFT送金により行い、日本への送金も各都市銀行で可能である。

為替サービスについて、CFAフランはユーロと固定であるため対ユーロ為替リスクは無いが、対ドル等他通貨への換金は銀行で行う。企業は必要に応じ外貨建て口座を開設することも可能で、輸出代金等を一時的に外貨で保持できる(ただし一定期間内にCFAフランへ転換するよう義務付けられる場合あり)。

為替取引には銀行手数料(1%前後)や公定の金融取引税(TOB)が付加される。

フィンテック動向:

現在ではOrange Money・Waveが二大勢力として、個人間送金、光熱費支払い、携帯料金チャージなど日常決済の主要手段となっている。

決済以外のフィンテック分野でも、オンライン融資、クラウドファンディング、暗号資産取引などのサービスが徐々に登場している。全体としてセネガルは若年層人口の多さとITリテラシー向上により、フィンテックが著しい発展を遂げつつあり、今後も金融サービスの革新が期待される。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化:

セネガルはフランス法の強い影響下にあり、ビジネス契約も欧州型の形式で締結されることが多い。企業間取引では契約書を詳細に作成し、公証人認証を付すケースも見られる。法制度上は債務不履行に対する救済手段(損害賠償請求や仲裁)が整備されているため、外国企業としては契約条項を明確に定め、違反時のペナルティや準拠法・紛争解決方法(例:国際仲裁)を契約書に明記することが重要である。

セネガルはOHADA統一商法の一環として調停・仲裁制度も導入しており、紛争時に利用可能である。

汚職・賄賂リスク:

透明性国際の腐敗認識指数(CPI)では毎年180か国中70位前後(2023年は70位、スコア43)と健闘しており、政府の汚職撲滅への取組みも一定の成果を上げている。2004年には国家汚職対策庁(OFNAC)が設立され、公務員の不正監視や汚職摘発を行っている。セネガル政府はビジネス環境改善の一環で賄賂追放キャンペーンを続けており、ビジネス上の倫理遵守姿勢は長期的に評価される傾向にある。

治安・政情リスク:

セネガルは1960年独立以降、クーデターを一度も経験しておらず、西アフリカで最も政治的安定性が高い国の一つである。民主的な政権交代も複数回実現し、現在も立憲共和国制が維持されている。ただ近年は政治的緊張が高まる局面もあり、2023年には有力野党指導者の訴追を巡る抗議デモが発生し、一部地域で暴動や衝突が起きた。ただし政府と反政府勢力の和平交渉が進み、近年は大規模な戦闘は発生していない。

治安面では、都市部でスリや置き引き等の軽犯罪が発生するが、殺人や武装強盗といった凶悪犯罪は少ない。テロの脅威は近隣マリやブルキナファソ等と比べ低い水準だが、国際情勢の影響で油断は禁物である。政府は国境警備や情報機関を強化しており、現在までセネガル国内で大規模テロ事件は起きていない。

総じて治安は西アフリカで最良クラスだが、油断せず企業として危機管理計画(安全マニュアル、緊急連絡網、避難ルート確認等)を用意することが望ましい。

パートナー関係構築の留意点:

主要ビジネス言語はフランス語であり、政府・企業の公式文書や交渉も仏語で行われる。英語だけでは十分でないため、仏語対応可能な人材を配置するか通訳を活用する必要がある。

時間感覚については比較的おおらかであり、約束の時間に多少遅れることも日常茶飯事だが、外国企業側は時間厳守の姿勢を示しつつ柔軟に構えることが求められる。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例:

・トヨタ:現地代理店を通じ自動車販売網を開拓
・住友商事:電力インフラプロジェクトに参画
・豊田通商:農業機械の普及事業を展開
・キッコーマン:日本食品の市場流通

セネガルに進出した日系企業は自動車販売、総合商社、建設機械、食品、水産加工、サービス業など多岐にわたる。2022年には日系メーカー数社が特区内進出に関心を示し、現地視察団が派遣された。

日系企業間では緩やかな情報交換ネットワークがあり、日本大使館やJICAを中心に安全情報や経済情報の共有が行われている。

競争優位性・課題:

セネガル市場の魅力は政治的安定、戦略的な地理位置、そして比較的高い教育水準にある。西アフリカの玄関口であるダカール港は物流拠点として重要で、内陸国マリへの中継貿易も担う。WAEMU共通通貨圏であるため加盟国内(Côte d’IvoireやMali等)への製品移動が関税なしで可能な点も競争優位と言える。

また人口は増加傾向にあり若年層比率が高く、将来的な労働力・消費市場として成長余地が大きい。

課題としては市場規模の限定、製造基盤の脆弱性、そしてビジネスコストの高さが挙げられる。電力料金やインターネット費用はアジア諸国に比べ割高で、企業経営コストとなる。輸入に依存する製品が多く、消費財市場では欧州・中国・トルコなど海外製品との競争も激しい。

手続き難易度:

世界銀行のDoing Business指標(2020年版)ではセネガルは総合123位で、アフリカで中位グループに属する。会社設立手続(4日・費用GDP比11.1%)や不動産登記、少額投資家保護の分野で評価が高い一方、建設許可取得、電力引込、契約執行(訴訟手続期間約740日)等は依然課題とされる。特に行政の電子化は進行中で、税申告などはオンライン可能だが、土地登記や許認可は対面申請が残り時間を要する場合がある。

労働許可取得なども前述のように制度化されているため、手順を踏めば特段難しくはない。総じてセネガルで事業を始める難易度は、アフリカの中では中程度である。

専門家ネットワーク:

ダカールには国際会計事務所(Big4系列)やフランス系の大手法律事務所が進出しており、会計監査、税務申告、法務デューデリジェンス等のサポートを提供している。

さらに公的ネットワークとして在セネガル日本国大使館やJICA事務所が情報提供を行っており、JETROはコートジボワールのアビジャン事務所がセネガルもカバーして相談対応している。